子どもの貧困 の商品レビュー
大学の先輩に薦められて読んだ本。その人は教育に関心があり、自ら行動を起こそうか悩まれている。 筆者本人が貧困についての納得のできるデータを示したいというように、データがとても充実しており、日本の子どもの貧困を語るのにはほとんど事欠かないだろう。 そのデータは多くの示唆に富む結...
大学の先輩に薦められて読んだ本。その人は教育に関心があり、自ら行動を起こそうか悩まれている。 筆者本人が貧困についての納得のできるデータを示したいというように、データがとても充実しており、日本の子どもの貧困を語るのにはほとんど事欠かないだろう。 そのデータは多くの示唆に富む結果を示しており、特に日本人は、誰にでも与えられるべきと考えるものが海外に比べてとても少ないというのは印象的だった。 外国人と比べて最初から差が有って当然と考えているのかもしれない。そしてそれは足るを知るという意味では幸せに近い態度のような気がする。 しかし、だからといって貧困を放置して良いとは思わない。貧困削減は幸せのためではなく、機会の保障のためだと思う。不幸だと感じていないからといって機会の保障をしなくていいとは思わない。 ところが、1点だけ、そしてこれは貧困のかなり本質的な部分だが、気になるのは相対的貧困、それも日本国内におけるものはどれほどのイシューなのかという点だ。 日本国内では大きな政治的イシューになるのだと思うが、客観的に世界の問題は何か、という観点で捉えるとたいしたイシューでないように思える。 もちろん学力や貧困が階層によって固定化されるのは望ましくないのかもしれないが(これも逆の因果関係を主張する余地は依然としてあると思うが)、あくまで国内の基準に照らした話。 筆者の言うような全ての絶対的貧困が相対的貧困であるという主張は違うのではないかと思う。例えば基本的人権のような、そこには何らかの絶対的な基準を設けることは可能であるし、そうしないと解決すべき問題の優先順位が曖昧になってしまう。たとえ、その基準が時代によって変わることはあるとしても。 貧困の解消と機会の均等は全く別の議論であってしかるべきだろう。
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「格差」という言葉でしか語られない日本の貧困問題。 やっぱり総中流神話が浸透している日本社会では「貧困」という言葉は受け入れられにくいのかな。 私の友達の中には、「日本は豊かだからそんなに心配しなくていい、それより海外に目をむけなきゃ」という人が割と多いですが、日本の貧困問...
「格差」という言葉でしか語られない日本の貧困問題。 やっぱり総中流神話が浸透している日本社会では「貧困」という言葉は受け入れられにくいのかな。 私の友達の中には、「日本は豊かだからそんなに心配しなくていい、それより海外に目をむけなきゃ」という人が割と多いですが、日本の貧困問題ももはや目をそむけられない段階まできていると思います。 もちろん日本に存在する貧困の大部分は絶対的貧困ではなく相対的貧困やけど、だからといって見過ごせる問題ではない。(ここでは書かないけど、異なる社会同士を比べて片方を貧しいということに関しては限界がある) 機会の均等というのも神話でしかなく、アンダーグラフの言葉をかりれば「生まれたら既に勝ち組(負け組)」という状況が生まれてきている。 この本では様々なデータを元に、日本の子どもに対する社会保障の弱さを他のOECD諸国と比較しながら述べています。 一番衝撃的やったのは、日本においてはOECD諸国の中で唯一、政府による所得再分配前と再分配後では、分配後の方が貧困率が上昇しているという事実です。 つまり、貧困削減や所得格差の是正のためであるはずの日本の所得再分配は貧困・格差を助長しているのです。 これでは何のための政策なのかわからない。 子どもへの援助も「広く・浅く」しか与えられず、しかも親の雇用も不安定化している中で、今後子どもの貧困を削減していくには抜本的な福祉政策の改革が必要だと思われる。 そのために、もっと各政党は子どもの貧困問題に目を向けて欲しいし、そのためにも国民の意識も向上しなければいけない。 データ分析が多くて少々小難しい本やけど、広く読まれてほしいなと思う1冊でした。
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『すべての子どもが享受すべき最低限の生活と教育を社会が保障すべきである』ということに尽きる。そんなことを考えてもないようなこの国で子育てするのが嫌になった。
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途中で断念。データ的なものが多いけど、 やはり著者もいっているように(?)、 データから見えないものを見たい。
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これは非常によかった。読み応えアリ。考えさせられる内容が多かったというか、何を考えるべきなのかがよくわかった。「子ども手当」なんて、バラ撒いても駄目なんです。
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子供は生まれてくる家を選べない、という点からして、すでに不幸。、貧困の連鎖は政策で断ち切らないと・・・という提言の本。著者の知性・慎ましさ・プロ根性が見える、いい本。
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日本の人生におけるスタートラインの不公平さについて考えさせられました。 スタートラインは違っても自分自身の努力で補えば、追い越せばそれでいいなどと考えていましたが、しかし、もし“未来すら望めない家庭環境”だったら? 「格差」や「機会の不平等」をいたしかたないものと放っておくのでは...
日本の人生におけるスタートラインの不公平さについて考えさせられました。 スタートラインは違っても自分自身の努力で補えば、追い越せばそれでいいなどと考えていましたが、しかし、もし“未来すら望めない家庭環境”だったら? 「格差」や「機会の不平等」をいたしかたないものと放っておくのではなく、せめて努力である程度その差を縮められるようにしなければならないと思います 親のモラルと子供は関係がなく、子供に直接向けた政策が必要なのでしょう。
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著者は私の大学時代の恩師と同じアメリカのタフツ大学フレッチャー法律外交大学院で博士号を取得された後に国連に進んだ女性で、現在は国立社会保障・人口問題研究所の国際関係部第2室長をつとめられている方です。 引用されているデータの豊富さはこれまで読んできた新書の中でもずばぬけて多い...
著者は私の大学時代の恩師と同じアメリカのタフツ大学フレッチャー法律外交大学院で博士号を取得された後に国連に進んだ女性で、現在は国立社会保障・人口問題研究所の国際関係部第2室長をつとめられている方です。 引用されているデータの豊富さはこれまで読んできた新書の中でもずばぬけて多いと感じます。そのデータから読み取れる数値的な表層部分と、そのデータの奥にひそむ実際的深層の両方をうまくえぐり出すことにこの本は成功していると思います。昨今の格差をめぐる議論は聞き及んでいたもののそれが子どもという年少の世代にどのような影響を与えているかを知る機会のなかった私にとっては、現代日本の暗部にようやく光が当たったと感じさえしました。 一億総中流をばっさりと否定し、その名残で日本人が目をつむってきた「あるはずない」と考える多くの人に厳然たる貧困の存在を突きつけられます。しかし問題の所在を認めない限りは、生活に苦しみ人々を思った行動を起こすことなど出来る筈もありません。その意味ではこの本は人の前を醒まさせる強い薬とも言えるかもしれません。だからこそ世界水準からみた経済力を理由に立ち直れるとも思いがちなところに、「そんなまさか!」と思われる相対的貧困状態の「世代間連鎖」という衝撃的な言葉にも現実感が伴っています。 子どもの17人に1人は母子家庭で育つ、という自分が今まで知りえなかった事実にも目を大きくします。私には母子家庭に対して、10代結婚した後に離婚した若い母親と子供というイメージがありましたし、実際そのような方が仕事場にもいたことがありました。しかし、実際母子家庭の母親の平均年齢は40歳であり、それには晩産化が影響していることも知ることができました。そこに現在の労働市場の流動化や正規・非正規間の不平等な取り扱いや賃金格差の視点を持ち込めば状況の深刻さも理解しやすくなります。 日本では成り立っていない養育費の徴収については、多くの先進諸国で制度化されており、税金の支払と同様の感覚で養育費が支払われている事例も紹介されており、日本人自身に社会制度を支え合う意識の欠如を問うている一面も垣間見えます。給食費未払いの問題も一部の親をモンスターペアレントとして描き報じるメディアへの一方的な情報依存をただし、相対的貧困層がその支払いに苦慮する社会状況まで深堀りできる視点の必要性を説いています。 今月末にある総選挙でも子育てや生活支援は大きな柱です。しかし、著者は社会保障制度や税制度によってOECD諸国の中で日本だけが受給後に貧困率が上昇しているという反作用的調査結果を持ち出しています(P.96)。システム全体の再構築が要求されていることは確かです。少子高齢化を嘆いていても改善しないので冷静に事実を認めて、より弱者救済を社会成立の根幹とできるために知っておくべき情報がこの本には詰まっています。
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統計学的な本でした。 日本の政策が、いかに「スタート時点での格差」を黙認しているか。 ただ社会正義を振りかざすのではなく、このような統計的手法で示すことは、とても重要であると思います。 ただ、統計というのは恣意的な客観だと思うので、★は3つ。
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「実際には、子ども期の生活の充足と、学力、健康、成長、生活の質、そして将来のさまざまな達成(学歴、就労、所得、結婚など)には、密接な関係がある。その関係について、日本人の多くは、鈍感なのではないだろうか。」 ほんっっっとうに、その通りなんだと、この本を読んで改めて思わされあった...
「実際には、子ども期の生活の充足と、学力、健康、成長、生活の質、そして将来のさまざまな達成(学歴、就労、所得、結婚など)には、密接な関係がある。その関係について、日本人の多くは、鈍感なのではないだろうか。」 ほんっっっとうに、その通りなんだと、この本を読んで改めて思わされあったのであります。 貧困って、子どものもそうだけれど、日本人の貧困って普通の生活を送っている人たちにとっては本当に他人事なんだなぁとつくづく感じた。 でも、それって国というか政治ががそうだから国民もそうなってしまうんだろうと、本を読んでいてわかった。 あまりにもお粗末すぎる、日本の政策。筆者の言わんとすることは最もだ。 特にこの本では経済面の施策について言っているのだけれど、もちろんそれだけじゃダメだ。 フィジカルな部分とメンタルな部分、両方のケアが急速に必要。 と言っても、憂えるこの現状。 まずは、一人でも多くの人が日本でも子どもがこんなにも貧困状態にいるということを知らなくてはならないと切に思う。 【4/22読了・初読・大学図書館】
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