彼岸過迄 の商品レビュー
夏目漱石の前期三部作を読み終わったので、後期三部作へ。前期のモラトリアムな高等遊民の話から一歩進んでいる気がする(それでも臆病な自意識が邪魔をして、女の子と上手くいかないのですが)。 話も工夫していると漱石が言うだけあって、蛇のステッキの話から探偵まがいの話など興味を引く小話がう...
夏目漱石の前期三部作を読み終わったので、後期三部作へ。前期のモラトリアムな高等遊民の話から一歩進んでいる気がする(それでも臆病な自意識が邪魔をして、女の子と上手くいかないのですが)。 話も工夫していると漱石が言うだけあって、蛇のステッキの話から探偵まがいの話など興味を引く小話がうまくつなぎ合わされて千代子との話に流れていき、飽きずに読めた。
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胃潰瘍による大出血で死の淵をさまよった「修善寺の大患」後の初の作品。 「行人」「こころ」と続く後期の三部作の最初の作品だが、正直いって、あまりよくわからない。 なにを書けばいいのか、試行錯誤中の作品のように見える。 漱石の職業作家としての第一作は「虞美人草」で、第二作目が「坑夫...
胃潰瘍による大出血で死の淵をさまよった「修善寺の大患」後の初の作品。 「行人」「こころ」と続く後期の三部作の最初の作品だが、正直いって、あまりよくわからない。 なにを書けばいいのか、試行錯誤中の作品のように見える。 漱石の職業作家としての第一作は「虞美人草」で、第二作目が「坑夫」だった。 「坑夫」はルポルタージュ風の作品で、いろいろな題材を模索しているふうだったが、その時受けた感じに近い。 「坑夫」のあと、「三四郎」「それから」「門」と続く、前期の三部作が始まるわけだ。 「彼岸過迄」は後期三部作の第一作とはいえ、ここからどこに向かおうとしているのか、まだその先が見えない。
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- ネタバレ
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(個人的)漱石再読月間の11。あと4! 短編をいくつか重ねてひとつの主題に迫るという手法。当時は新しいものだったらしいが、現代の小説で普通に慣れ親しんだ形なので、さすが。 主題は「嫉妬」 ひとつひとつがとてもクオリティが高く、特に幼児が突然亡くなる話しは緊迫感がすごい。 漱石は探偵という職業をとても卑しいものと考え、何度も作品中登場人物にそう語らせていたが、それを遂に形にした話しもとても良かった。ポンコツ見習い探偵ものとして、むりやりミステリーだと言ってみようか。 所々覚えてる箇所もあるが、ほとんど忘れている…というかこんなに面白かったっけ?
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電車での通勤になり、電子書籍ばかりになった。amazon primeで後期三部作を無料ダウンロード。今更の夏目漱石。 現代の草食男子を思わせる青年の恋の続きが気になってしょうがない。
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娶る気もないくせに嫉妬をする市蔵に千代子が卑怯だと伝えるシーンがやはり印象に残る。 でも彼の考え方は割と現代的で分からんくもないが…最後は希望と捉えたいところ。 しかしこの作品、夏目作品としては結構新鮮なつくりだった。 これで後期3部作も残り1つ‼︎ 買っとこ。
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さすがに濃厚な内容でした。読むのに骨を折ってしまい、時間がかかりました。 が、さすが文豪、これぞ文学といった「構成」。 難解ではありながら、読んでいると腑に落ちる「文体」。 人物の細かな心情変化、とくに「男性の嫉妬心」「猜疑心」を絶妙に表現していました。 夏目漱石の文学的知識が...
さすがに濃厚な内容でした。読むのに骨を折ってしまい、時間がかかりました。 が、さすが文豪、これぞ文学といった「構成」。 難解ではありながら、読んでいると腑に落ちる「文体」。 人物の細かな心情変化、とくに「男性の嫉妬心」「猜疑心」を絶妙に表現していました。 夏目漱石の文学的知識が多少なりともあるからこそ、読み進めていけるけれど、現代小説に慣れきってしまうと、漢文の素養をいかんなく発揮した回りくどい漱石の言い回しは読みにくく感じてしまうかもしれません。 が、夏目漱石の表現は、大げさに思える比喩の一つ一つを繋げていくことで「ああ、これしか表現のしようがない」と思えるようなもので、咀嚼して読んでいくことでスルメのように味わいが出てくる。 構成として、短編をつなぎ合わせて一つの長編をなすというもの。 夏目漱石の「後期三部作」のテーマである「自意識」が客観的に、主観的に、さまざまな視点を通して描かれていく。 やはり漱石はすごいなと思わせるのは、その構成の妙にあります。 一見主人公に見える「敬太郎」は全編通してその存在は感じとれるものの、後半になるにつれて徐々にその存在が希薄になっていきます。 最後にはたんなる「聞き手」として、脇役になってしまう。 敬太郎は刺激を求め、様々な人から話を聞くし、自分の足も使うのですが、彼の内面はなにか好奇心をくすぐるようなものはないかと、外の世界にばかり向いていて、自分の物語を形成することはしない。 ですが、敬太郎が話を聞きに行く人々は、それぞれがドラマを抱えていて、後半になると、中心人物は「須永」になっていきます。 須永は自意識の塊で、その性質のために刺激を受けないように過ごしているけれど、内面では劇的な感情の波がある。 聞き手に回り切ってしまった「敬太郎」には、あまりにも内面や環境そのものに何もなかった。 だからこそ、須永の感じる苦悩を、敬太郎は感じなくてもよいけれど、その分、ドラマチックな事からは遠ざかるしかない。 この対極的な二人から、近代人の苦悩についてあぶるように浮かび上がらせるという多重構成になっています。 後半になるに従い、心情のとらえ方が難しく感じましたが、須永の「嫉妬心」は、読みごたえがありました。 思えば、男性のドロドロとした感情の波を事細かに描写するような小説はこれまであまり読んだことがないかもしれません。 女性を愛しているわけではなく、自分を愛しているかもしれない立場にいる女性が、自分ではなく他の人を選ぶ可能性がある、と感じたときの激しい感情の描き方は、体験がなければ書けないと思います。 もう、夏目漱石すごいの一言。近代以降の物質的豊かさを手に入れた人たちの苦悩をいち早く描いて、しかも人物の心情の描写が細かくて生々しい。 「須永」の卑屈さとかたまらないくらいリアルでした。 「行人」では、「須永」タイプを主観にしたストーリーが繰り広げられるそうなので、そのうち「行人」にもチャレンジしてみようかと思います。
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【何気なき,由々しき事事】定職に就かず,何か心に面白きことはないかと日がな考えながら過ごす敬太郎。そんな男の元に現れては去っていく人々の語るところから,世の中を透かし見て得るに至った思いを著した小説作品です。著者は,日本近代を代表する作家の夏目漱石。 いくつかのエピソードと言っ...
【何気なき,由々しき事事】定職に就かず,何か心に面白きことはないかと日がな考えながら過ごす敬太郎。そんな男の元に現れては去っていく人々の語るところから,世の中を透かし見て得るに至った思いを著した小説作品です。著者は,日本近代を代表する作家の夏目漱石。 いくつかのエピソードと言っても良い話が収められているのですが,自分が特に興味深く読んだのは「須永の話」。煎じ詰めれば男女の恋仲の話なのですが,須永という人物が女性に叶わぬ恋をしているのではなく,叶わない恋に苛まれている自分を恋しく思っているのではないかと穿って(?)読み取ってしまいました。 〜要するに人世に対して彼の有する最近の知識感情は悉く鼓膜の働らきから来ている。森本に始まって松本に終る幾席からの長話は,最初広く薄く彼を動かしつつ漸々深く狭く彼を動かすに至って突如として已んだ。けれども彼は遂にその中に這入れなかったのである。其所が彼に物足らない所で,同時に彼の仕合せな所である。〜 久しく手にとっていなかった間に小説の読み方が自分の中でずいぶんと変化しているような☆5つ
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昔読んで「面白かったなー」という記憶があるけれど、どんな話だったかあまり思い出せない。蛸が出てくる? ヘビのステッキが重要な小道具だった気がする。 もう一度読み返したい
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語り手が変わっていく独特のスタイル。 語り手であり聞き手にもまわる主人公がいますが、ストーリーやテーマの中心になるのは、その友人だと思います。 夏目漱石好きなだなあ、と私が感じるポイントが存分に表れています。人間の内面が本当によく描かれています。そしてそのいちいちに、そういう気...
語り手が変わっていく独特のスタイル。 語り手であり聞き手にもまわる主人公がいますが、ストーリーやテーマの中心になるのは、その友人だと思います。 夏目漱石好きなだなあ、と私が感じるポイントが存分に表れています。人間の内面が本当によく描かれています。そしてそのいちいちに、そういう気持ちわかるよ、と言ってしまいそうになるのです。 この時代は美しい。 個人の内面が、他者あるいは世間にいまほど影響されることはなかったでしょう。それだからこそ、内面を変容させることは困難で、彼らのように自分でどうにかするしかなかった。そこに苦しさと美しさがあるように、私には思えました。
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彼岸って言っても今どきいつ頃のことだか良く分からんし、むしろ島なのか?丸太は持ったのか?って感じになるし、彼岸島迄?って思う人もいるしいないしで、まぁでも吸血鬼は出てこない平和な話だった。 でもっていつもの昔の文学に出てくる、ぶつぶつと面倒くさい事ばっかり言って何もしないニートが...
彼岸って言っても今どきいつ頃のことだか良く分からんし、むしろ島なのか?丸太は持ったのか?って感じになるし、彼岸島迄?って思う人もいるしいないしで、まぁでも吸血鬼は出てこない平和な話だった。 でもっていつもの昔の文学に出てくる、ぶつぶつと面倒くさい事ばっかり言って何もしないニートがぶつぶつ言ってるわけなんだけども、そんなぶつぶつ言ってるだけなのに、女の子がしっかりついてくるという、またこれか!って言わずにはいられない展開。そしてその展開がどうなったのか分からないまま終わってしまうという、このモヤモヤをどうしてくれようか。 あと鎌倉在住者として、鎌倉近辺がめっさ田舎というか、スラム漁師村的に語られてたのがなかなか良かった。調子に乗ってる住民に是非とも読ませるべき書ではないか。
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