子どもの貧困 の商品レビュー
子どもの貧困について、客観的なデータをもとに論じられている一冊。 2008年に出版されている本なので、データはやや古いですが、わかりやすく整理されているため、基本的なポイントを押さえるのにとても助かる内容でした。 子どもの貧困と、学力、健康、家庭環境、非行、虐待の関係が、デー...
子どもの貧困について、客観的なデータをもとに論じられている一冊。 2008年に出版されている本なので、データはやや古いですが、わかりやすく整理されているため、基本的なポイントを押さえるのにとても助かる内容でした。 子どもの貧困と、学力、健康、家庭環境、非行、虐待の関係が、データとともに示されています。 大人たちが「子どもにとって最低限必要だと思うこと」の調査で、学習の機会や医療保障についての項目が私の予想よりもはるかに数値が低かったことに驚きました。 日本の大人が子どもを見る目の厳しさ、、それくらいは仕方ない、我慢すべきだ、とする姿勢に、調査に答えられた方ご自身の辛さの経験や生活の余裕のなさを想像しました。 経済的な問題、社会保障についても、もっと勉強しなくてはと思いました。
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「子どもの貧困」という言葉を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。OECDが2006年に報じたところによれば、2000年の時点で、日本の子どもの相対的貧困率は14%であったといいます。同時に、この数値が、OECD諸国の平均に比べても高いこと、母子世帯の貧困率が突出して...
「子どもの貧困」という言葉を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。OECDが2006年に報じたところによれば、2000年の時点で、日本の子どもの相対的貧困率は14%であったといいます。同時に、この数値が、OECD諸国の平均に比べても高いこと、母子世帯の貧困率が突出して高いことが指摘されました。これは、大きな衝撃を持って受け止められ、日本の報道でも多く報じられました。 本書は、このような「子どもの貧困」について、数量的なデータをもとに、その実態を分析した良書です。中でも、これまで日本においてあまり焦点の当たることのなかった、「母子世帯における貧困の実態」を、データを用いて実証的に示した点に、功績があると言えます。 ところで、「貧困」と聞くと、モノが溢れていて、みんなが義務教育を受けることができている今の日本には、全く関係のないことのように思うかもしれませんし、今日の日本において、それがどのような状態を指すのか、イメージしにくいところがあるかもしれません。本書では、そのようなともすれば曖昧になってしまう「貧困」という概念を、データを用いて定義し、なぜ貧困であることが問題となるのか(貧困研究の問題の所在)、生活のなかで貧困はどのように現れているのか(貧困の実態)、子どもの貧困にたいして政策の観点からどのような対策を講じていけばよいのか(貧困への対策)について論じています。 新書でありながら、ボリュームたっぷりの内容で、一読の価値アリです。本書を通じて、「子どもの貧困」が、決してごく一部の特殊な現象ではなく、すべての人の身近にある問題だと気づいてもらえたらと思います。 (ラーニング・アドバイザー/教育 SAKAI) ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1333240
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母子家庭の貧困というニュースを目にする機会が増えてきたので、興味をもって手に取った。この本が書かれたのは2008年、どれだけ自分の目が開いていなかったのかがよくわかる。少子化対策がさらに取り沙汰されるようになったが、それ以前に子供の貧困は許容できないものであり、撲滅しなければなら...
母子家庭の貧困というニュースを目にする機会が増えてきたので、興味をもって手に取った。この本が書かれたのは2008年、どれだけ自分の目が開いていなかったのかがよくわかる。少子化対策がさらに取り沙汰されるようになったが、それ以前に子供の貧困は許容できないものであり、撲滅しなければならない。 この本は精緻に貧困の定義の測り方、日本と世界の比較から語る。そして日本の政策、母子家庭の経済状況、学歴社会における貧困の不利をデータで示す。さらに、子供の必需品とはなにかもデータで示すことで、より具体的な貧困の姿を目に見えるようにしてくれる。 この子供の必需品とは何か、で明らかになる世間の認識がまたすごいものだ。世間的に50%以上が必需品と考えるものが与えられていない状態を剥奪された状態として、貧困の具体的な姿を描くものとしてアプローチした結果、日本ではそもそも子供の必需品として考えるものが少なすぎるのだ。おもちゃも誕生日のお祝いもクリスマスプレゼントも、大学までの教育も、お古でない靴や文房具も、一年に一回遊園地や動物園に行くことも、与えられなくても仕方がないと認識されているのだ。なんて悲しい社会なんだろう。そんな子供の姿をしょうがないとして許容することはあり得ないと思う。
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貧困になっている子どもが増えているということで、様々なデータを提示しながら、その原因を探ったり、特に貧困の子どもが多い母子世帯の状況を紹介したりなど。かなり勉強になった。中でも、相対的剥奪という概念が面白かった(元の概念はイギリスのタウンゼント氏による)。確かに 何が貧困かは他の...
貧困になっている子どもが増えているということで、様々なデータを提示しながら、その原因を探ったり、特に貧困の子どもが多い母子世帯の状況を紹介したりなど。かなり勉強になった。中でも、相対的剥奪という概念が面白かった(元の概念はイギリスのタウンゼント氏による)。確かに 何が貧困かは他の人との比較によるところが大きいと思う。 続編もあるとのことなので、早めにそちらもとりかかりたいですね。
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学生時代の読み残し。 まだまだ多くの人にとっては想像しにくい世界であろう「子どもの貧困」について、日本の現状を解説する本。 データが豊富で、丁寧に解説してくれているのでこの分野について興味をもった方が最初に手に取るにはとても良いと思います。 「総中流」の幻想からはだんだん解...
学生時代の読み残し。 まだまだ多くの人にとっては想像しにくい世界であろう「子どもの貧困」について、日本の現状を解説する本。 データが豊富で、丁寧に解説してくれているのでこの分野について興味をもった方が最初に手に取るにはとても良いと思います。 「総中流」の幻想からはだんだん解き放たれつつあるように感じる昨今ですが、 それでも貧困というものに対するイメージ自体まだまだ貧しいですよね。 日本政府が(というか自民党が)、そもそも視点として子どもの貧困対策というものを持ってこなかったというのは確かだろうけど、その背景にあるのは何よりも社会全体の意識の低さ。 ある程度は日々感じていたところではあるけれど、第6章で示される、厳しすぎる貧困観には正直悲しくなる。 ただ、これは子どもとか、貧困といったテーマに限った問題ではないですね。 人権意識というものがあまりに貧相な社会、日本。 「剥奪状態(deprivation)」という概念がまったく理解できない人が多すぎる。 今後日本では否が応でも相対的な貧困は増加傾向を辿っていくので、 社会的な合意基準は作って行きやすくはなるんだろうか。 それでも、政権担当者だけに任せていて進展していく分野だとは思えないので、 福祉、教育業界、関連のNPO業界などからの継続的な働きかけが必須でしょう。
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長い間「一億総中流」という意識を持っていたために「貧困」に対する想像力が欠如した。その結果、対策が非常に遅れている。特に子供については貧困との関連付けがタブー視されてきた経緯があり、親の自己責任論で片付けられてしまうことが多かった。そのため「子ども」を中心とした政策が必要である、という内容。 社会学系の文章はあまり読み慣れていないせいもあって、言っている内容が難しいなぁと思うことが多かった。また、統計学の知識をある程度は使う(中央値など)ので、そのあたりも必要なのかな?一番ショックだったのは第6章で、「金銭的に余裕がなければ、……は子供に与えられなくてもよい」という項目が、海外と比べて日本は低い傾向にあること。一概に比較はできないにしても、貧困に対する想像力が貧困なのかなぁ、と感じる結果だった。とはいえ、自分が同じアンケートを受けたら、どう答えるのだろうか不安ではある。
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確実に貧困があることがわかったということと、 子供に関する社会的必需品については、あったほうがいいと思うが、与えられなくてもよい、与えられなくても仕方がないと考える人の割合が多いのに驚いた。
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アメリカが酷いという認識はあったが、日本もここまで酷いとは、データは雄弁だ。貧困の概念も初めて本書で深まった。社会福祉士として恥ずかしい。 ・非行と貧困 ・15歳時の貧困と現在の低い生活水準の直接的な相関 ・日本では母親の収入が貧困率の削減にほとんど役に立っていない。 ・日本よ...
アメリカが酷いという認識はあったが、日本もここまで酷いとは、データは雄弁だ。貧困の概念も初めて本書で深まった。社会福祉士として恥ずかしい。 ・非行と貧困 ・15歳時の貧困と現在の低い生活水準の直接的な相関 ・日本では母親の収入が貧困率の削減にほとんど役に立っていない。 ・日本よりアメリカの方が家族政策に予算をつぎ込んでいる。 ・教育支出も日本は最低。 ・日本は唯一、再分配後の所得の貧困率の方が、再分配前よりも高い。 ・日本の母子世帯はワーキングプア ・女性の貧困経験と学歴 ・乳幼児期の貧困が、一番将来に影響がある。 ・日本の一般の意識は大幅に低い。子どもの必需品調査から。 ・所得にはある一定の閾値がある。400万くらい
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「少子化対策」ではなくて、「子ども対策」を。言葉だけの問題かもしれないが、まさしくその通りだと思う。そして、なぜ高校などで、将来自分が子どもができた時の子育ての勉強がないんだろう。本当に大事なことは、学校では教えてくれず、個人任せになっている。地域の関わりが希薄化している以上、周...
「少子化対策」ではなくて、「子ども対策」を。言葉だけの問題かもしれないが、まさしくその通りだと思う。そして、なぜ高校などで、将来自分が子どもができた時の子育ての勉強がないんだろう。本当に大事なことは、学校では教えてくれず、個人任せになっている。地域の関わりが希薄化している以上、周りが教えてくれるではなく、教育内容としてやっていく必要があるように思う。
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親の貧困は、子どもの人生にも不利を背負わせてしまう。しかし、その不利を仕方ないと容認することはできないというのが著者の立場です。 貧困とは、一言でいえば普通の生活が出来ないということです。絶対的・相対的貧困という考え方もありますが、これらの考え方よりも貧困を具体的に想像しやすくするための指標として、6章では相対的剥奪という考え方が紹介されています。 そして、子どもの貧困に陥りやすいリスクをもっとも抱えているのが、ひとり親世帯だといえるでしょう(ただ、これはひとり親世帯にだけ支援すればいいという話ではない)。生活保護や母子家庭への給付については、「働く気になればそれなりの生活はできるだろう」とか「離婚したのは自分の選択だろう」というような自己責任的な考え方があるわけですが、3章で政策的な視点から、そして4章で母子世帯の実情という細かい視点から貧困の問題をみてみると、そういう給付が、彼らの自立にはほとんど機能していないということがわかります。 つぎに、税・社会保障制度の逆機能。これは驚くべきことです。なぜなら、税などを負担することによって貧困状態にあると認められる人が増加したということだからです。所得を公平に近づけるための制度が、まさに逆方向に機能しているということです。いまでも、逆機能はないにせよ再分配の問題は続いていますね。 結局のところ、うえで書いた「働く気になれば・・・」というような自己責任的な考え方は、政策にもあったのではないかと思います。経済的に自立できる収入を得て、子どもは保育所などに預けられればいい、と。 しかし、親の貧困によって子どもがこうむる不利は色々な側面があるわけですね。健康、家庭環境、親のストレス、子育て時間の不足、学習意欲など、いろいろな視点を見据えたうえで、より多くの子どもが安定した家庭で幸福に生きられるように、政策として支援すべきではないか、支援しないことは、結果として社会の損失につながるのではないか・・・という問題があります。 それと同時に僕がこの本からあらためて考えたことは、政策には「結果」をみる視点が必要なのだということです。どれだけの予算を使ってどんな政策を実施したかというだけでは不十分です。たとえば、「母子家庭への金銭的な給付がどれだけ受給者の自立に役に立ったのか?」。著者のいう、「薄く広い」生活保護もそうです。結果をみずに、予算上の問題から給付対象を狭めたりすることに対して、受給している人から反発が出るのは、それなりの理由があるのだろうとあらためて考えました。
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