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自分のなかに歴史をよむ の商品レビュー

4.1

54件のお客様レビュー

  1. 5つ

    15

  2. 4つ

    18

  3. 3つ

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2018/06/06

阿部謹也先生の書を読んだ。 あとがきを読んで驚いたが、本書は中学生向けに書かれたものだという。阿部先生の半生の紹介から始まり、ヨーロッパと日本の違いというところまで話が展開されていくのだが、平易な文章をにしていることは読みながら感じていた。 しかし、扱っている内容と阿部先生の言わ...

阿部謹也先生の書を読んだ。 あとがきを読んで驚いたが、本書は中学生向けに書かれたものだという。阿部先生の半生の紹介から始まり、ヨーロッパと日本の違いというところまで話が展開されていくのだが、平易な文章をにしていることは読みながら感じていた。 しかし、扱っている内容と阿部先生の言わんとしていることは、高度で深い。 学問をするとは、主体的に、自覚的に生きることである。 そのためには、自分の内奥を掘り、それを歴史の中に位置付ける必要がある。過去の学者の積み重ねの上に、先端を切り拓く使命があるからだ。 しかし、それは学者でなくても同様だ。過去を学び、歴史を学び、今を規定していく。それは同時にどこを目指すのかという未来にも規定されている。 そして、阿部先生の内奥の格闘は、歴史家として一つの読み解きを可能にした。それは、大宇宙と小宇宙という二つの宇宙観の着想である。 古代中世のヨーロッパではこの二つは別物であり、小宇宙たる人間は、大宇宙を畏怖しながら対峙してきた。そこでは、人間同士の関係性が最重要であった。 しかし、キリスト教は人間同士の関係に割り込み、神との契約が大事であるという。すなわち、人間と教会の関係が重んじられるようになった。契約社会への移行である。 それは、人間関係の変化であり、その変化は様々な歪みをもたらした。賎民がそれであり、ポリフォニーもその中で生み出された。 阿部先生の着想は、ヨーロッパに対して感じた違和感が種となっている。その種を元に、自分の人生を歴史の中に刻みつけようとする戦いであった。

Posted byブクログ

2017/03/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

○引用 どんな問題をやるにせよ、それをやらなければ生きてゆけないというテーマを探す 解るということはそれによって自分が変わるということ ただ体験したということだけではそれを積極的に生かすことはできません。体験を対象化してとらえる意識と、幼いころの感受性を大切にする気持ちがなければならない

Posted byブクログ

2017/03/25

著者の阿部謹也は、一橋大学長も務めたヨーロッパ中世史を専門とする歴史学者。 歴史の中でも庶民の考え方や生き方に焦点を当てた社会史という分野を切り開いた点において、日本中世史の網野善彦と並び称される。 本書は1988年に単行本で発刊されたものを、2007年にちくま文庫から復刊したも...

著者の阿部謹也は、一橋大学長も務めたヨーロッパ中世史を専門とする歴史学者。 歴史の中でも庶民の考え方や生き方に焦点を当てた社会史という分野を切り開いた点において、日本中世史の網野善彦と並び称される。 本書は1988年に単行本で発刊されたものを、2007年にちくま文庫から復刊したものである。 本書では、著者の半生における様々な経験と、歴史を研究するということの意味が、縦糸と横糸のように絡み合って描かれている。 前者の側面からは、中学時代にカトリック修道院で生活したことからヨーロッパ中世史研究を志し、その後、一橋大学でドイツ中世史の高名な学者と出会い、小樽商科大学での勤務を経て、ドイツのボン、ゲッティンゲンに留学して、優れた研究成果を上げたことが語られている。 そして、後者の側面については、以下のようなことが語られている。 ◆一人の人間がある時代に生きているということは、過去に規定され、かつ未来への意志によって規定されながら、現在を生きているということである。 ◆現在が過去に規定されるというのは、日本の正月やお盆等の年中行事、神社の祭礼などは、過去の出来事を現在の中に組み込もうとする試み、即ち過去を現在にする行事であることから説明される。ヨーロッパにおけるキリスト教のミサも同じである。 ◆現在が未来への意志によって規定されるというのは、我々は将来の計画に影響されながら現在の生活を営んでいることから説明される。 ◆現在を生きているということを自覚的に行うためには、自分の中を深く掘っていく作業、即ち、過去の体験を現在から振り返って整理することと、それを“大いなる時間”の中に位置付けていくことの二つが必要である。そして、それが即ち、歴史を研究するということである。 本書はもともと中高生向けに書かれたものと言うが、歴史研究の意味という側面においては著者は決して妥協を許さず、深い内容となっている。 (2010年5月了)

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2015/11/03

「わかるとはどういうことか」 すぐに答えを見つけようとしてしまう現代人にとって、とても耳が痛い一言ではないだろうか。 かく言う自分自身が一番身にしみる言葉だと感じながら、読み進めた。 この問いかけに著者自身の明確な答えを示しながら、その説明を非常に易しく、かつスリリングに書き記...

「わかるとはどういうことか」 すぐに答えを見つけようとしてしまう現代人にとって、とても耳が痛い一言ではないだろうか。 かく言う自分自身が一番身にしみる言葉だと感じながら、読み進めた。 この問いかけに著者自身の明確な答えを示しながら、その説明を非常に易しく、かつスリリングに書き記す表現力に感服した。 これまで漠然と感じていたキリスト教の持つ独特の雰囲気の一端を垣間見ることがで、その自然観に対する理解を深める助けになった。 読み返すことで、新たな発見や深い理解を得られそうな、とても良い本だと思う。

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2015/09/08

自分の自分史の書き方的な本かと思ったら、歴史研究家の「著者の歴史研究に入る経過と研究の考察」であった。入る経緯に関しては、著者の熱心さ、学者肌な感じが出てて感心して読む。 共感したところとして、 先生は報告の後には「それでいったい何が解ったことになるのですか」と問うのでした。 ま...

自分の自分史の書き方的な本かと思ったら、歴史研究家の「著者の歴史研究に入る経過と研究の考察」であった。入る経緯に関しては、著者の熱心さ、学者肌な感じが出てて感心して読む。 共感したところとして、 先生は報告の後には「それでいったい何が解ったことになるのですか」と問うのでした。 また、「解るということはそれによって自分が変わるということでしょう」との指摘に心打たれる。 ドイツの古文書を求めて、そのうちハメルーンの笛吹の話にたどり着く。物語かと思っていたが、実在にあったことだったのかとのめり込んでいく、前半の章は面白かったが、後半の歴史考察に関しては、私にとって目あたらいいことがなかった、もしくは興味を引く内容がなく残念。

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2015/04/30

研究者は、どのようにして自身の研究テーマへ辿りつくのでしょうか。こういうことを聞く機会は、なかなかないと思います。この本は、ある歴史学者が大学生のころ、どのような思考と経験を経て「それをやらなければ生きてゆけないテーマ」に辿りつくに至ったのかが描かれた、貴重なエッセイです。あなた...

研究者は、どのようにして自身の研究テーマへ辿りつくのでしょうか。こういうことを聞く機会は、なかなかないと思います。この本は、ある歴史学者が大学生のころ、どのような思考と経験を経て「それをやらなければ生きてゆけないテーマ」に辿りつくに至ったのかが描かれた、貴重なエッセイです。あなたがするからこそ意義のある、あなたにしかできない研究に、一歩確実に近づくことができる本です。 (ラーニング・アドバイザー/教育 MATSUBARA) ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1320312

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2015/04/15

歴史学の入門本として書かれた本だが、題名にあるとおり著者個人の過去の体験や来歴から、ヨーロッパ史を生業とするに至ったかが、堅苦しい表現はないが率直に丁寧に書かれており、最初エッセイに近いような感じを受けるが、著者の人格の高さが伺われる。特に、個人的に「解るということは、それにより...

歴史学の入門本として書かれた本だが、題名にあるとおり著者個人の過去の体験や来歴から、ヨーロッパ史を生業とするに至ったかが、堅苦しい表現はないが率直に丁寧に書かれており、最初エッセイに近いような感じを受けるが、著者の人格の高さが伺われる。特に、個人的に「解るということは、それにより以前とは別の人間に変わることである」という言葉はまさに玉言だと思う。

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2015/04/15

ヨーロッパ中世史研究の第一人者である著者の自伝的なエッセイ。自伝と言いながら、歴史に対する深い洞察が含まれており、非常に示唆に富む本。 社会は人と人の関係が積み重なってできており、人と人の関係性が変化した時が社会に変化が起きる時だという。12世紀頃までの北ヨーロッパは、日本と同じ...

ヨーロッパ中世史研究の第一人者である著者の自伝的なエッセイ。自伝と言いながら、歴史に対する深い洞察が含まれており、非常に示唆に富む本。 社会は人と人の関係が積み重なってできており、人と人の関係性が変化した時が社会に変化が起きる時だという。12世紀頃までの北ヨーロッパは、日本と同じく贈与経済が中心であり、人々は自分=小さな宇宙と自然=大宇宙の関係性を絶えず意識して暮らしていた。この構造を壊したのがキリスト教だったという指摘が大変興味深い。神を介在させることにより、人は自然を客観的に捉えるようになり、のちの科学の発達や産業革命につながる。幸か不幸か、日本にはそのような思想(自然を相対化するような思想)が入ってこなかったため、今でも日本人の基本には贈与経済があるし、アニミズムも生きている。そこがヨーロッパと日本の大きな違いなのだという。 余談だけれども、ある指揮者の話では、ヨーロッパのオーケストラは、たとえアマチュアであっても立体的な音が出るんだそうな。日本のオケは音が二次元的。この違いもやはり文化の違いに根ざしているのだろうか。

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2015/04/11

別の本でオススメされていて、普段は手に取らない本を読んでみようと思い購入しました。歴史系はすごく苦手だけれど、この本はとても読みやすくて、興味を持って読み進めることが出来ました。主にヨーロッパの歴史について、作者の体験をもとにかかれているので、おじいちゃんから昔話を聞いているよう...

別の本でオススメされていて、普段は手に取らない本を読んでみようと思い購入しました。歴史系はすごく苦手だけれど、この本はとても読みやすくて、興味を持って読み進めることが出来ました。主にヨーロッパの歴史について、作者の体験をもとにかかれているので、おじいちゃんから昔話を聞いているような感覚でした。

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2015/04/07

2015.4.6 pm23:57 読了。歴史学に対する印象が変わった。歴史は客観的にできごとを見ることができなければ、研究することは難しいと思っていたためである。私情が入ってはいけないと考えていた。しかし、本書では著者自身の経験を基盤に、研究が成立している。経験からうまれた著者の...

2015.4.6 pm23:57 読了。歴史学に対する印象が変わった。歴史は客観的にできごとを見ることができなければ、研究することは難しいと思っていたためである。私情が入ってはいけないと考えていた。しかし、本書では著者自身の経験を基盤に、研究が成立している。経験からうまれた著者の世界観が反映されているように感じた。 卒業論文のテーマで悩んでいる。「それをやらなければ生きてゆけないテーマ」(p.18)を探すことは、テーマを決める一基準として参考にしたい。何をするために学んできたのか、学んでいくのかをいま一度再考していきたいと思う。 内容に関しては、小宇宙と大宇宙の記述が興味深い。前者は人間や住居を指し、後者は自然を指す。このふたつの境界はあいまいである。両者をはっきり区別したのが、キリスト教であった。けれどもそのキリスト教でさえも、人々の世界観を根底から変えるには長い時間がかかった、あるいはかかっている。日本はどうだろうか。西欧化して近代化して、全てが変わってしまったのだろうか。そうとは思えない。 日本との比較をもっと読みたかった。

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