天の光はすべて星 の商品レビュー
人間が一度死んだらそれっきりだというのでなく、生まれ変わりとか霊魂不滅とかいうことを信じられたら、どんなにいいだろうと私は思う。ほかの人間になってまた生まれ変わるとか、たとえ天国の雲の隙間からでも、朽ち傾いたあばら家の窓ガラスごしにでも、あるいは自分が何かの虫けらになって、その虫...
人間が一度死んだらそれっきりだというのでなく、生まれ変わりとか霊魂不滅とかいうことを信じられたら、どんなにいいだろうと私は思う。ほかの人間になってまた生まれ変わるとか、たとえ天国の雲の隙間からでも、朽ち傾いたあばら家の窓ガラスごしにでも、あるいは自分が何かの虫けらになって、その虫けらの目玉を通してでも、その他どんなものに変わってもかまわないから、見ていられたらどんなにいいだろう。どんなにひどい条件をつけられてもかまわないから、わたしはその時その場にいて見ていたい。わたしたちが星に行き着くところを、わたしたちが一つまた多くの宇宙を自分のものにするところを。わたしたちが神になる時を。p.302
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好きな作品。 木星へ向かうプロジェクトに携わろうと奮闘する60歳手前の主人公マックス・アンドルーズ。 まずその宇宙への熱量が凄まじく、読んでいて惹きつけられるものがあった。 主人公の周りの人々もいい人たちばかりだった。 小さな躓きや大きな悲しみを乗り越えて製造に携わる寸前で、致命的な過ちが発覚し、夢は潰えた(少し語弊がある)。 が、星屑たちの意思が甥に、ひいては人類全体に引き継がれていき、未来において木星より遥か先に到達しているだろうという確信をしている点に救いを感じた。
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宇宙への憧れは、主人公の人生そのものでありそれはどうやっても消せない。呪いのように、彼に切なく寄り添い続ける。
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ロケットと宇宙旅行の技術はいかにも「原子力万能時代」らしく古めかしい。サンダーバードの世界観が近いだろう。その意味で「SFとしては」レトロだ。他方で合衆国の政治の部分は今なお通用する部分が多い。実際、アポロ計画についての政治的内幕の話を読むと、各州への利権配分やポスト配分といった...
ロケットと宇宙旅行の技術はいかにも「原子力万能時代」らしく古めかしい。サンダーバードの世界観が近いだろう。その意味で「SFとしては」レトロだ。他方で合衆国の政治の部分は今なお通用する部分が多い。実際、アポロ計画についての政治的内幕の話を読むと、各州への利権配分やポスト配分といった配慮が計画推進に欠かせなかったといった記述があったりする。 テクノロジーの進展(あるいは進展のなさ)と政治の変わらなさを読む本。
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思ってたんと違う…! でも、本当に星に行ったらその星はもう足もとにあって、光ってはいないんだから、マックスはこれで良かったんちゃう?とも思う。 タイトルがすごく好きです。
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内容はSFでもなんでもなく、1人の男のロケットに乗りたいという夢を実現しようとするストーリー。エレンとの別れ、ビリーに引き渡した夢など要所要所では良い場面があった。
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あああの白いそらの帯がみんな星だというぞ。 月が綺麗ですね。 フレーズから読む本決めたのははじめてかもしれない。なんとも素敵な体験でした。 SF、というよりはむしろ、SFに魅せられることをテーマにしたフレドリック・ブラウンの長編。キーワードは“星屑”。おれもおまえも、“星屑”なんだ、って。 そしてこれは継承の物語でもある。 最近、昔お芝居をやっていた頃の後輩がまだ結構舞台の上に居るというのを風の噂(?)で聞いて、 別にそんな、影響を与えたとかきっかけになったとか大きなものではないだろうけど、それでも、なんとなしに嬉しくなった、というか。 彼ら彼女らのベースになったものの、螺子の一本くらいはオレが締めたんじゃないかって そんなふうに少しは自惚れられないほど、あの頃の自分は頑張ってなかったわけじゃないんだなー、としんみりしてみたり。 情熱そのもの、というよりも、情熱の行く末が描かれていて、 けれどそれはセンチメンタリズムだけじゃなくて。 夢を持ち続けるのが正しいとか、正しくないとか 格好良いとか格好悪いとか、そういうことではなくて。 ある意味、仕方ないという言葉がいちばんしっくりくるのかもしれない。 もう、ほんと 仕方のない、ひとね。 みたいな台詞、結構好き。 ☆3.6
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「生まれついて死ぬまでへばりついていなければならない地面を離れて、未知に、永遠に向かって、外へ!太陽系の中の塵の一片、宇宙の一原子に過ぎないちっぽけな地球から、外へ!」 アメリカンな夢と狂気とロマンは本当に美味 誰かがしなければ誰もが成せないのだ
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107:英題は「The lights in the sky are stars」。これを訳したものとしてはおそらくベストの邦題なのではないでしょうか。美しいタイトルと、渋い内容のギャップに驚きました。「星屑」と呼ばれる、宇宙に心を奪われたひとりである主人公マックスは、木星へ探査ロ...
107:英題は「The lights in the sky are stars」。これを訳したものとしてはおそらくベストの邦題なのではないでしょうか。美しいタイトルと、渋い内容のギャップに驚きました。「星屑」と呼ばれる、宇宙に心を奪われたひとりである主人公マックスは、木星へ探査ロケットを飛ばすと公約を掲げるエレンをバックアップすることで、念願である宇宙を目指す――渋さの所以は、技術的・政治的困難を乗り越えてゆくという筋ではないからでしょう。科学を信奉することと、神を信じないことは同義ではない。今、この歳になって読んだからこそ、じわりと沁みたのではと思えます。そして、はやぶさで盛り上がったあの熱を、一時のものにしてはならないと改めて強く思うのです。
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最高の馬鹿の話。自分の夢を追うということ、そしてそれは人類全体の進むべき道であると敷衍し、次世代へと夢を託して繋いでいくこと。この物語全体が熱いテーマで貫かれていてパワフル。最後のオチは、まさかこういう形でつまずくとは、という予想だにしないものだったが、あれはそもそも「あまりに熱...
最高の馬鹿の話。自分の夢を追うということ、そしてそれは人類全体の進むべき道であると敷衍し、次世代へと夢を託して繋いでいくこと。この物語全体が熱いテーマで貫かれていてパワフル。最後のオチは、まさかこういう形でつまずくとは、という予想だにしないものだったが、あれはそもそも「あまりに熱く夢を見すぎたこと」の裏返しでもあり、皮肉で複雑な心象ではあった。まぁ、そこから再起?して最後のあのシーンまで繋がるのはホッとしたが。 中島かずき氏が解説を書いているが、本書に強く影響を受けていることは、『天元突破グレンラガン』を見ると本当によくわかる。
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