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反貧困 の商品レビュー

3.9

156件のお客様レビュー

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2011/09/08

湯浅氏は東京大学の博士課程在籍の後、野宿者や生活困窮者の支援活動を続けてきた人。本書は、日本社会に「貧困」が厳然と存在しているという事実を伝え、貧困問題を我々市民及び社会がどのように捉えるべきか・そしてそこから如何に脱却するかを、著者自身の活動経験を踏まえて論じている本。 日...

湯浅氏は東京大学の博士課程在籍の後、野宿者や生活困窮者の支援活動を続けてきた人。本書は、日本社会に「貧困」が厳然と存在しているという事実を伝え、貧困問題を我々市民及び社会がどのように捉えるべきか・そしてそこから如何に脱却するかを、著者自身の活動経験を踏まえて論じている本。 日本社会は、「雇用」「社会保険」「公的扶助」の三層のセイフティネットが適切に機能せず、一旦足を踏み外すと一気にどん底の貧困状態まで転落してしまう「すべり台社会」だという。発端は90年代の長期不況の中で、財界の主導下に労働者の非正規化が進み、雇用が不安定化したことだ。更に非正規の労働者ほど社会保険のネットからも零れ落ち、最後に役所で生活保護を申請しようとしても違法に却下される。こうして貧困層に転落した者が、最悪の場合には犯罪(児童虐待、親殺し etc.)や自殺に走ってしまう。「先進国」の中で教育費の家庭負担が極めて高い日本社会では、親世代の貧困が子世代へと引き継がれてしまう。挙句、日本政府はこうした貧困問題を調査・認知しようとしない・・・。 湯浅氏は「貧困」という概念を単なる所得の低さではなく、"望ましい生活状態にアクセスできる現実的な可能性"としての"溜め(経済的な"溜め"としての金銭や資産だけでなく、いざとなったら助けてくれる親族・友人等の人間関係上の"溜め"、自分に対する自信等の精神上の"溜め" etc.)"が総合的に欠如している状態であると捉えなおす。つまり「貧困」とは、"望ましい生活状態"が現実的な選択肢とはなり得ない状況であり、この観点から「貧困=自己責任」論を明確に批判している。もっといえば、「貧困」とは、「貧困」を生み出せてしまうほどに"溜め"を欠いた社会の側の問題である、とする。こうして、「誰に対しても人間らしい生活と労働を保障できる」「人間が人間らしく再生産されて」いく「強い社会」が目指される。 興味深いのは、先日取り上げた堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』と同様に、本書でも貧困と戦争の関係に触れていることだ。貧困に免疫のない社会は戦争に免疫のない社会でもあると言い、「憲法九条(戦争放棄)と二十五条(生存権保障)をセットで考えるべき」だとする。 冷静かつ知性的な文章の下に流れている血の温かさが、本書の随所に感じられる。「生を値踏みすべきではない」という湯浅氏の言葉は重い。堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』と併せて読みたい。

Posted byブクログ

2011/03/22
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※このレビューにはネタバレを含みます

年越し派遣村で有名な湯浅氏の本である。 派遣村への反発もあったのでどちらかというと貧困問題には興味がなかったし、貧困問題に取り組む人は必ず小泉改革=悪の論調で私の考えと合わないので敬遠していたが、とりあえず読んでみることにした。 読んでみて思ったことは、「かわいそうだからお金つぎ込んで何とかして」という論調では決してないことだ。わずかな支援で社会生活を営むことができる人たちがいることと、それで健全に働くことができる人が増えれば社会トータルとしてプラスになる、という点に共感できた。また、湯浅氏の現状分析も優れており、納得させられるものがあった。 また、湯浅氏の行動は一方的な正義感を振りかざすものではないことが分かり、好感が持てた。 一度読んでみることをお勧めする。

Posted byブクログ

2011/03/21

最後の入学前課題のものでした。 この手の本は、書店にあっても食指が伸びないので課題という形で読めてよかったと思っています。 裕福なようではあってもこの国は裕福ではない。その理由と、それを改善していく方法について、著者の体験、運動を元に書かれています。 あまり堅苦しくなく、読みやす...

最後の入学前課題のものでした。 この手の本は、書店にあっても食指が伸びないので課題という形で読めてよかったと思っています。 裕福なようではあってもこの国は裕福ではない。その理由と、それを改善していく方法について、著者の体験、運動を元に書かれています。 あまり堅苦しくなく、読みやすかったです。

Posted byブクログ

2011/03/18

大学のレポートのために読んだ一冊だが、とても興味深い内容で、現代の貧困問題を学ぶ上の入門書といえる。

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2011/03/08

日本の貧困問題の入門書として必読の一冊だと思う。考えてみると、今の日本の社会の問題点は、「貧困」をキイワードにするとかなりの範囲をカバーできるのだと気づかされた。

Posted byブクログ

2011/02/24

現場は見ている人は違う、と思わせる本でした。湯浅氏のように、世界各地で貧困や人権問題に取り組まれているNPO等の方々には本当に頭が下がります。 本の中の、①今最低ライン以下の生活を強いられている人に対する生活保障、②貧困の世代を超えた継承を断ち切る、③失敗しても再挑戦できるよう...

現場は見ている人は違う、と思わせる本でした。湯浅氏のように、世界各地で貧困や人権問題に取り組まれているNPO等の方々には本当に頭が下がります。 本の中の、①今最低ライン以下の生活を強いられている人に対する生活保障、②貧困の世代を超えた継承を断ち切る、③失敗しても再挑戦できるような社会にする、という点に賛成です。 それらを前提とした上で、私自身は貧困の自己責任論を否定すべきでないと思います。「健全な社会とは、自己責任論の適用領域について、線引きできる社会のはずである。p83」という言い方で本の中でも触れられていますが、この見方に賛成です。努力し続けた人と、ただ生きてきた人との結果が同じでいいはずがありません。健康で文化的な最低限度の生活をすべての国民に保障しながらも、それを超える部分では努力によって結果に差異が生まれる、つまり努力が報われる社会であるべきです。 その点から、努力も生まれた境遇もそして生活水準さえも関係ない、民主党の子供手当てのような政策には断固反対です。そんなお金があるなら、本当に苦しい母子家庭等に集中させればいいのにと思ってしまいます…政治家の方は票に関係ないことはできないのでしょうか。 また、生活保障等上記の政策を実施するためには、必ず誰かが痛みを引き受けねばなりません。不安定な雇用を禁止することで企業に痛みを受けさせるのか、累進課税を強化することで高所得者が働いたことによって得た報酬を切り取るのか、それとも消費税増税によってすべての国民で痛みを分かち合うのか。早くしてくれと叫びたいところですが、国会も大変ですね。

Posted byブクログ

2011/02/13

2008年大仏次郎論壇賞受賞。 著者はNPO法人活動を通して貧困の現状を目の当たりにし、反貧困を私達に訴えかける。 印象深かったのは、「無知に基づく自己責任論」という言葉だ。貧困に陥っている人々に「努力が足りない」「自己責任だ」という言葉を送ることは、貧困の現状に対して「無知」...

2008年大仏次郎論壇賞受賞。 著者はNPO法人活動を通して貧困の現状を目の当たりにし、反貧困を私達に訴えかける。 印象深かったのは、「無知に基づく自己責任論」という言葉だ。貧困に陥っている人々に「努力が足りない」「自己責任だ」という言葉を送ることは、貧困の現状に対して「無知」であるということだという。 まずは知ることが大切だ。この本を読むことによって日本の社会保障制度が負のサイクルに陥り、人々から様々な意味での「溜め」が奪われていることが良く分かる。現状を知ることによって「無知」を脱却し、貧困に対して断固反対しなければならない。

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2013/07/20

すべり落ちていく仕組みとか、日本の貧困の現状は詳しく書いてあるんだけど、それでもいまいち身近なこととして感じられていない自分がいる。お上の人たちなら尚更そうなのかな。

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2011/01/13

現在、日本でも問題になっている格差についての本です。筆者が生活困窮者の支援をする活動を通して感じたことが書かれています。貧困は自己責任なのか、どうして拡がってきているのか、この問題には社会全体で取り組んでいく必要があると思いました。(推薦者:経営1年女性)

Posted byブクログ

2011/01/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

思った以上に勉強になった一冊でした。 自分も比較的どちらかと言うと、格差に対して、筆者の指摘通りの見方をしていたので、筆者の言いたいことが良く伝わりました。 自分は貧困は全てとは思っていませんでしたが、大半がフリーターや派遣労働を選択している自分たちの責任であり、それを救済すると言う意味が正直理解出来ませんでした。 少し前にあった、派遣の大量解雇。 本音を言うと、契約期間が早いか遅いかの違いで、数ヶ月後には別な職を探さなくてはいけない状況なのに、なにがそんなに問題なのか理解に苦しんでいました。 全てがそうとは思っていませんでしたが、働く意志もなく、計画もなく、今日をただ生きている人が自分で選択して現在の環境があると思っていました。しかしこの本を読むことにより、自分の考えが少し変わりました。 たしかに選択出来ない、努力ではどうしようも無い状況が多々あったり、貧困の連鎖からの脱出は容易ではなく、それに対して、社会はもう少し理解と援助が必要と理解しました。

Posted byブクログ