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猫と庄造と二人のおんな の商品レビュー

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136件のお客様レビュー

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2020/07/13

深謀遠慮、権謀術策、邪推の果て。 ふたりの女という題名が生々しさを際立たせる。 およそ愛玩動物、ペットは飼い主をはじめとしたヒトの感情、無意識に抑圧された欲求・願望・葛藤を投影させる。 その意味では、現実と心性の中間領域たる存在だろうと思う。 正造とふたりの女、都合3名だ...

深謀遠慮、権謀術策、邪推の果て。 ふたりの女という題名が生々しさを際立たせる。 およそ愛玩動物、ペットは飼い主をはじめとしたヒトの感情、無意識に抑圧された欲求・願望・葛藤を投影させる。 その意味では、現実と心性の中間領域たる存在だろうと思う。 正造とふたりの女、都合3名だがそれぞれ、猫のリリーに自身の感情を投影させる。 嫉妬心、愛して欲しいという欲求、自由でいさせてほしいという葛藤がこの物語では投影される。 個人の感情を投影する対象として、リリーは機能しているようだ。 他方で、ある場合には愛玩動物は夫婦仲を取り持つ機能を果たす。 夫婦とはいえ、別々の個人、主観をもつヒトであるから真に一体化することはでき得ない。 愛玩動物を通して、どういう愛し方をするか、どんなお世話をするか、仕草や鳴き声などなにを愛しいと感じ、糞便や餌付け散歩その他なにが鬱陶しいと感じるかを知ることもできる。 従って、主観と主観の中間領域としても愛玩動物は機能しうる。 ところが、この3人(正造ママも含めれば3人)はそれぞれの願望、欲求、そして葛藤を投影させるのみで歩み寄りは叶わなかった。 ここがこの一家の、この4人の病理の深さだと感じる。 やがて互いの思惑、深謀遠慮、邪推の果てに、歩み寄りの要石となるであろうリリーも年老いてゆく。 この物語からなにを得られるだろうか。 ひとのこころの歩み寄ることの困難さだろうか。愛することの困難さだろうか。 いちばんの被害者はリリーだろうか。 それぞれがそれぞれ好きなように扱われ、揺れ動く他ない高貴な名を持つ猫こそ被害者か、或いはヒトを翻弄させた加害者か。 解説は、いわゆる保守本流正統派の谷崎潤一郎解釈だ。 およそこれに異論をぶつけるだけの高邁な読書力など露ほども持ち合わせないけれど、あえて自分の感想を残しても怒られない・・と思いたい。

Posted byブクログ

2020/06/28

猫派ではないので、題名は知っていたものの読み残していた本書だが、〈愛猫家必読〉、「男に愛され女に憎まれたリリーの運命や如何に……?」等のオビが巻かれていたので、つい手に取ってしまい、読むことになった。 先ずは大阪弁のやり取りが読んでいてとても心地良く、さすがに大谷崎の文章と、改...

猫派ではないので、題名は知っていたものの読み残していた本書だが、〈愛猫家必読〉、「男に愛され女に憎まれたリリーの運命や如何に……?」等のオビが巻かれていたので、つい手に取ってしまい、読むことになった。 先ずは大阪弁のやり取りが読んでいてとても心地良く、さすがに大谷崎の文章と、改めて感じ入った次第。 そして、リリーを巡って繰り広げられる庄造と先妻、後妻との間の嫉妬や愛憎を混じえたやり取りが面白い。 何か底意があることを窺わせる、先妻から後妻宛ての猫を譲って欲しいとの手紙で読者の興味を引きつけると、庄造が飼い猫リリーに小鯵の二杯酢を与える描写が続くが、愛猫家でなくとも、可愛がるとはこういうことかと納得させられてしまう。 また、リリーを譲り受けた先妻品子とリリーとの関係が徐々に作られていくところも、人間に対して示す表情や動作の描写が実にうまいなあと感心してしまう。 ペットを家族の一員と思う現代だからこそ、身に沁みて読める一冊だと思う。

Posted byブクログ

2020/04/26

題名の通り、主な登場人物は3人と1匹だが、この物語の主人公はリリー(猫)と言ってとよいかもしれない。読んでいると分かるが、リリーはただ平凡な毎日を過ごしたいだけなのに、周りがそれぞれの事情で色々騒ぎ立て、本来関係のないリリーも巻き込まれるのだから冗談じゃないと思う。 自分が猫を飼...

題名の通り、主な登場人物は3人と1匹だが、この物語の主人公はリリー(猫)と言ってとよいかもしれない。読んでいると分かるが、リリーはただ平凡な毎日を過ごしたいだけなのに、周りがそれぞれの事情で色々騒ぎ立て、本来関係のないリリーも巻き込まれるのだから冗談じゃないと思う。 自分が猫を飼っているから、猫特有の描写についてはあるあるの内容が多く、何度もその可愛い姿が浮かんだものである。

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2020/04/17

最後、猫と庄造の立場が逆転してるのが怖かった。わたしたちが猫に飼われてるのはわかるな〜、猫ちゃんには勝てないよな〜、、

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2019/09/24

猫が一番!女房はそれ以下!!何という男よ。谷崎の短い長編だが、田辺聖子さんか?と思うくらい軽快でユーモア垣間見えるナイスな一冊。小心者でろくでなし男、庄造。策略家で我の強い元妻・品子。小金持ちの娘でふしだらな現妻・福子。こんな三角関係の絶対的トップに君臨するのはリリーちゃん。美し...

猫が一番!女房はそれ以下!!何という男よ。谷崎の短い長編だが、田辺聖子さんか?と思うくらい軽快でユーモア垣間見えるナイスな一冊。小心者でろくでなし男、庄造。策略家で我の強い元妻・品子。小金持ちの娘でふしだらな現妻・福子。こんな三角関係の絶対的トップに君臨するのはリリーちゃん。美しきメス猫。庄造は恋人のようにリリーを愛することから、不穏な元妻と現妻。そんなドタバタ話だが、とにかくリリーが可愛すぎ。猫を飼ったことがない私にも、猫の魅力が存分に伝わる描写が流石。で、ラスト、ここで終わるの!?という唐突さに驚き。

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2019/07/05

猫は恋のキューピッドにも、忠実な下僕にもならない。ただ、なんとなく心が通じ合えるような、つい居ないと寂しくなってしまうような中毒性がある。

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2019/06/27

一匹の猫を中心に、猫を溺愛している愚昧な男、猫に嫉妬し、追い出そうとする女、男への未練から猫を引取って男の心をつなぎとめようとする女の、三者三様の痴態を描く。人間の心に宿る“隷属への希求を反時代的なヴィジョンとして語り続けた著者が、この作品では、その“隷属"が拒否され、...

一匹の猫を中心に、猫を溺愛している愚昧な男、猫に嫉妬し、追い出そうとする女、男への未練から猫を引取って男の心をつなぎとめようとする女の、三者三様の痴態を描く。人間の心に宿る“隷属への希求を反時代的なヴィジョンとして語り続けた著者が、この作品では、その“隷属"が拒否され、人間が猫のために破滅してゆく姿をのびのびと捉え、ほとんど諷刺画に仕立て上げている。 "

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2019/01/07

面白かった。リリーすごすぎ。みんな変な人だけど、人間味がありました。人ってこんなもんだよねみたいな。もしいつか猫と飼ったらリリーって名前付けたい。すごい色気のある猫になってほしい。

Posted byブクログ

2018/10/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

飼い主の心猫知らず。 周囲の人間が呆れる程、只ひたすらに飼い猫リリーに愛情を注ぐ、正に「猫可愛がり」。 本作のタイトルの順番通り、常に「猫」が一番上。 妻や愛人よりも、である。 リリーが一度哀愁に充ちた眼差しでじっと自分を見上げただけでもうメロメロ。 リリーの言いなり。 リリーは只、飼い主の顔を何の気なしに見ただけなんだろうけどね…それを言っちゃあ、おしまいよ。 谷崎潤一郎も相当の猫好きとみた。 猫の描写が具体的で細かすぎる。 これは猫を実際に飼って間近で見て可愛がっている人でなければここまでは描けまい。 谷崎潤一郎に対してぐっと親近感がわいた。

Posted byブクログ

2018/01/05

なんだろ隣の家の揉め事を眺めている感じ、ゆるく読めます。猫好きなら、まぁ、仕方ないよねーだって相手猫だし、って思ってしまう。

Posted byブクログ