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私が語りはじめた彼は の商品レビュー

3.5

250件のお客様レビュー

  1. 5つ

    36

  2. 4つ

    81

  3. 3つ

    86

  4. 2つ

    22

  5. 1つ

    4

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2021/01/30

私は、彼の何を知っているというのか?彼は私に何を求めていたのだろう?大学教授・村川融をめぐる、女、男、妻、息子、娘―それぞれに闇をかかえた「私」は、何かを強く求め続けていた。だが、それは愛というようなものだったのか…。「私」は、彼の中に何を見ていたのか。迷える男女の人恋しい孤独を...

私は、彼の何を知っているというのか?彼は私に何を求めていたのだろう?大学教授・村川融をめぐる、女、男、妻、息子、娘―それぞれに闇をかかえた「私」は、何かを強く求め続けていた。だが、それは愛というようなものだったのか…。「私」は、彼の中に何を見ていたのか。迷える男女の人恋しい孤独をみつめて、恋愛関係、家族関係の危うさをあぶりだす、著者会心の連作長編。

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2020/10/01

図書館で。 特に何か特別なことが起こるわけでもなく、ものすごい特徴のある人物が描かれるわけでもない…のだけれども、それが反対に面白いというか、気が付いたら世界に引き込まれていた感じで読みました。文章が上手なんだな、うん。 当事者ではなく、色々な人物がある特定の人を語っていくとい...

図書館で。 特に何か特別なことが起こるわけでもなく、ものすごい特徴のある人物が描かれるわけでもない…のだけれども、それが反対に面白いというか、気が付いたら世界に引き込まれていた感じで読みました。文章が上手なんだな、うん。 当事者ではなく、色々な人物がある特定の人を語っていくという手法は他でも見たことがあるのですが、なかなか面白い。センセイは一言でいうとかなりどうしようもない男なので、本人が登場しない方が色々イマジネーションが膨らんで面白いなぁ、と。それにしがみつく女性もある意味滑稽だし、離れた方もなんだか負け犬みたいで…難しい。 個人的には振り回された助手が、一応それでも何とかなったみたいで良かったね、という感じでした。そういう話ではないんだろうけど。

Posted byブクログ

2020/09/20

「あなたの心に打ち込まれた杭は、いずれは溶けますよ。でもぽっかりと空いた穴はいつまでも残るでしょう。それは痛み続け、そこを通る風音があなたを眠らせぬ夜もあるかもしれない。だけど私は、この痛みをいつまでも味わい続けていたいと思うのです。それが、私が生きてきた、そしてこれからも生き続...

「あなたの心に打ち込まれた杭は、いずれは溶けますよ。でもぽっかりと空いた穴はいつまでも残るでしょう。それは痛み続け、そこを通る風音があなたを眠らせぬ夜もあるかもしれない。だけど私は、この痛みをいつまでも味わい続けていたいと思うのです。それが、私が生きてきた、そしてこれからも生き続けていくための、証となるからです、私の痛みは私だけのもの。私の空虚は私だけのもの。だれにも冒されることのないものを、私はようやく、手に入れることができたのです。」

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2021/02/13

使われている言葉がとても綺麗でとても難しかった。大学教授・村川融をめぐって周りの人が翻弄される物語。ただし本人が出てこないので、「桐島、部活やめるってよ」が思い出された。(3年前に書いた感想より)

Posted byブクログ

2020/08/05

まず、結婚に対してまた疑念が増えた…果たしてどうしたら長く良好な関係を築けるのか、謎だ。 愛のあるときも、嫉妬に溺れるときも超えた先にしずかな美しいものが残る。人の気持ちは完全に手に入ることはないし、理解することもできない、自分だけの痛みと記憶だけが誰にも取られずにいられるって...

まず、結婚に対してまた疑念が増えた…果たしてどうしたら長く良好な関係を築けるのか、謎だ。 愛のあるときも、嫉妬に溺れるときも超えた先にしずかな美しいものが残る。人の気持ちは完全に手に入ることはないし、理解することもできない、自分だけの痛みと記憶だけが誰にも取られずにいられるってところが刺さったな。息子の心をほんわか包んであっためた椿くんがいいキャラだったな!教授の妻がだす空気感とか雰囲気、セリフがすごい好き。惚れちゃうと思う。三崎さんよく耐えたな。

Posted byブクログ

2020/05/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

事実はひとつ、真実はひとつじゃない。一人一人の人生のドラマに目を向けたい。 1人の男性村川を取り巻く、周囲の人、妻、浮気相手の旦那、再婚相手、実息子、再婚後娘、等それぞれ目線の物語。取り巻く女性達は村川の不貞を知りながらも、それを理解した上でも愛してしまう。 村川のような男性は、常に自分が人生の主役。「女のために全てを投げ出す自分の役柄に夢中」と奥さんが彼をいうように。生涯自分が一番幸せな道を選び続けていくことは、どこか羨ましいと思いながらもやはりできないなと思った。だからこそ皆村川のような生き方を批判しながらも心のどこかで羨ましい思いがあり、引き込まれる女性、振り回される男性がいるのか。 しをんさんの作品はどれも文体、表現に引き込まれるものがある。単なる簡単な「辛い」「悲しい」の言葉では完成されない。しをんさんの文章だからこそ、重いけれども引き込まれてしまう作品ができるのだと思った。 ◼️印象深い文章、表現メモ いい加減ですが、不真面目ではないのです。 責任を負うことはしないけれど、義務は己に課します。エゴイストですがロマンチストでもあります。 無邪気に愛を集めて喜び、冷え冷えとした魂を腹に隠しながら何食わぬ顔顔をで生きる 私のうちにある汚いものひどいものを突きつけられる 屈辱を闘志にかえ、どんな手段を使っても女を排除する 愛の言葉を麻酔に捕食されることを是とする。女のために全てを捨てる役柄に夢中 事実はひとつ。真実は複数ある 夫をいつ撮られるのか、猜疑心の塊になって暮らす日々 理解がないところに愛は生まれない。 だが確かに愛があると思っていた場所に後から理解の及ばない空白が出陣したらどうしたらいい? 目には目を、歯に歯にをというのは、強者の理屈だ。 変わってしまうことではなく、変化に対応する意志を無くしてしまう日がくることが

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2020/04/30

ひとりの男性の周りにいる人間が、彼に人生をどのように影響され、その果てにどのような結末を迎えたかを短編連作で綴っている。連作ではあるが、それぞれの短編として読んでも言葉の使い方、構成等、卓越した作品であると感じた。 核となる男性、大学教授はほとんどその実態を著していないが、家族、...

ひとりの男性の周りにいる人間が、彼に人生をどのように影響され、その果てにどのような結末を迎えたかを短編連作で綴っている。連作ではあるが、それぞれの短編として読んでも言葉の使い方、構成等、卓越した作品であると感じた。 核となる男性、大学教授はほとんどその実態を著していないが、家族、教え子、愛人等に「彼」を語らせている。ある意味、「彼」は存在しないと言ってもいい。 短編連作という形の小説は色々読んだが、この作品は異質である。実験的とも感じた。 今まで2〜3作品しか三浦しをんの作品は読んだことがなかったが、他の作品も読んでみようと思った。

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2020/04/12

えっこれが三浦しをん? ととてもびっくりした。 まほろ駅前とか神去なぁなぁの印象が強かったので。 ああいうほのぼのした作品の裏にこんな一面があったなんて。 前なにかのインタビューで高校の時、お父さんとバスの運転手としか異性と話さなかったみたいなエピソードもあったので、あまり恋愛...

えっこれが三浦しをん? ととてもびっくりした。 まほろ駅前とか神去なぁなぁの印象が強かったので。 ああいうほのぼのした作品の裏にこんな一面があったなんて。 前なにかのインタビューで高校の時、お父さんとバスの運転手としか異性と話さなかったみたいなエピソードもあったので、あまり恋愛というか性愛の印象もなかったので。 この本の主人公、村川融のように、三浦しをんもまた色々な角度からみた物語があるのだろうと思った。 この作風から変わっていった経過が知りたいなと思った。 ひたひたと満潮になる静かな水みたいな小説でとても良かった。元々金原瑞人さんのエッセイで勧められていて読んだのだが、そして解説にある通りなのだが、一文一文が美しいと思う。

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2020/02/16

人は、人と関わることで喜びも見出すが、怒りや憎しみや悲しみも、同じくらいの大きさで見つけてしまう生き物なのかなと感じる物語でした。連続短編なので繋がりがありながらも、各章で主人公が異なります。どの物語も、冷たい石を抱いて眠るような、冷え冷えとしたある種の心地良さも感じます。悲しみ...

人は、人と関わることで喜びも見出すが、怒りや憎しみや悲しみも、同じくらいの大きさで見つけてしまう生き物なのかなと感じる物語でした。連続短編なので繋がりがありながらも、各章で主人公が異なります。どの物語も、冷たい石を抱いて眠るような、冷え冷えとしたある種の心地良さも感じます。悲しみに焦点を当てている話が多いように思えたので、個人的好みという意味で星は3にしましたが、ハラハラする展開もあり、読後感にこれ!というものを求めていなければ、星の数は気にしないでください。

Posted byブクログ

2019/03/22

三浦しおんということで、また購入。文体は相変わらず読みやすい。一気に完読した。まどろこしい言い回しなどしない自然な完成された書き方である。しかし多田便利店や舟を編むのようなユーモアあふれる軽快な作品とは程遠かったのはいささか期待はずれだった。オムニバス形式の短編集であったのも大き...

三浦しおんということで、また購入。文体は相変わらず読みやすい。一気に完読した。まどろこしい言い回しなどしない自然な完成された書き方である。しかし多田便利店や舟を編むのようなユーモアあふれる軽快な作品とは程遠かったのはいささか期待はずれだった。オムニバス形式の短編集であったのも大きな違いか。だが一人一人の心情を細かくかつ曖昧に表現した話は、どこか現実感がある。一見それぞれの話は独立しているが一応時系列になっていて、登場人物も重複するので、あまり混乱することはない。登場人物の人物像や性格もいわくつきな過去話や会話の口調でよく表現されていて想像しやすい。どの人物もその後が気になる終わり方である。 結局先生自身については行動や台詞などあまり語らせず象徴的な登場に限られたため、主人公であるこのモテる研究者の具体像は掴めない。他の登場人物が先生の本意を一時あれこれと想像してみるが、これからの各々の人生の中の優先事項、幸福を追求する過程で、先生のことは重要視されなくなっていくだろうと予想できる。それこそ、それぞれが過去を受容し探していた何か、人生の価値に気がつくために先生は存在していて、気がついてしまった語り手たちにはもう先生という象徴が必要ないようである。

Posted byブクログ