彼岸過迄 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
戦前の小説は、「難しい」というよりも「まわりくどい」。なので読むのに時間がかかる。 本書は『こころ』のような悲壮感はあまりなく、呑気な雰囲気で読みやすかったが、終わり方は良くない。ついでに恐れ多くも文豪の小説に突っ込むのなら、最初の森本のくだりはいらないんじゃないかと感じた。 この話は須永夫人、田口夫人、松本の3姉弟を中心とした松本家の物語。日本の家庭制度は表向きは男系で男が嫁をもらい親の名前を継ぐ。しかし現実は女系。親戚付き合いは母親の親族と係りが深い。現代はそうだが、漱石の時代もそうだったのかと思わされた。 自分の子どもが生めないばかりに夫の愛人の子どもを育て、自分の妹の子どもを一緒にさせようとする。婚家の血筋ではなく実家の血筋、自分の血筋を残そうとする須永夫人がなんとも不憫に感じた。
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ラッセル「幸福論」に「人間は、自分の情熱と興味が内ではなく外へ向けられているかぎり、幸福をつかめるはずである」と書いてあったけど、そんな話として読んだ。 「行人」の後に読みましたが、あちらより構成が弱め、道に迷いながら書いている感じがある。それも悪くないけど。 ここの文章がす...
ラッセル「幸福論」に「人間は、自分の情熱と興味が内ではなく外へ向けられているかぎり、幸福をつかめるはずである」と書いてあったけど、そんな話として読んだ。 「行人」の後に読みましたが、あちらより構成が弱め、道に迷いながら書いている感じがある。それも悪くないけど。 ここの文章がすごく好きです。 「敬太郎の頭にはその時から怪しい色をした雲が少し流れ込んだ。その雲が身体(からだ)の具合や四辺(あたり)の事情で、濃くなったり薄くなったりする変化はあるが、成長した今日(こんにち)に至るまで、いまだに抜け切らずにいた事だけはたしかである。」
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前半で一年前に詰まってしまい、色々と思うところあってまた読んでみた。 恋なのか情なのか、分からない。そんな人たちのお話し。 考え過ぎると人間ってのは前に進む勇気がなくなってしまうのかもしれない。 勿論それは一つの正解だと思う、人の道に正解も不正解もないんだろうけど。 でもどこに...
前半で一年前に詰まってしまい、色々と思うところあってまた読んでみた。 恋なのか情なのか、分からない。そんな人たちのお話し。 考え過ぎると人間ってのは前に進む勇気がなくなってしまうのかもしれない。 勿論それは一つの正解だと思う、人の道に正解も不正解もないんだろうけど。 でもどこにも行けなくなってしまったら人はどこに落ち着けばいいのだろう。落ち着く必要ってなんなんだろう。
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誠実だが行動力のない内向的性格の須永と、純粋な感情を持ち恐れるところなく行動する彼の従妹の千代子。愛しながらも彼女を恐れている須永と、彼の煮えきらなさにいらだち、時には嘲笑しながらも心の底では惹かれている千代子との恋愛問題を主軸に、自意識を持て余す内向的な近代知識人の苦悩を描く。...
誠実だが行動力のない内向的性格の須永と、純粋な感情を持ち恐れるところなく行動する彼の従妹の千代子。愛しながらも彼女を恐れている須永と、彼の煮えきらなさにいらだち、時には嘲笑しながらも心の底では惹かれている千代子との恋愛問題を主軸に、自意識を持て余す内向的な近代知識人の苦悩を描く。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file5/naiyou8106.html
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漱石後期の一作目。 短編が集まって長編が構成されている手法が用いられている。 本著でも漱石節を堪能することができる。それは繊細な心の内面の描写そして卓越した文章力。 短編を集めた構成となっていることから、テーマは男女関係、親子関係、高等遊民、資本家等々、多岐に亘る。 これを贅沢...
漱石後期の一作目。 短編が集まって長編が構成されている手法が用いられている。 本著でも漱石節を堪能することができる。それは繊細な心の内面の描写そして卓越した文章力。 短編を集めた構成となっていることから、テーマは男女関係、親子関係、高等遊民、資本家等々、多岐に亘る。 これを贅沢とみるか消化不良とみるか読者で分かれるところだろうか。 以下引用~ ・「純粋な感情程美しいものはない。美しいもの程強い者はない」 ・彼(市蔵)は社会を考える種に使うけれども、僕は社会の考えにこっちから乗り移って行くだけである。そこに彼の長所があり、かねて彼の不幸が潜んでいる。そこに僕の短所があり又僕の幸福が宿っている。
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なんとなく、そこはかとない悲しさが漂う。 宵子さんが亡くなってしまうあたり、特に。 ただ、話としては、なんとなく小粒に感じる。 何度か読むと味わいが出てくるのかもしれない。
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20131230読了。 漱石先生、後期三部作の一作目。 特に印象に残ったのは、「報告」のなかで、田口を批評する松本のことばと、「須永の話」での、市蔵の千代子に対する嫉妬と自意識との葛藤の様子。 上滑るように生きなければ、またたくまに精神を病んでしまうような現代人の生きづらさへ...
20131230読了。 漱石先生、後期三部作の一作目。 特に印象に残ったのは、「報告」のなかで、田口を批評する松本のことばと、「須永の話」での、市蔵の千代子に対する嫉妬と自意識との葛藤の様子。 上滑るように生きなければ、またたくまに精神を病んでしまうような現代人の生きづらさへの漱石先生なりの警鐘を感じた気がした。 誰もがなにものでもない市井の人として生きていくなかで人一倍、自意識のなかに埋没し自意識のみを肥大化させた須永。愛に対峙したときでさえ、自尊心から心を解放できないさまは、見ていて心苦しいがそれもまた“正直”であることの一面だと思った。 たしかに、『こころ』や『それから』ような劇的な展開はないけどだからこそ、実生活においてそこらじゅうに転がる人間の本質が垣間見える気がした。
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彼氏に勧められての読書でしたが、、 なんともスッキリせず(´・ω・) 千代子との恋愛に対して自意識を持て余している様がなんとも好きになれず、モヤモヤしてしまいました。。 探偵のくだりが1番面白かったのですが、それも一瞬で、まだ読むの早かったかな〜と笑
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自分一人の中でぐるぐる回る思考の迷路、思索と言うより、若い時に経験値が余りにも足りない為に(もしくは未熟で思慮に劣る為)ぐるぐるするしかないあの「考えれば考えるほど自分は他者に理解されてない」出口もなく向上的でもなかった頃の、思考回路の癖と言うか、そう言うものを思い出した。成熟に...
自分一人の中でぐるぐる回る思考の迷路、思索と言うより、若い時に経験値が余りにも足りない為に(もしくは未熟で思慮に劣る為)ぐるぐるするしかないあの「考えれば考えるほど自分は他者に理解されてない」出口もなく向上的でもなかった頃の、思考回路の癖と言うか、そう言うものを思い出した。成熟に程遠い年代の… BL的匂い系作品と取れなくはないが、個人的にはその方面には全くハマらず。それよりも市蔵が婚約者とされている従姉妹の千代子に対する認識の描写の部分の方が愛情とその他もろもろの裏返し表現として優れている。
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