死者の奢り・飼育 の商品レビュー
名作ばかり。大江らしい閉塞感に息苦しくなりながら読む。死体安置室、療養所、山奥の村など。自分の外側にいるならば生きている人間も死体も同じ理解不能な他者なのか。
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溢れる若さと自意識。張り詰めた肌の向こうで冷ややかに膨張しているような感じ。それは「僕」のものでもあるし、きっと大江自身のものでもある。 死者との語らいの中で、生と死の境目を探そうとするその筆致は、若さゆえの痛々しさや荒削りな表現を孕みながらも、この時点ですでに、小説を読ませると...
溢れる若さと自意識。張り詰めた肌の向こうで冷ややかに膨張しているような感じ。それは「僕」のものでもあるし、きっと大江自身のものでもある。 死者との語らいの中で、生と死の境目を探そうとするその筆致は、若さゆえの痛々しさや荒削りな表現を孕みながらも、この時点ですでに、小説を読ませるという部分において洗練されている。 むしろその、文体的な意味でも、内容的な意味でも、大江自身の若さが「僕」の煩悶する内面を鮮やかに反射して、ぞくぞくするほど面白い。
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屈辱、裏切り。 後ろ向きな思考が躰の奥深くに淀み、 ネガティブな感情で心の傷が溢れかえる。 根底に流れるのは恥。 誰もが隠しておきたい嫌悪すべき意識を 否が応でも引きずり出す。
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表紙からしても、作家のイメージからしても、タイトルからしても、 ちょっと取っ付きにくい本ではある。 しかし、『静かな生活』が、映画から入って大好きで、 原作も読んでとても良かったので、これも買った。 以前、『洪水はわが魂に及び』も読んだが、それは長編すぎて少々骨が折れた。 ...
表紙からしても、作家のイメージからしても、タイトルからしても、 ちょっと取っ付きにくい本ではある。 しかし、『静かな生活』が、映画から入って大好きで、 原作も読んでとても良かったので、これも買った。 以前、『洪水はわが魂に及び』も読んだが、それは長編すぎて少々骨が折れた。 この短編集は、読みやすい。しかし暗い。落ち込むほど暗い。 純文学とはこういうものだ、という礎のような作品ではないかと思う。いい意味でも悪い意味でも。 中でも「飼育」が好きだ。 戦争直後の日本の混乱期、まだ米兵が定着していない様が、逆に新鮮身を以て戦後世代に語りかける。 戦争は終わらない。この作品が描かれた頃も、そして今でも。 それを実感する作品群だった。
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冒頭を少し読んで物語に入り込んだ瞬間から、あまりの文学としての迫力に震えながら読んだ。こんなもの、初めて読んだ。本を読んで心を揺さぶられるということは、こういうことなんだろう、と。感動的でメリハリのあるストーリーや衝撃的なオチなんて、全く必要ない。静かに、美しく淡々と語る。それだ...
冒頭を少し読んで物語に入り込んだ瞬間から、あまりの文学としての迫力に震えながら読んだ。こんなもの、初めて読んだ。本を読んで心を揺さぶられるということは、こういうことなんだろう、と。感動的でメリハリのあるストーリーや衝撃的なオチなんて、全く必要ない。静かに、美しく淡々と語る。それだけで、こんなにも、世界を創り出すことができるなんて。人物像とかノーベル賞とか、政治的立ち位置とかはよく分からないけれど、こんな文学が存在できるなんて。日本文学の戦後派の流れの中にこんなに素晴らしいものが生じたなんて。信じられないけれど、ほんとうに嬉しい。
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文学的能力がいまいちの私にはいずれの話もよく理解できないものの、「難しくて読めなくて進みません」という感じでもないところが不思議。 「何か大きなテーマが背景にある」とも思わないし、だからといって、「雰囲気を楽しむだけ」の小説でもないように感じる。 現時点では、私にとって、自分...
文学的能力がいまいちの私にはいずれの話もよく理解できないものの、「難しくて読めなくて進みません」という感じでもないところが不思議。 「何か大きなテーマが背景にある」とも思わないし、だからといって、「雰囲気を楽しむだけ」の小説でもないように感じる。 現時点では、私にとって、自分の中に不思議な感覚を残した小説という位置づけになるのみだ。 いつかまた読みたい。
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新潮文庫のフェアだったのは2001年。2008年になってようやく読み終えた。はじめに読んだのは『人間の羊』。19歳位のときに。 冷静で冷徹な文章なのに、大人のひとで、どうしてこんなに子どもの気持ちを判ってくれるんだろう。
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・生々しい色合い、くぐもったにおい、閉塞感。文章が目を通って脳を経由し、視覚、嗅覚、触覚に還ってくる。嫌な感触を残す。 ・あとがきで「人間の羊」にこめられた意味を知り、鳥肌が立つ。他の人の書評読んでいると一編一編に含蓄があるのだろうか。再読・検討したい。 ・大江さんとは生まれ育っ...
・生々しい色合い、くぐもったにおい、閉塞感。文章が目を通って脳を経由し、視覚、嗅覚、触覚に還ってくる。嫌な感触を残す。 ・あとがきで「人間の羊」にこめられた意味を知り、鳥肌が立つ。他の人の書評読んでいると一編一編に含蓄があるのだろうか。再読・検討したい。 ・大江さんとは生まれ育ったバックグラウンドが違うのに、現代の自分にこんなにも衝撃を与えている。文章の力、凄い。
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作者に病的な変態を感じながら、読みました(笑)。 しかし、そこから見る観念の世界はねっとりとして、なんと美しく妖しくきらめいていることか! 社会に縛られた安直な倫理や既存の価値観に、ぐらぐらと揺さぶりをかける美しく強い観念の磁場がここにあるような気がします。
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やはり保存処理された死体をラベリングするアルバイトについてが非常に秀逸で、新しい生命の奢りも含ませることで簡単に死生観を片付けてはいない気がする。生き物は死ぬと文字通り、物に戻ってしまうのだろうか…考えずにはいられない。
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