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芸術起業論 の商品レビュー

3.9

102件のお客様レビュー

  1. 5つ

    20

  2. 4つ

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  3. 3つ

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2017/11/29

何年も前から気になっていて、アマゾンのお気に入りリストに入っていた。 日本芸術界の大前研一とでもいうべき、芸術に合理性、論理性を持ち込んだ人。 文章は下手くそ。 しかし彼は確実に何かを掴んだ。 結果、精子がスプラッシュしたフィギュアにアホほどの高値がついたわけである。 その手が...

何年も前から気になっていて、アマゾンのお気に入りリストに入っていた。 日本芸術界の大前研一とでもいうべき、芸術に合理性、論理性を持ち込んだ人。 文章は下手くそ。 しかし彼は確実に何かを掴んだ。 結果、精子がスプラッシュしたフィギュアにアホほどの高値がついたわけである。 その手がかりを、あっち行ったりこっち行ったりの文章から我々が読み取るのが、この本の目的。 そもそも、村上隆が嫌いで、何も彼から学ぶつもりがないなら読む必要はない。 言ってることは、私の言葉で理解したところによると、芸術は歴史でありコミュニケーションでありファッションである。 何がかっこよいとされ、何がださいとされ、価値があるとされるかは、これまでの芸術界の潮流を見、文脈を解読して、その上で自分の作品を置いてこそ決まってくるものである。 文脈からあまりに離れていれば相手にされず、しかし、死んだあとにされる可能性はある。 日本では技術は教えられるが、文脈を読むことは教えられていない。 好き嫌いはあるだろうが、確実に日本人で指折りの、学ぶべき視点を持った人である。

Posted byブクログ

2017/10/23

芸術の世界も、スポーツの世界と同じで、 理論的に何がどうすごいのかということを話すことができる。 すごさは一瞬の輝きではなく、積み重ねの上にある必然性であるのだから。 だからと言って、誰もが到達できるわけではない。 多岐にわたる情報や感情を整然とまとめ上げ、 人を楽しませるた...

芸術の世界も、スポーツの世界と同じで、 理論的に何がどうすごいのかということを話すことができる。 すごさは一瞬の輝きではなく、積み重ねの上にある必然性であるのだから。 だからと言って、誰もが到達できるわけではない。 多岐にわたる情報や感情を整然とまとめ上げ、 人を楽しませるための蜘蛛の巣を変態的に張る、 用意周到なアーティストだということがよくわかる本でした。 (以下抜粋。○:完全抜粋、●:簡略抜粋) ○勉強や訓練や分析や実行や検証を重ねてゆき、ルールをふまえた他人との競争の中で最高の芸を見せてゆくのが、アーティストという存在なのです。(P.25) ●欧米で芸術作品を制作する上での不文律は、「作品を通して世界芸術史での文脈を作ること」です。(中略)既成の便器の形は変わらないのに生まれた価値は何なのでしょうか。それが、「観念」や「概念」なのです。(P.35) ○欧米の美術の歴史や文脈を知らないのは、スポーツのルールを知らずにその競技を見て「つまらない」とのたまうことと同じなんです。(P.36) ○コレクターはいいものを購入して自分自身をアピールできる上に「寄付した作品の金額が税金控除の対象になっている」というところが重要なのです。これは日本とまるで違います。日本では固定資産として税金徴収の対象になる(だから芸術はひそかに所有される)もの(P.37) ○魯山人の過去をふまえた創作は贋物と批判されるのです。確かに彼の陶器には下卑たところがありますが、ウォーホールと同様に「確信犯のバッドテイスト」なのですから、業界の常識を覆す能力を評価しない日本人の基準のほうが、貧しかったのではないかと思います。(P.44) ○プレッシャーをかける理由は単純です。重圧をかけるというマネジメントをしなければ、いいものができあがらないからです。(P.59) ○そういう一撃を食らわせるのが芸術なのですが、これはなかなか難しいことです。大天才でもなければ、それは集団で作りあげるしかないんです。(P.59) ○アートマネジメントに関わる人は、その人なりの勝ちパターンが見えてきた時に、はじめてアートに深くコミットできるのです。延々と続く地道な仕事を通していつのまにか歴史が変わる時が来るのかもしれません。(P.62-63) ○チャンスがある時に、作りたいものを自分の判断と責任で作れるようにしないとだめだ(P.68) ○『赤ひげ』のカメラの移動がいくらすごくとも、そういうものは後世の技術で追いつけてしまえるものです。技術で追いつけないところに黒澤監督の個性や魅力があるのですから、芸術においても、技術でなくて考え方に力を注ぐべきだと思います。(P.78) ○絵としての才能で言えばボナールのほうがずっとすばらしいのに、なぜかゴッホが高い評価を受けている理由は、おそらく「端的に説明できる物語」があるからではないでしょうか。(P.98) ○最近の海洋堂はよくない。儲かっているのが、よくない。昔は儲からなくても、熱があったのに……(P.135) ●西洋の美術の神髄は客観性の追求であり、現世とそれを超えた神秘的な世界像を客観的に表現する方法だったのです。(中略)日本の伝統的な絵画は、目で見たものを主観的に好きな角度から表現しています。 ○ぼくは宮崎駿さんを目指してものを作ってきました。高校生の頃から彼こそが天才だと思っていたのですが、知れば知るほど宮崎さんは努力型の人物なのだとわかるようになりました。手塚治虫さんのような天才とは質がまるで違うのだと実感しています。(P.184) ○ぼくが「作品のだめな部分」をいじくる文章をメールで送ると、アーティストはまちがいなくやる気がなくなります。やる気がなくなった時に、いい仕事ーーやりがいのある案件を持っていく。いい話なんです。やらざるをえないでしょう?(P.207) ○四十五分描いて十分寝る(P.231)

Posted byブクログ

2017/08/12

芸術は売れなかったら無価値。 プロモーションやストーリーが大事。 で、結果を出してる。 オタクカルチャーのパクリなど許せない面もあるが、芸術家とはこんなもんでしょう。

Posted byブクログ

2017/04/24

作品が億で売れる芸術家村上隆の、戦略についての自伝。 トランプ時代と呼ばれる今でも欧米の立ち位置が変わらないとは思わないけど、何かを「世界的に」受け入れてもらうための考え方はおそらく大きくは変わらないのでは。

Posted byブクログ

2017/03/01
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※このレビューにはネタバレを含みます

日本と欧米の芸術サロンの構造の違いや、評価基準の違いを紐解き、コンセプチュアルアートにいかに切り込んでいったかを語る。いままで忌避されていた「マネー」の重要さにも触れている。芸術論だけでなく、創作活動にもビジネスにもあてはまる話だった。 芸術のルールは 「世界で唯一の自分を発見し、その確信を歴史と相対化させつつ発表すること」 「芸術家は死後の世界を準備しなければならない」 高密度な言葉だった。

Posted byブクログ

2016/05/28

アーティストとしてどう継続していくか、作品を売るには何を知るべきか、について。何を考えて行動しているのかがまとまっている。

Posted byブクログ

2015/02/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

アンディ・ウォーホルは西洋美術史での文脈を作成する技術が圧倒的に違った。 『インタビュー』という雑誌を創刊し、セレブな友人を増やす。 共産国の象徴、毛沢東の肖像画を描いてスキャンダルを狙う。 「操作できる範囲の外」さえも、まるで作品が演出しているかのようにしむけているのがウォーホルの技術。 本当の批評は創造を促す。 芸術家が提出した謎に対して美術評論家がある種の客観性を与える。 客観性があるからこそ芸術家が作品を作り続けることができる。 ヴァネッサ・ビークロフト http://matome.naver.jp/odai/2136305166045875501 http://matome.naver.jp/odai/2140307183221435401 日本独特の文化体系を欧米美術史の文脈に乗せる。狩野派は職業的絵描き集団。それは日本では芸術作品制作を集団で行うことの下地でもある。現代のアニメ工房は歴史的必然性のあるもの。 ファインアートとサブカルチャーの区別なく、すべての表現が娯楽としてごちゃ混ぜになった。 第二次世界大戦で無条件降伏した日本は、アメリカの支配下で民主化された。その過程で、日本には階級社会がなくなった。ここが欧米と日本の差。 戦前は貴族の抱えたもので世界に通じるものであったが、戦後民主主義の世界では美術はすべての人が理解できるものであるべきだと認定された。 欧米の美術は平等に楽しめない。欧米の美術は階級と共に形成され、美術界に資金が投入され活性化されてきた。 日本では大衆娯楽の形で子供も大人も巻き込む芸術が育った。現代の漫画やアニメの発信地は日本。ここに世界の美術界で戦うための優位性がある。その芸術性の根幹を日本人独自の方法論で欧米に伝える。 興味を抱かせて、楽しませて、ひきこんでいく。ありのままの説明では不十分。文化の精神性を説明することが、案外現代の美術の世界では大切である。 背景や動機の設定は生まれ育った環境や芸術のよりどころを咀嚼しないと一歩も進めなくなる。 作品制作のデータベースとして歴史を使う。漫画の世界ではこの方法はすでに使われていた。 多数の目を並べると圧迫感という錯覚を与えることができる。西洋絵画の遠近法は錯覚の技法。 明治以降、日本の美術家たちは西洋美術史の輪郭に沿い、ワクからはみ出していないかを気にしながら、同じ色を塗り続けていた。西洋に追いつくために新しい輪郭を西洋の文化に求め続ける日本人。文化とは色を塗る行為ではなく新しい輪郭をつくる行為だということを忘れたままの美術史が続いてしまった。

Posted byブクログ

2014/12/13

大学の先輩にお勧めいただいた本を読了しました。 芸術について直感的な意見しか持っていなかったし、 そのことがプリミティブに正解だと信じ込んでいた自分に まったくそうではない世界が存在することを こと細かく教えてくれた本となりました。 また、芸術の世界での世界における成功者の一...

大学の先輩にお勧めいただいた本を読了しました。 芸術について直感的な意見しか持っていなかったし、 そのことがプリミティブに正解だと信じ込んでいた自分に まったくそうではない世界が存在することを こと細かく教えてくれた本となりました。 また、芸術の世界での世界における成功者の一人の本ですが、 他のあらゆるジャンルに通ずる内容があるなぁと思いました。 日本人が日本が現代に至るまでの背景を理解し、 そしてそれが色々な世界の国々において、 どのような文脈をもって捉えられるかを考えた上で、 自らの長所をもって戦い、そして共感を呼ぶ。 村上さんがたどったプロセスは概ね上記のようなものですが、 あらゆるアートだけでなく、ビジネスすらも相似の方法論で 成功への道を拓くことができるのではないか? そう感じました。 音楽のシーンでの具体例としては、 最近のBABY METALの海外での評価は まさにこの手法に当てはまると思いました。 日本的な要素である和楽器を取り入れつつも ガッチガチの欧米音楽であるメタルを基軸におき、 歌うのは日本独特の文化である『kawaii』を体現する アイドルという組み合わせの妙。 そしてYouTubeという国境を飛び越えたSPによる 全世界への認知拡大戦略。 これが2014年のビルボードワールドチャートの 年間ランキング5位に入ったという成功を もたらしたのだろうな、とこの本を読んで思いました。 結局、この本を読んで芸術への理解が深まったのか? と言われると、正直よくわからないし、 多分それほど深まっていないような気もしますが、 それ以外の部分で得られた知見が非常に多い本でした。

Posted byブクログ

2014/06/10

誰がなんと言おうと村上隆は成功者であるのだから、そこから学ぶことは大いにあります。批判があろうが、「これだから日本人は駄目なんだ。」と村上隆は思うだろうし、そう思われては反論のしようがないですね。芸術家というよりは戦略家、起業家。そして、当たり前ですが、とてつもない努力家に感じま...

誰がなんと言おうと村上隆は成功者であるのだから、そこから学ぶことは大いにあります。批判があろうが、「これだから日本人は駄目なんだ。」と村上隆は思うだろうし、そう思われては反論のしようがないですね。芸術家というよりは戦略家、起業家。そして、当たり前ですが、とてつもない努力家に感じました。考え方がとても挑戦的で、しかもそれこそ確信犯でわざと狙って書かれているので、潔いです。文章中にも繰り返しあるように、日本文化、西欧文化を詳しく勉強したから成せる芸当でしょう。オタクの搾取とか、オタク文化の不勉強とか批判されていますが、全てはお金のため、自分の欲望を満たすだけという村上隆の信念が説明してくれます。少し気になるのは、結局、村上隆はこの本を出版して何をしたかったのだろうということです。日本人にもっと世界で活躍して欲しいのか。日本芸術は欧米芸術のルールを見習わなければならないのか。日本文化にもっと矜恃を持つべきなのか。それこそお金稼ぎか。よくわかんないけど、最後の砦とも言える日本文化は西洋に犯されてはいけない気がします。文化の棲み分けは重要でしょう。しかしながら、世界の第一線で活躍して、しかもあくまで日本文化の紹介に徹底した村上隆を誇りに思うとともに、彼の作品にはなんともいえない生命力とかパワーを感じることは拭えない事実ではないでしょうか。鵜呑みにし過ぎず、でも頭の片隅には残しておきたい本って感じ。

Posted byブクログ

2013/10/26

ちと思うところあって、この辺りがコンセプトなんだろうなと思い手に取った。 狙いはドンピシャ。でも、中身は思った以上にビジネス書で、これはけっこうこのコンセプトをベースにどうモデル化するかは、よほど考えないとエラい目に遭うな。

Posted byブクログ