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猫と庄造と二人のおんな の商品レビュー

4.1

133件のお客様レビュー

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    40

  2. 4つ

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  3. 3つ

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2023/04/27

飼い猫を溺愛している庄造、気性の激しい若妻福子、元夫に未練たっぷりの先妻品子の三人が織りなす大谷崎中期の中編小説。物語の鍵となるのは雌猫のリリー。ペルシャ猫の血が入った彼女の愛らしさと主人公の溺愛っぷりが本書の読みどころの一つである。二人の女のそれぞれの思惑でリリーは品子に譲渡さ...

飼い猫を溺愛している庄造、気性の激しい若妻福子、元夫に未練たっぷりの先妻品子の三人が織りなす大谷崎中期の中編小説。物語の鍵となるのは雌猫のリリー。ペルシャ猫の血が入った彼女の愛らしさと主人公の溺愛っぷりが本書の読みどころの一つである。二人の女のそれぞれの思惑でリリーは品子に譲渡されることに。気風の良い母親おりんと嫉妬深い福子に頭が上がらない庄造は愛猫恋しさに懊悩する。 谷崎特有のマゾヒズムの影も見えつつユーモアに溢れ、猫好きは勿論、犬派やハムスター派にもお勧めの軽やかな一冊。

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2022/10/31

先日読んだ、「村上さんのところ」でおすすめされていた本。谷崎潤一郎の作品は5冊目くらいだが、本書もとても気に入った。 タイトル通り、庄造というしょうもないオヤジと、飼い猫リリー、そして前妻と後妻を中心にストーリーが進む。庄造がとにかく猫をかわいがりすぎるため、前妻も後妻https...

先日読んだ、「村上さんのところ」でおすすめされていた本。谷崎潤一郎の作品は5冊目くらいだが、本書もとても気に入った。 タイトル通り、庄造というしょうもないオヤジと、飼い猫リリー、そして前妻と後妻を中心にストーリーが進む。庄造がとにかく猫をかわいがりすぎるため、前妻も後妻https://booklog.jp/users/asw#も嫉妬をするのだが、前妻は猫を譲り受けることで元夫の心を取り戻そうとする。一方、老猫リリーは気まぐれで、でも媚の売り方を心得ていて、当初興味がなかった妻たちも愛しくてたまらなくなる。 猫を含む登場人物が、ある意味いじらしく、おバカで、猫に振り回されている様子が滑稽だ。猫を飼ったことがある人なら共感できる箇所がたくさんあると思われるので、一読を薦めたい。猫が人を夢中にさせていく過程が面白かった。

Posted byブクログ

2022/10/25

初谷崎作品。あの猫が見せる憂いを帯びた眼差しと色気。谷崎先生、わかってらっしゃる。 実は精神的にはリリーこそが庄造にとって本妻なのだろう。 第三者の目から見ると品子さんはとてもよくできたお嫁さんじゃないの、何がダメなのよと思うけど、庄造はえらく嫌っているようで、一緒に暮らしていく...

初谷崎作品。あの猫が見せる憂いを帯びた眼差しと色気。谷崎先生、わかってらっしゃる。 実は精神的にはリリーこそが庄造にとって本妻なのだろう。 第三者の目から見ると品子さんはとてもよくできたお嫁さんじゃないの、何がダメなのよと思うけど、庄造はえらく嫌っているようで、一緒に暮らしていくにはやっぱり相性っていうものがあるんだよな・・・。 あっさりと物語は終わるが、この先も庄造はリリーにこっそり逢いに行くんじゃないかしら。 地元である兵庫を舞台に書かれており、個人的によく知った地名が登場し親しみを感じた。

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2022/09/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

谷崎潤一郎作品を久しぶりに読みたくなりこちらはブク友さんの本棚に多く見られたので取り寄せた。 猫を中心に人間が翻弄されるなんてどんな状況かと軽く考えていたが、雌猫のリリーの愛らしさを谷崎の饒舌な中毒性のある表現でこちらも固唾を呑んで惹きこまれた。 猫と一匹の魚を口移しにして引っ張り合う様子やフンシの匂いを嗅いで胸がいっぱいになる庄造、フンシの砂を得るために学校滑り台の砂を盗む品子など異常な溺愛ぶりが存分に語られる。リリーの「ニャア」が聞こえてきそうでうっかり私もリリーの魅力にはまりそうになった。庄造は谷崎氏本人に思えてしかたがなかった。

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2022/08/31

akikobbさん、111108さんにおすすめしていただいて。 面白かった! 字が小さい文庫しかないんだよなあと敬遠していた作品だったけれど、文字サイズなんて読み始めてすぐ気にならなくなった。 とにかく猫のリリーが気まぐれさも含めて可愛く、いじらしく、翻弄されてしまうのも無理...

akikobbさん、111108さんにおすすめしていただいて。 面白かった! 字が小さい文庫しかないんだよなあと敬遠していた作品だったけれど、文字サイズなんて読み始めてすぐ気にならなくなった。 とにかく猫のリリーが気まぐれさも含めて可愛く、いじらしく、翻弄されてしまうのも無理ないと思うほど。 キュートでワガママな女(今回の場合は主に雌猫)に振り回されたいという谷崎先生のフェチが、本作でも詰め込まれている。 品子も庄造も、人間のごたごたのせいでリリーを振り回してしまっているのをかわいそうに思ううちに、「誰にもまして可哀そうなのは自分ではないか」という思いに駆られるように、猫と比べて人間の滑稽さが際立つ。  特に庄造。ラストシーン、2人の女から逃げ回って、なんとか猫に遊んでもらおうとする姿は情けなすぎるけれど愛すべき腰抜けという感じで、おすすめいただいた時の「庄造はある意味可愛い」というセリフの意味がわかった(笑) こういう男に執着しちゃう2人の女の気持ちも分かる。 情念に翻弄される卑俗な姿こそが、人間らしさなのかもしれない。

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2022/08/18

飼い猫リリーをめぐって、猫を可愛がる庄造と、猫を利用して庄造の心を惹こうとする前妻と後妻。前妻の品子は庄造と復縁するときのための保険として好きでもない猫を引き取るが、次第に愛着を持ち、猫も品子に気を許すようになる。こっそり会いに来た庄造には一瞥をくれただけだった。 猫のために駆...

飼い猫リリーをめぐって、猫を可愛がる庄造と、猫を利用して庄造の心を惹こうとする前妻と後妻。前妻の品子は庄造と復縁するときのための保険として好きでもない猫を引き取るが、次第に愛着を持ち、猫も品子に気を許すようになる。こっそり会いに来た庄造には一瞥をくれただけだった。 猫のために駆け回る庄造の姿は滑稽で風刺的。猫は人間の言葉を解さないだけにより崇高で、タイトルの順はそのまま価値の順で、そのまま崇拝、隷属の対象になっている、と解説より。

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2022/06/18

一人の男の取り合いをする二人の女。でも男は全然幸せではない。むしろ食傷気味である。男は感情が純粋に思える猫に首ったけ。懐いている時は良かったが、ついには猫にとってどうでもいい存在になりあたふたしている。居場所の失った男はこれからどうするのだろう。2022.6.18

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2022/04/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

別れた女房から請われて愛猫を引き渡した男が、居場所のなさのあまりに現妻と元妻の目を盗んで愛猫に会いに行くという物語。大きな事件は起きないけれど、それぞれの登場人物の思惑と心の動きが描かれていて読まされる作品だった。

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2022/03/13

猫が神様みたいに超然としているのが面白い。かたや人間はみなおろおろして誰も彼もくだらない。相手の気持ちを決めつけて、手中におさめようとあれこれ尽力するが徒労の連続。 畢竟、この小説で愛おしく思えるのは人間。「庄造と二人のおんな」だけであればただの痴話喧嘩のドタバタ劇であろうが、...

猫が神様みたいに超然としているのが面白い。かたや人間はみなおろおろして誰も彼もくだらない。相手の気持ちを決めつけて、手中におさめようとあれこれ尽力するが徒労の連続。 畢竟、この小説で愛おしく思えるのは人間。「庄造と二人のおんな」だけであればただの痴話喧嘩のドタバタ劇であろうが、猫を傍らに添えることで、人間って本当にどうしようもない生き物だからこそ、生を謳歌できるのではないかと思えてくる。猫は意外とひきたて役だった。

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2021/07/29

河合隼雄のねこだましいから入りました。 河合隼雄の考察が先行していたんですが、予想以上によかったです。

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