実践行動経済学 の商品レビュー
経済学は、「合理的個人」を前提とし、行動経済学は、「限られた能力しか持たず、感情に突き動かされ、自制に悩む人間」を前提とする。 後期高齢者医療制度などは、「感情による判断が先行」した悪例ではないか。制度への悪評は、導入から一年経てかなり収まってきたという。「保険料が年金から天引...
経済学は、「合理的個人」を前提とし、行動経済学は、「限られた能力しか持たず、感情に突き動かされ、自制に悩む人間」を前提とする。 後期高齢者医療制度などは、「感情による判断が先行」した悪例ではないか。制度への悪評は、導入から一年経てかなり収まってきたという。「保険料が年金から天引きされるのはけしからん、75歳で区切るのは姥捨て山だ」という感情的反感が薄れたためだという。小泉劇場のひとつとして医療改革を感情的に排斥する動き(民主党の保険組合制度を一元化する政策など)が見られるが、『命の値段が高すぎる』(永田宏著)では、感情論を抑えて医療改革の背後に隠された意図に注目せよと警鐘を鳴らす。 (著者の関連議事録、資料を読みこなし、そこから含意を引き出す手法も、直接取材を省きながらも、ジャーナリスティックな筆致が感じられる) さて、本書の主張はこうだ。 「欠陥のある人間は、自由意志に任せたのでは幸福にならず、その人にとって本当にためになることを強制する家父長的政策をとるべきなのではないか」 家父長的選択か、自由意志か・・。本書は、、できる限り選択の自由を残しつつ、人々をよいより選択に導くという中庸の立場を選択した。「学校の食堂で生徒の体によいものを食べさせるには、目に留まりやすいところに置くことだ。食事をランダムにおくことも、食堂からよくないものを排除することも望ましくない」、ユーモラスにエッセンスを伝える本書から、具体的に生活に役立てる方法を学べそうだ。
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