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枯木灘 の商品レビュー

3.9

61件のお客様レビュー

  1. 5つ

    21

  2. 4つ

    16

  3. 3つ

    12

  4. 2つ

    4

  5. 1つ

    3

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2011/08/23

まず、旅とかでくさるほど時間がなかったら、読みきらんかったやろうな。家系がわかりにくすぎる!ペンと紙を用意して読むべし。と、思いきや、巻末についてる!読みきってから気づいた、遅いんじゃ! で、内容はと言うと、すばらしい。そんなあほなという過去、事件の中に血の宿命が克明に描かれて...

まず、旅とかでくさるほど時間がなかったら、読みきらんかったやろうな。家系がわかりにくすぎる!ペンと紙を用意して読むべし。と、思いきや、巻末についてる!読みきってから気づいた、遅いんじゃ! で、内容はと言うと、すばらしい。そんなあほなという過去、事件の中に血の宿命が克明に描かれている。繰り返される秋幸の土方姿の描写も、宿命を表すのに一役買っている。 あとがきを読むに、私小説的なところがあるのだろう、ノンフィクションかと思うようなリアリティを持っていた。 土地とは何ぞや、家族とは何ぞや、血とはなんぞや。そんな小説。

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2011/07/31

複雑な血縁の迷路の中で、それぞれなりの救いを求めて炎天下の山道を、海岸を、そして路地をさまよいながらじりじり焼かれていく者たち。繰り返しを多用した文章がその袋小路加減をあおる。日本語なのだけれど非常に冷徹というか、マシーナリーな文体はおそらく意図的なもの。淡々と、なまなましい事件...

複雑な血縁の迷路の中で、それぞれなりの救いを求めて炎天下の山道を、海岸を、そして路地をさまよいながらじりじり焼かれていく者たち。繰り返しを多用した文章がその袋小路加減をあおる。日本語なのだけれど非常に冷徹というか、マシーナリーな文体はおそらく意図的なもの。淡々と、なまなましい事件を塗り重ねて行きます。一方、時折はさまれる周囲の自然への描写は色彩がアスファルトのかげろうにゆらぎ、幻惑的なほど。 読後感は「やるせない」「うわあ終わった」。ハツカネズミを閉じられた空間でほっとくと、近親交配で増えまくったあげく共食いを始めるそうですが、人間も性根ではそう変わらないことを(大なり小なり)やりながらあちこちで閉鎖的に群れて生きてきてる。そんなことを考えます。 余談ですが、読み始めてから暫くは登場人物とその関係の複雑さがまったく頭で追えず、家系図を描きながら読んでました。新しい人物や関係性がさも当たり前のごとく追加されるので、その度に書き直しつつ…たいへんでした。

Posted byブクログ

2011/06/14

何か芳醇な映画を見ているような気分だった。というかこんな映画を見た気がするなとか思ってたら、サッドバケイションの元ネタらしい。深く納得した。

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2011/02/23

音楽に好き嫌いがあるように、小説にも好き嫌いという感情が存在する。 当然その感情は個人差があるという事を断った上で この本は「嫌い」であるというのが読了中、読了後の感想です。 主人公の青年は土木建築業(いわるゆ土方)で働く事を喜びとしているが、 自分の生い立ちや周囲の人間関係に悩...

音楽に好き嫌いがあるように、小説にも好き嫌いという感情が存在する。 当然その感情は個人差があるという事を断った上で この本は「嫌い」であるというのが読了中、読了後の感想です。 主人公の青年は土木建築業(いわるゆ土方)で働く事を喜びとしているが、 自分の生い立ちや周囲の人間関係に悩み、最後には一つの事件を起こして物語は終わる。 有名作家の書く文章らしく読みやすく詳細な表現にも優れ、 主人公がすごす枯木灘周辺の情景とその周りの人々が目に映るかのようだ。 それにもかかわらず、私はこの小説が嫌いである。 扱っているテーマ、物語の展開(かなり独特な結びをする)、それらがどうにも受け付けなく 半分程読んだ時点で中断しようと思ったが勢いで何とか読み進めた次第だ。 この小説は、たとえるなら土日の昼間にやっているサスペンス番組である。 それらの番組を侮っているわけではない。 ストーリーや演出に優れ、ベテラン俳優達が演じるサスペンスは 見始めるとついつい引き込まれてしまう、そういう経験は誰にでもあるだろう。 ただ見終わった後に毎回感じるのはあまりにも「どうでも良いテーマだなぁ」という事である。 くどいようだが小説自体の品質が低いわけではない。 ただこのようなテーマに興味が持てない人には苦痛以外の何者でもないだろう。 他のレビューを見て久々に大好きだったドストエフスキーを読み返したくなった。 自分が小説の楽しみ方を忘れていないか再確認することもできるだろう。

Posted byブクログ

2014/02/07

20代の頃、紀州を旅行したことがある。駅前や街道のあたりでも海に下る斜面ばかりで、平たい場所が無かった。海から伸びる山と川しかなくて、遠くを見通す処が何処にもなかった。 新宮から本宮に向かうバスの道沿いにへばり付くように湯の峰温泉があった。伊豆や群馬の温泉のようなものを想像してい...

20代の頃、紀州を旅行したことがある。駅前や街道のあたりでも海に下る斜面ばかりで、平たい場所が無かった。海から伸びる山と川しかなくて、遠くを見通す処が何処にもなかった。 新宮から本宮に向かうバスの道沿いにへばり付くように湯の峰温泉があった。伊豆や群馬の温泉のようなものを想像していたら、ギャップが大きくて驚いた。 紀州の人には申し訳ないが、逃げ場所の無い閉鎖感にクラクラしそうだった。 読まなければと買ってから、20年ほど積んどいた本。 主人公があの男とか蝿の王と呼ぶ邪悪な実の父。血のつながりの無い父と兄との生活。母違いの兄弟や父違いの兄妹達。血縁者の間の憎悪、暴力、近親相姦、殺人。主人公が肉体労働の中で自分を空しくし、季節に同化するする喜びが紀州の自然の香りを濃厚に感じさせてくれる。しかし、それ以外の時間は否応なく地縁と血縁の痛みが絡まってくる。 決して流麗な文章ではない。無駄な装飾が無く、ゴツゴツしているし、何度も繰り返される表現内容もある。だけど、じわじわ浸みてくるようで、飽きることはなかった。 自分は路地で生まれ育ったと言い、路地の人々も集まってくる。路地の何たるかは説明が無いが、主人公には大切な場所と判る。その路地の盆踊りで語られる「兄妹心中」。本当にこんな盆踊りの歌があるのだろうか。 主人公や登場人物は皆、少しづつ狂気を抱えたままいる。なんとか読み終えたが、まだ物語は終わっていない。逃げずに中上健次を今後も読んでいこうと思う。

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2011/02/15

とにかく重々しいですね… 百年の孤独を読んだ時にも思ったのですが、私は一族ばかりが出てくる話は理解がおっつかないようです。誰が誰だか誰と誰が繋がってるんだか全く分からなくなってきます… 最後も結構絶望的でしたね。 理解できればものすごく好みな話だとは思うのですが。 チラリ調...

とにかく重々しいですね… 百年の孤独を読んだ時にも思ったのですが、私は一族ばかりが出てくる話は理解がおっつかないようです。誰が誰だか誰と誰が繋がってるんだか全く分からなくなってきます… 最後も結構絶望的でしたね。 理解できればものすごく好みな話だとは思うのですが。 チラリ調べたのですが、枯木灘って日本版百年の孤独とか言われてるんですね! という事は私はマジックレアリズムで描かれる血縁関係の話に対してリテラシーが足りていないのでしょうか…。でも大江健三郎は好きなんですが。 そうか、大江健三郎は登場人物が少ないからか。 11.01.28

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2011/02/05

とにかく辛かった、読むのに2週間以上かかった本は久し振りかも。救いのない話は嫌いじゃないけど、これは辛過ぎた。何故に評判が良いのか、最後まで分からなかったのは自分のレベルが低いのか?そうなのか?

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2011/01/18

「血管を腫れあがらせる血を自分の体から絞り出したい」 「すべては遅い。秋幸は見た。知った。やってしまった」 重なりあう、血の関係。人、が濃い。家族小説として誰も紹介してくれないのはなぜか。『岬』から読むと関係性がわかりやすい。 こんな紀州に惹きこまれるとは思わなかった。

Posted byブクログ

2010/02/01

『枯木灘』という小説を知ったのは、学校の先生の薦めでした 紀州という土地を舞台にした人間小説です。 重厚なストーリーと息詰まる展開は流石の一言に尽きますが、何よりも「紀州に行きたい」と思わせる内容でした

Posted byブクログ

2010/01/30

一度は読まなければと思いながら、思っているうちに著者は逝ってしまった。何度も書店で手に取りながら買うには至らなかった。「重い」「暗い」「血」といった先行イメージが植えつけられていたせいだろう。 著者は戦後生まれで初の芥川賞の受賞者で46歳という若さであの世に旅立った。死因は腎臓...

一度は読まなければと思いながら、思っているうちに著者は逝ってしまった。何度も書店で手に取りながら買うには至らなかった。「重い」「暗い」「血」といった先行イメージが植えつけられていたせいだろう。 著者は戦後生まれで初の芥川賞の受賞者で46歳という若さであの世に旅立った。死因は腎臓癌。 『枯木灘』 はこの著者では数少ない長編で集大成だと何かで読んだので第一冊めに選んでみた。 末尾にこの物語に登場する人たちの家系図が掲載されているほど血縁関係が入り組んでいる。本編でもくどいほど関係が書かれているが、それでも、家系図を折々に見なければ理解しにくい。 「変形私小説」という書評もあった通り自己の内面を深く追求した小説なのかもしれない。 予備知識を裏切らず、重く、暗く、エロく、汚い世界が展開していた。 しかも読みにくい文章なので何度も読み返さなければ理解できない。 こういう書き方があるのかと、妙なところで感心させられた。 こんなしいどいものは二度と読みたくないと思うけれど、次々と読みたくなる作家らしい。 でも、私は、もう、いい。 うまく表現できないが、しばらく立ち直れないような感じで読書から足が遠のきそう。 それだけ、存在感があるということなのだろうか。 一冊だけで忘れられない作家。中上健次…。 ふと、思った。 同じ設定でファンタジー風に書いたらどうなるんだろう、と。

Posted byブクログ