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破船 の商品レビュー

4.2

117件のお客様レビュー

  1. 5つ

    44

  2. 4つ

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  3. 3つ

    15

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2012/11/20

2012年11月20日読了。貧しい海辺の漁村、時折訪れる難破船を「お船様」と呼び、その積荷・木材などの供給を頼りに厳しい環境を乗り切って性買うとしていたが・・・。ひょんなことで友人Kより送られた本、著者の名前だけ知っていて読むのは初めてだったがなんとも濃密なリアリティ・迫力が感じ...

2012年11月20日読了。貧しい海辺の漁村、時折訪れる難破船を「お船様」と呼び、その積荷・木材などの供給を頼りに厳しい環境を乗り切って性買うとしていたが・・・。ひょんなことで友人Kより送られた本、著者の名前だけ知っていて読むのは初めてだったがなんとも濃密なリアリティ・迫力が感じられ大変面白かった・・・こういう作品を書く人だったのか。苛酷な環境でサバイブする人々の葛藤を写実的に描くあたり「蟹工船」などにも通じる感覚があるような気もするが、文章力とへんな政治的イデオロギーが感じられない分はるかにこちらの方が上に感じる。これほどまでにして、人々がこの村に執着する理由は何なのだろう・・・?とも思うが。出稼ぎから帰った男たちのエピソードなどに希望とも絶望ともつかない重いものを感じる。薄い文庫本だが、実に濃密だった。

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2012/02/18

食物も少なく、貧しい漁村。 その漁村では、毎年とある行事が行われていた・・・・・。 貧しい漁村に生きる人々の暮らしや葛藤、貧しさ故の悲劇を淡々と、丁寧に綴った小説。村に住む少年の目線から物語が語られます。 季節折々の風景や情景描写が素晴らしく、映画を見ているようにその光景が目に...

食物も少なく、貧しい漁村。 その漁村では、毎年とある行事が行われていた・・・・・。 貧しい漁村に生きる人々の暮らしや葛藤、貧しさ故の悲劇を淡々と、丁寧に綴った小説。村に住む少年の目線から物語が語られます。 季節折々の風景や情景描写が素晴らしく、映画を見ているようにその光景が目に浮かびます。 明るい話ではないし、重く物悲しくい作品ですが、深い印象を残す作品です。 重くて悲しいけれど、鬱々じめじめと引きずるような暗さではなく、もっともっと心の奥深くに響くというか。 神保町の本屋で "裏・夏の100冊" として売られていて、何となく惹かれて購入した作品ですが、まさに"大人の為の夏の課題図書"っていう感じがします。 ある程度の経験を経て大人になったからこそ、重さ・暗さを超えた部分を感じられるようになったのかなあ、と思いました。 数年前までは、ハッピーエンド以外の本は意識的に避けていたのですが、ここ1年ほどはようやくこうした重さからも逃げないようになってきました。

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2012/01/24

父の本棚から拝借して、初めて読んだのが中学生の時。一気に読み切り、その夜は恐怖で眠れなかった。 今でも繰り返し読み返す、吉村昭の「破船」 徹底した取材と情報収集を下地に、静謐でいて鋭く写実的な筆致を誇る、ノンフィクションの帝王、吉村昭。 「破船」は江戸時代、とある漁村の因習が...

父の本棚から拝借して、初めて読んだのが中学生の時。一気に読み切り、その夜は恐怖で眠れなかった。 今でも繰り返し読み返す、吉村昭の「破船」 徹底した取材と情報収集を下地に、静謐でいて鋭く写実的な筆致を誇る、ノンフィクションの帝王、吉村昭。 「破船」は江戸時代、とある漁村の因習が産み出した村の崩壊までの物語。 この小説に限っては多分フィクションだろうと思うが、どこかモデルになった地域があるのだろう。吉村昭の緻密な文章はまるでその現場に、その時代に居合わせた様なリアリティを持って立ち上がってくる。 とにかく怖い。恐怖というより戦慄を感じる。 自分達が生きるために行っていた日常の営みが、実は大きな別の意味を持つ行動であり「ムラ」という閉じられたコミュニティの無知が、集団の暴走が、村人達全員を破滅へと押しやっていくまでの感覚が、状況が、全て詳細に語られるからこそ怖い。 そんじょそこらのホラー小説では味わえない「人間の愚かさ」が生み出した恐怖をとことん味わいたければ、間違いない。この本しかない。

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2012/01/22
  • ネタバレ

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極貧の漁村で伝わる闇夜で火を炊く「塩焼き」と呼ばれる風習。 成人した主人公は、それが遭難した船をおびき寄せ座礁させるためのものだとはじめて知る。破船となった「お舟様」から運び出された積荷は村人に分配され、船員は全員殺される。 「お舟様」は、村に恵みをもたらす慶事であった。 しかし、ある年の「お舟様」は村に厄をもたらすことになる。 食えない時代の人々が、生きていくために受け入れる数々の不条理。これほどまでに陰鬱で絶望的な物語をかつて読んだことがありません。

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2011/12/09

貧しい漁村の人びとが難破船に追剥行為をはたらき、生活を潤すという奇習がもたらした災いはまさに因果応報といえるんだけど、それだけでは済まされないもの悲しさ。

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2011/11/26

生きる事は食べる事。食べる為に働く。働けない物に与える食べ物はない。座礁した「お船様」の積荷を奪って最低限の生活のギリギリのところで生きている村人たち。 村を存続させるために行ってきた事によって、村が消えてしまうかもしれない危機に陥ってしまい、希望が見えない話でした。 とても迫力...

生きる事は食べる事。食べる為に働く。働けない物に与える食べ物はない。座礁した「お船様」の積荷を奪って最低限の生活のギリギリのところで生きている村人たち。 村を存続させるために行ってきた事によって、村が消えてしまうかもしれない危機に陥ってしまい、希望が見えない話でした。 とても迫力のある物語でした。

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2023/11/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

恐ろしいものを,読んでしまった。 読み終えた数日後の私はそんな意識に支配されていました。 後悔に似た,満足感。 読了直後は,ああ,面白い本だった!最高!という気持ちだったものの,翌日,翌々日になってもその余韻は引かず,思い返すうちに,恐ろしい本だったな,と。なんというものを読んでしまったんだろう,という気持ちと,こんな本を読めてよかったという二つの気持ちがふつふつと沸いてきました。 一応はフィクションのようですが,作者のこれまでの作風を鑑みると,恐らくこの話も一部は事実に基づいているのでしょう。 座礁した難破船を襲い,荷物を奪い取る「お船様」という行事によって,なんとか飢えを凌いで生きている村民たち。 この行為自体,村ぐるみの犯罪。でもそれをしないと常に飢えと隣あわせのため,難破船が来ることを祈る行事すらあるという。 この事実にまずゾッとしたのですが,貧困にあえぐ生活ならばこういう行事が行われることも致し方ないのかもしれません。 例の船が座礁してからはもう,恐ろしく,先を読みたくない,と思いながらも読む手は止まらない。アッと言う間に詠み切ってしまいました。 生々しくて,リアルで,胸がつまり,苦しいけれど,これが現実。 事件そのものもさることながら,当時の民俗習慣的なものにとても興味を持ちました。今の時代では考えられないような思想も,当時は正しいものとして受け入れられており,それが普通であった世の中。 うーん、、、興味深い。それによって悲劇がもたらされることもあったようです・・・。 この本は特にラストシーンが印象に残りました。よく考えると,ラストが印象に残るものって私が読んだ本ではあまり多くはありません。 主人公の気持ちが手にとるようにわかり,そしてその父親のことを思うと胸が詰まりました。 全体的に暗い話ではあるんですが,本当に面白かったです。 是非色々な人に読んでいただきたい作品。 それにしても医学の発展・・・特に種痘を生み出したジェンナーwはすばらしい。天然痘怖すぎ。

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2011/10/29

貧しい漁村に、おそろしいコミュニティの一面があった。それが「お船さま」を迎えること。 しかし、それも、村人が生きてゆくために考えられた掟。

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2011/10/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2011.9.14~27 何とも言えないもの哀しさが残る読後感。ほんの100年位前までは貧しい漁村でのありふれた光景だったのだろう。何も道具がない生活においても生き残りのための知恵と工夫があったこと、そして現代に至る飛躍的な日本人の生活向上スピードにあらためて感心。こんな国は世界のどこにもないだろうが、その根源に興味が湧く。

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2011/09/16

久しぶりに吉村昭  およそ8ヶ月ぶりの吉村昭。1982年の作品。  淡々と進むタッチはいつもの通り。しかし今回はすごい。色やにおいが浮かんでくる感じがする。  まさに、目の前で物語が進んでいるような、そんな迫力ある筆遣いだ。  貧しい漁村にとって、難破した船の積荷は宝。難...

久しぶりに吉村昭  およそ8ヶ月ぶりの吉村昭。1982年の作品。  淡々と進むタッチはいつもの通り。しかし今回はすごい。色やにおいが浮かんでくる感じがする。  まさに、目の前で物語が進んでいるような、そんな迫力ある筆遣いだ。  貧しい漁村にとって、難破した船の積荷は宝。難破を誘うが最初の冬は何もなく、次の冬は仕組まれた難破でたくさんの宝が(非合法的に)村に入り、3回目の冬では逆に村民が天然痘ウィルスに冒されてしまう。  当時は不治の病である天然痘患者を船に乗せて送り出すと言うことが行われていたのだろうか。たぶんそうなんだろう。その船が漁村の近傍で難破したことが漁村の不幸だ。偶然なんだが、それが村の生死を決めてしまう。  宝を得ることもあれば、不幸を得ることもある。本作ではぎりぎりの貧しさの中で暮らす漁村の風景が赤裸々に描かれている。それとともに、不条理な世界がそこに立ちはだかっている。  不条理が不条理でないような世界、虚構のようで虚構ではなくれっきとした真実の世界。不思議な世界だ。それをこれほど目の前に展開する吉村昭の力は本当にすばらしい。久しぶりに文学に感動した作品だ。吉村作品の中で私のベスト3に入るな、これ。

Posted byブクログ