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私の個人主義 の商品レビュー

4.4

106件のお客様レビュー

  1. 5つ

    50

  2. 4つ

    30

  3. 3つ

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2015/04/09

人と喋れない「猫」とか、松山に馴染めない「坊ちゃん」とか、漱石独特のアイロニーは彼の文明論にも貫かれていた。落語好きだけあってなのか、彼の講演を文字に起こした一冊だが、枕があったり、ユーモラスで結構面白い。

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2014/12/15

有名な「自己本位」について語っている。学生に対する熱い言葉掛けが、達観していて冷たい印象だった評者の漱石像を打ち崩した。

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2014/08/09

漱石晩年、生涯の体験と思索を総括した関西での講演録。道楽と職業、現代日本の開花、中味と形式、文芸と道徳、私の個人主義、どれをとっても漱石の思想に基づいた創造的で型にはまらない展開に、きっと聴衆は釘付けだったのではと想像する。 漱石の自己変革のきっかけになったのは、”自己本位”であ...

漱石晩年、生涯の体験と思索を総括した関西での講演録。道楽と職業、現代日本の開花、中味と形式、文芸と道徳、私の個人主義、どれをとっても漱石の思想に基づいた創造的で型にはまらない展開に、きっと聴衆は釘付けだったのではと想像する。 漱石の自己変革のきっかけになったのは、”自己本位”であり、自身の思想の根幹になっていったようだ。時代背景がこれだけ変わっても、自己本位の考え方や自己を追求する姿勢は、個の時代だからこそこれからも変わらない人として生きていく原点なのではないだろうか。

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2014/06/06

講演集。 小説は学生の頃に読んだけど、初めて生の夏目漱石に触れた気がする。 今読んでも、全く色褪せてない。 さすが、旧千円札。

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2014/01/31
  • ネタバレ

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「私はこの自己本位という言葉を自分の手に握にぎってから大変強くなりました。彼かれら何者ぞやと気慨が出ました。今まで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実にこの自我本位の四字なのであります。」 「ああここにおれの進むべき道があった! ようやく掘り当てた! こういう感投詞を心の底から叫さけび出される時、あなたがたは始めて心を安んずる事ができるのでしょう。容易に打ち壊こわされない自信が、その叫び声とともにむくむく首を擡て来るのではありませんか。」 「第一にあなたがたは自分の個性が発展できるような場所に尻を落ちつけべく、自分とぴたりと合った仕事を発見するまで邁進しなければ一生の不幸であると。しかし自分がそれだけの個性を尊重し得るように、社会から許されるならば、他人に対してもその個性を認めて、彼らの傾向を尊重するのが理の当然になって来るでしょう。」 「今までの論旨をかい摘んでみると、第一に自己の個性の発展を仕遂げようと思うならば、同時に他人の個性も尊重しなければならないという事。第二に自己の所有している権力を使用しようと思うならば、それに附随している義務というものを心得なければならないという事。第三に自己の金力を示そうと願うなら、それに伴ともなう責任を重おもんじなければならないという事。つまりこの三カ条に帰着するのであります。  これをほかの言葉で言い直すと、いやしくも倫理的に、ある程度の修養を積んだ人でなければ、個性を発展する価値もなし、権力を使う価値もなし、また金力を使う価値もないという事になるのです。」 「だから個人主義、私のここに述べる個人主義というものは、けっして俗人の考えているように国家に危険を及ぼすものでも何でもないので、他の存在を尊敬すると同時に自分の存在を尊敬するというのが私の解釈なのですから、立派な主義だろうと私は考えているのです。」 「私は意見の相違はいかに親しい間柄でもどうする事もできないと思っていましたから、私の家に出入りをする若い人達に助言はしても、その人々の意見の発表に抑圧よくあつを加えるような事は、他に重大な理由のない限り、けっしてやった事がないのです。私は他ひとの存在をそれほどに認めている、すなわち他にそれだけの自由を与えているのです。だから向うの気が進まないのに、いくら私が汚辱を感ずるような事があっても、けっして助力は頼めないのです。そこが個人主義の淋しさです。個人主義は人を目標として向背を決する前に、まず理非を明らめて、去就を定めるのだから、ある場合にはたった一人ぼっちになって、淋しい心持がするのです。それはそのはずです。槙雑木まきざっぽうでも束たばになっていれば心丈夫ですから。」 「事実私共は国家主義でもあり、世界主義でもあり、同時にまた個人主義でもあるのであります。」

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2013/08/20

講演を集めたもの。何となく、夏目漱石って難しいイメージがあったけど、割と読みやすく、楽しく読んだ。なるほど、と納得する部分もあったし、すとんと胸に落ちてくるような部分もあった。きっと楽しい講演だったんだろうなぁ。また読みたいな、と思った。

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2013/07/23

作者の文学は日本の文学史を彩る作品が多い中、彼の人間性を匂わすような内容に親近感を覚えた。 何とも言えない変わったおじさん、という印象を抱かせ、漱石という名前の由来もなるほど、と感じられる。 講演として実際喋っていたというのだから、是非とも拝聴したかったと思わせる内容である。

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2013/07/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

【Impression】 「今の若い人より僕らの頃は就職が楽だった」とか「今の若い人たちの方が熱心に授業を聴いている」とか、どっかで聞いたようなことが多かったのには笑った。 何度これを繰り返してるんやろう ただ、イギリスへ留学してからの思考に関してはやはり卓越的なものがある。 そのご時勢に文学の本場に対して喧嘩をうった、ということだから。 また「自由」ということを全く履き違えていない 【Synopsis】 ●夏目漱石の学習院大学における講演をまとめたもの。主な内容は「個人主義」について。夏目漱石の個人主義観が述べられている。同時に権力と金力についても ●「個人主義」とは「自分の自由、これには権利と義務が伴い、を遂行し追及する。それと同時に他人に対しても同等の自由を認める。それがため、時として個人主義は他人と別の道を進むこともあり淋しさもある。しかし、個人主義・個性の追求が人生における幸せに繋がる。日本はこの点で遅れているし、個人主義と国家主義は両立しうる」というような内容 ●権力や金力は、「自由を妨害する可能性を秘めているもの」であり、使用するには要注意。自分がAだから相手もAでないと悪、という考えを捨てるべきであり、権力や金力はそうさせてしまう力を持っている

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2013/07/09

夏目漱石の講演集。 「道楽と職業」、「現代日本の開化」、「中味と形式」、 「文芸と道徳」、「私の個人主義」の5篇が収録されている。 「中味と形式」、「私の個人主義」が面白かった。 夏目漱石は、真面目で誠実で、信頼できる人物だと思う。 それに諧謔味に富んでいて軽快。 「中味と形...

夏目漱石の講演集。 「道楽と職業」、「現代日本の開化」、「中味と形式」、 「文芸と道徳」、「私の個人主義」の5篇が収録されている。 「中味と形式」、「私の個人主義」が面白かった。 夏目漱石は、真面目で誠実で、信頼できる人物だと思う。 それに諧謔味に富んでいて軽快。 「中味と形式」 P74 「すべて政治家なり文学者なりあるいは実業家なりを比較する場合に誰より誰の方が偉いとか優っているとかいって、一概に上下の区別を立てようとするのは大抵の場合においてその道に暗い素人のやることであります。専門の智識が豊かでよく事情が精しく分かっていると、そう手短にまとめた批評を頭のなかに貯えて安心する必要もなく、また批評をしようとすれば複雑な関係が頭に明瞭に出てくるから中々「甲より乙が偉い」という簡潔な形式によって判断が浮かんで来ないのであります。」 身近な例だと、一見面白くて的を射ているようだけどそうでもない レッテル貼りのことを思い出す。 「私の個人主義」 P134 「けれどもいくら人に賞められたって、元々人の借着をして威張っているのだから、内心は不安です。手もなく孔雀の羽根を身につけて威張っているようなものですから。それでもう少し浮華を去って摯実に就かなければ、自分の腹の中はいつまで経ったって安心は出来ないという事に気がつき出したのです。」 P136 「私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。彼ら何者ぞやと気概が出ました。今まで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実にこの自己本位の四字なのであります。」 P137 「その時確かに握った自己が主で、他は賓であるという信念は、今日の私に非常の自信と安心を与えてくれました。私はその引続きとして、今日なお生きていられるような心持ちがします。」 P138-139 「行けないというのは、もし掘り中てる事が出来なかったなら、その人は生涯不愉快で始終中腰になって世の中にまごまごしていなければならないからです。私のこの点を力説するのは、全くそのためで、何も私を模範になさいという意味では決してないのです。私のような詰まらないものでも、自分で自分が道をつけつつ進み得たという自覚があれば、あなた方から見てその道がいかに下らないにせよ、それは貴方がたの批評と観察で、私には寸毫の損害がないのです。私自身はそれで満足する積りであります。」 他人のものさしで自分の人生をはかることをやめた、 と言っているように受け取った。自分の人生を自分のものさしで見て、 十分満足いくように進んで行けば、それでよい。 その、ものさし、というか価値観を自分の手で掘り当てることが重要。 そしてその価値観を得たからと言って、他人に強要することのない、 謙虚さがある。

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2013/06/14

 季刊誌『kotoba』第12号の夏目漱石特集で、おすすめの漱石作品として、齋藤孝、中島岳志と夏目房之介の3人が『私の個人主義』をあげているのが目にとまる。先日ワールドカップ出場を決めた翌日の共同記者会見で、本田圭佑が「個」の力を高めよと語っていたことも耳に残っていた。手元にあっ...

 季刊誌『kotoba』第12号の夏目漱石特集で、おすすめの漱石作品として、齋藤孝、中島岳志と夏目房之介の3人が『私の個人主義』をあげているのが目にとまる。先日ワールドカップ出場を決めた翌日の共同記者会見で、本田圭佑が「個」の力を高めよと語っていたことも耳に残っていた。手元にあった『漱石全集』を捜してみると、第16巻に収められている。  書かれたものではなく、大正3(1914)年の学習院大学での講演だと知る。語り口は柔らかいが、その内容は深く厳しい。前半では、自分の半生を紹介しながら、イギリス留学中に「始めて文学とはどんなものであるか、その概念を根本的に自力で作り挙げるより外に、私を救う途はないのだと悟った」のだという。そして、今までの他人本位から脱却して、「此自己本位といふ言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました」と語る。  後半では、「自己本位」を実践する際に生じる倫理性の問題に移り、「権力と金力」を中心に持論が展開される。将来これらを手にする可能性の高い青年を前にしての歯に衣着せぬ「権力と金力」批判は、見事という外ない。この漱石の「個人主義」」は、なおも舌鋒鋭く国家をも貫いて、今なお新鮮だ。現在の政治家や実業家には、漱石の爪の垢でも煎じて呑ませたいほどだ。  今から99年前に、自力で「自己本位」=「私の個人主義」を「鶴嘴で掘り中てた」という漱石の講演は、ひょったしたら、周囲の空気を読むことに汲々としている現在に生きる我々こそ耳を傾けるべきなのかもしれない。  そして、ふと思う。「個にこだわり続ける本田圭佑は、日本サッカー界の漱石である」と。

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