倒立する塔の殺人 の商品レビュー
女子学院で起こるミステリーと人間模様の移り変わりが美しい。 女子校特有の雰囲気、憧れとドロドロな感情が不快になることなく描写されていて気持ちいいです。 ミステリーとしても秀逸。 過去と現在を行き来しながら真実に近づいていく過程もドキドキしながら読めました!
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皆川さんの作品のなかでは、読みやすかった。 散らばっていた謎が後半すっきり解ける。 特に意外性はなかった。 少女特有の執着と残酷さは、共感できる。 実在した教師の話が辺境図書館にうっすら載っていて、読んだ。 戦時中は周囲に責められないように隠れていた教師。 作中で...
皆川さんの作品のなかでは、読みやすかった。 散らばっていた謎が後半すっきり解ける。 特に意外性はなかった。 少女特有の執着と残酷さは、共感できる。 実在した教師の話が辺境図書館にうっすら載っていて、読んだ。 戦時中は周囲に責められないように隠れていた教師。 作中でも軽くしか出ないが、こんな大人がいるから、人間不信になっていく。
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正確に書くと星3.7。 怖いわ!というのが読み終わって1番大きな感想だった。 theミステリーという感じで、戦時中の少女たちがある小説を書いていくのと同時に、現実でも事件が……。構成はあまりない感じで面白かった。 これはかなりの人が犯人を当てられないと思う。 YAなのであんまり怖...
正確に書くと星3.7。 怖いわ!というのが読み終わって1番大きな感想だった。 theミステリーという感じで、戦時中の少女たちがある小説を書いていくのと同時に、現実でも事件が……。構成はあまりない感じで面白かった。 これはかなりの人が犯人を当てられないと思う。 YAなのであんまり怖くないかと思って寝る前に読んだのは失敗だった。 絶対YAじゃなくて普通の文芸にするべきだと思う。 内容でも結構怖いが、とどめに最後の絵画。 夜だったから余計に不気味だった。
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孔雀羽を模したマーブル模様のノートにそれぞれの少女が書き記した小説「倒立する塔の殺人」それは、ある少女の過去を糾弾するために用意されたものであった。海外文学に馴染みがないひとは少し頭がいたい。文章がスッと入らず、苦しかった。しかし、中盤より盛り上がり。最後の展開はあっと驚いた。事...
孔雀羽を模したマーブル模様のノートにそれぞれの少女が書き記した小説「倒立する塔の殺人」それは、ある少女の過去を糾弾するために用意されたものであった。海外文学に馴染みがないひとは少し頭がいたい。文章がスッと入らず、苦しかった。しかし、中盤より盛り上がり。最後の展開はあっと驚いた。事の始まりはとある二人の少女ではなかったのか。すっかり騙されてしまった。戦争の気配が濃く、全体的に暗い。少女たちの感情も嫉妬、恋慕などが渦巻いて、心にわだかまる。彼女達は無垢で残酷である。
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エッあの皆川先生がYAレーベルで執筆!!?と大層驚いたそこのあなた。 安心してください、いつもの皆川博子ですよ。 ちゃんと戦時中の陰惨な日常風景あり、女学生の淡くドロドロした慕情あり、ほんのり同性愛描写あり、耽美かつ猟奇的ミステリあり。見事です。
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戦時下の女学校を舞台にした幻想ミステリー。女学生が回し書きした小説「倒立する塔の殺人」。劇中劇の体裁をとっており、現実と虚構が交錯する。百合要素も多分にあり。作者紹介にあるとおり、甘美な毒を含む幻想的な物語世界を紡ぎだしている。
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113:作中作と、現実がリンクしつつ発展、展開していく物語にぐいぐい引き込まれました。女学校とか、エスとか、読み手を選ぶかなあとは思うのですが。歪んでいるからこその面白さ? 私にはきっと書けない、だからこそこのいびつさが眩しくもあるのです。
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戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。蔓薔薇模様の囲みの中には、タイトルだけが記されている。『倒立する塔の殺人』。少女たちの間では、小説の回し書きが流行していた。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。手から手へと、物語はめぐり、想いもめ...
戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。蔓薔薇模様の囲みの中には、タイトルだけが記されている。『倒立する塔の殺人』。少女たちの間では、小説の回し書きが流行していた。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。手から手へと、物語はめぐり、想いもめぐる。やがてひとりの少女の不思議な死をきっかけに、物語は驚くべき結末を迎える…。物語が物語を生み、秘められた思惑が絡み合う。万華鏡のように美しい幻想的な物語。
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皆川博子さんの特徴はなんといってもアカデミックで耽美幻想的な上質の文章、極上の酩酊を誘う退廃的な雰囲気、清濁併せ呑む世界観、美麗な登場人物……数え上げたらきりがないんですが、とにかく一度はまると抜け出せない、麻薬のような魅力があります。 毒にも薬にもならない小説が多い中で、皆川博...
皆川博子さんの特徴はなんといってもアカデミックで耽美幻想的な上質の文章、極上の酩酊を誘う退廃的な雰囲気、清濁併せ呑む世界観、美麗な登場人物……数え上げたらきりがないんですが、とにかく一度はまると抜け出せない、麻薬のような魅力があります。 毒にも薬にもならない小説が多い中で、皆川博子の小説はどれも強烈な毒をもっている。 感性があうひとにはたまらないんじゃないでしょうか。 第二次世界大戦終戦直後、焼け野原と化した東京のミッションスクールのチャペルで、一人の女子生徒が変死を遂げた。 その生徒の死には「倒立する塔の殺人」と題され、ミッションスクールの生徒間で回し書きされた小説が絡んでいるらしい。 死んだ女生徒に憧れていた小枝は、異分子のイブとあだ名される同級生の力を借り、未完の小説の続編を模索するー……。 シスターの頭文字をとりSと呼ばれる特殊な関係、友情。 物資が欠乏し女学生であっても工場に駆り出された過酷な時代の中、語り手から語り手へと受け継がれる禁断のノートがもたらすのは災厄か、それとも…… 美術や文学の教養の深さに裏打ちされたアカデミックな会話、驕慢で清楚、可憐で邪悪な少女達の描写が素敵すぎる。 「カラマーゾフの兄弟」が重要なキーワード……ってほどでもないですが、登場人物を繋ぎ合わせるキーアイテムとなってるので、カラマーゾフ既読の方にもぜひ読んでほしい。どの登場人物が好きかで性格がわかるという指摘にはぎくりとします。 擬似姉妹愛をメインに据えたミッション・スクール物としても読めるのですが、ミステリ的なギミックも仕掛けられていて、ラストの二重の陥穽には「やられた!」と感嘆しました。 恩田陸の「蛇行する川のほとり」とか好きな人は絶対ハマると思います。 一冊のノートとともに語り手が受け継がれていく形式は桜庭一樹の「青年のための読書クラブ」と共通ですね。あわせて読んでみると楽しいかもしれません。 ただ、難を言うなら、設楽さんが可哀相すぎる……聡明な子なのに、あの扱いは酷え……。 ラストで自信たっぷりに将来の夢を語るところでは皆川さん本人がモデル?と勘ぐりましたが、どうなんでしょうね。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
戦中から終戦後へかけての女学校を舞台としたミステリ。 空襲で家族を失った女学校の生徒・阿部欣子は、級友の三輪小枝からあるノートを渡される。 そのノートは表紙に「倒立する塔の殺人」と書かれ、数人の女学生の間で書き継がれた物語だった。 小枝にノートを託した先輩・上月葎子が空爆によって死んでしまい、未完となった物語を欣子の視点から解読して欲しい、と小枝は言う。 「倒立」とはいったい何なのか、上月葎子はなぜ死んだのか・・・。 作中小説と現実とが絶妙に絡み合う入れ子構造のミステリ。 入れ子構造というだけでも複雑なつくりになっているのに、語り手の欣子は手記を順番通りに読まないので、読者は頭がこんがらがってきます。 ノートに書かれた作中小説の「倒立する塔の殺人」があり、その小説を書いた少女たちの手記があり、さらにその外側にノートを読む欣子がいて…という入れ子の入れ子となっており、しかもそれぞれ謎が散りばめられています。 事実と虚構が絶妙に同居してて面白いのですが、情報を整理しキーとなる伏線を拾っていくだけで精一杯でした。 また、著者が実際に経験したのであろう戦禍の描写が生々しく、リアルでした。 空襲で家族や友人を次々と失い、死が日常となったことに麻痺してしまう少女たちが虚無感をつのらせていくさまは胸にこたえました。 閉塞的な状況の中、彼女たちは絵画や文学に耽溺したり、ワルツを踊ったり歌ったりといった密やかな楽しみを共有します。 制限されているからこそ、美に触れることで現実からの逃避をはかったり精神の均衡を保っているのかもしれない。 そんな彼女たちが哀れでしたが、人間の渇望に力を与える芸術の大きな力も感じました。 友人の死という物語を必死に紐解こうとする彼女たちには未来への希望も感じることができます。 ミステリの謎解きはよくわからなかったのですが、それだけに終わらない大きな物語世界を堪能できました。
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