不毛地帯(5) の商品レビュー
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非常に良作。最後まで見事でした。 油は出るのか出ないのか。このハラハラ感、ぐいぐい読ませること必至。「不毛地帯」というタイトル通り、不毛な結果に終わるのかーーそう思ってたところで、ついに出た時は思わず涙したほど。 また有能な経営者が老害となっていく様は見苦しかった。 大塚家具の会長を想起したのだけど、時代に取り残される前に自分を客観視して、自らの身の振り方をちゃんとプロデュースする必要があるのだなと。 壱岐正のように才能があって頭が切れても、罪悪感、背徳心を拭い去れない人間には熾烈な政財界で生きて行くのは難しい。 でも潔くその世界から去れる者もなかなかいないと思う。 壱岐正の生き様かっこよすぎでしょ。畏敬の念を感じる。どこまで実在したモデルの人物に則しているのか気になる。 この作品もどんな取材量を持って書かれたのか。想像だにできない。 全日空の旅客機選定を巡るロッキード事件、FXに絡むダグラス・グラマン事件をモデルに描かれたのかと思いきやこれらの事件が明るみになる前に描かれたそうで。。 もはや小説家の域を超えてるでしょうよ。。
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石油採掘権の入札に成功するも、石油は出ない苦しい時期が続く。会社を長年引っ張ってきた社長も、その圧倒的な存在感が害をなすように・・・。 最後まで、主人公には厳しい状況が続くが、最終的には華々しい成果を挙げ、それでいて身を引くという潔さでもって物語が終わる。 全5巻。本当に大作でした。 不毛地帯というタイトルはひとつには当然シベリアの大地を指していますが、同様に、何も実るものがない熾烈な商戦を表しているはずです。 国のため、家族のため、自分の欲望のため、不毛地帯で闘い続ける人たちの物語でした。 主人公は、登場人物の中では、人間として理想的な書き方をされていますが、それでも黒い部分や闇とは切り離せない。決して救われることのないエピソードと、ひょっとしたら救いになる可能性を秘めたエピソードが混在する、さっぱりとは割り切れないものです。 ほかの登場人物も、清い面も濁った面もあり、これこそが人間であるというものを深く描いている。 正解は提示されていないけれど、不毛かも知れない闘いのなかで、自分はどう生きるか、それを強く問う名作でした。
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「戦争三部作」と聞き、今まで手に取るのを躊躇っていたが、読み始めると一気に読破。前半の哀しくも驚きに満ちたシベリア抑留の実態も想像を絶する内容であったが、最後の主人公の姿には、清々しさと同時に現代に生きる我々に勇気をももたらしてくれるストーリー展開であった。「組織とは、何か。」、...
「戦争三部作」と聞き、今まで手に取るのを躊躇っていたが、読み始めると一気に読破。前半の哀しくも驚きに満ちたシベリア抑留の実態も想像を絶する内容であったが、最後の主人公の姿には、清々しさと同時に現代に生きる我々に勇気をももたらしてくれるストーリー展開であった。「組織とは、何か。」、山崎豊子氏が問い続けていたであろうこの命題は、この小説の中にも貫かれている。
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イランの油田問題に片が付き、自動車問題もおさまるところにおさまった。社長に引導を迫り、自分も退社。恋人とは別の道を行くことになり、朔風会の会長となりシベリアへ向かう。里井の病気はどうなるのか、恋人の兄は? そのあたりは解決されていないが、物語のケリはちゃんとついた。執筆前からここまでの落としどころを考えた上で書いたことは彼女のインタビュー内容から間違いないところだろうけど、毎回みごと。途中中だるみな感じがしていたが、スパイ小説のようなスリリングな展開には引き込まれた。ただ最後の最後まで主人公には感情移入できなかった。暗い影がつきまとっていすぎて、濡れ場のシーンは鼻白んだ。それに次々と登場人物が身体をこわすのにぞっとした。人生って辛いなあ。でも生きていかなきゃならない。
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会社の先輩に薦められて読んだ長編小説。 こういう小説は普段なかなか読まないから、新鮮だった。 シベリア抑留時代の暗くて凄惨な過去を背負いながら、第二の人生を商社マンとして生きることを選んだ主人公。 仕事に生きる男性の姿って、あまり身近に感じたことがなかったから、彼と、彼を取り巻...
会社の先輩に薦められて読んだ長編小説。 こういう小説は普段なかなか読まないから、新鮮だった。 シベリア抑留時代の暗くて凄惨な過去を背負いながら、第二の人生を商社マンとして生きることを選んだ主人公。 仕事に生きる男性の姿って、あまり身近に感じたことがなかったから、彼と、彼を取り巻く人々のストイックさには驚かされるばかり。 商社の仕事の楽しさって理解できなかったけど、きっとこういう風にビジネスを作り出していく所にあるんだろうなぁ、というのが実感できた。 (共感はできないけど…) 最後のシーンは感動のひとことに尽きる。
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長かった物語もついに最終巻。 壱岐は泥沼のような商社の仕事にどっぷりと浸かってしまい、秋津千里との結婚にも踏み切れない中、商社マンとして最後の仕事に挑む。 この巻の最大の見どころはやはりラストシーン。 石油事業、自動車事業を成功させた壱岐がどうなるのか!?というのが気になるとこ...
長かった物語もついに最終巻。 壱岐は泥沼のような商社の仕事にどっぷりと浸かってしまい、秋津千里との結婚にも踏み切れない中、商社マンとして最後の仕事に挑む。 この巻の最大の見どころはやはりラストシーン。 石油事業、自動車事業を成功させた壱岐がどうなるのか!?というのが気になるところだろう。 長い長い物語が終わった。
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この小説は、昭和48年から53年にかけて書かれている。シベリア抑留に続き、最初の商戦となるFXを巡った死闘を読みながら、これは全日空の旅客機選定を巡るロッキード事件、そしてまさにFXに絡むダグラス・グラマン事件を取り上げたものだとばかり思っていた。しかし、両事件ともこの小説の連載...
この小説は、昭和48年から53年にかけて書かれている。シベリア抑留に続き、最初の商戦となるFXを巡った死闘を読みながら、これは全日空の旅客機選定を巡るロッキード事件、そしてまさにFXに絡むダグラス・グラマン事件を取り上げたものだとばかり思っていた。しかし、両事件ともこの小説の連載が始まって後に明るみになったという。そうならば、巻末の解説にあるように、まさに事件の予見に違いない。著書が、社会の闇に隠されている問題をいかに正確に取材されていたかが伺い知れる。
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ハッピーエンドで良かった。 白い巨塔も華麗なる一族も、主人公死にますからね。 壹岐正もちょいちょい人の恨みを買ったり、不正に手を染めたり、最後に転落するのかなというフラグがあったのですが、、、 里井や大門に退陣を迫るあたり、この人も除々に権力に取り憑かれてきたのかと心配になったが、やはり壹岐正は壹岐正だった。 優秀だった大門が老いとともに老害をまき散らすあたり、現実社会でもそうなのかな。。。
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社会の、企業の商売における現実に出会う作品だった。泥臭い商売における駆け引きを通して、企業のコンプライアンスが蔑ろにされていることが浮き彫りになっている。特に、一度国を率いて戦い、その代償に身を捧げた壱岐が主人公である点が興味深い。企業の発展に黒い部分を残したのなら、それなりの責...
社会の、企業の商売における現実に出会う作品だった。泥臭い商売における駆け引きを通して、企業のコンプライアンスが蔑ろにされていることが浮き彫りになっている。特に、一度国を率いて戦い、その代償に身を捧げた壱岐が主人公である点が興味深い。企業の発展に黒い部分を残したのなら、それなりの責任の自覚と対処なくして本当の繁栄はないのだろう。
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主人公の壹岐正の誠実に生きるという強い筋の通し方に行き過ぎ感も感じましたが、誠実に生きているとは言い難い私は、この本を読み終わって、もう少し誠実に生きる人生もかっこいいかな?と、若干影響を受けました。 全体を通して、中間は中だるみを感じていまいち面白く有りませんでしたが、第四ク...
主人公の壹岐正の誠実に生きるという強い筋の通し方に行き過ぎ感も感じましたが、誠実に生きているとは言い難い私は、この本を読み終わって、もう少し誠実に生きる人生もかっこいいかな?と、若干影響を受けました。 全体を通して、中間は中だるみを感じていまいち面白く有りませんでしたが、第四クオーターは興味を持って一気に読めました。 人によっては人生を若干充実したものに変える可能性があると思われるので、オススメです。
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