21世紀の歴史 の商品レビュー
2013.11.01 ~超帝国~超紛争~超民主主義へ。世界的IT企業の隆盛が生む超格差。その後の混乱。そして、その先に訪れる幸福な社会。21世紀はこのような歴史を刻むことになるらしいが、できれば、超紛争は夢であってほしい。
Posted by
皮肉な出来事として、こうして帝国の秩序から市場の秩序への急変は、人々をノマドへと回帰させた。つまり農民は旅行者となったのである。我々は人類の文化の根底にある、長年にわたった放浪生活という歴史的事実から、将来を占うことができる。現在、この放浪生活がよみがえったのである。 市場の秩...
皮肉な出来事として、こうして帝国の秩序から市場の秩序への急変は、人々をノマドへと回帰させた。つまり農民は旅行者となったのである。我々は人類の文化の根底にある、長年にわたった放浪生活という歴史的事実から、将来を占うことができる。現在、この放浪生活がよみがえったのである。 市場の秩序は9つの市場形式をたどってきた。 中心都市の推移、大量消費財の登場の順、テクノロジーの進展を順、支配的通貨を順に、芸術家や哲学者を順に、変遷を見る径路は色々ある 近代英国の偉大な発明 1734年クロノメーターで船の経度位置が正確に把握できるようになり、航海距離の短縮につながり、世界中で組織的な収奪を行った。 17世紀にイギリスからアメリカに渡ったピューリタンのグループは、物質的に成功する者は天国への切符を手に入れた神に選ばれた者たちである、と宣言した。金持ちであると自慢することは、道徳的に立派な行いでさえあるということである。 次に世界を制するのはどこか? 日本、中国、インド、ロシア、インドネシア、韓国、オーストラリア、カナダ、南アフリカ、ブラジル、メキシコ 11カ国を追う20カ国 アルゼンチン、イラン、ベトナム、マレーシア、フィリピン、ベネズエラ、カザフスタン、トルコ、パキスタン、サウジアラビア、アルジェリア、モロッコ、ナイジェリア、エジプト、 他に アイルランド、ノルウェー、ドバイ、シンガポール、イスラエル 人々は自分たちの生活のリスクをカバーするために、その業務を国家よりも保険会社に委ねる。こうして保険会社は国家を弱体化させながら勢力を伸ばしていく。将来有望な産業は、保険業と娯楽産業。 すべての企業と国家は保障と気晴らしという二つの要求の周辺に組織される。 ますます多くの人々が国に依存することに嫌気がさして祖国を離れる。祖国の税制、法制度、文化までも捨て去る。 今後25年のうちに毎年5000万人の人が祖国を離れて生活する。10億人近くの個人が、自分の出生国と異なる、あるいは良心の出生国と異なる場所で生活することになる。 カナダのオイルサンドだけでサウジアラビアの石油埋蔵量に匹敵するだけのエネルギー量があると言われている。しかしながら、これらの資源の採掘は環境破壊をもたらす。 時間、残された唯一、本当に希少なもの。 こうして市場の形式に大きな危機が訪れることになる。 アメリカドルは政治的な通貨となり、外国によるアメリカ通貨の利用にブレーキがかかり始める。2025年ごろにはアメリカによる統治が拒絶される。2030年ごろ、アメリカの返済はついに滞る。 ついに、株価の上昇によっても、要求される資本効率を維持できなくなる。こうして金融危機が勃発する。 利用者・民間人・企業は消費者となり、受けるサービスに対して直接支払う義務が発生する。つまり、サービス供給側に直接支払う。あるいは民間または公営の保険会社に保険料を支払うことになりこれが大幅減税の代償となる。 2050年ごろには、国家のゆっくりとした解体が始まる もはや国に継続的に住む人物とは、外に敵が多過ぎる人物、ぜい弱な人物、年寄りと幼いものなど、なんらかの理由で定住を余儀なくされた者たちだけである。 都市部にはあらゆる種類の人間疎外があふれ、大部分の人類にとって市場民主主義とは大掛かりな道徳的詐欺にすぎないというさまざまな証左が目につく。 日本は、収益性の高い産業を再興できなかった。金融システムを近代化することもできず、合法非合法の巨大複合企業体からの影響を遮断することもできなかった。 21世紀の日本の課題 1、東アジア地域に調和を重視した環境を作り出すこと 2、日本国内に共同体意識を呼び起こすこと 3、自由な独創性を育成すること 4、巨大な港湾や金融市場を整備すること 5、日本企業の収益性を大幅に改善すること 6、労働市場の柔軟性をうながすこと 7、人口の高齢化を補うための移民を受け入れること 8、市民に新しい知識を公平に授けること 9、未来のテクノロジーをさらに習得していくこと 10、地政学的思考を念入りに構築し、必要となる同盟関係を構築すること
Posted by
これからの世界の将来について、真剣に向き合わされる一冊。 超民主主義の出現支援に、私は何ができるだろうか。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
サブプライムローンの破綻、リーマンショックを予言し当てた仏経済学者、元欧州復興開発銀行総裁の将来の展望。 10~20年後には株式は無くなると予言。
Posted by
ノマドライフからのリファレンス。 仏大統領の諮問委員会としてアタリ政策委員会の委員長を務める著者により、かつて手塚治虫が「火の鳥」で鳴らした警鐘に近いトーンの、決して明るくない未来が、2050年頃国家の解体が始まるとされるまで展開される。 冒頭「日本語版の序文に変えて」から、歯...
ノマドライフからのリファレンス。 仏大統領の諮問委員会としてアタリ政策委員会の委員長を務める著者により、かつて手塚治虫が「火の鳥」で鳴らした警鐘に近いトーンの、決して明るくない未来が、2050年頃国家の解体が始まるとされるまで展開される。 冒頭「日本語版の序文に変えて」から、歯に衣着せぬ日本の未達課題が淡々と提示される。第一に、既存産業、不動産による超過利得、官僚周辺利得を過剰に保護しすぎたため技術的ダイナミズムを犠牲にしているとあり、第二に、海運業ほか海上覇権にもかかわらずアジア圏の友好的な地域関係を創出できていないとあり、第三に、外国からのアイデア、投資、人材を幅広く受け入れられていないために、クリエーター階級を育成できていないとある。 特に第二の課題が軍事コストに繋がり、2025年の日本の経済力は世界第五位ですらないかもしれない、と述べられている。否定できるだろうか。 地獄の底のような将来で子孫を徘徊させないために、別の未来をぶつける必要があり、本書を通じて述べられるような未来を予見し、超民主主義と著者が呼ぶ、気候変動の抑制、水やエネルギー資源の再生、肥満と貧困の解消、非暴力、民間企業の公益重視にむけた合理的な活動を経験していく必要があるとしている。 民主主義を否定するのではなく、民主主義の本来的な姿を省みて共有し、SRIやマイクロファイナンスに見られる資本回収のあるべき姿を提示している一冊。
Posted by
奇抜だが、そこが面白い。フランス人経済学者の本で、一時期NHKなどでも特集されていた。ちょっと古い本だけど、まぁ、一応。
Posted by
市場資本主義のこれまでと予兆を分析し、グローバル化のゆきつく先について多くの示唆を与えてくれる本だった。 市場が民主主義を要求し、中心的な都市を作り出し、グローバリゼーションを推進する。市場は国を必要としないので、医療、軍隊などの公的な仕事も全て民営化されてゆく。政治は形ばかりの...
市場資本主義のこれまでと予兆を分析し、グローバル化のゆきつく先について多くの示唆を与えてくれる本だった。 市場が民主主義を要求し、中心的な都市を作り出し、グローバリゼーションを推進する。市場は国を必要としないので、医療、軍隊などの公的な仕事も全て民営化されてゆく。政治は形ばかりのものに。自己責任の名の元に、格差は広がり、保険と娯楽産業が世界を支配する。他者による監視、自己による監視に関するスキルが発達し、犯罪、健康、マネー、自分の市場価値のリスク管理に役立てられるとともに、一部の人間に利用される。国を持たないノマドがこれまでになく増える。国境の移民も増える。高齢化によって大量の移民の受入れもあるかもしれない。情報が正確なので全賛成はできなくても、示唆に富む。日本も含めて、世界の各国の都市の可能性について詳細な情報と見通しが述べられている。 アタリ氏の今後の展開の予想については、国を超えた超大企業の出現や、民族の再編成による紛争、資源をめぐる闘争、国対国でないノマドや海賊との戦争が生じるだろうこと、資本主義の反動としての利他主義による活動が発達し、その担い手が企業であること等には納得した。それ以外はよくわからない。 中心都市は西へ向かって移動。 1200-1350 ブルージュ これは室町時代くらいか。資本主義の誕生。 1350-1500 ヴェネチア 1500-1560 アントワープ 1560-1620 ジェノバ 1620-1788 アムステルダム ここは江戸時代 1788-1890 ロンドン 1890-1929 ボストン ここで明治 大正 1929-1980 ニューヨーク 1980- ロスアンジェルス ヒトの欲求に根ざした市場資本主義は、他人のための欲求を満たしながら自己の欲求も全て受け入れて貰える。これは結果的に全ての欲求を満たすことのできる都市の出現を目指すことであり、そのためには、国を飛び越えて準備する。美味しいものがあれば、北極まで行って仕入れしてくるし、税金や人件費が安ければ外国に工場をつくる。欲求を満たせる魅力的な都市には人が集まり、大量生産の原理で動く企業にとっては、好都合となる、という流れだろうか。 役目を終えた中心都市はその後どうなるのか、地球環境をズタズタにしても、この欲求やサイクルはとめられないのか?まるで、資本主義という妖怪が自分を守るために人間をうまく動かしているような絵が見える。 宗教の記載が少なかったが、拠り所がなくなって不安な人間が増えると、どの時点からかは宗教的な活動も増えてくるような気がする。これまでヒトが所属してきた社会が急速に崩壊し、家族や地域や国の意識が薄くなってゆく中で、自己のアイデンティティが所属企業や年収やスキルなどの市場価値になってゆくのは、市場資本主義の中ではある意味当然の流れではある。ただし、宗教であるかどうかは別にしても、それ以外のつながりや社会的な構成が今後の世の中のキーポイントではないかと私は思う。人間は困ったときに助け合い社会を形成するものだから、困った人達のまとまりが次の社会の大きな原動力になるはずだと思う。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
個人・企業が税率の低い地域に逃げ出したり、保険企業が社会保障の分野に乗り出すことを通じて国家が縮小せざるを得ない、というのは発生しつつある重要な問題かな。 筆者の意見に対してあまり納得できないのは、個人間の関係がどんどん希薄化していく、という点。現在のSNSの興隆に象徴されるように、自分について他人に知ってほしいor他人について知りたいという欲求には生来的なところがあるんじゃなかなーと思っているので。 本書では東京が世界の中心になれなかった理由の一つについて、現在の日本に関する重大な問題の一つに優秀な人材を集められないから、と述べている。これはかなり重大だと当てはまると思うので、少なくとも一部の大学では完全な英語教育が実現されてもいいように思われる。俺は英語できないけど。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。 どのような力が歴史、現代を作ってきたのか、を振り返り、これからはどのような世界になるのか、歴史から未来を紐解く。 企業は、ますます巨大し、国家や政治を支配し、民営化が進む(Noreena HertzのThe slient takeoverとおなじ)。ネットによって力のある個人はボーダーレスで活躍するようになり、超ノマドと言われる人々が力を持つ。超ノマドは歴代の世界の中心都市(各々の時代で世界の中心都市というものがあり、そこに優秀な人間が集まり、世界の最先端を築いていく。つまり世界の中心都市は現実における未来都市である。2006年時のそれはITのメッカ、カリフォルニアであった。歴史の発展要因を都市に着目して展開していくのはとても興味深かった。)で、クリエーター階級といわれた階層の未来版である。 そのため製品(ノマドオブジェ)も、コンパクトな持ち運びしやすいものがどんどん出てくる。コンテンツはすべてフリーとなり、LIVEコンテンツに価値が支払われるようになる。 人々はますます強烈な体験、サービスを求めるようになる。筆者の予測では今後臨死体験をできるサービスも出てくるのでないかということである。 堺屋太一氏の言う「知価社会」である。グローバル化によって安い労働力はとって変わられるようになり、まさに「知恵を絞り出せるやつ」に金が入ってくるようになる。 *思うに、過去のクリエーター階級は商人や金融業者、芸術家、思想家、科学者であったが、今後の市場という場においてその境目はどんどんなくなって来るようになるのではないか。つまり、ビジネスに芸術や科学の要素が入ってくるようになったり、のような。 また現在でも見られるように、企業はどんどんその力、影響力を拡大しているため、消費者にモノを売りつけるだけじゃなしに、むしろ、消費者に好感を抱いてもらう為に、社会貢献活動もするようになる。本書における「調和重視型企業」。その流れで、非営利組織であるNGOなどの活動も活発になるようになり、その資金調達として、マイクロファイナンスが今後注目されてくるとのことである。
Posted by
時間的、地理的に俯瞰的な視点から世界の今後を予測する。自分や日本の存在を大きな歴史的文脈の中で理解するのに役立つ。
Posted by