1,800円以上の注文で送料無料

彼岸過迄 の商品レビュー

3.8

93件のお客様レビュー

  1. 5つ

    19

  2. 4つ

    36

  3. 3つ

    23

  4. 2つ

    4

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

語り手=観察者と物語…

語り手=観察者と物語=対象の微妙な距離関係を、小説の細部に肩代わりさせた作品です。

文庫OFF

自意識の穴倉のなかで…

自意識の穴倉のなかで混迷する須永やそれをとりまく人々の物語が、友人敬太郎の探偵的視点によって語られる。物語は展開すれど出口はなく、緒F徊するのみ。

文庫OFF

内向的で思索的な須永…

内向的で思索的な須永という青年が物語としては本当の主人公なのですが、敬太郎という比較的楽天的な雰囲気の青年の視線で描かれているので、どことなく飄々とした風通しの良さを感じました。冒頭、物語に入る前に載っている「彼岸過迄に就いて」という文章もとても良いです。

文庫OFF

 漱石の作品としては…

 漱石の作品としては哲学的な示唆も極めて少ない上に、漱石の名前に期待して読む読者には内容も物足りなさがあるだろう。しかしそれでも最後まで読んでしまうのは漱石の書く技術のなせる業だと思う。いつか小説を書きたいという人や文章技術に興味のある人には、一つの完成されたパターンを覚えるとい...

 漱石の作品としては哲学的な示唆も極めて少ない上に、漱石の名前に期待して読む読者には内容も物足りなさがあるだろう。しかしそれでも最後まで読んでしまうのは漱石の書く技術のなせる業だと思う。いつか小説を書きたいという人や文章技術に興味のある人には、一つの完成されたパターンを覚えるという意味で一読を薦めたい。

文庫OFF

2024/01/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

色んな人の話を聞く、短編が重なり合っていくような書かれ方。主人公自ら動くのは探偵の真似事だけで、他はずっと人の話を聞いている。 特に須永と千代子の話が読んでいて面白かった。須永の愛ではない嫉妬、言葉にならない感情の言語化が凄い。

Posted byブクログ

2023/03/25

なんだか、どこに向かってゆくのかわからないまま、着地せずにふわふわと話が進み、結局着地しないところで終わって、ある意味、それが余韻になるのか。主人公はあくまで観察者というところは、面白いところではある。

Posted byブクログ

2022/08/15

行動力の無い須永と従妹の千代子の煮え切らない恋愛の話。漱石自身を重ねた須永という登場人物の内的な心理描写はすごいと思う。当時の恋愛観はあっさりしたものだったのだろうか。敬太郎、田口、高木、百代子との関係がよく分からなかった。

Posted byブクログ

2022/03/22

季節的にちょうどお彼岸だったので20年振りに再読。後期三部作の幕開け的な作品とされている本作は主人公の敬太郎の浪漫を求める生き方の模索から、彼の友人である須永の苦悩へとスライドしてゆく。須永は千代子に惹かれながらも自意識によって身動きがとれない。彼の煮え切らない態度にやきもきする...

季節的にちょうどお彼岸だったので20年振りに再読。後期三部作の幕開け的な作品とされている本作は主人公の敬太郎の浪漫を求める生き方の模索から、彼の友人である須永の苦悩へとスライドしてゆく。須永は千代子に惹かれながらも自意識によって身動きがとれない。彼の煮え切らない態度にやきもきする千代子。明治に書かれた作品ではあるけれど、本作のテーマは充分現代にも通ずるもので、人間の内面の襞を克明に描く夏目漱石の凄さを改めて感じた。

Posted byブクログ

2022/02/25

1912年 朝日新聞連載 後期三部作 個々の短編を重ねた末、その個々の短編が相合して一長編を構成するという試みー プロローグで漱石が語る。 主人公は、卒業後求職中の青年・田川。 彼に関わる、あるいは、聴いた、物語。 冒険談・サスペンス・友人の恋愛談・生い立ち 等、語部を替えな...

1912年 朝日新聞連載 後期三部作 個々の短編を重ねた末、その個々の短編が相合して一長編を構成するという試みー プロローグで漱石が語る。 主人公は、卒業後求職中の青年・田川。 彼に関わる、あるいは、聴いた、物語。 冒険談・サスペンス・友人の恋愛談・生い立ち 等、語部を替えながら、其々短編として独立する。 前期三作に比べれば、ストーリー豊かで、読み物として面白い。 「雨の降る日」は、雨の降る日、幼女を突然亡くした一家を描く。突然の悲しみを、淡々ととやり過ごすような家族の描写が、痛ましい。感情表現はされず、「雨の降る日に紹介状を持って会いにくる男が嫌になった。」とだけ主人に語らせる。 漱石が、この頃、娘を亡くしたことを反映しているとのこと。 結末という章で、主人公・田川を、世間を聴く一種の探訪者である、としている。ストーリーの主人公は、友人・須永である事が多い。 ストーリーは、主人公によっては動かないという状況は、読者を田川目線にする事ができたのではと思うのです。

Posted byブクログ

2023/03/02

冒頭に、漱石から読者へのメッセージがある。 彼岸過迄という、なんだか気になるタイトルは実は、単に正月から書き始めた連載がそれぐらいに終わるだろうと付けられた名前らしい。 そうなの、という気持ちで読み始めた。 そこには、短編を連ねて、最終的に大きな一編になる試みをすると書いてある...

冒頭に、漱石から読者へのメッセージがある。 彼岸過迄という、なんだか気になるタイトルは実は、単に正月から書き始めた連載がそれぐらいに終わるだろうと付けられた名前らしい。 そうなの、という気持ちで読み始めた。 そこには、短編を連ねて、最終的に大きな一編になる試みをすると書いてある。 話の語り手は、うまく流れにまかせて生き抜いていくタイプの青年。 探偵に憧れたり、まめまめと占いを信じたり、職探しも縁故に甘えて気楽に成功させている。 一方、真の主人公ともいえる、彼の友人はといえば、考えてばかりで、行動ができない。 その理由が最初の方から匂わされているが、そればかりが理由ではない。 自分の心とばかり向き合い、いまだ何の現実的なチャンスもつかめていない。 考えてばかりの自分がもどかしくて、気楽になりたい。 これを読んだ方は、どちらが自分に近いと思うんだろうか。 ワールドカップの時だけ、昔からファンです顔で現れる自称サッカーファンに違和感を感じてお祭りに参加できない私は、明らかに後者だろう。 そんな自分に時々しんどい人の心に優しくかたりかける漱石。 そして、能天気な青年の話も半分あるので、重さが緩和されて、前者のお気楽タイプにも読みやすい。 また、続編?の行人より、気楽な終わりなのも救われる。

Posted byブクログ