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倒立する塔の殺人 の商品レビュー

3.6

81件のお客様レビュー

  1. 5つ

    10

  2. 4つ

    28

  3. 3つ

    24

  4. 2つ

    6

  5. 1つ

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2013/06/03

ラノベ感覚で読みはじめたら、なんか全然違って読みにくくて戸惑ってしまった。 耽美で古典的な文調と、戦中のモンペ姿で軍需工場に駆り出され空襲で家族を失う彼女たちの現実が相まって、なんともいえない雰囲気でした。 「倒立する塔の殺人」という回し書きの小説とそれに付随する手記で語られて...

ラノベ感覚で読みはじめたら、なんか全然違って読みにくくて戸惑ってしまった。 耽美で古典的な文調と、戦中のモンペ姿で軍需工場に駆り出され空襲で家族を失う彼女たちの現実が相まって、なんともいえない雰囲気でした。 「倒立する塔の殺人」という回し書きの小説とそれに付随する手記で語られている部分と、日常を描いているところとだんだん混ざってきてすごい独特な空気感になってます。 女子高っていう閉塞的な乙女空間は、いつの時代も美しくも残酷で、刹那的で強かだなぁ。

Posted byブクログ

2013/05/25

イラストややミステリYA! ということで若者を意識してた作品なのだろうけど、皆川作品なので大人でも楽しめる。戦時下から戦後の女子高が舞台とあって、時代や少女ならではの残酷さがピリッと効いたラストが印象的。そして日本の近現代ということで、名前に惑わされる苦痛がなくて読みやすいぞ。 ...

イラストややミステリYA! ということで若者を意識してた作品なのだろうけど、皆川作品なので大人でも楽しめる。戦時下から戦後の女子高が舞台とあって、時代や少女ならではの残酷さがピリッと効いたラストが印象的。そして日本の近現代ということで、名前に惑わされる苦痛がなくて読みやすいぞ。 あらすじ: 太平洋戦争末期、都立女子高と近隣のミッションスクールでは学徒動員により授業が停止し軍需工場となった学校で作業をしていた。労働者階級の家に育ち上流階級の子女が多い学校になじめない、異分子なのでイブまたは何を考えているか解らないためヌーベーことベー様とあだ名された阿部欣子は家族と家を失い、組んで作業をしている三輪小枝(さえだ)の家へ居候することに。ある日小枝に渡された一冊の本「倒立する塔の殺人」。これを読むことで小枝と交流のあったミッションスクールのお姉さま律子失踪の謎を解いて欲しいと頼む。その本はミッションスクールを舞台にした手書きの推理小説だった。小枝、ミッションスクールの律子と杏子、さらに律子に憧れるジダラックこと設楽久仁子。この四人が紡ぎだした物語の真相は――。 戦時下の描写が欣子視点で淡々と述べられていくにつけて、強烈な現実感があった。 昨日まで一緒に働いていたクラスメイトが、翌日には疎開していなくなる、クラスメイトの家族が空襲で亡くなった、自分の家が空爆によって破壊された、父親が戦地で死亡した、学校の半分に爆弾が落ちた……。淡々と語られているからこそ、特別じゃない。この時代の人々が日々こういう現実に直面しているというのが伝わった。暗澹たる戦時下の雰囲気にリアル感があって、ドラマチックに語られるよりも痛い。これは皆川さんによって書かれているからこそっていうのは大きい。彼女自身が生き抜いてきた世界だもの。 一方、どこの時代でも変わらないような学生社会はこういう時代の中でも、逞しく生きている少女がいることを教えてくれてほっとした。 ミッションスクールの律子と杏子、都立女子高の小枝の絵画や小説談話、ダンスに興じる描写は戦時下とは思えないほど優雅。がっちりした体形で、労働者階級の娘、欣子の異分子のイブやベー様、いやらしい教師、下卑たタコのゲビダコ、ちょっと思い込みが強いミッションスクールの少女、設楽久仁子の自堕落ことジダラックといったあだ名がささやかれる直截的で残酷な風習は時代を超えて存在する。「ごきげんよう」なんて微笑を交わす少女たちが登場しても、文学や絵画の薀蓄を語る少女が登場しても、考えていることは大差ないなと共感できた。それになんだかあだ名が「ぷ」と噴出してしまいそうなものばかりで楽しい。ここらへんに皆川さんの諧謔味が少し見られる。 欣子の体型や冷静でしっかりとした考え方は、だからこそ流されず安定感があって、なかなか安心感があった。しかしやはり戦時下を生きた少女とあって、その冷静さはある場面では怖いほどだった。さらに似た境遇にある久仁子もそのある種の冷徹さを抱いている。 お嬢様の小枝にはない、鋭さ。 久仁子はともかく欣子ならどんな困難でも立ち向かえるだろうね。 一方「倒立する塔」という謎の回答はなるほどと思ったけれど、きつねにでも騙された気分かも。まあ美しくしかし毒を隠し持った世界観にはぴったりかも。トリック自体ではなく、作中に登場するリレー小説たる「倒立する塔の殺人」と律子や杏子、小枝の過去、さらに律子失踪後の作中の「現在」たる欣子たちの話が絡まり合っていくのは職人技としか言いようがない。さすが皆川博子! しかし女子高の描写には思わず笑ってしまった。 エスことシスターという特別親しい先輩に導いてもらう制度があるんだって。なんだかどこかのライトノベルみたいじゃない。それに皆川作品特有の、悪趣味で劣悪な環境描写や性描写が少ない。ここらへんが非常に少女小説的で、YA! を意識しているだろうね。

Posted byブクログ

2013/05/26
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表紙と雰囲気から、昔の綺麗な女学生たちが華やかに交流する乙女ティックな話だろうと思ったのがまるで違っていて、読みだして面食らった。 あらすじもだけど、戦時中の生活感をリアルに感じられたのがすごく面白かった。 魅力的とは云い難い人物として登場する子が最後に驚くべき聡明さを見せたりして、しびれたー!

Posted byブクログ

2013/04/10

舞台は流麗な装丁からは想像ができないような、戦時中の日本。防空服を身にまとって、軍需工場で働く日々を送る少女たちは、蔓薔薇とともに秘めた思いを物語に織り込んでいく。いつの時代でも女の子は夢想する生き物 なのかもね。

Posted byブクログ

2013/03/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ」より。ミステリーYa!シリーズ。そのためか女学校が舞台。でも時代が戦時中から戦後にかけてで、最初すごく読みにくかった。途中でやめようかとも思ったけど、後半はとても面白かった。結局倒立のトリックはイマイチ分からなかったけど…。最後の謎解きの手柄?を脇役だった設楽久仁子が一気に持ってったのはいいのか?こんな本を読む、賢い子が空気を読めないだなんて。やっぱ女学校ものって苦手だわ。

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2013/01/24

この作者さんの作品は、ジャンルや時代背景や国が違えど、すべての(まだ数冊しか読んでないですけど・・・)作中にどことなく耽美なそして背徳的な雰囲気が漂ってるのがすごいな~と思う。内容は好みがあると思うけど、作中の雰囲気に引き込むのがすごく上手。 今のところ最近の本しか読んでないか...

この作者さんの作品は、ジャンルや時代背景や国が違えど、すべての(まだ数冊しか読んでないですけど・・・)作中にどことなく耽美なそして背徳的な雰囲気が漂ってるのがすごいな~と思う。内容は好みがあると思うけど、作中の雰囲気に引き込むのがすごく上手。 今のところ最近の本しか読んでないから、次は作者さんの若かりし頃の作品が読んでみたいかな。昔からずっとこんな渋い話を書いていたのか気になるので。

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2012/12/28

空襲警報中、何故彼女はチャペルに居たの? 三浦しをん『本屋さんで待ちあわせ』にて紹介されていたので、手にとって読んでみた。 戦時中のミッション系女学校で流行っている小説の回し書き。この作品は少女たちの視点の手記とノートに書かれた小説「倒立する塔の殺人」によって語られている。 戦...

空襲警報中、何故彼女はチャペルに居たの? 三浦しをん『本屋さんで待ちあわせ』にて紹介されていたので、手にとって読んでみた。 戦時中のミッション系女学校で流行っている小説の回し書き。この作品は少女たちの視点の手記とノートに書かれた小説「倒立する塔の殺人」によって語られている。 戦争という私には馴染みのない非日常かつ理不尽が背景にしっかりと刻みついているが、少女たちの他者への感情は少なからず心当たりがあるものだ。 この本、図書館の児童書に分類されていたことに驚いた。早すぎる本なんてない、と作中にあったので否定はしないが、個人的にこれは10代で読んで、成人してから読み直すのがオススメかもしれない。

Posted byブクログ

2012/10/26

タイトルと表紙買いした本。 衝動買いしたので、最初の時代背景には少し驚いた。 時は戦後の女子校。しかし自分の好きな背景。 少女たちの残酷さとはかない美しさが好み。 登場するキャラクターも可愛い。とても個性的。 でも、クラスのどこかに必ずいそうな感じ。

Posted byブクログ

2014/12/24

この作者さんの作品は、ジャンルや時代背景や国が違えど、すべての(まだ数冊しか読んでないですけど・・・)作中にどことなく耽美なそして背徳的な雰囲気が漂ってるのがすごいな〜と思う。内容は好みがあると思うけど、作中の雰囲気に引き込むのがすごく上手。 今のところ最近の本しか読んでないか...

この作者さんの作品は、ジャンルや時代背景や国が違えど、すべての(まだ数冊しか読んでないですけど・・・)作中にどことなく耽美なそして背徳的な雰囲気が漂ってるのがすごいな〜と思う。内容は好みがあると思うけど、作中の雰囲気に引き込むのがすごく上手。 今のところ最近の本しか読んでないから、次は作者さんの若かりし頃の作品が読んでみたいかな。昔からずっとこんな渋い話を書いていたのか気になるので。

Posted byブクログ

2012/08/04

戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。『倒立する塔の殺人』。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。手から手へと、物語はめぐり、想いもめぐる。 決して楽ではない時代背景なのに、ノスタルジックな物語でした。 後半にかけておそろしさが加速し...

戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。『倒立する塔の殺人』。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。手から手へと、物語はめぐり、想いもめぐる。 決して楽ではない時代背景なのに、ノスタルジックな物語でした。 後半にかけておそろしさが加速し、トゲから甘い毒に変貌した感じです。

Posted byブクログ