ドナウよ、静かに流れよ の商品レビュー
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19歳の少女は何故、留学中にドナウ川に身を投げたのか?発端は小さな新聞記事。日本人の死体が2つ、ドナウ川に浮かんだ事実。そこから始まり、著者は事件を、2人の日本人の足跡をたどりはじめる……。
yama
大崎さんの心を通して、この事を知られて良かった。 余りにも生々しい実際に起こった出来事なので、重くて中々読み進めるのが辛い部分があった。 ただ、この事に魂、全身、人生の一部を総動員して取り掛かった大崎さんの筆を通して、もう息を吹き還す筈のない二人の叫びに少しでも触れられた事は...
大崎さんの心を通して、この事を知られて良かった。 余りにも生々しい実際に起こった出来事なので、重くて中々読み進めるのが辛い部分があった。 ただ、この事に魂、全身、人生の一部を総動員して取り掛かった大崎さんの筆を通して、もう息を吹き還す筈のない二人の叫びに少しでも触れられた事は、とても貴重な読書体験となった。 叫び、心の叫び。 人生を賭して叫ばれた二人の響きが、図らずも大崎さんの目に異国の記事を通して届いた事は、作中で彼自身が言及しているように、奇跡的な必然だと思う。 命の儚さ、家族愛の難しさ、愛するという事について、そして運命と言霊.. 仮に日実さんが周りに"守"られて千葉さんから引き離されていたとて、より幸せに"生き"る事はできたのだろうか。 千葉さんの苦しみの源はどこからきたのか、どの段階の何がどうなっていたら、その苦しみを回避することができたのか。 でたらめな記事のままではあまりにも現実味のない事件だったが、大崎さんや協力者の方々のおかげで、あたかも身近な人々、どころか自分自身にも置き換えられるくらい生々しく感じることができた。 けして他人事ではない。 身の回りの孤独や生きづらさ、両親との関係の歪さや異性に対する不信感や依存。 世の中のあらゆる関係性が、けして完璧でもないどころか、いつでも無慈悲に崩れ落ちたりする事。だからこそ掴んだ光のような存在に、人は時に全人生を賭せたりする事。そして誰かにとっての光は、必ずしも誰もが認める光ではなく、時に闇の形をしている時もある事。 "一般的な"幸せと、本人たちにとっての幸せは違っていたり、本人たちの苦痛は他人には計り知れなかったりする事。それは、親子ですら分かり合えないって事。 我が子ですら、友達ですら、人の人生は最終的には操縦も導くのも不可能で、決断は本人に委ねられている事。 様々に思いやられて、暫くは放心する作品だった。 大切に生きようと思う。 けして何があっても、長く健康に生きるんだと、そう自分とカミに言い聞かせながら、生きようと強く思った。
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ドナウ川で遺体となって発見された日本人女性日実(カミ)19歳。両親、高校同級生、ルーマニアで知り合った人々、ウィーンで知り合った人々、様々な人々との関係性を、現地調査を通じて明らかにしながら日実の思いに迫ろうとしたノンフィクションでした。当初見えていた状況が調査によって徐々に変わ...
ドナウ川で遺体となって発見された日本人女性日実(カミ)19歳。両親、高校同級生、ルーマニアで知り合った人々、ウィーンで知り合った人々、様々な人々との関係性を、現地調査を通じて明らかにしながら日実の思いに迫ろうとしたノンフィクションでした。当初見えていた状況が調査によって徐々に変わっていき、また、それとともに19歳の女性の心情が伝わってくる内容だと思います。 星3つです。
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残された人たちの無念さ、悲痛さ、優しさがよく書かれている。「人の数だけ正義がある」と言われるのと同じように、「人の数だけ事実もある」のかもしれない。ただ、ルポというより、知りえた事実を基にした著者の願望というほうがあってる気がする。
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随分前に読んだことがあるが、すっかり忘れていて再度購入したため再読。 親の立場から言えば辛いの一言、耐えられない。相手のことも許せないだろうなと。ドキュメンタリーは辛い。
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ルーマニアで命を絶った19歳の少女。彼女に一体何があったのか、著者がその謎を追いかけるノンフィクション。少女の周辺情報や現地での出来事、著者の考える少女の志向性などが丁寧に描かれ圧倒的に引き込まれた。その謎を追う旅の果てに著者が示した景色が胸に刺さる。友人から借りた本だが、出会え...
ルーマニアで命を絶った19歳の少女。彼女に一体何があったのか、著者がその謎を追いかけるノンフィクション。少女の周辺情報や現地での出来事、著者の考える少女の志向性などが丁寧に描かれ圧倒的に引き込まれた。その謎を追う旅の果てに著者が示した景色が胸に刺さる。友人から借りた本だが、出会えて感謝。
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学生時代に読みまたいつか読もうと思ってとっておいた一冊。台湾出張の時に持っていく。 ドナウ川で日本人が心中の記事を読み気になった著者が調べていくと自分にも関わりがある人だということが分かり、詳しく調べていく。 なんといったら良いか、若い人の死は悲しい。若さゆえの危なっかしさを...
学生時代に読みまたいつか読もうと思ってとっておいた一冊。台湾出張の時に持っていく。 ドナウ川で日本人が心中の記事を読み気になった著者が調べていくと自分にも関わりがある人だということが分かり、詳しく調べていく。 なんといったら良いか、若い人の死は悲しい。若さゆえの危なっかしさを思う。真実が見えていくと女の子の親が主張した、男に殺されたと言う主張は違うと感じる著者。両親の主張通りの記事にはできない苦しさ、正しさ、プロフェッショナル。 真実とは人の数程有るものだろうか。 若いとき読んだほどの衝撃は亡くなったが、今は両親の苦悩が拠り深くわかる気がする。やはり読んだあとの心に何かを残してくれる一冊。
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ウイーンで33歳の自称指揮者と心中死した19歳の女子学生を廻る大崎善生さんのノンフィクションです。 ”純粋”の作家。この作品を読んで、大崎さんの事をそう思うようになりました。 この作品の主人公の女子大生と、デビュー作「聖の青春」の主人公の捉え方がよく似ています。どちらも悪く言...
ウイーンで33歳の自称指揮者と心中死した19歳の女子学生を廻る大崎善生さんのノンフィクションです。 ”純粋”の作家。この作品を読んで、大崎さんの事をそう思うようになりました。 この作品の主人公の女子大生と、デビュー作「聖の青春」の主人公の捉え方がよく似ています。どちらも悪く言えば我儘で奔放ではた迷惑な人間です。それを著者は「純粋・無垢」と捉えます。「聖の青春」の聖は、難病ゆえにまともな生活が営めなかった人なので、まだ説得力があるのですが、この主人公の場合はどうでしょうか。むしろ世間知らずでエキセントリックな感じばかり目に付きます。それも「純粋・無垢」としている。そういえば、小説でも大崎さんはその傾向があるようです。実は半分くらいで投げ出しそうになりました。最後はそれなりに収まって、まずまずだったのですが。。。。 「純粋」というフィルターを通して物事を見る。あるいは文章を書く。大崎さんはそんな作家さんだと思えばよいようです。
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ルーマニアで自ら命を絶った日本人留学生の内面に迫ったノンフィクション小説。 異国の地ルーマニアで19歳の若さで命を絶った少女(渡辺日実さん)の命の足跡に迫ったノンフィクション小説。明るく活発だった少女を死へと追い詰めていったものは一体何だったのか。一途な愛に命の業火を燃やし尽く...
ルーマニアで自ら命を絶った日本人留学生の内面に迫ったノンフィクション小説。 異国の地ルーマニアで19歳の若さで命を絶った少女(渡辺日実さん)の命の足跡に迫ったノンフィクション小説。明るく活発だった少女を死へと追い詰めていったものは一体何だったのか。一途な愛に命の業火を燃やし尽くした19歳の少女の軌跡。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
順を追って日実そして千葉の人物像を拾い上げていくことによって、そして、最後に日実が行きついた迷いなき愛情で終わることによって、ひとつのレクイエムに本書がなっているかのようでした。どうしようもなさ、迷い、正解の無さ。多くの人は常々そういうもののなかに身を投じているともいえます。しかし、日実はきっとそこに生きていく芯を見つけたのでしょう。そして千葉の存在を誇りの中に全うするために、きっと日実から死を選んだのでしょう。もどかしくて、くるおしさも感じて、そして最後は切ない。そんな作品でした。
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