天の光はすべて星 の商品レビュー
誰もが夜闇の向こうに眺めた事があるはずの、無限の星空。遥か彼方に浮かびあがる、数えきれない星々の魅力に憑りつかれた主人公の夢と絶望。自分の人生を彩る憧れを現実にするために、突き進んでいくのだが、宇宙開発における政治的な側面や、決して夢物語だけではない現実が描かれている本作。想い描...
誰もが夜闇の向こうに眺めた事があるはずの、無限の星空。遥か彼方に浮かびあがる、数えきれない星々の魅力に憑りつかれた主人公の夢と絶望。自分の人生を彩る憧れを現実にするために、突き進んでいくのだが、宇宙開発における政治的な側面や、決して夢物語だけではない現実が描かれている本作。想い描いていた子供の頃の自分と、現実との隔たりに苦悩し、歩みを止めるも、いつも支えてくれた人々。高揚と後悔が心を織りなし、ほろ苦さを持ちつつも、諦めに似た感情を押し殺し、未来への希望を繋ぎ終わるラストが密やかな余韻を残す。
Posted by
グレンラガンの結末に納得できずにそれがきっかけで読んだが、ある程度最終話のあり方への認識が軟化した。かなり良い作品だった。途中までの、マックスが手段を尽くしてロケットに手を伸ばしていく、そして『何でも出来るんだ』と言う事を示していく過程が非常に好きだった。一度は人生をドロップアウ...
グレンラガンの結末に納得できずにそれがきっかけで読んだが、ある程度最終話のあり方への認識が軟化した。かなり良い作品だった。途中までの、マックスが手段を尽くしてロケットに手を伸ばしていく、そして『何でも出来るんだ』と言う事を示していく過程が非常に好きだった。一度は人生をドロップアウトした老人の、信じられないような若々しい情熱。そして星屑の仲間達の熱い情熱には、浪漫を追う人間として感じる物があった。結末としての夢と現実の妥協点のようなものについても、陳腐な感じではなくしみじみと感じられた。ビリーとの会話などで、夢が引き継がれていく様子などが描かれていて、綺麗で素晴らしかった。全体を通して、個人ではなく人類を通しての可能性、遥か未来へと紡がれていく可能性というものの輝かしさが描かれていて、それも好きだった。 ただやはり終盤での急転直下的な夢の終わりが非常に辛いのはあった。それでもロケットは飛んだけれども、エムバッシまで死ぬのか...と言うのは感じた。 それぞれの道で夢を追う人間について、その姿勢と行く末について考えさせられる重要な展開だとは思うがやっぱり重かった。 最後の最後、エレンと、人間とその未来と、神に対する恐れに浸されている...と言うのも、なかなか考えさせられた。希望を託して希望に浸って終わるのではなく、畏敬の念、むしろ畏怖と言うような物を噛み締める。あのマックスが。その部分がどこか引っかかるというか理解しきれていない感じはある。年を取ってからもう一度読んでみたい。
Posted by
読了後、バルザックの「知られざる傑作」を思い出した。この作品は、卓越した絵画の技術を持つ者が他人には線の乱れにしか見えない究極の美に固執する話である。 この作品は、その狂気から解放され、同時に情熱が薄まっていく。 「二度とチャンスはおとずれない」 年齢と人生を前に現実と折り合いを...
読了後、バルザックの「知られざる傑作」を思い出した。この作品は、卓越した絵画の技術を持つ者が他人には線の乱れにしか見えない究極の美に固執する話である。 この作品は、その狂気から解放され、同時に情熱が薄まっていく。 「二度とチャンスはおとずれない」 年齢と人生を前に現実と折り合いをつけ、平和に生きていく。誰もがこの世から脱出したいと望むものだ。狂気的であろうと、究極の美を求める画家に憧れを抱くものだ。 読後の表紙の味わいが私の心に染みている。この切なさが「天の光は全て星」なのだろう。
Posted by
―――1997年、人類は星々に対する情熱を失い、宇宙開発計画は長い中断の時期に入っていた。 星にとり憑かれた57歳のもと宇宙飛行、士マックス・アンドルーズは、そんな世界で無為の日々を過ごしていた。 しかし、木星探査計画を公約に立候補した女性上院議員候補の存在を知ったとき、彼の...
―――1997年、人類は星々に対する情熱を失い、宇宙開発計画は長い中断の時期に入っていた。 星にとり憑かれた57歳のもと宇宙飛行、士マックス・アンドルーズは、そんな世界で無為の日々を過ごしていた。 しかし、木星探査計画を公約に立候補した女性上院議員候補の存在を知ったとき、彼の人生の歯車は再び動き始める。 フレドリック・ブラウンのSF 結構古い作品みたいやね 惑星と恒星、宇宙に関する全てに心奪われた人々"星屑" その中の一人である主人公が木星への探査宇宙船の建造のために奔走する ガチガチのSFというよりも、情熱を軸にしたヒューマンドラマな感じ 知識がないと理解できないような箇所はほとんどないし、いろんな人に読んで 「ロマン」を感じてほしい!(^-^≡^-^) 主人公があらゆる手段を使って目的に近づく姿に、ガッツリ感情移入できた 太陽系の中の塵の一片、宇宙の一原子にすぎないちっぽけな地球から、外へ!
Posted by
タイトルが素敵で好きです。英語では「The Lights In The Sky Aer Stars」。 バローズの「火星のプリンセス」が出てきて「おっ!知ってる!」と嬉しくなった。 また、難しい言葉がなく、スラスラと読めてしまった。 残念ながら、自分好みではない作品だったが。
Posted by
あんまりSF小説らしくないけど、ある意味この本がSFの世界と現実世界を繋ぐのかとロマンを強く感じる。 冷戦構造があった方が宇宙を夢見る人達にとってよかった時代があったのかもしれない、夢は遠く、個人の力では大気圏の外に出ることすらできない。 普通の人は夢を夢として諦めるかもしれない...
あんまりSF小説らしくないけど、ある意味この本がSFの世界と現実世界を繋ぐのかとロマンを強く感じる。 冷戦構造があった方が宇宙を夢見る人達にとってよかった時代があったのかもしれない、夢は遠く、個人の力では大気圏の外に出ることすらできない。 普通の人は夢を夢として諦めるかもしれない、でもそうじゃない人もいる。そういった夢が人類を新しい世界へ導いてくれると思えた一冊であった。 ご存知の方も多いとは思うがグランラガンの最終話のタイトルでもあるので興味のある方は一読をオススメする。
Posted by
星に魅了された、星屑と呼ばれる人々の夢を追いかける情熱に満ちた物語。1953年に発売された本だけに表現が古い部分もあるけど良い本。宇宙好き、ロケット好きには読んで欲しい。
Posted by
美しい表題と装丁に惹かれて購入。 確かにSF作品には印象的な表題が多いけれども、本書は秀抜だ。 本棚に表向けて飾りたい衝動に駆られる。 そんな表題とは対照的に、内容はすこし地味に感じるかもしれない。 そこには、突飛なアイデアもSFらしいガジェットも存在しない。著者特有のやんちゃ...
美しい表題と装丁に惹かれて購入。 確かにSF作品には印象的な表題が多いけれども、本書は秀抜だ。 本棚に表向けて飾りたい衝動に駆られる。 そんな表題とは対照的に、内容はすこし地味に感じるかもしれない。 そこには、突飛なアイデアもSFらしいガジェットも存在しない。著者特有のやんちゃさも、どこか影を潜める。 だけど、途方もないロマンチシズムを感じる。奇才フレドリック・ブラウンは本書のおわりにどんな思いを込めたのだろう。 本書が世に出されたのが1953年だから、世は宇宙開発の黎明期。人工衛星スプートニクもアポロ計画もまだ未来の話。 そんな萌芽な世情に、当代随一のSF作家が心揺さぶられないはずがない。 つまりは、彼も"星屑"の仲間だったのだ。そして、遥か遠い未来、人類が星に辿りつく日を願って、意志の継承を施したのだろう。 まるで夢破れた"星屑"に残された、ただひとつの流儀のように。 特に味わい深い一節を紹介する。 その一節は、ひとが星や月、宇宙に憧れ続けるひとつの答えを示しているような気がするのだ。 物語は終盤、目にいっぱい"星屑"のきらめきをたたえた子供を横目に、いまに二次元の地表面から脱出していこうとするロケットを眺めてこう語るのだ。 「そうだ、脱出だ。このちっぽけな世界から、誰もかも脱出したくてうずうずしている。この願望こそ、肉体的な欲望を満たす以外の方向にむかって人間がやってきたことすべての原動力にほかならないのだ。それはさまざまの形をとり、さまざまの方向にむかって発散されてきた。それは芸術となり、宗教となり、苦行となり、占星術となり、舞踏となり、飲酒となり、詩となり、狂気となった。これまでの脱出はそういう方向をとってきた。というのは、本当の脱出の方向を人間たちがつい最近まで知らなかったからだ。その方向とは?──外へ!この小さな、平べったい、いや、丸いかもしれないけれど、とにかく生まれついて死ぬまでへばりついていなければならない地面を離れて、未知に、永遠にむかって。外へ!太陽系の中の塵の一片、宇宙の一原子にすぎないちっぽけな地球から、外へ!」 星や宇宙に理由なき憧れを抱く"星屑"の皆さまに是非とも一読いただきたい作品です。
Posted by
ロマンチックな題名だけど渋い内容。天元突破グレンラガンのラストシーンはこの本のラストシーンを参考にしてるらしいので今度、見比べて見たい。
Posted by
星に憧れた“永遠の少年”の物語。とてもロマンチックなSFだった。 夢を追い続けることの辛さ、苦しさ、難しさ、そして素晴らしさが凝縮されていると思った。マックスは年を取ってはいるけれど(物語開始時点で57歳だし)、憧れを手にするために走り続ける姿は青春真っ盛りとしか言いようがなかっ...
星に憧れた“永遠の少年”の物語。とてもロマンチックなSFだった。 夢を追い続けることの辛さ、苦しさ、難しさ、そして素晴らしさが凝縮されていると思った。マックスは年を取ってはいるけれど(物語開始時点で57歳だし)、憧れを手にするために走り続ける姿は青春真っ盛りとしか言いようがなかった。 恋もして、友情もあって。成功と挫折がある。これはひとつの青春物語だとも思った。 お話が上手く行き過ぎるところもあったけれど(途中までは単純なアメリカンドリームな物語なのかと思ってしまった)、終盤の展開を思えば些細なマイナス点にしかならない。 宇宙に憧れ、恒星に行くことを夢見る人たちを“星屑”と称すのが良い。 そしてこのタイトルと装画が素晴らしい。
Posted by