私の個人主義 の商品レビュー
おそらく月曜会のコミュに参加しているみなさんであれば一度は読んだことがあり、そして好きな方も多いと思う夏目漱石、彼による講演を5つ収録しています。その中でもタイトルにもある「私の個人主義」をおすすめします。ページ数も多くは無いので気軽に読める一冊です。 夏目漱石と言えば、帝大...
おそらく月曜会のコミュに参加しているみなさんであれば一度は読んだことがあり、そして好きな方も多いと思う夏目漱石、彼による講演を5つ収録しています。その中でもタイトルにもある「私の個人主義」をおすすめします。ページ数も多くは無いので気軽に読める一冊です。 夏目漱石と言えば、帝大を卒業し、国費で英国へと留学するなど明治期の日本においてまさにエリートの経歴を持ち、そして日本の近代文学を築き上げた人物でありながらも、その人生で数多くの悩みや挫折を経験したことが知られています。この短編では、その中で英国留学時に直面した文学への挫折と、それを乗り越え自分独自の文学のスタイルを形成する決意をしたこと(=個人主義)が語られています。 この内容は、漱石自身を知るのみではなく、現代までに通じる日本の教育システムや新たな分野を構築する気概について考える上でもとても示唆に富む内容となっており、ビジネスにも大いに参考になる内容となっています。特に、真面目で優秀な漱石青年が、決められたレールの上からいったん降りて、新たにレールを敷いていくことを決意したことから彼の文学が始まっていることを考えると彼の小説も違った読み方ができると思います。
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漱石先生が仰るところの鈍痛を感じている。 「行くより外に仕方ないのです。」 そうか、仕方がないのならば。 漱石自身の経験にも、そう言い切られたことにも、ずいぶん励まされた。 おれの尻の落ち着ける場所を。
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とってもひねくれていて面白い こんな発話を生でされたらどんな感じなんだろう・・・ ひねくれてても終わり方がポジティブで良い
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『大学新入生に薦める101冊の本 新版』の96番目の本。 夏目漱石の講演が、それぞれ約30ページで5本収録されている。この本は高校倫理の教科書ではよく部分的に引用されていているが、それだけではもったいない。内発的開化や浪漫主義の言葉の意味は教科書に載っているが、では実際に漱石はな...
『大学新入生に薦める101冊の本 新版』の96番目の本。 夏目漱石の講演が、それぞれ約30ページで5本収録されている。この本は高校倫理の教科書ではよく部分的に引用されていているが、それだけではもったいない。内発的開化や浪漫主義の言葉の意味は教科書に載っているが、では実際に漱石はなぜこのような事に言及したかについては教科書に載っていない。ずいぶん昔の話ではあるが、現代にも十分通じる内容の本で、しかも読みやすいので読んで欲しいと思う。
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目から鱗が落ちた。と同時に、少し肩の荷が下りた。小説は勿論のこと、この随筆も珠玉。模索中の今だからこそ、ポンと背中を押してもらったような感じ。
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伊藤忠丹羽前社長が読んだ本ということで、きっと素晴らしい考え方が書かれているんだろうとに興味を持って読んだ。 【私の個人主義】 文学を学んでいた夏目漱石。始めは周りの意見に耳を傾けていた。しかし書物を読む意味がわからなくなってしまった。その時はじめて、文学とはどんなものか、その...
伊藤忠丹羽前社長が読んだ本ということで、きっと素晴らしい考え方が書かれているんだろうとに興味を持って読んだ。 【私の個人主義】 文学を学んでいた夏目漱石。始めは周りの意見に耳を傾けていた。しかし書物を読む意味がわからなくなってしまった。その時はじめて、文学とはどんなものか、その概念を根本的に自力で作り上げるほかないと悟った。それまでは全くの他人本意であった。彼は自己本意という言葉を自分の手に握ってから強くなった。自己が主で、他は賓である。 【道楽と職業】 自分の力に余りあるところ、すなわち人よりも自分が一段とぬきんでいる点に向かって人よりも仕事を一倍して、その一倍の報酬に自分に不足したところを人から自分にしむけてもらって相互の平均を保ちつつ生活を持続する。=自分のためにすることはすなわち人のためにすること。=己のためにする仕事の分量は人のためにする仕事の分量と同じである。人のためにする分量が少なければ少ないほど自分のためにはならない結果を生ずるのは自然の理。人のためになる仕事を余計すればするほど、それだけ自己のためになるのも明らかな因縁。 職業の分化錯綜が進めば進むほど我々は片輪な人間になってしまう。言い換えると、自分の商売が専門的に傾いてくるうえに、生存競争のために人一倍の仕事で済んだものが二倍三倍ないし四倍と段々速力を早めて追い付かなければならないから、その方だけに、時間と根気を費やしがちであると同時に、お隣のことや一軒おいたお隣のことが皆目わからなくなってしまう。大きく云えば、現代の文明は完全な人間を日に日に片輪者に崩しつつ進む。 →解決策 本業に費やす時間以外の余裕を挙げて文学書を読む」
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夏目漱石の講演集であります。いやあ面白い。 面白いといふと語弊がございますか。 鹿爪らしい顔をして気取つてゐる有名な写真がありますが、実際にはきつと茶目ツ気のある人なのでせう。 「道楽と職業」に於ける道楽とは、まあ学者とか芸術家とか、さういふ職業のことを指してゐます。 ...
夏目漱石の講演集であります。いやあ面白い。 面白いといふと語弊がございますか。 鹿爪らしい顔をして気取つてゐる有名な写真がありますが、実際にはきつと茶目ツ気のある人なのでせう。 「道楽と職業」に於ける道楽とは、まあ学者とか芸術家とか、さういふ職業のことを指してゐます。 官吏や会社勤めと違ひ、自分の匙加減で仕事をする人たち。やくざな職業と思はれてゐたのでせう。 それにしても明治44年当時、漱石はすでに職業の細分化に触れてゐます。 「現代日本の開化」では、「開化は人間活力の発現の経路である」と定義します。何だか良く分かりませんね。 そこで積極的な活動と消極的な活動に分類して論を進めるのですが...漱石は現代日本の開化は上滑りの開化と断じ、日本の行く末は悲観的だと嘆いてゐます。当時こんなことを公で発言しても大丈夫だつたのでせうか。日露戦争が終つてまだ間がなく、やあ日本はあのロシヤに勝つたのだ、世界の一等国だなどと浮かれてゐた頃でせう。 「中身と形式」を見ますと、明治維新からまだ50年に満たない中途半端な時代を感じます。一般大衆に於ける善悪美醜の複雑化が窺へます。 「文芸と道徳」では、当時の文学の主流である浪漫主義・自然主義と道徳の関係を説きます。自然主義文学に対して、案外寛容な物言ひですね。 「私の個人主義」の主張は、危険思想扱ひされなかつたのだらうかと、心配になります。もちろん現代の私が明治の漱石を心配しても詮無いことでありますが。国家より個人が優先されるなどと説く漱石。カッコイイのであります。 さすがにかつて千円札の顔になつただけありますね。大衆の味方。私は再び千円札に復帰して貰ひたいと祈願するものであります。現在の千円札の人は、偉い博士ですが、どうもあの親不孝ぶりが気に入らない... http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-80.html
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思想家、夏目漱石。考えている。 高校でも習った「現代日本の開化」をはじめとする文明論・文化論はお見事。100年以上経った今でも通用するような普遍的な議論が展開されている。最近進路のことで迷いが生じていたのだが、「道楽と職業」における職業論はよい視点を示してくれた。これは個人的な...
思想家、夏目漱石。考えている。 高校でも習った「現代日本の開化」をはじめとする文明論・文化論はお見事。100年以上経った今でも通用するような普遍的な議論が展開されている。最近進路のことで迷いが生じていたのだが、「道楽と職業」における職業論はよい視点を示してくれた。これは個人的な収穫。 そして何より表題作「私の個人主義」が素晴らしい。大学在学中という今この時期に読めて本当に有意義だったと思う。あたかも自分が学習院生の一員となって耳を傾けているかのような気分になった。「出来るだけ個人の生涯を送らるるべき」学生たちに個人主義の必要を説く漱石。自身の体験談と絡めた論の運びには説得力があり、人生の先輩からのメッセージとして素直に受け取ることができた。漱石にこんなに勇気づけられることになるとは思わなかった。 しかし先生、講演が上手いなぁ。抽象的な主張を、身近な例を多用して具体的な次元に落としこんでいく手腕が見事。難しいことを易しく。諧謔も交えながら、聴衆を惹きつける真摯な語り口が冴えている。あんまり分かりやすいから最初は内容も簡単であるかのように感じられたが、繰り返し読むと漱石の優れた先見性・深い分析が分かってきた。本当によく練られている。 この時この場所にいて直に話を聞けたらどんなに良かっただろう。本書の最後に、「で私のいう所に、もし曖昧の点があるなら、好い加減に極めないで、私の宅までお出下さい。出来るだけはいつでも説明する積でありますから。」とある。今から伺ってもよろしいでしょうか、漱石先生。
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夏目漱石の講演集。 ・私の個人主義 他人本位で生きてきた夏目漱石がロンドン留学を経て自己本位の生き方に気付いた。 今から見ると別段新しいことはなく、「個人主義」という言葉自体に悪いイメージもないけど、この時代では偏った個人主義に悪いイメージが付きまとっていたことは容易に想像でき...
夏目漱石の講演集。 ・私の個人主義 他人本位で生きてきた夏目漱石がロンドン留学を経て自己本位の生き方に気付いた。 今から見ると別段新しいことはなく、「個人主義」という言葉自体に悪いイメージもないけど、この時代では偏った個人主義に悪いイメージが付きまとっていたことは容易に想像できる。その時代に「個人主義」という言葉を使って自己本位の生き方を説明したところに意義があった。 言葉の上っ面だけの解釈は膚浅な解釈。 ・道楽と職業 やっぱり長い時間を費やす職業なんだから、自分の好きなことの延長にあったらいいなと思っていた。 漱石の提出した職業観は、まず何もかもを自分でしていた時代に遡る。自分で米を作り、着物を織る時代。でも社会が成立するうちに分業体制になるのは、自分がしない仕事は他人に補ってもらい、自分の仕事は他人のしないことを補う、という流れにある。 ということはどうしても他人本位にならざるを得ない。 また、最初は道楽でやっていたかもしれないがそれが職業となると途端に性格が変わる。 その理解の上で、科学者や哲学者、芸術家は本当に道楽=職業、自己本位でやってるレア物である。 職業ってそんなものか、と思った。職業の性質はうまく言い当ててると思う。(まだ働いてないから何とも言えないけど) 私は顕微鏡を覗く部屋から抜けられなくなりそうな気がしてたけど、その視野の狭さは私にとってはあまりよろしくないかもしれない。 中庸やったり中道やったり、昔から人はバランスのいいところを目指して落ち着くのが理想と説かれていて、それが最もだと思うに至った(at高野山)。科学や哲学に傾倒してしまって他は受け付けない人がいることは分かっているけど、あくまで私としては中道を目指したいので。 ・現代日本の開化 西洋の開化は内発的であるのに対し、日本の開化は外発的で皮相上滑りの開化。酷評。 その時代に生きながら、こういう俯瞰的な見方のできる人が賢いなぁと思う。
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凄いの一言に尽きる。 近代日本開化を多面的に見て、自分の中で明確に捉えてる。なかでも個人主義の解釈には感動して言葉が出ない。 漱石さんが戦中に生きてて、あの暴走した社会を見てたら何を感じたんだろうか
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