アンダーグラウンド の商品レビュー
村上春樹がサリンの被害者に対して行なったインタビューをまとめたもの。 加害側のオウム真理教については詳細が報じられる一方で、被害者側については断片的な切り取り情報しか出てこないため、その実像を知ることができない。そうした問題意識のもとで、村上春樹氏が60人以上もの被害者の方々に面...
村上春樹がサリンの被害者に対して行なったインタビューをまとめたもの。 加害側のオウム真理教については詳細が報じられる一方で、被害者側については断片的な切り取り情報しか出てこないため、その実像を知ることができない。そうした問題意識のもとで、村上春樹氏が60人以上もの被害者の方々に面会し、なるべくその肉声に近い形で記録した。 正直に言うと、初めはエピソードが一つ一つ重く感じられたが、後半になるとインタビューの多さに飽きを感じてしまう自分がいた。最後は頑張って読み切ったという感想。 自分は地下鉄サリン事件についてあまり記憶していないが、本書を通じて、1995年3月20日の東京の地下鉄で何が起きていたのか、リアリティを持って感じることができた。これまで漠として認識していたサリンによる身体的な被害やその後遺症といったもの(もちろん人によって様々だが)が実際にどういうものか、初めて知ることができた。 人によって事件発生時の捉え方に差があるのは興味深かった。同じ車両・同じアナウンスを聞いていたはずなのに、車掌の狼狽ぶりに危機感を持った人がいる一方で、職場に到着して自身に症状が出るまで異変を感じなかった人もいた。当時中学生だった少年は同時にインタビューを受けた母親の方が大ごとと考えており、本人は特に感慨などなさそうだったのは性格かそれとも若さなのだろうか。 乗っている人の属性か被害の大きさの違いか、千代田線や丸の内線よりも日比谷線の乗客の方が周囲と助け合うエピソードが多かったように思えた。 登場する重症者の方(本書中は仮名)がつい4年前に長い闘病生活を終えて亡くなられたとのこと。ほとんどの人にとって地下鉄サリン事件は過去の話だが、被害に遭った人はなお続いている体験なのだと感じた。
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事件当時のことは全く覚えていないが、インタビューを通して多くの目、身体、位置、感覚、時間軸、感情が頭の中に立ち上がってきて、私にとっての地下鉄サリン事件となった。 この作品は1997年に出版されたが、この物語はまだ生きている、というより、地下鉄サリン事件を生んだ社会はまだオウム...
事件当時のことは全く覚えていないが、インタビューを通して多くの目、身体、位置、感覚、時間軸、感情が頭の中に立ち上がってきて、私にとっての地下鉄サリン事件となった。 この作品は1997年に出版されたが、この物語はまだ生きている、というより、地下鉄サリン事件を生んだ社会はまだオウム真理教の世界観に答える物語を提出できていないように思えた。
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図書館借り出し 30年近く前。 地下鉄サリン事件。 膨大な被害者の中の62人に村上春樹氏がインタビューし、まとめたノンフィクション。文章からとても真剣に真摯に行われたことがわかる。 そして日本社会、日本人の中に存在する言葉にしにくい部分を少しわかった気がした。
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報道だけではわからない実際に被害に会われた方の真に伝えたかった事がこの本を読むことで理解出来たかなと思う。辞書くらいのページ数があるが、読んで良かったと思った。
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村田春樹さんの真摯な、誠実な人柄が伝わってくる内容だった。 あんなに大々的に報道された事件を、私はぼんやりとしか記憶しておらず、この本を読んで、あぁそうだったんだ、と再度認識した。
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村上春樹さんは少し年上ですがほぼ同年代で、社会人になりたてのころ「村上春樹?ああ、何冊か読んだよ。最近人気だよね。」となにげに女の子に言いたいがために読み始めたのがきっかけでした。結局その後40年以上、癖の強い村上ワールドからは抜けだすことはできずに、今も新刊が出るたびに読んで...
村上春樹さんは少し年上ですがほぼ同年代で、社会人になりたてのころ「村上春樹?ああ、何冊か読んだよ。最近人気だよね。」となにげに女の子に言いたいがために読み始めたのがきっかけでした。結局その後40年以上、癖の強い村上ワールドからは抜けだすことはできずに、今も新刊が出るたびに読んでしまいます。とは言っても、村上さんの小説は話が長いので、最近は文庫本が発売されるまで待つことが多いですが・・・ この本は、出てすぐに買った覚えがあるので、かれこれ四半世紀近くの前ということになるんですね。ブクログのレビューを拝見すると、その後、若い人たちも読んでくれていて、私が書いたわけではないですがうれしいです。 それにしても、その後の作品を見ても村上さんもオウムから逃れられないですね。私としても、なぜそうなったのか、世間で優秀と判断されている若者たちが、そっちへいってしまったのか。こっちはこれでいいのか。学生が何かに反発していた時代を知っている年寄り世代だからなのか。自分としてはこっち側にいるつもりでも罪悪感を拭い去れない。
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1997年3月20日 第一刷 再読 地下鉄サリン事件被害者へのインタビューからのノンフィクション。 被害者の生い立ち、日常という側面も含まれるインタビューは、文学作品としても読み応えが有る。ただ、ノンフィクション感は薄まる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
地下鉄サリン事件の被害者へのインタビュー集。海外から戻ってきたころに、日本を知るために行った、という。 村上は、神戸大震災、このサリン事件は、精神史の大きなエポックだという。
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この本を読んだのは10年前。村上氏の著書はあまり読まないが、人気作家のノンフィクションということで手に取り、一気に読んだのを覚えている。 それだけ、衝撃的な事件だった。 昨年、13人の死刑囚の刑が執行されたが、決して終わりではないと思う。
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先日読んだばかりの地下鉄サリン事件 加害者側へのインタビュー集「約束された場所で(アンダーグラウンド2)」に遡る形で読んだ。被害者側62人へのインタビューで構成されている七百数十ページの大部な本だが、1995.3/20当日の被害者の実態が生々しく投げかけられてくる。...
先日読んだばかりの地下鉄サリン事件 加害者側へのインタビュー集「約束された場所で(アンダーグラウンド2)」に遡る形で読んだ。被害者側62人へのインタビューで構成されている七百数十ページの大部な本だが、1995.3/20当日の被害者の実態が生々しく投げかけられてくる。村上春樹個人として 小説家村上春樹として 如何にこの事件に向き合うか?の答えが恣意を排した形のインタビュー集になったのでしょうか。読み手も集団の狂気(宗教やテロや戦争等)に流されない為に、自分の視座 視野 視点を保有することの重要性を改めて思わずに居られないと感じた。
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