マイナス・ゼロ 改訂新版 の商品レビュー
久しぶりにSFの面白い本に出会えた感がある。時代はこの物語でいう過去も未来も自分が生まれていない時代ではあるのだけれど、なぜだかノスタルジーに駆られてページを捲る手が止まらなかった。 巻末の星新一が昭和52年に書いたという解説があってそれによれば、この著者はその時点では既に亡くな...
久しぶりにSFの面白い本に出会えた感がある。時代はこの物語でいう過去も未来も自分が生まれていない時代ではあるのだけれど、なぜだかノスタルジーに駆られてページを捲る手が止まらなかった。 巻末の星新一が昭和52年に書いたという解説があってそれによれば、この著者はその時点では既に亡くなられたようで、つまりはもっと読みたくてもそれが叶わなそうなのが残念だ。 自分が星新一に夢中になったのはこの52年の3,4年後だったから、リアルで知っていたとしても読めなかったのかもなのだけれど、本当にタイムマシンでもあれば、読める時代に遡ってみたかったなと。 もっとも、そんなことよりももっとやりたいことがあるだろうけど…
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最後のオチが気になったが、それ以外はとにかく早く続きが知りたくなって、つい頁を繰ってしまう。たいへんな書き手だと思う。
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ちょっと複雑なのと タイムマシンものの 複雑さとか昭和初期の描写がわかりづらいところがあったけれど それもまた よかった 評判通り面白かった
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これは面白い。 ある少年が空襲下で隣人の先生に頼まれ事をする。18年後の今日、ここに来てほしい、と。そして約束の日、彼が目にしたのはタイムマシンだった……。 このタイムマシンでもって過去に飛ぶ物語が面白い。失われた風景が眼前、鮮やかに描かれるのは興味深いし、タイムスリップによって...
これは面白い。 ある少年が空襲下で隣人の先生に頼まれ事をする。18年後の今日、ここに来てほしい、と。そして約束の日、彼が目にしたのはタイムマシンだった……。 このタイムマシンでもって過去に飛ぶ物語が面白い。失われた風景が眼前、鮮やかに描かれるのは興味深いし、タイムスリップによって巻き起こるパラドクスも読み応えがあった。
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予測できそうでできない少しできる……ような………という、言うなれば真相の気配が輪郭を帯びないまま漂い続ける。それはレイコが"あの日"の前日に孔雀の本に書き走ったメモに具体化されるひっかかりとして私たちの脳内における。 なーんとなくうまいこと納得しちゃいそう...
予測できそうでできない少しできる……ような………という、言うなれば真相の気配が輪郭を帯びないまま漂い続ける。それはレイコが"あの日"の前日に孔雀の本に書き走ったメモに具体化されるひっかかりとして私たちの脳内における。 なーんとなくうまいこと納得しちゃいそうだなぁという予感を捨て(きれ)ないままに読み進めていくと、最終章にて怒涛の──本当に怒涛の真相解明がある。それは私たちの納得の予感を裏切るわけではなく、むしろ過剰、ほとんどイビツというか、「マジで言ってんの?ヤバ!」と語彙がギャル化してしまうような世界の不思議な話。ほとんどメビウスの輪だ。マジで言ってんの?ヤバである。
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時代を移動するタイムトラベルもののストーリーとしては、想像しておくべき展開だったのかもしれないけれど、最後に明かされる登場人物たちの身上には、怒涛のように押し寄せる時間の交差に頭が混乱して眼を見張るしかなかった。随分昔の作品だけど、まったく色褪せておらず、「これぞタイムトラベル!...
時代を移動するタイムトラベルもののストーリーとしては、想像しておくべき展開だったのかもしれないけれど、最後に明かされる登場人物たちの身上には、怒涛のように押し寄せる時間の交差に頭が混乱して眼を見張るしかなかった。随分昔の作品だけど、まったく色褪せておらず、「これぞタイムトラベル!」と思える小説だった。
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戦中、戦後、戦前に渡るタイムトラベルSF 初出が1965年、単行本が1970年に発売されたという物語 60年前に書かれたとは思えないくらいにタイムトラベルもののストーリー構成が完成されている 作中でも言及されている通り、1895年に出版されたH・G・ウェルズの小説「タイム・マシ...
戦中、戦後、戦前に渡るタイムトラベルSF 初出が1965年、単行本が1970年に発売されたという物語 60年前に書かれたとは思えないくらいにタイムトラベルもののストーリー構成が完成されている 作中でも言及されている通り、1895年に出版されたH・G・ウェルズの小説「タイム・マシン」がタイムマシンものの原点として 未来や過去に行って歴史を改変するという構造ではなく、過去の改変自体が歴史に含まれているパターンは当時としては珍しかったでしょうね 1957年に出版されたロバート・A・ハインラインの「夏への扉」の日本版の物語という印象でしょうか 序盤のあらすじ -------------- 昭和20年 中学2年生の浜田少年 隣家が空襲に巻き込まれ、家主の伊沢先生から亡くなる前に「18年後にまた同じ場所に来て欲しい」と伝えられる 娘さんの啓子さんはコンクリート製の研究室にはおらず、行方不明扱いとなる そして18年後、32歳になった俊夫は旧伊沢邸を訪ねると、住んでいた及川老人は快く研究室への鍵を渡してくれる そこで待っていると、18年前行方不明だった啓子が当時の姿のまま不思議な箱から現れる 啓子の話や箱の中の様子から、その箱がタイムマシンだと判明する 二人は伊沢先生を助けるために、先生が未来からやってきた昭和9年に向かおうとするが、俊夫は一人で意図ぜずに昭和7年に行ってしまう 俊夫はすぐに戻ろうとしたが、トラブルによりタイムマシンだけが戻ってしまい、この時代に取り残される 俊夫はタイムマシンの中にあったお金と現代知識で、伊沢先生が現れる昭和9年まで上手く立ち回ろうとするが…… -------------- タイムトラベルものあるある 謎の人物からの奨学金の支援 やけに協力的な人 年齢の合わない似ている人 自分が経験した通りになるような辻褄合わせのための行動 などなど メインの舞台は昭和7年なので、SFものとしてではなく昭和初期の物語としても読める 当時の東京が子細まで描写されてあって、生活の様子を思い浮かべることができる 歴史的な出来事ならともかく、物価や当時の商品、庶民として得られる情報については調べるのは大変だったろうなぁと思う その分、ラジオや電気機器の説明や車の種類や歴史に関しての蘊蓄がところどころで煩わしく感じる部分もある レイ子さんのタイムトラベルでの過去干渉の解釈は面白い 改変者の知識によって出来事が確定する 詳細な日付を覚えていないのであれば、今日自分が起こしたらそれが確定するし、未然に防げば来るべき来るべき日にその事件が起こる あと、レイ子さんの推測のあたりで、物語の枠組みに「やはり」という確信が持てる それにしても、まさかレイ子さんがああなるとはね…… 医者に診せていたので、結核でも疑っていたのかと思った ただ、そうでであれば、色々と行動が軽率な気がする 結核の特効薬であるストレプトマイシンも戦後にんらないと出回らないので、そっちの方向に進んでいても悲しい結末を迎えた気がするけど タイムトラベルものには付き物のタイムパラドックスへの言及 親殺しのパラドックスをどう考えるかは、その作品の立ち位置を決めるよねー 今作の場合は親殺しではなく、生誕のパラドックスだけど 生物学的にありえない 遺伝的にありえないし、現代の倫理的にもやべぇ 当時の倫理観でもどうかと思うんだけど? それにしても、タイムマシンの影響が正式な歴史としてループする構図は最初のきっかけという点で色々と疑問が湧く 作中でも時間軸をループするライターの例で語られている 伊沢先生が異なる時間軸から来たのが最初のきっかけであれば、その時点では存在しない人がいるわけで このループはどうやっても発生しないんですけどねぇ まぁ、その辺の不思議を楽しむのがSFですか その辺の物語構造を成立させるための設定が都合良すぎ 記憶喪失とか、潜在意識で無意識での行動という解釈も無理やり感がある あと、巡査は結局どうなったんでしょうね? 一番の被害者は彼なのかもしれないなぁ 解説が星新一というのも見どころ そして、タイトルの付け方への言及はもっとも この後に読む予定の「エロス」なんてその最たる例でしょうねぇ それにしても、終戦からもう78年なんだな 自分が生まれる数十年前には戦争してたという事があまり実感としてない 多分、高度経済成長によって日本の豊かさが爆上がりしたせいなんだろうなぁ 逆の意味で、今の若い人たちにとって30~40年前でバブル景気の様子なんかは同じように遠い昔のように感じられるんでしょうね
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物語の中心であるところのタイムトラベルにまつわるエピソードが、え?人の反応ってこんな?って腑に落ちなくて、ちょっとスムーズに入ってこなかったんだけど、戦前の東京と昭和38年の東京がノスタルジックで、面白かった。みんな、のんびりしてみえる。こんなにすぐ人を信じちゃって、大丈夫?って...
物語の中心であるところのタイムトラベルにまつわるエピソードが、え?人の反応ってこんな?って腑に落ちなくて、ちょっとスムーズに入ってこなかったんだけど、戦前の東京と昭和38年の東京がノスタルジックで、面白かった。みんな、のんびりしてみえる。こんなにすぐ人を信じちゃって、大丈夫?って感じ。 なんだけど、物語が終わりに近づくほどに、無限ループの流れにはまり込んだ感じになって、軽く混乱する。のんびりした世界が、実は伏線だらけの複雑な世界だったことがわかる、捩れっぷり。 08年の本屋大賞で「この文庫を復刊せよ!」のリクエストNo.1となった作品。全集復刻の担当編集さんが墓前に報告に行こうとしたが、どうしてもお墓が見つからなかったと、10年4月の読書欄で読んだけれど、その後墓前報告はできたのだろうか?
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字体が少々読みにくいが、それは昭和初期の作品という事なので。 内容はタイムトラベルものの王道なので、ここでは割愛する。ボリュームはあるが、気にすることなく読み進められる。
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タイムマシン本との事ですが、だいぶ想像と違ってました。 章立てが、プラスゼロ、プラス18、マイナス31、ゼロ、マイナスゼロ、な所が気になりましたが、読み進めるにつれ謎が解けていき最後に一気に畳み掛ける!気持ちのいいラストです(^^)
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