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破船 の商品レビュー

4.2

117件のお客様レビュー

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病気の描写がなまなま…

病気の描写がなまなましく、こっちまで気分が悪くなる文章はなかなか。

文庫OFF

2024/10/06

 自選集の中の一遍。隙も淀みもない文章と物語。最初から引き込まれて1日ちょっとで読了しました。  暗く悲しい小説ではありますが、行間からにじみ出てくる日本文化、風習、民の生活感があります。如何に現代が恵まれているかを再認識いたしました。

Posted byブクログ

2024/10/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

・あらすじ 戸数十七戸の貧しい漁村にすむ九歳の少年、伊作の三年間。 父は三年の年季奉公に出ており、母と三人の弟妹を養うために漁で何とか日々を凌いでいた。 そんな貧しい村では難波船から流れ着く積荷は村民を数年食べさせられるだけの恵みを運んでくるため「お船様」と呼ばれていた。 冬のある日、村おさから浜で夜通し塩焼きを行うように命ぜられる。 その風習は灯りで船を浜に誘き寄せて難波させ、その積荷を奪うためのものだった。 伊作が十一歳の頃ある難波船が発見される。 船内に積荷はなく、赤い衣を身につけた死者がいるばかり…。 そのお船様の到来により村に災厄が降りかかる。 ・感想 読了後の感想が「えっ…うそやん」だった。 最悪の結末になってしまってこの世に救いはないのかと思った。 これは今まで読んだ吉村昭作品の中でも(と言ってもまだ4作目)ダントツに救いがなく心がえぐられる陰鬱な作品。 淡々と、ただただ淡々と感情を排した文章がより容赦なくてホラーより怖かったわ。 ただでさえ過酷な環境で助け合って(犯罪だけど)暮らしてる人々に対する容赦がない、いっぺんの慈悲もなし。 最初は貧しく過酷な自然環境のなかで命を食い繋ぐ村人の生活を描いたものかと思ってた。 そんな中で伊作の恋や成長が描かれる的な話なのだと思ってた。(吉村先生の作品というだけで買ったのであらすじを読んで無かった。よく考えたら吉村先生がそういう話書くわけないよな) そんな中で村ぐるみの犯罪の様子が描かれだして「なるほど、タイトルの破船はそういう意味だったのか。まぁ(おそらく)江戸時代あたりの貧しい漁村だとこういう事もあったんだろうな」くらいの感想だった。 小さい共同体の中の風習や限られた人間関係。 閉塞的で陰鬱な環境の中、お船様を呼び寄せて強奪した積荷のおかげで一時でも村人の表情が明るくなる。 そして起こった災厄。 柱には赤い猿の面がかけられ、全身を赤い着物で装っている死者の乗った船がたどり着く。 そしてその死者には吹き出物や瘢痕があった…。 普通に考えればあまりにも不審だし、絶っっ対やばい船なんだけど、閉された社会で生きてる人たちに伝染病などの知識もあるはずがなく、また貧しい生活にはお船様からの恵みはかけがえのないものだしね。 時々描写される身売りした伊作の父の精神、身体の頑強さと健全さがよりこの物語をより悲しい気持ちにさせる。 家族を飢え死にさせないために奉公にでて、過酷な労働に耐え、あと数日で帰村という時。 きっと彼は妻と三人の子供が何とか生きのびて彼の帰りを待っているんだと、それを心の支えに乗り越えてきたんだと思う。 ようやく帰ってみれば村は天然痘により滅びかけ、自分の家族は伊作以外は死に絶えていたなんて、辛いとかそんな言葉じゃ表せない。 最後の伊作と母の今生の別れのシーンですら心境をドラマティックに描写することなくただ淡々と紡がれる文章。 だからこそどうしようもない伊作の絶望が感じられてきつかった。

Posted byブクログ

2024/09/25

他作品でもそうだが、なぜここまで細かく描写できるのか。200世帯弱の小さな集落での独特な文化に読みながらどっぷり浸かってしまい、早くお船様とお父さんが来るように願ってしまった。

Posted byブクログ

2024/07/24

小さな村で過ごす少年の3年が書かれている。 魚をみろ、魚でさえいつも体を動かしている、と口癖のように言う母。お金のため3年の奉公に出た父。お船様からの恵みがなければまともに食べていけない貧しい村。 少年が成長していく描写が多いにも関わらず、いつこの日々が崩れるのかという緊張感や悲...

小さな村で過ごす少年の3年が書かれている。 魚をみろ、魚でさえいつも体を動かしている、と口癖のように言う母。お金のため3年の奉公に出た父。お船様からの恵みがなければまともに食べていけない貧しい村。 少年が成長していく描写が多いにも関わらず、いつこの日々が崩れるのかという緊張感や悲しさが漂っており、小さなお船様が来た時には、こうなるだろうと頭では分かっていながらハラハラした。 悲しい物語と銘打たれている小説より、毎日を淡々と、感情さえも淡々と書かれている方が一層悲しく思えることもあるものだと思った。

Posted byブクログ

2024/06/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

再読。 貧しさの為に口減らしや身売りが行われている漁村が舞台。「お船様」さえくれば、そのようなことをせずに済む。2年続けてやってきた「お船様」は幸運をもたらすものだったのか...? 初めて読んだ時は閉鎖的な村社会での村おさの存在が衝撃的でした。今回は少し視点が変わって主人公の成長が印象的でした。わずか9歳にて父親不在の一家の長男として漁に出る。その後彼を見舞う様々な出来事を通して彼は一人前の大人へと成長していく。また、彼の中にすでに根付いている価値観・死生観も興味深かったです。 本編230頁程度。展開が比較的早いので先へ先へと読み進めたくなるテンポの良さがあります。

Posted byブクログ

2024/04/16

なんかもうずっとつらいのよ。大自然のペースに合わせてしがみつくような生き方とか、村ぐるみで犯罪を隠したりしてるとか。お船様で一時は生き延びられるかもしれないけど、それが永遠ではないってわかってるところとか。 それでも好きな娘との淡い交流とか、漁の腕前が上がったとか、友人との関係が...

なんかもうずっとつらいのよ。大自然のペースに合わせてしがみつくような生き方とか、村ぐるみで犯罪を隠したりしてるとか。お船様で一時は生き延びられるかもしれないけど、それが永遠ではないってわかってるところとか。 それでも好きな娘との淡い交流とか、漁の腕前が上がったとか、友人との関係が穏やかなものになっていったりとか、きらめく瞬間がある、あったのにさぁ~~…

Posted byブクログ

2024/04/10

物語はフィクションであろうが、舞台にとっている設定は必ずしもフィクションとも言い切れないのかも。 貧しい漁村が生きるために、冬の荒れた海を航行する船に向かって火を灯し灯台と勘違いさせて座礁させその積荷を奪ったという苛酷な生きる知恵とその悪行に対する大きな報い。

Posted byブクログ

2024/02/06

なんだろうな...海の恵みの描写とか四季の移り変わりの描写とかうつくしい風景目白押しのはずなのに人々の暮らし描写の陰鬱さがそれに並ぶ不思議。村から出たいとも思わず村長を中心に一致団結することで暮らしが成り立つ不思議。地方の因習ネタのホラーとか好きなんだけど現実に即するとなるとこう...

なんだろうな...海の恵みの描写とか四季の移り変わりの描写とかうつくしい風景目白押しのはずなのに人々の暮らし描写の陰鬱さがそれに並ぶ不思議。村から出たいとも思わず村長を中心に一致団結することで暮らしが成り立つ不思議。地方の因習ネタのホラーとか好きなんだけど現実に即するとなるとこうなるのか...

Posted byブクログ

2023/11/10

一人前の漁師/大人になるという自覚が芽生え始めた少年が主人公。出稼ぎ(身売り)により父が不在の三年間を描く物語。 読み進めて早い段階から、自然現象に左右される寒村という共同体の、心細さと危うさが重くのしかかり息苦しさが続く。それでも、主人公が徐々に成長して生活は安定に向かうのか...

一人前の漁師/大人になるという自覚が芽生え始めた少年が主人公。出稼ぎ(身売り)により父が不在の三年間を描く物語。 読み進めて早い段階から、自然現象に左右される寒村という共同体の、心細さと危うさが重くのしかかり息苦しさが続く。それでも、主人公が徐々に成長して生活は安定に向かうのかと思った矢先、ついにお舟様が到来し、寒村の日常は狂い始め、あまりにも悲劇的で無情な幕引きへ。 村人の自死シーンでサラッとギョッとすることが書いてあったり、村人達の犯す大罪がテキパキ機械的に進んだり、文体/描写はかなり淡々としていて、だからこそ抵抗できない暴力の怖さ不穏さを強く感じた。一方で、クライマックスの母の健気な強さには胸を貫くような切なさがあり、あわや落涙するところだった。 230ページとは思えないくらいズシンと重厚/濃厚な一冊。

Posted byブクログ