不毛地帯(5) の商品レビュー
「会社は、あと、どうなるのや。」 「組織です。これからは組織で動く時代です。幸いその組織は、出来上がっております。」
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サルベスタン鉱区の国際入札で一番札を取るため、近畿商事の兵藤はイラン国王の侍医であるドクター・フォルジと接触する。 しかし、ドクターとの話し合いがモスクワで行われることを聞いた壹岐は、顔を硬ばらせ、「君には、極北の流刑地で、囚人番号を捺されて、地下数十メートルの暗黒の坑内で、鶴嘴...
サルベスタン鉱区の国際入札で一番札を取るため、近畿商事の兵藤はイラン国王の侍医であるドクター・フォルジと接触する。 しかし、ドクターとの話し合いがモスクワで行われることを聞いた壹岐は、顔を硬ばらせ、「君には、極北の流刑地で、囚人番号を捺されて、地下数十メートルの暗黒の坑内で、鶴嘴を持って使役された人間の苦しみが解るか!」と激昂した(ドラマのこのシーンの唐沢寿明さんがすごくよかった!)。 結局、近畿・オリオングループが3,990万ドルという高値で落札に成功するが、それから3年8ヶ月、三号井(さんごうせい)まで掘り進めても油は一向に出ない。 続く四号井も廃坑になり、壹岐が資金調達に奔走する中、大門社長が棉花相場で46億円もの損を出していることが明るみになる。 この損失の責任を取るべく、壹岐が棉花部長の伊原に進退伺いを出させたところには、組織の厳しさがありありと描かれている気がした。 五号井で大油田の発見に成功したのを花道に、壹岐は大門に勇退を勧める。 しかしそれは、社長の座を取って替わろうとするためではなく、自分に第二の人生を与えてくれた大門社長と企業の発展を思ってのことだった。 近畿商事を辞め、朔風会の仕事に第三の人生を尽くすことにした壹岐が、シベリアの白い大地を見て涙を流す最後のシーンに目頭が熱くなった。 全五巻、3,000ページにおよぶこの一大巨編を書くのに、山崎豊子さんはいったいどれほどの取材を行ったのだろう? 僕にとって、これまでに読んだ小説の中でまぎれもなく質、量ともにナンバー・1の傑作だった。 壹岐正という1人の孤独な男の姿を通して、今も人々の心に残る戦争の傷痕と熾烈な商戦の実態を知ることができ、本当によい小説に巡り会えたと思う。
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各約600ページの全5巻、圧倒されながら読了することができました。 この最終章では、社長退陣を直接進言し、自らも辞表を提出する・・・男でした・・・主人公の壹岐正。 シベリヤ拘留11年と商社に入っての16年間、真に正しいと信じることへ踏み出す強さ。 私欲を捨て、社会の闇の部分に抗...
各約600ページの全5巻、圧倒されながら読了することができました。 この最終章では、社長退陣を直接進言し、自らも辞表を提出する・・・男でした・・・主人公の壹岐正。 シベリヤ拘留11年と商社に入っての16年間、真に正しいと信じることへ踏み出す強さ。 私欲を捨て、社会の闇の部分に抗いながらも、「国益」にひたむきに突き進む強さ。 我々が持たなければならない「真摯さ」に溢れる「不毛地帯」・・・良かったです。
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権力闘争は肥大化した組織の弊害としてよく取りあげられるが、その混乱具合はワンマン社長が退任する場合はなおさらだろう。壱岐正のように潔い引き際を見せてくれる人物は、今の日本にはそういないだろうな。
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☆☆☆$$シリーズ最終巻。ドラマを見ていたので、イメージしやすかった。$$ドラマ同様面白い。$$主人公の壮絶な生き方に感銘を受けた。
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いよいよ最終巻。 壹岐が商社マンとしての全てをかけた油田開発に結果が下りる。 そしてその後は・・・最後まで目を離せず、一気に物語は結末へ向かう。 全5巻約3,000Pに及ぶ圧倒的なボリュームに疲れたというよりも、 常に凄まじいプレッシャーの中に身を置いていた壹岐に対して、 共感...
いよいよ最終巻。 壹岐が商社マンとしての全てをかけた油田開発に結果が下りる。 そしてその後は・・・最後まで目を離せず、一気に物語は結末へ向かう。 全5巻約3,000Pに及ぶ圧倒的なボリュームに疲れたというよりも、 常に凄まじいプレッシャーの中に身を置いていた壹岐に対して、 共感しての疲れが読了後に残るが、 山崎豊子らしいスケールの大きさが、読者に心地よさを与える小説だった。 機会があれば、ドラマもみたい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
あとがきにさりげなく、取材が大変だったと書かれているけれど、実務として、商社のビジネスを経験していない人が、こんなに細かくわかるのか?現場の人に取材するにしても、基本事項をどう理解していったのか?など、想像できないことが多く、それだけにこの作品を書き上げたことのすごさを感じる。 商社のことは知らないから、どのくらい実際の業務と近いのかわからないが、知らない世界の一面をかいま見られたという意味でも面白かった。 地位や名誉のために仕事をする人ってやはり多いのでしょうと、つくづく感じる。本心は「会社のため」かどうかわからないけれど、そういう建前で仕事をしている人を見ていて、自分にはなれないと実感を強めてしまう。
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5巻組で、全く飽きない! まだ読み始めたばかりの5巻だけど、これまでの四冊の栄誉を称えて先に☆五つです →その後… 納得の読後感です!
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5巻…でも短かったように感じました。 不毛地帯という題名が印象的です。 不毛… ・土地がやせていて作物や草木が育たないこと ・なんの進歩も成果も得られないこと この話の中では、シベリア(での抑留)とイラン(での石油開発)が不毛の象徴として描かれているようですが… よく考えて...
5巻…でも短かったように感じました。 不毛地帯という題名が印象的です。 不毛… ・土地がやせていて作物や草木が育たないこと ・なんの進歩も成果も得られないこと この話の中では、シベリア(での抑留)とイラン(での石油開発)が不毛の象徴として描かれているようですが… よく考えていると、私たちの周りは不毛なことだらけな気がします。 しかし、作品を通して、 『“進歩や成果が得られなくても”すなわち結果が出なくても、 途中でやめてしまえば何をも成し遂げられない』 ということを示されている気がします。 私ももう少し根気よく頑張ってみようと思いました。
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