枯木灘 の商品レビュー
和歌山の山奥が舞台で…
和歌山の山奥が舞台で、30人くらいの登場人物のほとんどが血縁者です。全編を通じて、田舎特有の閉塞感(知的な洗練とは程遠いライフスタイルとか、動物のように奔放な性交とか・・・)に満ちています。
文庫OFF
読むのにかなり辛いヘビーな本でした。 土や自然の描写が、触感聴感的なところが気持ちに残りました。ちょうど読んだ時期が、キーともなる3月2日前後となったのが、ちょっとした驚きでした。
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非常に評価の高い作品なので、頑張って読んだ。実に辛い読書であった。しかし、面白いのは事実であった。 海と山に囲まれた紀伊半島の新宮市を舞台にした小説。主人公のモヤモヤが綿々と綴られ、彼を軸に3つの家族の現在と過去が濃密に語られる。 狭い町、行き場のない主人公および周囲の人々、狭い世界で噂や密通や喧嘩や殺人や自殺や殺人やらとおどろおどろしい事件が似たような状況から繰り返し起こる。 この狭い嫌な世界を象徴するのが主人公の義理の伯母である。いつもあることないこと言いふらし、自己憐憫で涙を流し、尊重されないと憤慨する。この人物が出てくるとまたか、とうんざりするが、実は町全体がこの人と同様なのだ。 フォークナーに影響を受けたのだろうな。アブサロム、アブサロム!を思い出した。 作者の履歴を見るとこの主人公とまるきり同じだ。しかし、日本的私小説という枠を大きくはみ出すスケールの大きさを感じた。暗い、濃い、狭い土地の物語なのに。熊野サーガとでもいうのだろうか。連綿と続く家族のややこしくただれた歴史に、個人を超えた神性が宿っている。 いやったらしいことこの上ないが、中毒性のある作品である。
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岬の続編の小説で主人公は同じで、場面も同じである。秋幸が主人公であり土方の生活が描かれたのち、腹違いの弟を殺して刑務所に入り、そこで秋幸は登場しなくなる。最後の場面は秋幸と一緒にいた徹の行動である。 全集3では人物系図のみ掲載されて地図は掲載されなかった。途中で地図が掲載されて...
岬の続編の小説で主人公は同じで、場面も同じである。秋幸が主人公であり土方の生活が描かれたのち、腹違いの弟を殺して刑務所に入り、そこで秋幸は登場しなくなる。最後の場面は秋幸と一緒にいた徹の行動である。 全集3では人物系図のみ掲載されて地図は掲載されなかった。途中で地図が掲載されていればもっとわかりやすかったが、いかんせん土地のイメージがつかない。
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途中までしか読んでいません。 半分までは読もうと思って読み進めましたが、話や文体を全く好きになれず、挫折しました。 ただ、今の私には合わなかったというだけですので、この作品がくだらないということではありません。 マチスモについて書かれた本としては価値があります。 登場人物の...
途中までしか読んでいません。 半分までは読もうと思って読み進めましたが、話や文体を全く好きになれず、挫折しました。 ただ、今の私には合わなかったというだけですので、この作品がくだらないということではありません。 マチスモについて書かれた本としては価値があります。 登場人物のほとんど全員が、人を攻撃して楽しんだり、血縁者に対して名誉のためと言って暴力を振るったりします。このようなことは、実際昔の田舎で起きていたことだとは思いますが、あまりに幼稚で不快です。 もちろん不快な事ばかり起きる小説はたくさんあり、その中に傑作は多数ありますので、不快=駄作とは言えません。 この小説が読み進めにくいのは、登場人物がなぜそのような行動を取っているのかという重要な点がわかりにくいからだと予想します。 少し調べたところ、『推し燃ゆ』で有名な宇佐見さんが、中上さんを好きらしいと知りました。私は『推し燃ゆ』も嫌いだったので、納得です。 個人的な意見ですが、この作品とマルケス『百年の孤独』は比べるのはマルケスへの侮辱です。
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ご存知著者の分身秋幸を主人公に据えた3部作の2作目。相変わらず読みにくいグツグツ文体だが、著者の描きたい事が結晶して情動がすごい。 なお巻末の相関図チラ見はマスト。
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主人公の母は最初の夫と死別し、今は別の男と再婚している。だが主人公の実父はそのどちらでもない。ある時期に母と内縁関係にあったさらに別の男が実父である。主人公には母は同じで父の異なる兄弟が何人かいて、そのうち長男は自殺している。姉の義理の兄が、そのまた義理の弟によって刺殺されるという事件が数年前に起きた。主人公は母の現在の夫の連れ子のもとで土方として働いている。義父には若い頃に遊郭に売られた経験をもつ姉がいる。実父は悪い噂の絶えない男で、主人公の母とは別に、二人の女に自分の子を産ませている。主人公は腹違いの妹にあたるその子と関係を持ったことがある。。。 というようなドロドロでわかりにくい血縁関係がぐっちょんぐっちょんになって展開される物語が息苦しい緊張感を醸し出す、読んでてちっとも爽快な気分にならない作品。 主人公の実父がなにやら謎めいた存在のように描かれることが、そこはかとない芸術性を作品にもたらしている気がする。
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血は複雑な螺旋状のつながりで続いていく。 兄は自分であり、自分は弟の兄であり。 父は自分であり、自分の父である。 どこまでも繋がる。 たとえそれは血で無くとも土地がつないでゆく。 波打ち際に繰り返される飛沫のように。 2021/11/14 中禅寺湖畔「Maple」にて
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フォーク歌手友川カズキの著書に署名が出ていたので、読んでみた。 友川カズキが送ってきた人生を想像させるような、土方とむき出しの行き方が、書かれていた。 紀伊半島の南、片田舎。 土方の喜び、むき出しの愛、性、そして複雑極まりない人間関係。そこにあるものが、作り物でなくごちゃごちゃ...
フォーク歌手友川カズキの著書に署名が出ていたので、読んでみた。 友川カズキが送ってきた人生を想像させるような、土方とむき出しの行き方が、書かれていた。 紀伊半島の南、片田舎。 土方の喜び、むき出しの愛、性、そして複雑極まりない人間関係。そこにあるものが、作り物でなくごちゃごちゃと押し寄せる。 読み終わってほっとしているが、まだ続きも読みたい。
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登場人物の関係性に追いつくまで時間がかかった。。。 文体が単調なところがあるけど、ところどころ表現される自然との一体化的な世界観は好き。ある出生所以のアイデンティティーに対する苦悩、血の運命に翻弄されるといった内容かと。 登場人物それぞれの描写を緻密に表しているのか、人となりが想...
登場人物の関係性に追いつくまで時間がかかった。。。 文体が単調なところがあるけど、ところどころ表現される自然との一体化的な世界観は好き。ある出生所以のアイデンティティーに対する苦悩、血の運命に翻弄されるといった内容かと。 登場人物それぞれの描写を緻密に表しているのか、人となりが想像できる筆致は読みごたえある。乃木坂の齋藤飛鳥さんがどこぞでおすすめしてたから手に取ってみたけど、意外に性描写もあるので妄想が掻き立てられます。
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