死者の奢り・飼育 の商品レビュー
高校の授業で出会った本。 高校で出会えて本当によかった。 先生のチョイスに感謝。 いろんなことを考えた、と思いださせてくれる一冊。
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外界とは隔絶された閉じた世界に生きる人々に対する、おぞましい程の強い肯定。他者との接触により生じたわずかなヒビが、彼らの世界と外界とを隔てる壁に少しずつ、穴をあけようと音を立てて浸食していくのです。他者との繋がりの中に自己を見出しながらも、結局は自分だけの世界に還っていくさまに、...
外界とは隔絶された閉じた世界に生きる人々に対する、おぞましい程の強い肯定。他者との接触により生じたわずかなヒビが、彼らの世界と外界とを隔てる壁に少しずつ、穴をあけようと音を立てて浸食していくのです。他者との繋がりの中に自己を見出しながらも、結局は自分だけの世界に還っていくさまに、なぜだか勇気づけられたような気がしました。 死体処理室の水槽管理のアルバイトの青年の心を描いた『死者の奢り』、一般とは隔離された療養所に生きる少年たちの『他人の足』、ある村に捕虜として連れてこられた黒人兵と村人とのトラゴイディアを描いた『飼育』。この3篇には、孤独な自己と社会とのより強い繋がりを感じます。自分にとってこの3篇は、ある日突然やってくる晴天の霹靂に打ちひしがれることのないよう、立っていられる強さを与えてくれるような物語でした。それらは同時に、人間の孤独と業を力強く肯定する物語なのです。
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「死者の奢り」☆2 女子学生という言葉だけで可愛い女の子を想像する私は、多分この作品の真意を分かることはないでしょう。 なんでしょうね、なんか通して取っ散らかってる感じが凄く強かったです。 書きたくて書いた文章なのでしょうか? 若い人間性描写は凄く上手いですね。というか、文豪と言われる人は若い人間性描写がとても上手いと思います。それが流行りでもあった時代だったのでしょうか? 基本的に、主人公は「持っていない」人間であり、自分の目を通して見た周りの世界は主人公に優しくない。鉄板ですね。 多分、周りが幸福だった時代に受ける作品なのでしょう。今の時代は、やはり頭空っぽで楽しめる作品のほうが良いです。だって、本読んだ後、周りを見ればささやかな幸せのある一昔前の日常とは違い、今は絶望に囲まれている人が増えているのだろうから。 とはいいつつも、主人公が「持っている」設定があまり好きでは無くなって来ました。いや、何も持っていない主人公には魅力を感じないので、「持ちすぎている」主人公に魅力を感じないのかな。 他人の足☆2 情景と人物描写はやはり秀逸。 でも、昔の本ってなぜ性的な描写が必ずといっていいほどあるのだろう。 今の漫画のパンチラみたいなものなのかな。必要か。 つまり今現在の書籍としては不要な描写なのではないかと思う。少なくとも私は読んでいて不快になるので。作者には「人間ってそういうものでしょ?着飾んなよ」的な考えがあって、私を含めて多くの人にとってはその通りなのかもしれないけど、作品としてみた時にどうなのよ、と。うーん。やはり文学作品は私には合わないんだろうな。小学生の頃から感性育ててなかったからなぁ。 私がシモネタをあまり好まないのも影響してるのかな。TVで芸人さんが言ってるのは笑えるんだけど、一般の方が話すのを聞くのは楽しめない。多分、私がコミュニケーションよりも別な何かを大切にしてるからだとは理解してるけど、それが何かは分からない。普通の人はコミュニケーションを重視するから、受けが良いシモネタ好きなんだろうな、と思ってるけど、この考えは合ってるのかな。 話がそれた。この作品で好きな描写は、学生さんと主人公の部屋での会話です。さすがに上手い。終わり方も、しっくりくる終わりかたかな。というか、この著者はこういった終わり方しか書けないような人に思える。病んでるよなぁ。 飼育☆3 幻想上の世界をあたかも現実にあるかのように書くのはどれほど大変なことなのだろうか。この話は面白かった。 終わり方も結構綺麗だったな。起承転結が上手いのか。 ただ、表現が私には受け入れられない価値観で作られているので、この作風だと満点が☆3つという感じです。いや、お前は何様なんだとか言いっこなしですよ…… 人間の羊☆3 永沢くん理論での評価です。 永沢くん理論とは、あれだけ人をイラつかせるキャラを作るのは凄いけど、イライラするので減点、という私の判断基準。 教員が凄く、ああこんな人いるよね、と思わせぶりなキャラ立ちをしてた。けど、ドラマとかに出てきそうな架空のキャラっぽい印象が拭えない。 不意の唖☆2 不気味。 村社会とはこういうものだ、ってところでしょうか。 内容に関しては特にないかな。なんか唐突に人が死んで終わる作品2つ目?なんだけど、なぜそうなる。 戦いの今日☆1 この作品は意図が全く読めなかった。 まず、私が主人公だと認識している人を「かれ」と表現しているので、多分神視点なんだろうけど、どうもそのようには思えなかった。 内容も、よくわからない。テレビドラマな感じ・・・? 終わり方も意味不明。あそこで終わっていいの?主人公の心情は分かりやすく示したから読み取れってこと? 酒場の女の言った意図が、主人公を慮ってのことではないという認識(つまり周りに同調した)なんだけど、それもあってるのかな・・・どっちにしたってあそこで終わりはないよ。 ということで点数は低いですが、☆5評価が多い理由はわかりました。単純に作品を創る力、キャラクターの心情描写が格段に上手いんですね。私の好きなライトノベル著者になってくれていたら、信者になっていたかもしれない。
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これだから大江健三郎の読者でいることはやめられない。 読んでいると直接伝わってくる強烈で刻銘な感情。それらに大体出口はなく、人にやるせなさやもどかしさを感じさせ、ドロドロしていて何処かであったような体温に近い生ぬるさを持つ。 文字にこれほどまでに力を持たせ、それを短編という容器に...
これだから大江健三郎の読者でいることはやめられない。 読んでいると直接伝わってくる強烈で刻銘な感情。それらに大体出口はなく、人にやるせなさやもどかしさを感じさせ、ドロドロしていて何処かであったような体温に近い生ぬるさを持つ。 文字にこれほどまでに力を持たせ、それを短編という容器に癖のある文体で詰め込んだ本書は何度でも不快を覚悟しながら、手にとってしまう逸作だ。
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初期短編集。全体に強い権力に対する反骨と恐怖が芯となって、どれも力強く、予想外に面白かった。「死者の奢り」は大学組織や死について等、消化しきれない感もあるが、その分わかりやすい。また、「飼育」「不意の唖」など米兵ものも恐怖の対象があっちこっちに動くのに対し、心理描写が秀逸。なるほどの名作。 (以下余談) 病院や研究施設に対する誤解を撒き散らしたとされる、大江の処女作。実は初読。「ホルマリンのプールの話なんて出てこないじゃないか!」ということ。「アルコール類」とされているので、クレゾールでもフェノールいいわけだ。それでも有り得ないけど。
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初めて読んだ作家だけど天才じゃないか・・・! 研ぎ澄まされた文章力で情景がありありと浮かび上がってきて、どの短編も記憶に残る。 間違いなくノーベル文学賞に値する一冊、今まで読んだなかのベスト10に入るかも。
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(1969.02.28読了)(1969.02.04購入) 内容紹介 屍体処理室の水槽に浮き沈みする死骸群に託した屈折ある抒情「死者の奢り」、療養所の厚い壁に閉じこめられた脊椎カリエスの少年たちの哀歌「他人の足」、黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇「飼育」、バスの車中で発生した外...
(1969.02.28読了)(1969.02.04購入) 内容紹介 屍体処理室の水槽に浮き沈みする死骸群に託した屈折ある抒情「死者の奢り」、療養所の厚い壁に閉じこめられた脊椎カリエスの少年たちの哀歌「他人の足」、黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇「飼育」、バスの車中で発生した外国兵の愚行を傍観してしまう屈辱の味を描く「人間の羊」など6編を収める。学生時代に文壇にデビューしたノーベル賞作家の輝かしい芥川賞受賞作品集。
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大江健三郎のデビュー作。短編集。 彼の作品を読むのは初めてだったが、良い。とても良い。 大江健三郎はこれを23才で書き上げたらしいが、なんというか、そういう時代だったのだろう。凄い人もいるものだ。 全体にどこかしら死の匂いが漂っているような感じを受ける短編集だった。 描いてい...
大江健三郎のデビュー作。短編集。 彼の作品を読むのは初めてだったが、良い。とても良い。 大江健三郎はこれを23才で書き上げたらしいが、なんというか、そういう時代だったのだろう。凄い人もいるものだ。 全体にどこかしら死の匂いが漂っているような感じを受ける短編集だった。 描いているのは日常そのものなのだが、一皮剥けばその内側ではものすごい熱量が蠢いているような、ぞわぞわした感じが終始止まない点はどの話にも共通している。 同じ人間だが言葉が通じない異質な存在として「外国兵」や「死者」というモチーフが数多く出てくるところも面白かった。『飼育』などは特にそういう話だったが、同じ人間でありながらコミュニケーションが成り立たない存在への恐怖心・不安感を書くことで、逆に人間というものについて言及しているようなところがある。 『死者の奢り』と『人間の羊』が特に面白かった。 日常を日常のままファンタジーとして描ける小説家は希だが、そういう小説家の一人なのだと感じた。 個人的なタイミングとしても、今読むことができて良かった。 他の作品も読んでみたい。
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『死者の奢り』 医学部の死体置水槽でバイトをすることになった青年の物語。その場に居合わせる管理人、青年、女子学生の濁った気持ちの触れ合いが、アルコールや死体の臭気と共に漂ってくるようでした。医学部の教師&生徒が賤民のような目で偶々そこに居合わせた僕を、管理人や雑役夫と同じよう...
『死者の奢り』 医学部の死体置水槽でバイトをすることになった青年の物語。その場に居合わせる管理人、青年、女子学生の濁った気持ちの触れ合いが、アルコールや死体の臭気と共に漂ってくるようでした。医学部の教師&生徒が賤民のような目で偶々そこに居合わせた僕を、管理人や雑役夫と同じように扱ったので、こういう差別や、嫌らしいエリート意識がまだあるのかもしれないと気づかされました。不本意な妊娠で歪んだ、女子学生の強烈な態度も印象的でした。
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初期の短編集。エロくてよいね。特に「他人の足」。彼の作品のなかで性の「イメージ」というのは全く排除されている。そういう生々しい性に触れているとグロテスクな感じもするし、でもときにはなんだか滑稽であったりもする。それをとおりこして直にエロくもあったりするよ。楽しいね。読みやすかった...
初期の短編集。エロくてよいね。特に「他人の足」。彼の作品のなかで性の「イメージ」というのは全く排除されている。そういう生々しい性に触れているとグロテスクな感じもするし、でもときにはなんだか滑稽であったりもする。それをとおりこして直にエロくもあったりするよ。楽しいね。読みやすかった大江。
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