スコーレNo.4 の商品レビュー
読後はいつも爽やかな風を運んでくれる宮下奈都。“スコーレ”とは学校のこと。No.1からNo.4までの4章から成る本作は、「中学、高校、大学、就職を通して4つのスコーレと出会う」という触れ込みですが、正確には中学、高校と来たあとは、大学卒業後に就職して出向を命じられた店でのこと、そ...
読後はいつも爽やかな風を運んでくれる宮下奈都。“スコーレ”とは学校のこと。No.1からNo.4までの4章から成る本作は、「中学、高校、大学、就職を通して4つのスコーレと出会う」という触れ込みですが、正確には中学、高校と来たあとは、大学卒業後に就職して出向を命じられた店でのこと、そして出向先から戻った本社でのことが描かれています。 主人公の麻子は3人姉妹で、両親と祖母の6人家族。上の妹の七葉はあまりにも可愛い。その容姿に幼い頃から劣等感を抱きつづけ、麻子は自信を持てずにいる。中学、高校と好きになった相手がいるが、いずれも想いを伝えられないまま空しく消えた恋。もしも自分が七葉ほどの容姿であれば、積極的になれたのに。 彼女の上手くいかなかった恋を描くNo.1とNo.2はいささか凡庸。面白くなるのはNo.3以降。 No.3では、英語が得意だった彼女は大手の輸入貿易会社に就職。ところが入社後すぐに高級ブランド靴店に出向を命じられます。靴になんてこれっぽっちも興味のなかった麻子。本社からやってきて店で浮きまくりだった彼女ですが、店の靴を履いてみた日から何かが変わります。 出向を終え、本社に戻って数年経った頃を描いているのがNo.4。出向先とは勝手がちがい、異なる意味で本社では浮きまくり。しょっちゅう笑われ呆れられていた麻子は、あるとき初めての海外出張で靴の買い付けを任されることに。同行者は他部署の男性社員2人で、同僚によれば「期待しないほうがいい」。しかし、一緒に行ってみれば目からウロコ。さまざまな面で助けられます。 とことん自信のなかった彼女が成長していく様子。人との繋がりが温かく、幸せな気持ちで本を閉じました。心がぎすぎすしているときに読むと、最終章では涙腺が刺激されます。やはり特に女性にお薦めしたい作品。
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作品を読んで、少女から大人へ成長するというのは、小さなころからこだわっていたことが「外のこと」という風に認識するという事なのかなとぼんやりと思いました。男性である自分にはこの小説に書かれている心情部分は理解できないのですが、自分が苦手だと思う女性の心情を知る上ではこの方の小説はとても参考になります。どちらかというと若い女性の方向けの小説かと思います。感想はこんなところです。
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主人公である津川麻子は、古くからある骨董店「マルツ商会」の三姉妹の長女だ。 物語は四部構成になっている。 中学時代、高校時代、大学時代、そして社会人になった麻子の日常が描かれている。 一貫して麻子の視点で語られる物語は、優しく切なく、そしてほろ苦い。 自分とは何者なのか。 自分の...
主人公である津川麻子は、古くからある骨董店「マルツ商会」の三姉妹の長女だ。 物語は四部構成になっている。 中学時代、高校時代、大学時代、そして社会人になった麻子の日常が描かれている。 一貫して麻子の視点で語られる物語は、優しく切なく、そしてほろ苦い。 自分とは何者なのか。 自分の価値とは何なのか。 自分らしさとは。 答えのでない問題は、時折顔を出して麻子を苦しめる。 自分にしかない固有の性質。 良いところばかりでなくてもいいのだ。 悪いところだってあって当たり前だ。 自分だけの個性なら、それは立派に自分であることの証し。 自分のことがわからないまま人は成長し、少しずつ自分とは何者なのかを知っていく。 大切なもの、何があっても捨てられないほどに自分と切り離せないもの。 そんなものに気づいていく。 「誰にも絶対に渡したくない思い」。 妹・七葉が見せる強い思いに麻子は恐れを抱く。 だが、その強い思いは裏返せば「執着」に他ならない。 ときに長所として人を成功に導くこともあるだろう。 だが限度を知らない執着は、人を破滅させ奈落の底に追い落とす。 派手な展開はない。 刺激的なエピソードも、インパクトのある出来事もない。 ただ静かに、丁寧に、優しく切なく、麻子という女性の成長を描いている。 共感できる部分がとても多かった。 ひとつひとつの場面がどこか懐かしく、ほろ苦さを思い出させた。 とても素敵な物語だった。
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コンプレックスを抱える少女の半生。すぐ下の妹に可愛くて好かれる七葉がいる、長女の麻子。 七葉と仲はとてもいいし分かり合えているけれど、何かことが起これば妹が持っていて自分にはないものを痛感したりする。 欲しいものを欲しいと言えること。踏み込んで前へ進むこと、など。 でも麻子も丁寧...
コンプレックスを抱える少女の半生。すぐ下の妹に可愛くて好かれる七葉がいる、長女の麻子。 七葉と仲はとてもいいし分かり合えているけれど、何かことが起これば妹が持っていて自分にはないものを痛感したりする。 欲しいものを欲しいと言えること。踏み込んで前へ進むこと、など。 でも麻子も丁寧に育ってきていて、自分のものさしを持っている。それは他人からしか分からないものなのかも、本人には当たり前すぎて。 そんな麻子の良さが、働くようになってから少しずつ発揮されていく。固い蕾が徐々に開いていくような、もどかしさと美しさが同居している感じがとてもいい。 自信を持って、とかけられた言葉に素直に反応するのもいい。ありのままというよりも、自分が内側に持っている感性や考えを、自分でよく聞いてあげる素直さが意外と大事なんかな、と思う。 「ありのまま」がキライな私には嬉しい気づき。ま、表現が違うだけで本質は同じかもしれないが。 靴屋でディスプレイをしてからの快進撃はうまくいきすぎだけど、そこはまぁお話だから・・・。 のびやかに花開く女性の姿が、読み手にも香しさとともに見えるような気持ちのいい読後感。
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スコーレとは「学校」のこと。 古道具屋の長女として生まれた津川麻子。 小学校、大学、新入社員、入社3年目と、4つの章で麻子の成長を描く。 何かを心から愛せない、どこか冷めている。 自分に自信が持てない。 まるで私のことを書いているようで、親近感が湧いた。 そんな麻子のことを、...
スコーレとは「学校」のこと。 古道具屋の長女として生まれた津川麻子。 小学校、大学、新入社員、入社3年目と、4つの章で麻子の成長を描く。 何かを心から愛せない、どこか冷めている。 自分に自信が持てない。 まるで私のことを書いているようで、親近感が湧いた。 そんな麻子のことを、「そのままで大丈夫」と微笑んでくれるパートナーに出会えて良かった、とホッとした。 麻子が恋に落ちていく描写に、自分の時のことを思い出して、ドキドキした。
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前半微妙だったけど、麻子が成長するにつれ引き込まれた。 最後はこんないろいろ繋がるってどうよ、と思いつつキュンキュンした(≧∇≦) 人は意外と身近な人にコンプレックスを感じるものなんだなー。 多分、周りが思ってる以上に自信をなくしたり、勝手に比べて自分を卑下したり。 ま、ハッ...
前半微妙だったけど、麻子が成長するにつれ引き込まれた。 最後はこんないろいろ繋がるってどうよ、と思いつつキュンキュンした(≧∇≦) 人は意外と身近な人にコンプレックスを感じるものなんだなー。 多分、周りが思ってる以上に自信をなくしたり、勝手に比べて自分を卑下したり。 ま、ハッピーエンドでよかった。
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宮下奈都が今年の本屋大賞を受賞した時に、受賞作は文庫になるまで待てないのでとりあえず同じ作者の文庫本を買ったのがコレである。ずっと積ん読状態だったけど、ふとした拍子に読み始めると、一気に読めた。 自分に自信が無くて、でも人並みに成績は良くて、家族にも恵まれ、友人にもそんなに悪い...
宮下奈都が今年の本屋大賞を受賞した時に、受賞作は文庫になるまで待てないのでとりあえず同じ作者の文庫本を買ったのがコレである。ずっと積ん読状態だったけど、ふとした拍子に読み始めると、一気に読めた。 自分に自信が無くて、でも人並みに成績は良くて、家族にも恵まれ、友人にもそんなに悪い人はいない。そんな彼女が、小学校から中学生、高校生、社会人になって行く途中の四つのスコーレ(学校)ともいえる、人生の契機を描き、やがて自分のやりたい仕事と愛したい男性を見つけるまでの物語である。 これもヤングアダルト文学の中に入るのだろうか。若い女性が読むと、幾つか発見がありそうだ。等身大のリアルな普通の女性がいる。しかし、一方ではちゃんと王子様を用意しているし、矛盾した言い方だけど、主人公の特異な能力も劇的な展開も用意している。ドラマやマンガの原作だとしても、不思議はない作風なのである。しかも、人間観察は深いのにさらっと描こうとしている。 これが、結局、本屋大賞に選ばれる「今風」の小説なのかもしれない。 2016年10月27日読了
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一人の女性の成長物語。 主人公は3人姉妹の姉で真ん中の妹とは双子かつ妹の顔が良いという結構しんどい状況。 ストーリーとしては、主人公の学生時代及び社会人(商社勤務だが靴屋出向等)時代をさらっている。 親戚の男性を双子とも意識してしまいそれまで仲の良かった関係が壊れてしまう。同じ家に住む上で最悪の状況とも思える。そんな状況をへて大学からは家を出て生活していくが、 働き始めてこれでは駄目だということで妹とも仲直りするところなんかは読み応えがあった。 雰囲気とかは好きだが、いかんせんストーリーが上手く行き過ぎており、もう少し現実感がある物語が読みたい。
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個人的には太陽と豆の軽さが好きだったため、七葉と比べて自分を卑下する主人公のうじうじとした感じが好きではない。けれど読み進めるにつけ成長する主人公の姿には励まされる。社会人になって靴屋で奮闘する3と4が好きだ。
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古道具屋を営む家の三姉妹の長女である主人公。 子どもから思春期を経て大人になっていく過程が えがかえれている。 受動的な印象の麻子が 社会人としての成長を迎えるころに だんだんと能動的になっていく。 それは、とてももどかしてく 面倒な気さえする時間だけれど、 丁寧に育てられ...
古道具屋を営む家の三姉妹の長女である主人公。 子どもから思春期を経て大人になっていく過程が えがかえれている。 受動的な印象の麻子が 社会人としての成長を迎えるころに だんだんと能動的になっていく。 それは、とてももどかしてく 面倒な気さえする時間だけれど、 丁寧に育てられた麻子は丁寧に大人になっていく、 そんな時間のような気がした。 後半は特に面白くて、一気読みでした。 仕事に対峙するときの印象を擬音で表すところ、 「ごりごり」「きびきび」「さりさり」「のんのん」 茅野さんのシャツの色のところ、 「白熱灯の白」 印象的だった。
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