さよなら渓谷 の商品レビュー
性犯罪は、加害者よりも被害者の方がその後も苛酷な人生を歩むという理不尽極まりない犯罪。結末は、頭の中では理解できる気がするけれど、どうにもこうにもやり切れなさが残る。夏美のこれからの人生がどうか希望のあるものであるように祈りたい。
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過ちを犯した男、俊介、被害者の夏美。 私はあなたを許さない、死んでよ。 本音か? 加害者と被害者が行き着いた場所である事件が、その事件をきっかけに過去があらわに! 自分が犯した罪を償い、夏美と暮らす俊介だが、クライマックスに.... 男と女のドラマが。
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「この本、原作があったのか」若い頃ビデオを借りて見たが寝てしまい見れず、またみたいなと思っていた映画の原作をBook-offで見つけた。 家の整理をしてもう読まなくなった本を娘と集め、売りに来て、そのお金でまた本を買おうと待ち時間お店の本棚を見ていたときに見つけた。 15冊売...
「この本、原作があったのか」若い頃ビデオを借りて見たが寝てしまい見れず、またみたいなと思っていた映画の原作をBook-offで見つけた。 家の整理をしてもう読まなくなった本を娘と集め、売りに来て、そのお金でまた本を買おうと待ち時間お店の本棚を見ていたときに見つけた。 15冊売って690円を入手、そのお金で私はこの本を、長女は本を2冊、次女用に漫画を1冊買って帰った。 本を開いてみる、ビデオ少しは見たはずなのに覚えていない、覚えている映像は渓谷、緑、真木よう子さん、牢屋のような場所。 読み途中の本を山に行き渓谷を見た帰りでなくしてしまった。電車に置いてきてしまったかな。本、「さよなら渓谷」になってしまった。 また買うのもなんだから、図書館で借りて続きを読む。 母子家庭の子供の遺体が渓谷で見つかる、隣の安アパートに住んでいるカップルの男も実はこの事件に関連があるという情報が出てきて、男の過去が調べられ話が進んでいく。 考えさせられるテーマ、心温まる希望を感じるのに、話の不自然さ気になってしまい、どうにも話に入り込めなかったな。最初の引き込み部分とラストは良かったのにな。
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集団強姦事件の加害者と被害者がなぜ一緒に暮らしているのか。周りからは理解されない業。 幸せになりそうだったから、と離れ離れになる2人が切ない。渓谷の涼やかさの届かない、ずっとじめじめした汗が張り付く部屋。 きっかけになった幼児殺しの隣人にももう少し迫ってほしかったな
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映画の広告の俳優さんたちの何とも言えない表情に惹かれ、原作であるこの本を手に取りました。ある幼児殺人事件をきっかけに、隣に住む男女の過去が明かされていく。レイプ事件の加害者と被害者、そのふたりが、なぜ一緒に暮らしているのか。事件が事件だけに、女性の立場から、被害者の感情の動きを、...
映画の広告の俳優さんたちの何とも言えない表情に惹かれ、原作であるこの本を手に取りました。ある幼児殺人事件をきっかけに、隣に住む男女の過去が明かされていく。レイプ事件の加害者と被害者、そのふたりが、なぜ一緒に暮らしているのか。事件が事件だけに、女性の立場から、被害者の感情の動きを、理解するのは難しい。
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ただの自分メモ 映画は知っていたものの観そびれており、すっかり忘れていたが、図書館でふとこのタイトルの小説を見つけ、原作があったのかと何気なく手に取り、そして一気に読み終えた作品。 こんなに重い内容の作品とは、露知らず。 色んな思いで、感情がぐちゃぐちゃになった。 歪な愛憎、という言葉が浮かんだけれど、それだと薄っぺらい。 事件当時の尾崎は、元はそこら辺にいる健全な大学生だったように思う。(決して尾崎を擁護するわけでは無い)ただ、日常にある様々な事件は、このように計画性もなく、善良に無難に生きてきた人間にも牡丹の掛け違えのように、或いは絶妙なタイミングの重なりの上に突発的に起こり得るものなのかもしれないと思う。 二人は歪なまま、世間から孤立した存在として、事件の加害者と被害者として、誰にも分からない「なにか」を共有してしまっている。果たしてこれは幸せなのだろうか?愛なのだろうか? ストックホルム症候群にも似ているが、単純にだからこれは愛では無いとは言い切れない。 そもそも、愛とは対象物や人によって違う感情であると思う。その感情を表すのに的確な言葉がなく、一番近い言葉が「愛」なので人はその言葉を多用するのであって、そこにはキレイな感情だけで無く、憎しみや、同情や、哀しみや、苦しみなど無限の感情が混ざり合っているモノだとおもう。 この小説では、そんなキレイではない愛のようなモノを垣間見たような気がする。 また、再読したら見方が変わるような気がする小説の一つとなりそうだ。
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映画を先に観たためネタバレで読む。ほぼ原作通りの映画だったが、原作をもっと掘り下げた登場人物の心の機微がよく表現された良い映画だったと読書後あらためて思う。
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辛くて、辛くて、生きていく気力すら失った女がいる。女は、憎くて、憎くて、絶対に許せない男と一緒にいる。どうしても許せない男に「私が死んで、あなたが幸せになるなら、私は絶対に死にたくない」、「あなたが死んで、あなたの苦しみがなくなるなら、私は決してあなたを死なせない」、「だから私は...
辛くて、辛くて、生きていく気力すら失った女がいる。女は、憎くて、憎くて、絶対に許せない男と一緒にいる。どうしても許せない男に「私が死んで、あなたが幸せになるなら、私は絶対に死にたくない」、「あなたが死んで、あなたの苦しみがなくなるなら、私は決してあなたを死なせない」、「だから私は死なないし、あなたの前から消えない。だって、私がいなくなれば、私は、あなたを許したことになってしまうから」 ゾッとするほど、恐ろしい言葉。でも、切なくて、悲しくなった。これもある種の愛であり、こんな愛し方しかできなくなってしまった過去の過ちに寂しさを感じてしまう。この二人はいったい、どんな人生を歩んで行くことになるのだろうと考えてしまう。二人の未来を想像し悲しくなる。心を抉るような愛憎の物語。 物語の始まりは、隣家の幼児殺害事件。この事件をきっかけに明らかになる過去の犯罪。事件がなければ、マスコミや警察に過去の犯罪を知られることなく、二人は過ごしていたはずである。 2017年6月、性犯罪に関する刑法が110年ぶりの法改正があった。だか改正後もなお、多くの課題が残っており、2020年に見直しがされるはずであったようであるが、実現はされていない。 また、日本の性犯罪に関しては、罪が成立するのに要求される要件が高く、同意のない性行為をされたことが明らかでも、「暴行」「抗拒不能」などの要件が証明されない限り、加害者は罪に問われない。警察に届けたとしても約6割が不起訴となるなど、被害者は泣き寝入りしているようである。本作の場合は、懲役3年、執行猶予5年の刑が言い渡されてはいるが、その後、加害者は普通に生活をしている。 刑が施行されても、被害者の負った心の傷は晴れるものではないなぁ…と、本作を読むまでは思っていた。 特に本作でも主人公で加害者・尾崎俊介の野球部後輩の藤本尚人のように親の会社ではあるが藤本建設の取締役となっており、何の制裁も受けていないような、感じていないような者もいる。おそらく加害者のほとんどは、自分の犯した罪を大きさを認識していないかもしれない。そんなことを匂わす描写が本作にもある。 そんな中で、尾崎俊介は、かなこに対する罪の意識を忘れたことがなかった。 過去の事件とともに生きている、事件からいつまでも逃げ続ける俊介とかなこ。 憎しみ、後悔から始まった苦しい愛もあることを本作を読んで思い知らされた。 「悪人」同様に読んでいる時よりも、読後に訴えかけてきた作品であった。 映画では、2013年にかなこ役を真木よう子、尾崎俊介役を大西信満で上映されたようである。
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ほのぼのした話なのかと思わせるタイトルとは裏腹に、内容は決して軽くはない。 幼い男の子の遺体が見つかり、その母親が殺害容疑で逮捕される事件から物語は始まる。逮捕された母親は、隣に住む尾崎という男と関係があり子供が邪魔になったと証言を始め、尾崎の妻もそれを肯定する証言をする。 全く身に覚えのない尾崎。なぜなら、それは嘘だからだ。なぜ尾崎の妻は、嘘の証言を事実として認めたのか。 新聞記者である渡辺はこの事件を調べるうち、尾崎には大学時代に集団レイプ事件を起こした過去があることを知る。 加害者である尾崎のことを調べながら、被害者である水谷夏美のその後の人生を辿るが、彼女は被害者であるにも関わらず、常にあの忌まわしい事件のせいで不幸に見舞われ、現在は行方不明になっているという事実に行き当たる。 行方不明なのは、尾崎の妻がその水谷夏美だからだ。名前を変えて戸籍もないまま、自分を不幸にした男と暮らしている。 男は一生償っても償いきれないと思い、彼女の側にずっといようと決めた。 女は彼が自殺することで罪の意識から解放され、その苦しみから逃れることが許せなかった。だから彼に生き続けることを課した。罪悪感に常に苛まれるよう一緒に暮らした。 だから、彼女が彼の目の前から消えるときは、彼を許した時だ。 わたしはいつも何かに怯えて暮らさなければならなかった。どこにいても、いつかはばれるのだろうと思った。 大切な人に打ち明けても、それは最終的に相手を苦しめ、その苦しみが暴力という行為になり、わたし自身を傷つけた。 結局いつになっても、どこへいっても、あのことは消えないのだ。犯され、無理矢理穢されたとしても、わたしの体が男たちのそれを受け入れたということは。 彼の気持ちが、やがて愛に変わりかけていた。 だから姿を消した。彼を許したのだろうと思う。 「自分は決して許されてはいけない」「必ず探し出す」尾崎は言うが、彼女にとっては迷惑だ。 それに納得しながら意味不明な質問をする渡辺は大馬鹿だ。だからおまえも奥さんに愛想をつかされるんだ。
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集団強姦の加害者と被害者のその後を描く。 全体的にみると、こんな甘いもんじゃないはずだし、切ない恋愛ものとしかとられないかもしれない可能性もあると思った。 ただ、作品の端々に、男視線でレイプというものをみるとこうみえるのだな、と分かるし、それをまた作者が客観的に捉えて描いていると感じる部分があって、男女の意識差を炙り出そうとした作品と捉えることもできた。 最も要らなかったのは作品の最後の記者の質問。 あれのせいで、苦しく切ない恋愛作品みたいになってしまっている。
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