八朔の雪 の商品レビュー

髙田郁(著者)

2010/04/21

高田郁、ということの作者の作品を読んだのはこれが初めてである。アマゾンのレビューの中には宮部みゆきの「初ものがたり」と比べる人も多く、また、藤沢周平などの人情時代小説には遠く及ばない、と厳しい評の人もいた。

しかし、私はす～っと物語の中にすんなり入っていくことが出来、あたたかい気持ちで読むことが出来た。好きな本であり、多分これからも何回か読み返せる本だろうな、と思う。まず、この人の文体が気持ち良い。澪の気持ちがじんわりと伝わってくる、いい語り口なのだ。

そして、描かれる一人一人の登場人物が共感しやすい。種市、澪、それぞれ辛い過去がある。まだ正体が今ひとつわからない小松原も何かといわくがありそうだ。本の最後の方で小松原がもらした言葉を調べてみたが、これだけではよくわからない。

そして、幼馴染の野江ちゃんの話が伏線として描かれる。洪水で裕福な商家だった野江の家族も全員溺れたはずだが、澪は野江の無事を信じていた。そして意外なところで、本の最後で、澪は野江とある形でふたたびつながるのである。このくだりで、私は涙が止まらなくなったのだった。

吉原の風俗、当時の食文化など、この本がどこまで正確に時代考証しているのか、私には正直わからないけれど、とにかく全編からあたたかさがじんわりと伝わってくる作品だった。

読んでいてなんだか懐かしいなあ、この感覚、と思っていたが、読み終わって本を置いて、あ、そうだ、と気がついた。

NHK の朝の連続テレビ小説に雰囲気が似ているのだ(笑)。私が日本にいた頃の連続テレビ小説といえば、たいてい大正から昭和初期に生まれた女性が主人公だった。戦争の苦労を乗り越えて・・・という設定が圧倒的に多かったように思う。

この本は江戸時代の話でこそあるけれど、

* 極端に悪い人が登場せず、主人公はたくさんの思いやりある人々に囲まれている
* 主人公が苦労するのだけど、どこかでいつも明るい未来を信じている

というのが、昔みていたさまざまなNHK連続テレビ小説を思い出させるのである。「チョッちゃん」「はね駒」「あぐり」など・・・。この本はドラマ化したらいいなあ、と思った。もう一度、今度は自分なりに色々配役を想像しながら読んでみるのも楽しそうだ。

2010/04/20

評判どおり、外していない時代小説でした。
人情物に必要な要素は、漏れなく入っている感じです。

キャラクターも立っているし、沁みて来るよさがありますね。

あえて言うと、ただ、ここまで悲劇のてんこ盛りにしなくてもよいのでは・・・
そんなに暗くしなくても・・・
という感想です。

もう少し、あっけらかんとしたところが欲しいです。

2013/05/16

上方出身のヒロインが江戸にいることにより
「上方では」「江戸では」という比較が上手に話に組み込まれている。
出てくる料理が話の中で絶賛されているより、こちら側に《来ない》のは
私の好む味付けが東北方面だからだろうか。
　⇒のちに≪来る≫ようになったので、１巻に出てくる料理との相性だったらしい。

2010/04/20

初めての時代小説作者さん、読むかどうか迷った時は料理をテーマにしたものを読めば他作品まで手を伸ばすかどうかわかるよね、というのが持論(笑)
なぜならばミステリーが得意ではないのでいきなり捕物帖は手を出しづらい（良さがわからないまま挫折することがある）＆人情物が好きで料理をテーマにしたものには大体それが絡んでくるから作品に入りやすいから。

これは当たりでした！
料理人・澪を中心とした人々の人情＋料理ものの時代小説連作短編集。
3作目まで出てるので、続きを購入リストに入れること決定。
読んだ後ほっこりする良い本です。

設定や展開が若干漫画チックにも感じられるので、“骨太”時代小説を求める方には物足りないかも。
「時代小説は敷居が高い」と思っている人にこそおすすめ。
1つ難を言うならば、お腹がすいているときには絶対に読めない！(笑)

2010/04/11

とても読みやすい本です。
時代小説版、少女マンガという感じでしょうか。
時間もかかりません。
寝る前や電車の中にちょうど良いシリーズです。

お料理の話なので、参考になります。
私は今のところ「ピリ辛かつおでんぶ」だけ挑戦！
ごはんのお供にぴったりで、お弁当に大活躍です。

ちょっときゅん、とくる場面もあり…。

時代小説を読んだことがない人にも抵抗なく読めると思うので、
気軽に手に取って頂きたいです。

2010/04/10

ちょっとスケールダウンした｢チャングムの誓い｣かしら？(^ ^;
女性ががんばって這い上がっていく(のか？)とお料理、そして次から次に降りかかる難題！ほらね、チャングム(の前半)でしょ？
褒めてるんですよ～だって私チャングム大好きですもん♪

2011/09/06

うーん、しみじみよかったぁ。何遍も瞼を熱くしながら一気に読んだ。時代小説はあまり読まないので、たなぞうで教えてもらわなかったら出会えなかったわけだ。紹介してくださった皆さん、本当にありがとうございます。次々襲ってくる困難に立ち向かう澪、こんなに応援したくなる主人公も珍しい。周りの人がまたいい。こういうものを読むと、自分も少しだけいい人になれる気がする。

2010/04/10

ストラー一イク！！すごい、スキだ！江戸人情でオチがある程度読めてるのに、泣ける。頻繁にでてくる料理描写はどれも旨そう・・・。しかも巻末にレシピ付。シリーズ３まで文庫化されているから、まだまだ楽しめそう。

2010/04/04

評判が高いので手を出してみました。江戸人情噺に加えて上方と江戸の食の違いなども楽しめます。風物などはあまり書き込まれていないのですが、主人公女料理人による食文化が楽しくまたその真摯な姿勢に泣かされます。シリーズものとしてこの後の登場人物たちも非常に気になる。

2010/04/02

上方から江戸へ出て、女料理人として奮闘する少女・澪の成長物語。
真っ直ぐで一生懸命な主人公がとてもいじらしい。
いろんな困難にぶち当たりながらもめげずに一歩一歩進んでいく様は、読んでいて清々しい気持ちにさせてくれる。
主人公を取り巻く人々も優しさにあふれていて、温かい。
いい人ばっかりの小説だなんて興ざめ、となってしまいそうだけど、なぜかそうはならないんだよなぁ。
適度にいい男たちも出てきて（笑）、王道な展開ながらも非常に楽しめた。