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芸術起業論 の商品レビュー

3.9

102件のお客様レビュー

  1. 5つ

    20

  2. 4つ

    43

  3. 3つ

    26

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2023/06/27

現代アートの売り方について著者の考えとどのように実践してきたかが書かれている。 芸術は文脈や作者のアイデンティティとの関連を説明できなくては物体に過ぎない。 村上隆についてはオタクカルチャー的作品を作る人、くらいの認識しか無かったので知らない側面を知ることができた。 実は日...

現代アートの売り方について著者の考えとどのように実践してきたかが書かれている。 芸術は文脈や作者のアイデンティティとの関連を説明できなくては物体に過ぎない。 村上隆についてはオタクカルチャー的作品を作る人、くらいの認識しか無かったので知らない側面を知ることができた。 実は日本画出身だとか36歳まで貧乏していたとか 表紙が著者の顔写真のドアップなので部屋に置いておくと存在感がある…

Posted byブクログ

2021/09/01

・論理の重要性  アートの本場であるアメリカの姿勢は〈謎解きゲーム〉。快感に溺れてる富裕層の目を見開かせるような新しい概念の創造が求められている。そこで論理が重要になる。歴史の文脈の理解と提示、自分の好きの根拠の究明、それを他国の言葉に翻訳すること、敵地の論理の分析。これらがあっ...

・論理の重要性  アートの本場であるアメリカの姿勢は〈謎解きゲーム〉。快感に溺れてる富裕層の目を見開かせるような新しい概念の創造が求められている。そこで論理が重要になる。歴史の文脈の理解と提示、自分の好きの根拠の究明、それを他国の言葉に翻訳すること、敵地の論理の分析。これらがあってこそ独創的な個人のアイデンティティというものが評価される。つまり作品の美的な受容は理論的な理解の上に成り立つ。 ・金とアート  アートは人間がすることだからまずもって金がいる。金は最強のコミュニケーションツールであり、芸術家の最後の壁。これが目的になってはいけないが、手段としてなければ評価を引き寄せられない。なぜなら現代美術は概念の遊びでありコミュニケーションなので、同じコミュニケーションである金銭がものをいうから。 ・アーティストの心得  歴史を学べ。自分の好きを徹底的に究明しろ。その好きを歴史に接続すれば自分が作りたいものが自ずと見えてくる。そして凡人はひたすら努力しろ、宮崎駿のように。あとは集団を作ってパトロンを獲得しろ。パトロンから独立した孤高の芸術家像は近代に特有のもので、より広範な歴史的文脈からすればパトロン+集団制作が定石。 ・天才はマティスのみ  本文で真の天才として示されているのはマティス。彼は芸術家が自由になるプロセスを表現しているとされる。逆にピカソなんかは腕力で描いてるから人間の限界を示しているとされる。ここら辺は感性的な説明しかなかったが、深掘りできたら面白そう。 ・セクシュアルな存在としての花  『侍女の物語』で「花は植物の性器だ」と言われていたことを思い出す。村上は大学受験予備校での模写でそのことに思い至り、それがあの特徴的な花のキャラクターの誕生に繋がったそうだ。

Posted byブクログ

2021/07/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「芸術起業論」村上隆 ■なぜ日本人アーティストで世界で通用する人が少ないか? →欧米の芸術のルールを踏まえていなかったから。 →だから、欧米で勝負するために欧米アートの構造をしつこく分析した。 →仮説と検証の連続、マネジメントの技術も磨く ■一流の作品とは、理解される窓口の多い作品 ・価値は偶然から生まれる。運に翻弄される。 →だから窓口を増やす必要がある。 ■価値の違いを乗り越えてでも理解してもらうという客観性こそが大切。 ・芸術作品は自己満足であってはならない。 ・価値観の違う人にも話しかけなければ、未来は何も変わらない。 ・本来なら分かり合えない人たちと、どう深く濃く交流していくかを考えねばならない。 ■芸術には開国が必要 ・日本の「芸術」の定義はあいまい ・世界の価値は「その作品から歴史が展開するかどうか」 →欧米の美術の歴史に文脈を作るなら、徹底的な学習が必要 ■世界で評価されない作品は意味がない ・作品に部分的なきらめきがあっても欧米の美術史における文脈付けが弱ければ、外国に渡っていくパワーは全然不足している。 ★西洋の評論の基盤の強さ ・日本文化も日本人の事もそれほど知らなかった西洋の美術評論家が、「西洋化された日本人のオリジナルコンセプト」と知るや否や猛烈に学習し、そして、むしろ日本人評論家よりはるかに鋭く分析的に批評をする。 ★個人の歴史の蓄積をブランド化する方法 ・今の芸術の中心はアメリカ、世界に挑戦するならアメリカで商売する基盤を考えなければならない。 ・日本人としてのアイディンティティはあるが、外国の現場での渡世方法は「別物」 ・白人から忌避される黄色人種である現実を知るべきだし、欧米美術界の中ではサーカスのピエロのような存在、猿回しのサル的な位置づけである事実も把握する。 ★欧米の美術における決まり ・自分自身のアイディンティティを発見して、制作の動機づけにする。 ・欧米美術史及び自国の美術史の中で、どのあたりの芸術が自分の作品と相対化させられるかをプレゼンテーションすることも重要  →決まりを踏まえたうえで斬新なイメージを見せると優良な現代芸術が誕生。  →決まりを踏まえなければ、ルール外の「物体」 ・「欧米の美術の世界特有」のルールを導入して作品を発表する。自分自身のアイディンティディを調べる。 【例】 大衆芸術である浮世絵や漫画やアニメ・ゲームの日本美術史の中での関係を把握して、 西洋的美術の移植に失敗した日本ならではの出来事にも言及していく。 その上で、日本独特の文化体系を、欧米美術史の文脈に乗せる。 という、西洋アート世界との決定的で新しい接触をすればよかった。 ★個人の持つブランドを商品にする ・自分の●●年の歴史に、最近300年ほどの日本の美術の歴史の文脈を用意周到に関連付ける。 ★交渉とは ・自分が得したいなら、相手も得するような提案をすべきだろう ■日本人の芸術が世界に通用していなかったわけ ・文脈の設定に対する理解不足と、人間と人間の勝負の瞬間に弱かった。 ★作品を通して世界美術史における文脈を作り上げることは、今も世界における美術作品制作の基本であり続けている。 ・西洋の美術の世界で、最初に認められた日本人美術家は葛飾北斎 ★日本文化の潜在能力に自信があれば、尚更、まだまだ弱い日本人の伝達能力を身につけなりません。 「文化の精神性を説明」などというとわかりづらくて拒否されるのではないかと、われわれ日本人は思いがちですけど、そうゆうところを徹底的に伝えることが、案外、現代の美術の世界においては大切な仕事になる。 ★欧米のトップの美術批評家は、時代の基準をきちんと作る。 だからこそ、芸術という非論理的なものに興味を持ち「わけのわからないものを論理で語る」ことに挑戦できる。 ■歴史を勉強するとどんどん自由になれる。 ・芸術の世界だけでなく、どの業界にもどの分野にも特有の文脈があり、 「文脈の歴史の引き出しを開けたり閉めたりすること」が、価値や流行を生み出す。 ★美術のルールを読み解く方法 ・歴史を学ぶ。 ・好きな作品や、好きな作家のたどってきた系譜をしっかり勉強するだけで、かなりの事が見えてくる。 →自分の探さなければならない歴史がまずわかる。 →わかったら実際に歴史を読み解けばいい。 →そうすれば、美術のルールはすぐに理解できる。 →自分のひかれているものを読み解くと、欧米の美術のルールだけと言わず、自分の動いているルールそのものも掴めるはず。

Posted byブクログ

2021/01/05

正しいし、ヒカルとコラボする論理もわかった。 だけど、やっぱりYouTuberと同じ属性な感じというか自分とは相容れない存在だと思う。オタクではあるけども。

Posted byブクログ

2020/04/03

本作の方は、以下の点で興味深い。 1.芸術家村上隆がどのように生まれたかが分かる。 具体的に言えば、どのようなコンプレックスを持っているのか。 2.「リトルボーイ」という文脈 戦後日本の社会的な文脈の位置づけをここまでクリアーにした人は他にいない。 感動。

Posted byブクログ

2019/05/31

09.8.8 石井さんブログ ■超おすすめ本■:シナリオを創り上げる「芸術起業論」村上隆  【書評by多読書評ブロガー】 テーマ:書評:哲学・思想・科学 多読書評ブロガーの石井です。 1億円の値がついたフィギアなどのポップアートで有名な村上隆さんというアーティストの書いた芸術...

09.8.8 石井さんブログ ■超おすすめ本■:シナリオを創り上げる「芸術起業論」村上隆  【書評by多読書評ブロガー】 テーマ:書評:哲学・思想・科学 多読書評ブロガーの石井です。 1億円の値がついたフィギアなどのポップアートで有名な村上隆さんというアーティストの書いた芸術論です。 最近芸術家に絡むプロデュース論や教育論などの本を読み漁ってきましたが、本書は白眉です。 書き上げるのには、4年の歳月を必要としたということ。「言葉」で芸術の価値を高めるべきだという哲学の元、同時にその内訳を披露しながら自らのセルフブランディングを高めるという緻密に計算された熱い本です。 芸術というと「独創性」だとか「オリジナリティ」という「つきぬけた」ところに目が行きがちですが、作品の価値を高めていくためのシナリオ作成、チームによる作業など全てが、「買い手」側の心にどう突き刺さるかということをきちんと計算して構成していることが分かります。 芸術起業論 チームで価値とシナリオを作っていくプロセスや、ゼロから新しい発想を生みだす際の思考の原点などの舞台裏を赤裸々にかつシンプルに解き明かしてくれています。 ■価値・ブランドの源泉は「観念」や「概念」 「芸術作品の価値は言葉で高められるべき」 「現代美術の評価の基準は、概念の創造」 ■チームで作品の価値を作る 「画商やアドバイザーや、プレーヤーやオークションハウスや美術館の人に、作家作品の成否を相談し、シナリオを作って作品の価値を高めていくのは当然の手順」 「分業制をとることで、一人ではできないほどの精度でものを作れるようになりました。」 手仕事に追われないから、創造性を発揮することができるようになるといい、これを現代における商品つくりの可能性を高めるやり方の鉄則としています。 ■建築家・デザイナーの仕事 創造性の象徴として取り上げられることの多いデザイナーや建築家などの仕事を見ても、実は色々とアイデアを絞ったり、設計の実務をしているのはアシスタントの人たちです。彼らの創造性をどう引き出していくかということの「手助け」したり、「方向性」を提示し、「最終判断」をすることが「主」の仕事です。 ■マネジメントに集中した人間が勝つ 村上氏も世界に通用する方法について話す際も、「マネジメントに集中していく人間が勝つ」という、意外と悲しい結論になると評しています。 ■文脈を創り上げる 歴史と紐付けて作品を語る(=シナリオを組み立てる)ことの重要性を再三指摘してます。 「世界で唯一の自分を発見し、その確信を歴史と相対化させつつ、発表すること」 これが世界共通のルールだと述べられています。 芸術の表現をしようとするときには、製作の背景や動機や設定が緻密に必要になるとのことです。 ■唯一の自分を発見する方法 この唯一の自分を発見していく作業というのはどうすれば良いのでしょうか。 「自分の惹かれているものを紐解いていくこと」 ・好きな作品の歴史を研究していくこと。 好きな歴史自体を深堀りしていくことも薦められています。 ■ゼロからものを考えるとき ゼロから新しいことを発想していくときの要点として、 「最近どういう楽しいことがあったか?」 「最近どういう悲しいことがあったか?」 とあります。全てはその人自身の感情から生まれてくるものなのだということでしょうか。 最近ストーリーテリングの研究をしたり、「人が変わる瞬間」等のワールドカフェを通じて、「全ての源泉は自分の中にあり、どれだけ自分を掘り下げて理解できているかどうかが、その人の成長」だと感じています。 【多読書評ブロガー超いちおし本】 1作品1億円の値がついたフィギアなどのポップアートで有名な村上隆さんですが、とにかく分かりやすい物言いで「人の心を動かす」作品の作り方について非常に丁寧に書かれている本です。 ブランディングやストーリーテリングに興味分野が在る方は必読です。

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2019/02/03

2000年ごろは欧米では知的な仕掛けなどを楽しむのが芸術に対する基本姿勢だった。→素材などではなく、観念や概念の部分。 主観、客観の考え方。 文章に気を配る。 リアルなコミュニケーションに重点を置いた芸術。 技術は追いつけてしまう。考え方や思想を作品に詰める。 思いなどを...

2000年ごろは欧米では知的な仕掛けなどを楽しむのが芸術に対する基本姿勢だった。→素材などではなく、観念や概念の部分。 主観、客観の考え方。 文章に気を配る。 リアルなコミュニケーションに重点を置いた芸術。 技術は追いつけてしまう。考え方や思想を作品に詰める。 思いなどを歴史などのストーリーに乗せて伝える必要性。 ピラミッド構造の組織→自分の役割に集中できる環境作りは大事。 訳のわからないものを論理的に語ろうとするのが批評家。 興味→その歴史を学ぶ→興味があるかの検証 このプロセスが大事。 敗戦により国家という根幹が日本からは抜け落ちている可能性。 作品により人の考えは生き残る。 絵を描くことで目の前のものを残す訓練ができる。 芸術にマネーはとても必要。

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2019/01/06

アート作品を上手いこと解説して、高値で売るのはギャラリストの仕事だと思っていたが、アーティスト自身がwhere to play/how to playを考えて、ブランディングまで意識的にできると、こんなに強いのね。アートに興味のない人でも、ブランディング事例として読むと充分に面白...

アート作品を上手いこと解説して、高値で売るのはギャラリストの仕事だと思っていたが、アーティスト自身がwhere to play/how to playを考えて、ブランディングまで意識的にできると、こんなに強いのね。アートに興味のない人でも、ブランディング事例として読むと充分に面白いと思う。 「アートは世界美術史の明確なルールの中で仕掛けや面白さを競うゲーム」「評価されるアート作品とは世界美術史の文脈を作るもの」という発想は、アートの世界への心理的な敷居をかなり低くしてくれた。

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2018/12/21

これはとても面白い一冊でした。「村上隆とは一体何者?」と長くどう言う人物なのか疑問に思っていた自分には全ての謎が解けるような解説本であり、「芸術」とはなんぞ?「芸術家」とはなんぞ?を知る良い機会になりましたし、「芸術家として生きる」と言う苦難に満ちた人生や「日本から出て世界で生き...

これはとても面白い一冊でした。「村上隆とは一体何者?」と長くどう言う人物なのか疑問に思っていた自分には全ての謎が解けるような解説本であり、「芸術」とはなんぞ?「芸術家」とはなんぞ?を知る良い機会になりましたし、「芸術家として生きる」と言う苦難に満ちた人生や「日本から出て世界で生きる」には何を知っていなければサバイバルを勝ち抜けられないのか?を真正面から回答する良書です。読んでいて「ふむふむ」と相槌を打って感心したり、「美」と言う何物かを生み出すためにいかにのたうち回り、悶絶する日々を送ってきたのか…面白くも興味深い文章がギッシリ詰まっています。とても面白いです。芸術と言う世界だけのものじゃなく、働くとか生きるとか人生とか、その全てに通じる信念や信条を持って生きると言うことを教えて頂きました。 スッゲー面白い本ですのでおススメです。

Posted byブクログ

2018/10/08

日本のアーティストが内弁慶でなかなか海外で活躍できないのはなぜか、この問いに対して彼は言う。世界のアート市場の中心は欧米であり、欧米の芸術感のルールや文脈を読み取り、その一定のルールの中での創造を行う事無くしては評価されないという。本書の内容は極めて抽象的な議論であるものの、非情...

日本のアーティストが内弁慶でなかなか海外で活躍できないのはなぜか、この問いに対して彼は言う。世界のアート市場の中心は欧米であり、欧米の芸術感のルールや文脈を読み取り、その一定のルールの中での創造を行う事無くしては評価されないという。本書の内容は極めて抽象的な議論であるものの、非情に説得力のある内容である。具体的な解決策までは提示されていないが、それは彼がそれを知らないのではなく、そこまで教えてしまう事が彼自身の独創性を失わせることになるし、それがそもそも本書で提起している問題点の解決にはならないということであろう。解らない奴にいくら言っても解らないということだろう。 36歳でコンビニの裏で、売れ残りの弁当をもらうような生活をしていた著者が、世界的な名声を獲得し、ルイヴィトンとのコラボなど、華々しい活躍をするようになったのは、こうした抽象的な問題に対して常に向き合って来たからだと思う。 こうした、市場主義とも言えるやり方に対しての批判があることは彼自身が認めるものの、奥州においても芸術は歴史的に依頼主としてのパトロンがあってこそ成り立つ職業で有り続けたことからすると、当然であるという。ゴッホなどが出て来た時代は、むしろそうした制約からの解放を目指した例外的な時代だったのだが、たまたまその時代が日本の芸術が初めて欧米に接した時代となり、日本の芸術界の価値基準が創造的な自由に偏向している背景となっているという。マネーに対してむしろ距離を置こうとする日本の芸術界に対して批判的な立場を取るからこそ、オークションで高額の値段がついた作品が、セカンダリーマーケットで再度価値を持つためにも芸術家は努力を要求されているとする著者のスタンスは潔い。 芸術は、かならずしも崇高なものであるという必然性はないという仮説のもと、日本のオタク文化を、欧米に対して文化として紹介していくチャレンジ、日本の芸術界の閉鎖性についての疑問、やはり既存の枠組みから外れる人のみが、大きな高見に到達できるのだということを彼自身が示している。

Posted byブクログ