沈黙の春 の商品レビュー
私としては珍しく、物語的でない本を読むことがてきた。今でこそ、農薬の使いすぎはよくないって自然に思えるけど、そうじゃない時代、この本の与えた衝撃はすごいものだったのだろう。そしてこの本を出版した覚悟も図り知れない。
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その春、私の庭に小鳥が来ることは無かった。 ミツバチの羽音がすることもなかった。 リンゴの木は花を咲かせたけど、その花が実を結ぶことは二度となかった。 農薬や化学肥料等が、自然に及ぼす影響について、女性科学者が科学的、かつ具体的に、わかりやすく警告した本書が出版され、世に問われ...
その春、私の庭に小鳥が来ることは無かった。 ミツバチの羽音がすることもなかった。 リンゴの木は花を咲かせたけど、その花が実を結ぶことは二度となかった。 農薬や化学肥料等が、自然に及ぼす影響について、女性科学者が科学的、かつ具体的に、わかりやすく警告した本書が出版され、世に問われたのは、1962年。 それから50余年がたち、人類は化学物質だけでなく、遺伝子を操作し、自然界にはあり得ない植物や動物を造りだし、より経済的な利益、いま、目の前にある経済的利益のみを追求する道を突き進んでいる。 科学を否定するわけではない。目の前の利益だけに突き進み過度に利用するのではなく、自然と人間が許容できるゆるやかなスピードで、共生を図るべきなのではないだろうか。
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1964年当時の環境問題告発論文。 データとしても理論構築もその当時とし ては突出していたのかも。 ただ国家と大企業の関係性や社会構造の 弊害部分においては現代に通じる部分も 見受けられる。
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残留農薬の危険性について告発した、名作レポート。取材してというドキュメンタリーというよりは、論文等をまとめたレビュー論文という形だ。 前半は、DDTおよび2,4Dなどの経皮毒性の農薬をまくことで起こった被害について、何度も繰り返し同じ内容を場所を変えて述べているだけであり、前に...
残留農薬の危険性について告発した、名作レポート。取材してというドキュメンタリーというよりは、論文等をまとめたレビュー論文という形だ。 前半は、DDTおよび2,4Dなどの経皮毒性の農薬をまくことで起こった被害について、何度も繰り返し同じ内容を場所を変えて述べているだけであり、前に進む話でもないため、少々読みづらい。 後半は、論調はそのままなのだが、改善例、うまくいった例、利益相反の告発など、同じ所をぐるぐる回っているわけではないため、俄然読みやすくなる。 論の展開等については、1960年代という時代の問題もあるため、今から考えたら稚拙だし、「いずれ全てが滅ぶ」という論調を、時代が進むことによって覆されてしまったところも有り、素直に読む訳にはいかない。「メス化」なんて話も、ここが初出だったんでしょうかね。 また、これから読む人においては、世の中に存在する「カーソン教信者」にならないよう、ちゃんと疑問を常に抱きながら読む必要があろう。 さて、本作の問題点は、訳のまずさにある。 「沈黙の春といえば?」と聞けば、大概の人が「体に悪い物質は、食物連鎖の上位に向かって蓄積され濃縮される」と答えるだろう。まあ、そういうことも少しだけ書いてある。 しかし、カーソン女史は「農薬を使ってもいいが、使用量は減らせば良い」と書いているのだ。つまり、(脂質や骨などに特異的に蓄積される物質についての)生物濃縮という証拠は見ていても、その重要性は指摘していないのだ。 そういう部分を踏まえて、訳を間違ったのかなんなのだか、「自然にある物質は良い」「人が作った化学物質は全て悪い」という、大きなストーリーから出てこないはずの文章が、時々挿入される。超訳というやつかしらん? また、意図的に誤解を生むのが目的なのかどうなのか、「化学物質は」という言葉が沢山出てくる。これは原文ではおそらく "Chemicals" といった単語であろうことはわかるわけで、文脈的に「農薬」「合成農薬」などという訳語を使うべきだろう。 "Chemo" と言葉が出てきたとしても「化学物質の投与」なんて言わない「化学療法」だ。 最終的に、「マスの癌が多発している。きっとこれも…」なんて話が出てくるが、残念。自然(カビ)の作る毒が由来なのだった。 そういうわけで、結構当時から見ての、未来を見越した良いレポートでは有ると思う。これで訳が良ければ☆4なのだけどなあ。
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環境,公害論に関する話の中では高確率で取り上げられる書物。殺虫剤の危険性をレポートを中心にまとめあげ,薬品の力ではなく自然本来の力を用いた防除を進めるべきだ,という理論で展開されている。50年前ゆえに最新の科学書というわけにはいかないと思うが,化学先行の危険性はいつの時代も変わら...
環境,公害論に関する話の中では高確率で取り上げられる書物。殺虫剤の危険性をレポートを中心にまとめあげ,薬品の力ではなく自然本来の力を用いた防除を進めるべきだ,という理論で展開されている。50年前ゆえに最新の科学書というわけにはいかないと思うが,化学先行の危険性はいつの時代も変わらないと思う。本の中で紹介される本には共通して,時代が経っても色褪せない情報が含まれているのだろう。
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体に悪い成分名がつぎから次へとでてくるけれども 科学に弱くて…覚えられんわと思って 途中から飛ばし読み やっぱり農薬が体にいいわけはないのよね 商業主義にだまされてはいかん。 消費者も知識を持つようにしないと企業の思うつぼなので と、関係ないけど、遺伝子組み換え会社とお友達だと...
体に悪い成分名がつぎから次へとでてくるけれども 科学に弱くて…覚えられんわと思って 途中から飛ばし読み やっぱり農薬が体にいいわけはないのよね 商業主義にだまされてはいかん。 消費者も知識を持つようにしないと企業の思うつぼなので と、関係ないけど、遺伝子組み換え会社とお友達だと聞いて 行かなくなった大手外資コーヒーショップについても おもうのである
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『アメリカでは、春がきても自然は黙りこくっている。そんな町や村がいっぱいある。いったいなぜなのか。そのわけを知りたいと思うものは、先を読まれよ――』 化学薬品の登場は人間の生活にはかりしれぬ便宜をもたらしたが、その一方で自然均衡のおそるべき破壊因子として作用した。本書は化学薬...
『アメリカでは、春がきても自然は黙りこくっている。そんな町や村がいっぱいある。いったいなぜなのか。そのわけを知りたいと思うものは、先を読まれよ――』 化学薬品の登場は人間の生活にはかりしれぬ便宜をもたらしたが、その一方で自然均衡のおそるべき破壊因子として作用した。本書は化学薬品のもつ危険性について、まだよく知られていなかった1962年に出版された。 化学薬品のもたらす影響とその被害の実態を、海洋学者である著者ならではの生物学的知識とデータで補足しつつ多くの具体例を提示し、未来へと警告する。 環境問題について書かれた本と言うとまず第一に挙げられる本書だが、「農薬絶対ダメ!!」的な花畑思考ではない。内容が重複している部分もあるので、後半はけっこう斜め読みになってしまうかも。
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膨大なデータに基づいて分析されたレポート。数々の事例がでてくるため、時々、この話さっきも出てきた?という印象を受けることもあるが、目先の問題を簡単に解決しようとすると、他に多大な影響が出てくるということがよく伝わった。「私たちは心をもっと高いところに向けるとともに、深い洞察力をも...
膨大なデータに基づいて分析されたレポート。数々の事例がでてくるため、時々、この話さっきも出てきた?という印象を受けることもあるが、目先の問題を簡単に解決しようとすると、他に多大な影響が出てくるということがよく伝わった。「私たちは心をもっと高いところに向けるとともに、深い洞察力をもたなければならない。」 ただ、解説にも出ていたけど、化学薬品ではなく生物学的手法によって解決すべきという主張については疑問を感じた。生態系に影響を与えるという点では生物学的手法でも変わらないのでは?
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殺虫剤などによる公害の話. 解説にも書いてあるよう,筆者の解決法は破たんしているけど,50年前に書かれたものだと考えると,意味のある本だと思う.
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主張が非常に明確。「エコ」が「エゴ」にきこえなくなってくるから不思議。長い(やや冗長だ)が読むべき、意義深い本。環境倫理学、ひいては環境学全般は、この本を出発的にしてきた面があると思うし。 ①自然(鳥のさえずりや緑)を人間が楽しむ権利がある ②生態系が崩れると人間に危害が及ぶ可...
主張が非常に明確。「エコ」が「エゴ」にきこえなくなってくるから不思議。長い(やや冗長だ)が読むべき、意義深い本。環境倫理学、ひいては環境学全般は、この本を出発的にしてきた面があると思うし。 ①自然(鳥のさえずりや緑)を人間が楽しむ権利がある ②生態系が崩れると人間に危害が及ぶ可能性がある という2点を根拠としているようだ。 このことがかなり重要。こうした「人間本位」性を、「文明というものの矛盾」と評した筑波氏の解説もなかなか見事。カーソンが「べつの道」として示した「生物学的コントロール」も、本質的には変わりがない(←結局は人間本位の環境改変であるため)と説く、心地よい解説である。
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