アンダーグラウンド の商品レビュー
「これが事故か何かによるものなら、私だってまだ少しは納得出来るんです。そこには原因があり、それなりの理由もあります。でもこんな何の意味もない、馬鹿げた犯罪行為のために....と思うと、ほんとうにやりきれない気持ちになります。たまらないです」と達夫さんは言う。 「つらいとか、疲れ...
「これが事故か何かによるものなら、私だってまだ少しは納得出来るんです。そこには原因があり、それなりの理由もあります。でもこんな何の意味もない、馬鹿げた犯罪行為のために....と思うと、ほんとうにやりきれない気持ちになります。たまらないです」と達夫さんは言う。 「つらいとか、疲れたとかいう言葉を、妹はまず口にしません」と達夫さんはハンドルを握りながら言う。「この病院へ来て一年三カ月のあいだ、毎日のようにリハビリの訓練がありました。腕と脚を動かす訓練、言語の訓練、そのほか専門医がついて各種機能訓練のための訓練をします。これははたで見ていても簡単なことではありません。並大抵ではない努力と忍耐を要することですし、きっとつらい思いもしているはずです。でも「つかれた?}と先生や看護婦さんたちに尋ねられて、妹が「疲れた」と答えたことは、これまでたった三回しかないんです。たった三回ですよ」 だからこそ志津子さんはここまで回復することができたのだと、関係者は口を揃えて言う。 いったい何のために、と思いますね。たとえばIRAにしても、手段はともかくとして、その人たちの目指していることは、その立場になって考えてみれば、少しは理解出来るところもあるんです。 -----そういう点で、日本の将来に関して石野さんは楽観的ですか、悲観的ですか? 私はどちらかといったら悲観的です。 もうひとつ、この事件で思ったのは、私はもうこれで40になりましたし、これまではただがむしゃらに生きてきたわけですが、ここらあたりでひとつ自分自身を管理しなくてはならないなということでした。自分自身の命というものを、もっと深く考えなくちゃいけないんじゃないかと。そういう「恐れ」のようなものを、ここで初めて感じたということですね。ずっとこういう仕事をしてきたのですが、きっと本当の恐れというものを、幸いにもまだ自分の身のこととして感じたことがなかったんですね。 ただ「もう既に一回は死んじゃっているんだ」と思うことはあります。そうすると何かふっきれた感じがして、「そうだ。なにごとによらず迷うこともなく、前向きにやっていこう」と考えられるんですよ。
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2002年10月 図書館で借りた。地下鉄サリン事件の聞き書き。重苦しい気分になったが、一気に読んだ。
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オウム真理教が引き起こした「地下鉄サリン事件」の被害者に尋ねた当時の状況を綴った作品。 一体何が起こっていたのか。 一部を過剰に騒ぎ立てるマスコミの報道により隠れてしまった真実を知る手がかりになるのではないかと思う。
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地下鉄サリン事件の被害者インタビューを著者自身が丁寧に行っている力作。何度よんでも生の声の静かな迫力に心が揺れる。
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