死者の奢り・飼育 の商品レビュー
大江健三郎がノーベル文学賞をとったとき、私はまだ高校生だった。 文学史が現代文の試験に出題範囲となっていたことがあって、一番最近の文学者として登場していたのが大江健三郎。 「ノーベル文学賞やし試験に出るんちゃうか」という周囲の声を何の感慨もなくそのまま受ける、たいして文学に興味...
大江健三郎がノーベル文学賞をとったとき、私はまだ高校生だった。 文学史が現代文の試験に出題範囲となっていたことがあって、一番最近の文学者として登場していたのが大江健三郎。 「ノーベル文学賞やし試験に出るんちゃうか」という周囲の声を何の感慨もなくそのまま受ける、たいして文学に興味もなかった私の大江健三郎に対する印象は極めて薄いものであったと思う。ただ代表作の名前ぐらいは覚えておいたほうがいいかもしれないと思い、その代表作は「飼育」という何とも地味な題名だったことだけが印象に残っていた。 「飼育」を結局読んだのは大学に入ってから。 何かで大江健三郎は「サルトルの影響を色濃く受けた作家」というのを読んでいて、そのためかどうかわからないが「死者の奢り・飼育」に入っている短編を読んでの私の感想は「サルトルはこういう作家なのか?」というものであったような気がする。 今思うと、読後にうまく吸収しきれない不思議さが残っていたのだと思う。どうしてこんなにねちっこい感じの文章なのだろうとか、「セクス」みたいな特殊な語感とか、何かを輸入してこないとこんな風にならないのでは、という感じがしたのだろうと思う。 実は現在に至るまでまだサルトルは読んだことがなく(「嘔吐」とか持ってるけど積読になっている)、今でもその時の読後感を引きずっているのかもしれない。サルトルを読んだ時、「死者の奢り・飼育」という短編集に対する私のイメージはどのように変わるのだろう? こういうのも読書の楽しみなんだろう。
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そうでした、大江健三郎への私の入り口はここだったのでした。 彼の姿勢はずっと一貫している気がしますね。
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高3の頃 最初に「死者の奢り」をよんで そのあと もう 滝に流れ落ちるみたいに大江健三郎ばかり読んだ時期がある 今となってはあまり思い出せないけど とても静かな文章書く人のようでいて テーマがけっこう 生臭いところも よい この人の目に 今の日本 どう映っているんだろう
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新聞で読むエッセイを書いている大江健三郎と、死体管理アルバイトの話を書く大江健三郎が、いつも結びつかない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
芥川賞を受賞した作品。黒人兵が落下傘で村に降りてくるという設定だけでも超越したものがある。この作品の語彙や表現力、文章の上手さは読者をあっという間に大江文学の世界に引き込むであろう。驚くべきことに大江氏はこの作品を大学在学中に書き上げている。大江氏が奇才で鬼才であることを立証する作品といってよい。個人的な体験や万延元年のフットボールを読む前にこの作品を大江文学の入り口とするのもよいのではなかろうか。
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キーワードは、「死者の奢り」、「他人の足」、「飼育」、「人間の羊」ほか。初の大江san作品でした。難解な部分も多いですが、何度か読んでみたいと思います! 【第39回芥川龍之介賞】
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大江健三郎の本初めて読みました。今まで読んでいなかったのが自分でも正直不思議です。「死者の奢り」「他人の足」「飼育」「人間の羊」「不意の唖」「戦いの今日」といった6作の短編。 「死者の奢り」ではアルコール漬けの死体を移動させ、「飼育」では黒人兵を田舎の村で飼うといった突拍子もない...
大江健三郎の本初めて読みました。今まで読んでいなかったのが自分でも正直不思議です。「死者の奢り」「他人の足」「飼育」「人間の羊」「不意の唖」「戦いの今日」といった6作の短編。 「死者の奢り」ではアルコール漬けの死体を移動させ、「飼育」では黒人兵を田舎の村で飼うといった突拍子もない設定は読んでいてどういった展開になるのか非常に興味をそそられた。この書籍は6作が6作とも濃い内容。また6作とも描写がリアリティに溢れ、恐ろしい光景だが目の前で起こっているかのように想像がつく。「飼育」や「戦いの今日」で感じたのが、緊張と緩和のメリハリが本当に素晴らしい。 大江健三郎の本をしばらく読み漁っていきたいと思う。
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最後に必ず出てくる、神経質かつ意地悪いどんでん返しがすごい好き。パッケージ化された善とか、本人は善と思い込んでるけどエゴとか、手品みたく見事に崩れて、暗く痛快。
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『死者の奢り』は都市伝説で有名な「死体を沈めるアルバイト」のもとになった、という話を聞いたので読んでみたのだけど…大江健三郎は難解です。なんだかどの話も、もやもやする感情が渦巻いているような、そんな感覚にとらわれるような雰囲気のものばかりでした。
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大江健三郎の若き日の短編集。若さと怒りと焦りと汗と体臭と日本人とアメリカ人、、、という感じ。文章にはようやく慣れてきたが、まだ心を突き刺すところにまで至っていない。このうつうつ感をすっと受け入れられるようになるのはいつのことか。
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