覘き小平次 の商品レビュー
夫婦の在り様なんて、100組あればその数だけ違った形があるんだろう。 歪だけど、そこには確実に、 二人だけの、二人にしか分からないナニカが有ったんだろうなあ。 それを愛情と呼ぶのかは分からないけど。
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江戸怪談シリーズ第二弾。これの元となった話自体は知ってはいたものの題名までは覚えていなかった。学生の頃に触りだけ読んだ覚えがあるものの、どうにも地味に感じられて途中で読むのを放棄してしまった。しかし今最後まで読んでみると中々に味わい深い。お塚は小平次を嫌いだ大嫌いだ好きにはならぬ...
江戸怪談シリーズ第二弾。これの元となった話自体は知ってはいたものの題名までは覚えていなかった。学生の頃に触りだけ読んだ覚えがあるものの、どうにも地味に感じられて途中で読むのを放棄してしまった。しかし今最後まで読んでみると中々に味わい深い。お塚は小平次を嫌いだ大嫌いだ好きにはならぬと言いながらも、そこには奇妙に何かしらの情が感じられて仕方がない。きっとこの二人の関係は愛でも情でもないナニカではあるんだろうが、私にはそれを表せるだけの語彙がないのが口惜しい。
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百鬼夜行シリーズを発売されるとすぐ読んでいた頃から随分と時は過ぎたんだな。ずいぶん久しぶりの京極夏彦。 生と死の狭間にいる小平次の物語。後半に向かうにつれどんどん面白くなる。結局、小平次を本当に見ていたのは終始嫌っていたお塚だったんだな。それも愛だったのだろう。
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古典階段をベースにした京極さんの真骨頂。 安積沼での殺人やその後の江戸の自宅でのクライマックスは、まるで文楽の芝居を見ているような気分になりました。 人間の欲の深さや執着のおどろおどろしさと、執着を持たずに行きている人間への嫉妬・羨望。 逆に執着を持たないで生きる人間の心の殺伐...
古典階段をベースにした京極さんの真骨頂。 安積沼での殺人やその後の江戸の自宅でのクライマックスは、まるで文楽の芝居を見ているような気分になりました。 人間の欲の深さや執着のおどろおどろしさと、執着を持たずに行きている人間への嫉妬・羨望。 逆に執着を持たないで生きる人間の心の殺伐さ。 生きるっていろいろあるのだよなぁ…と思わせられる作品でした。 素直に好きな人と好きだよって言い合いながら、他人をうらやまず、今ある日常を受け入れて、シンプルに生きていられるしあわせを感じたよ。
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嗤う伊右衛門から続くこのシリーズ。 最初と最後で何が変わったと言えば、何も変わっていない。 心持が少しほど変わったくらいか。それでも小平次たちにとって、大きな一歩なのだろう。 治平の「嘘も触れ回れば霊験を顕すものよ」から「楽に生きるばかりが能じゃねえだろうよ」の下りには、辛酸舐め...
嗤う伊右衛門から続くこのシリーズ。 最初と最後で何が変わったと言えば、何も変わっていない。 心持が少しほど変わったくらいか。それでも小平次たちにとって、大きな一歩なのだろう。 治平の「嘘も触れ回れば霊験を顕すものよ」から「楽に生きるばかりが能じゃねえだろうよ」の下りには、辛酸舐めてきた者の言葉の重さがあった。
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1711 語り口と言い描写と言い京極ワールド全開で読み応え十分。最後の一文までじっくりと楽しめました。
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巷説シリーズを読み返している流れで覘き小平次を読みました。この作品については、今回が初読みでした。 巷説シリーズの長編2作目、になるのでしょうか。又市は影くらいしか出ませんが、治平さんはがっつり登場しました。 やっぱり治平さんはいい人だなぁと思いました。 本編ですが、登場...
巷説シリーズを読み返している流れで覘き小平次を読みました。この作品については、今回が初読みでした。 巷説シリーズの長編2作目、になるのでしょうか。又市は影くらいしか出ませんが、治平さんはがっつり登場しました。 やっぱり治平さんはいい人だなぁと思いました。 本編ですが、登場人物の気持ちがどうしてもわからない、そんな感想でした。小平次とお塚、この2人はどんな関係なのだろう・・・でも依存関係であることは伝わってきました。 <以下引用> コトは語って初めてモノになる。語らなくちゃ何もねェんだ。嘘でも法螺でも吹きゃ吹いただけモノになるんだ。 この言葉好きだなと思いました。色んなことを思いました。語られないことは誰も知らない、残らない、嘘もついたら、そしてそれが後に真実となる。真実が伝わらずに嘘が伝わればウソがホントになる。 私たちが真実だと認識している過去にはそんなホントがたくさんあるんだろうな。
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幽霊役者の木幡小平次を中心に、彼を取り巻く様々な人間たちの因縁が絡み合っていく物語です。 小平次の妻は、幼い頃に見た絵画の男に惚れたというお塚で、彼女は押入れの中に閉じこもって口をきこうともしない小平次を嫌い抜いていました。そんな彼女に懸想している囃子方の安達多九郎が、小平次に...
幽霊役者の木幡小平次を中心に、彼を取り巻く様々な人間たちの因縁が絡み合っていく物語です。 小平次の妻は、幼い頃に見た絵画の男に惚れたというお塚で、彼女は押入れの中に閉じこもって口をきこうともしない小平次を嫌い抜いていました。そんな彼女に懸想している囃子方の安達多九郎が、小平次に仕事の話を持ち込んでくるところから、物語は始まります。小平次を雇いたいという玉川座で女形を務める玉川歌仙は、幼い頃両親を殺され、この世界に入り込むことになります。さらに、人を殺すことを何とも思わない動木運平という素浪人とその仲間の破落戸が、いっそう事件を複雑なものにしていきます。 人間関係を過剰なほどに絡み合わせることで一つの事件の背景に何本もの補助線を引いていくという手法で作り込んだ小説になっています。ただ、ケレン味の強いキャラクターのおかげでリアリティに欠けるといったことは気にならない作品世界を構築しているのはさすがだと思わずにはいられません。とくに小平次という人物像を、文章だけでここまで彫りの深い造形に仕上げていることに感嘆させられます。 小平次とお塚の奇妙な夫婦生活は、いわゆる「愛」と呼ばれているものとはかなり異なる様相を持っています。少なくとも、そこにはお互いに求め合うようなことはいっさいありません。幽霊だと世間の人々から恐れられようとも、小平次が押入れから覗き見る家に暮らし続けるお塚に、どこか小平次と同じ生き様が感じられるように思います。それは、ままにならない人生に対する諦念を共有しているということなのかもしれません。
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一日中、押入れ棚に引きこもり、わずかの隙間から世間を覗く、売れない役者、小平次。妻のお塚は、一向にその不気味な性癖がおさまらぬ亭主に悪態をつく毎日である。そんなふたりのもとへ、小平次の友人で囃子方の安達多九郎が訪ねてくる。禰宜町の玉川座が、次回の狂言怪談の幽霊役に小平次を抜擢した...
一日中、押入れ棚に引きこもり、わずかの隙間から世間を覗く、売れない役者、小平次。妻のお塚は、一向にその不気味な性癖がおさまらぬ亭主に悪態をつく毎日である。そんなふたりのもとへ、小平次の友人で囃子方の安達多九郎が訪ねてくる。禰宜町の玉川座が、次回の狂言怪談の幽霊役に小平次を抜擢したという。一座の立女形、玉川歌仙の依頼を受け、奥州へと向かう小平次。しかしその興行の裏には、ある仕掛けが施されていた…。 (amazonから引用) 男どもが、悩んだり裏をかいたり、うじうじと動き回っている中で、中心に「かわりなく」お塚がいるんだよ。お塚のその「変わらなさ」と、この不思議な夫婦の関係が、なんとも言えない読後感でした。 悲劇なのか喜劇なのかもよく捉えがたいという意味では、不可思議なお話だったなぁ…。
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『嗤う伊右衛門』(わらういえもん)に続き、古典怪談に材を取ったシリーズ第2弾。 “ただいるだけ”の小平次に恐怖と嫌悪感を感じるのは、その姿に鏡のように自分を映してしまった人なのかもしれない。 自分自身の見たくない部分をまざまざと見せつけられる、ある意味で本当に怖ろしい話かもしれま...
『嗤う伊右衛門』(わらういえもん)に続き、古典怪談に材を取ったシリーズ第2弾。 “ただいるだけ”の小平次に恐怖と嫌悪感を感じるのは、その姿に鏡のように自分を映してしまった人なのかもしれない。 自分自身の見たくない部分をまざまざと見せつけられる、ある意味で本当に怖ろしい話かもしれません。 http://matsuri7.blog123.fc2.com/blog-entry-149.html
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