不毛地帯(5) の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
副社長となった壹岐が参謀としての自身の経験を活かし、商社での最後の仕事と決めていた油田開発を成功に収めたが、それを機に社長の大門とともに綺麗さっぱりと退く。それにしても著者の原油採掘の手順の詳細な記載はすごいの一言。あとがきには377名への取材をもとにしたとの著者の言葉があるが、だからこそ小説とはいえ真に迫る描写が可能なのであろう。
Posted by
まさかの大門社長の老いに感慨深かった。素晴らしい経営者であっても、いつかは老い、そして迷走するというところに残酷さを感じつつも、現実とはそういうものと実感させられた。 最終的には主人公が救われる形に昇華されたことで気持ちも落ち着いた。 名作
Posted by
かなりの長編であるが非常に読み応えがあり面白かった。巻末にシベリアから始まる白い不毛地帯と石油開発で終わる赤い不毛地帯と表現されているが、主人公の壱岐のように不毛でありながらダイナミックな人生を生き抜く様に心を打たれた。第三の人生に幸多からんことを願うと共に今日の日本を築き上げて...
かなりの長編であるが非常に読み応えがあり面白かった。巻末にシベリアから始まる白い不毛地帯と石油開発で終わる赤い不毛地帯と表現されているが、主人公の壱岐のように不毛でありながらダイナミックな人生を生き抜く様に心を打たれた。第三の人生に幸多からんことを願うと共に今日の日本を築き上げてきた先人達に感謝したい。
Posted by
1巻の絶望的なシベリア抑留から一転、日本の商社に身を置くと、戦闘機の買付から日米自動車メーカー同士の合併工作を経て、ついにはイラン石油開発へと、物語のスケールとその振り幅がとにかく規格外で、最後までストーリーにぐいぐい引き込まれっぱなしだった。 若かりし頃のデヴィ夫人がモデルの...
1巻の絶望的なシベリア抑留から一転、日本の商社に身を置くと、戦闘機の買付から日米自動車メーカー同士の合併工作を経て、ついにはイラン石油開発へと、物語のスケールとその振り幅がとにかく規格外で、最後までストーリーにぐいぐい引き込まれっぱなしだった。 若かりし頃のデヴィ夫人がモデルの紅子や、ライバル商社の鮫島などの超個性的脇役達も人間味が溢れていて最高! 壮大な物語の一番最後に、壱岐がバッタリ出会うある意外な人物とのやりとりに、山崎豊子さんの大阪人らしいサービス精神がちょっと見えて笑えた。 山﨑作品は大抵読んできてるつもりだったが、こんな大作をまだ残していて、それに今やっと出会えたことに素直に感激できた。 2024.04.24読了
Posted by
『不毛地帯』第5巻。 近畿商事・副社長となった壱岐正。 商社マン最後の仕事として、イランでの油田採掘に奔走する。 先手を打つも、政界、競合からの巻き返しにより、独立系石油メーカー・オリオンオイルとの共同で入札に挑むことに… なんとか、採掘権を得たものの、第4井まで石油の出る...
『不毛地帯』第5巻。 近畿商事・副社長となった壱岐正。 商社マン最後の仕事として、イランでの油田採掘に奔走する。 先手を打つも、政界、競合からの巻き返しにより、独立系石油メーカー・オリオンオイルとの共同で入札に挑むことに… なんとか、採掘権を得たものの、第4井まで石油の出る兆しはなく、窮地に… 一方、社長・大門は綿花相場で莫大な焦付きを抱えていた… 壱岐の見事な商社マンとしての生き様だった。 異例の昇進に対する周りからの嫉妬にも臆せずに自分を貫き通した、壱岐の強さ。 『国家のために』を判断基準とし、最初は大本営参謀として、第2の人生では、近畿商事の企業参謀として、常に戦いの中に身を晒してきた。 自らの人生も、家族との生活も犠牲にして… 最後まで、壱岐の心の内は誰もわからなかったのではないだろうか… 口下手なところも災いして… 大門に社長辞任を迫り、自らも副社長を辞任、近畿商事を退職。見事な自らの身の処し方であった。 第3の人生で、ようやく安らぎの時を迎えられるのか… 千里との人生が始まるのだろうか… 長かった…が、面白かった。 山崎豊子作品でNo.1だった。 まだ『華麗なる一族』は読んでいないが…
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
田淵幹事長…一体誰がモデルなんだ…(笑) 5巻はずっとイランのサルベスタン石油の話、千代田自動車が後味悪かった(最終的にはめでたしになるんだけど)のに対してこちらは小気味よく進んでいく。裏のえげつない部分もFXと比べたら露骨でない(と言うか露骨に見せていない?)ので読みやすい。 でもせっかく苦労して掘り当てた石油も数年後にはイラン革命で全部おじゃんになっちゃうんだよね。山崎豊子がこれ書いていた時期もギリギリイラン革命前だしなんとも複雑な感情を抱く。 最終的に大門社長の引退と同時に壹岐も会社を去り、シベリアで物語は終わる。千里とはおそらく結婚したんだろうけど、安易なハッピーエンドにせずあそこで切るのが山崎豊子といった感じ。それでも華麗なる一族や沈まぬ太陽に比べたらずっと後味はいい。
Posted by
最終巻が一番おもしろかった。先が全然読めなかった。 それでいて、この巻が一番、読む前の期待に近いものが描かれていた。 でもやっぱり取材は大変だったんだな、とあとがきを読んで思った。こんな大舞台の小説、どうやって取材して書いたんだろうとずっと思っていたけど。 取材先は女の旅は不可...
最終巻が一番おもしろかった。先が全然読めなかった。 それでいて、この巻が一番、読む前の期待に近いものが描かれていた。 でもやっぱり取材は大変だったんだな、とあとがきを読んで思った。こんな大舞台の小説、どうやって取材して書いたんだろうとずっと思っていたけど。 取材先は女の旅は不可能な国ばかりだった、みたいなことを書かれておられたが、そういう意味ではハンデ背負っての取材だったんだなぁ。 簡単にジェンダーでくくるのは物事を単純化するようでよろしくないけど、でも、この作品を大正生まれの女性が書いた、というのはやっぱり私には偉業としか思えないな。女なんて何も知らなくていいんだ、と言われて脇においやられていた時代によくまあ、ゴッドファーザー的苦渋に満ちた男の世界をこんなにもリアルに描き出したものだと思う。 でも、主人公に対して容赦ないところ(最後の仕事だけは悔いがないように清く仕事したい、という希望を簡単に打ち砕くあたり)、女性ならではの容赦のなさも感じるような。 男性作家はもうちょっと主人公に甘い気がするなぁ。 しかし、秋津千里は最後まで違和感ありまくりのキャラだった。なんでこの人は関西弁じゃないのかしらん。 あんな喋り方の京女はいませんよ。 っていうか、考えてみたら、大門と秋津千里のやかましい系のおじさんしか関西弁しゃべってない。 ガサツ系、KY系なおっさんにしか関西弁をしゃべらせてはいけない、みたいな謎ルールがこの時代の文壇にあったんだろうか。 この本に限らず、関西が舞台なのに、なぜかヒロインは標準語を貫く、みたいな昔の小説、わりとあるような気がします。 ちなみに、壹岐は最後まで彼氏としては最悪の男で、アンチ秋津千里な私もさすがに彼女に深く同情した。 山崎さんてば自分のキャラに厳し過ぎじゃね?と思った。
Posted by
熱意が油を吹き上がらせ、恩人であるはずの社長に退陣を迫る最終巻。 シベリアの墓詣でを照らすオーロラは歓迎しているのかそれとも。 圧巻の計約3000頁。
Posted by
長編のラスト一巻。途中、ペースダウンして2ヶ月かかりました。モヤモヤした部分がすべて解決して、スッキリした。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
不毛地帯最終章。 長かった主人公の商社マンとしての第二の人生が終わりを告げる。 社運をかけた中東のオイルビジネスはどうなることかとハラハラさせられたが、結果的に物凄い量のオイルが見つかり、会社に多大な利益をもたらすことになった。 主人公は社内で更に評価を上げる。 他方で、大門社長は相場で莫大な損失を出す。 年のせいで判断能力は衰えているのに、本人は現役のままでいるつもりだから、周囲の意見に全く耳を貸さない。これぞ老害。 社長の存在は会社にとって、もはや邪魔であると判断した主人公は社長に辞任を迫る。 最初は納得しなかった社長も徐々に諦め、主人公と一緒に会社を去る。 オイルビジネスが成功した、まさに絶頂の時に会社を去った社長は、世論から高く評価され、結果的に会社のため、社長のためになった。 主人公は、誰のためでもなく、常に会社の利益になることを最優先に考え、行動してきた。 そして、社長とともに会社を去った主人公は、第三の人生をシベリアに求める。 シベリアで亡くなった同志たちの遺骨を日本に持ち帰ることを今後の活動にすると決意する。 ずるずると中途半端な関係になっていた恋人とも別れることになる。 この小説のモデルとなった人物は伊藤忠の会長まで登り詰めるから、現実とは異なるけど、あくまでも事実をもとにしたフィクションということで、これはこれで面白かった。
Posted by