猫と庄造と二人のおんな の商品レビュー
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猫、という題材一つで、ここまで男女の駆け引きを書けるのか。流石、文豪と言ったところ。 だけど、文章は読みやすく、初めて谷崎潤一郎を読むのには丁度いいかも知れない。 いつの時代も、人は可愛い猫に、弱いものなんだろう。
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ぱってページを見たときは、うわ…読めるかな…って気持ちになるのだけれど、この上なく読みやすい。 セレクトされてることば言葉が、これしかない気がする。 正直、登場する人物たちの心情とかは、ひとつも(わたしの経験と共感てきに)分からなかったのだけれど、それでもすいすいと言葉が入ってき...
ぱってページを見たときは、うわ…読めるかな…って気持ちになるのだけれど、この上なく読みやすい。 セレクトされてることば言葉が、これしかない気がする。 正直、登場する人物たちの心情とかは、ひとつも(わたしの経験と共感てきに)分からなかったのだけれど、それでもすいすいと言葉が入ってきた。 登場人物たちの、いろんなものにふりまわされて生きている感じがとても滑稽でおもしろかった。 あとは、出てくる今はほとんどお目にかからない大和言葉たちを知れるのが楽しい。
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猫のリリーの、何と妖艶なこと。 谷崎潤一郎は、女の魅力をテーマに据えることが多いが、今回の「女の魅力を持つ女」は、主人公の妻でもなく元妻でもなく、リリーただ一匹。
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品子の目線からの猫の描写がとにかく愛おしく、何度も読み返してしまった。福子と品子の庄造へのいらだちと隠しきれない愛情(や未練)の描写が、いい意味で"男性が描く女性"らしくて良かった
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猫と庄造と二人のおんな (和書)2010年02月12日 19:23 1951 新潮社 谷崎 潤一郎 最近、谷崎潤一郎が好きになって猫も大好きなので楽しみにしていました。 猫との関係がとても面白い。 良かったです。
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めずらしくのっけからひき込まれて、一気に読み切った。全編リリー=猫のはなし。谷崎は猫派だったのだろう。私は猫も犬もあまり得意ではない。飼ったこともない。高校生のころアメリカで1年間ホームステイをしていて、その家には2匹の猫がいた。広い家だったが、私のベッドの上に寝ていることが多か...
めずらしくのっけからひき込まれて、一気に読み切った。全編リリー=猫のはなし。谷崎は猫派だったのだろう。私は猫も犬もあまり得意ではない。飼ったこともない。高校生のころアメリカで1年間ホームステイをしていて、その家には2匹の猫がいた。広い家だったが、私のベッドの上に寝ていることが多かった。そのせいか、私のすねにはつねにノミに刺されたあとがあった。だから、猫についてあまりいい思い出はない。このリリー、尼崎から芦屋まで1週間ほどかけて1匹で帰ってきたという。猫でそういう話はあまり聞かない。ずいぶん歳をとってから、今度は六甲から戻ろうとしたがそれは無理だったようだ。庄造のリリーに対する溺愛ぶりが何とも言えない。二人のおんながその猫に嫉妬する。そこに母親がからむ。それほど大きなはなしの展開があるわけではないが、庄造と品子の心の持ちようがなかなか興味深い。庄造とリリーはそれぞれの屁のにおいをかぎあった間柄だということだが、猫好きの人々にはその気持ちがわかるのだろうか。私にはわからない。ところで、「細雪」でもそうだったけれど、芦屋あたりの土地勘があるともっと面白く読めたのかもしれない。
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いつの時代も猫は正義笑 本人達はいたって真面目だけど、側から見ると滑稽な様子が面白い。谷崎潤一郎の文章はやっぱり読みやすくて好きだ。
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深謀遠慮、権謀術策、邪推の果て。 ふたりの女という題名が生々しさを際立たせる。 およそ愛玩動物、ペットは飼い主をはじめとしたヒトの感情、無意識に抑圧された欲求・願望・葛藤を投影させる。 その意味では、現実と心性の中間領域たる存在だろうと思う。 正造とふたりの女、都合3名だ...
深謀遠慮、権謀術策、邪推の果て。 ふたりの女という題名が生々しさを際立たせる。 およそ愛玩動物、ペットは飼い主をはじめとしたヒトの感情、無意識に抑圧された欲求・願望・葛藤を投影させる。 その意味では、現実と心性の中間領域たる存在だろうと思う。 正造とふたりの女、都合3名だがそれぞれ、猫のリリーに自身の感情を投影させる。 嫉妬心、愛して欲しいという欲求、自由でいさせてほしいという葛藤がこの物語では投影される。 個人の感情を投影する対象として、リリーは機能しているようだ。 他方で、ある場合には愛玩動物は夫婦仲を取り持つ機能を果たす。 夫婦とはいえ、別々の個人、主観をもつヒトであるから真に一体化することはでき得ない。 愛玩動物を通して、どういう愛し方をするか、どんなお世話をするか、仕草や鳴き声などなにを愛しいと感じ、糞便や餌付け散歩その他なにが鬱陶しいと感じるかを知ることもできる。 従って、主観と主観の中間領域としても愛玩動物は機能しうる。 ところが、この3人(正造ママも含めれば3人)はそれぞれの願望、欲求、そして葛藤を投影させるのみで歩み寄りは叶わなかった。 ここがこの一家の、この4人の病理の深さだと感じる。 やがて互いの思惑、深謀遠慮、邪推の果てに、歩み寄りの要石となるであろうリリーも年老いてゆく。 この物語からなにを得られるだろうか。 ひとのこころの歩み寄ることの困難さだろうか。愛することの困難さだろうか。 いちばんの被害者はリリーだろうか。 それぞれがそれぞれ好きなように扱われ、揺れ動く他ない高貴な名を持つ猫こそ被害者か、或いはヒトを翻弄させた加害者か。 解説は、いわゆる保守本流正統派の谷崎潤一郎解釈だ。 およそこれに異論をぶつけるだけの高邁な読書力など露ほども持ち合わせないけれど、あえて自分の感想を残しても怒られない・・と思いたい。
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猫派ではないので、題名は知っていたものの読み残していた本書だが、〈愛猫家必読〉、「男に愛され女に憎まれたリリーの運命や如何に……?」等のオビが巻かれていたので、つい手に取ってしまい、読むことになった。 先ずは大阪弁のやり取りが読んでいてとても心地良く、さすがに大谷崎の文章と、改...
猫派ではないので、題名は知っていたものの読み残していた本書だが、〈愛猫家必読〉、「男に愛され女に憎まれたリリーの運命や如何に……?」等のオビが巻かれていたので、つい手に取ってしまい、読むことになった。 先ずは大阪弁のやり取りが読んでいてとても心地良く、さすがに大谷崎の文章と、改めて感じ入った次第。 そして、リリーを巡って繰り広げられる庄造と先妻、後妻との間の嫉妬や愛憎を混じえたやり取りが面白い。 何か底意があることを窺わせる、先妻から後妻宛ての猫を譲って欲しいとの手紙で読者の興味を引きつけると、庄造が飼い猫リリーに小鯵の二杯酢を与える描写が続くが、愛猫家でなくとも、可愛がるとはこういうことかと納得させられてしまう。 また、リリーを譲り受けた先妻品子とリリーとの関係が徐々に作られていくところも、人間に対して示す表情や動作の描写が実にうまいなあと感心してしまう。 ペットを家族の一員と思う現代だからこそ、身に沁みて読める一冊だと思う。
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題名の通り、主な登場人物は3人と1匹だが、この物語の主人公はリリー(猫)と言ってとよいかもしれない。読んでいると分かるが、リリーはただ平凡な毎日を過ごしたいだけなのに、周りがそれぞれの事情で色々騒ぎ立て、本来関係のないリリーも巻き込まれるのだから冗談じゃないと思う。 自分が猫を飼...
題名の通り、主な登場人物は3人と1匹だが、この物語の主人公はリリー(猫)と言ってとよいかもしれない。読んでいると分かるが、リリーはただ平凡な毎日を過ごしたいだけなのに、周りがそれぞれの事情で色々騒ぎ立て、本来関係のないリリーも巻き込まれるのだから冗談じゃないと思う。 自分が猫を飼っているから、猫特有の描写についてはあるあるの内容が多く、何度もその可愛い姿が浮かんだものである。
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