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の商品レビュー

4.2

190件のお客様レビュー

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2014/07/23

恋のすべてがここにある。 幻想的で脆く儚く甘い完璧なまでの桃源郷のような世界は、恋でなければありえない。 完ぺきな世界が一人の男の登場によって、みるみる歪で、醜く汚くけがわらしいモノになっていく時のあの哀しさ。 これが心を燃やした同じ人なのかと感じてしまう、なにかが決定的に変わ...

恋のすべてがここにある。 幻想的で脆く儚く甘い完璧なまでの桃源郷のような世界は、恋でなければありえない。 完ぺきな世界が一人の男の登場によって、みるみる歪で、醜く汚くけがわらしいモノになっていく時のあの哀しさ。 これが心を燃やした同じ人なのかと感じてしまう、なにかが決定的に変わってしまった世界でもがき続ける苦しさ、憎しみ、愛おしさ。 そして至る何も感じる事もできないほど、ズタズタになる心模様。 その絶望的で退廃的な風景を鮮やかに描いている。 これは恋愛ではない。 強烈なまでの恋なのだ。 忘れられない強烈な恋をしたことがある人にお薦めする作品。

Posted byブクログ

2014/05/12

1972年、浅間山荘事件の喧騒に埋もれるようにして、一つの殺人事件が起こっていました。犯人は、当時学生だった矢野布美子という女性で、大学助教授だった片瀬信太郎の別荘で、発砲事件を起こしたのです。彼女の事件に関心を持ち、病床にある布美子の話を聞き取ったルポ・ライターの鳥飼三津彦が、...

1972年、浅間山荘事件の喧騒に埋もれるようにして、一つの殺人事件が起こっていました。犯人は、当時学生だった矢野布美子という女性で、大学助教授だった片瀬信太郎の別荘で、発砲事件を起こしたのです。彼女の事件に関心を持ち、病床にある布美子の話を聞き取ったルポ・ライターの鳥飼三津彦が、事件の顛末を振り返るという形で語られた物語です。 少壮の英文学助教授だった片瀬信太郎は、当時手がけていた『ローズサロン』という小説の下訳のアルバイトを、布美子に依頼します。それまで彼女は、学生運動家として活動していた唐木俊夫という男と同棲状態にあったのですが、信太郎とその妻の雛子と付き合うようになって、自分とは違う世界に暮らす彼らにしだいに惹かれていきます。やがて布美子は、戸惑いながらも彼らの関係の中に深く入り込んでいくことになります。 ところが、軽井沢の別荘に、大久保勝也という青年がやってきたところから、彼らの危うい関係は大きく変わってしまいます。電撃的に大久保への恋に目覚めた雛子は、もはや信太郎のもとへは戻れなくなり、そのことを知った布美子は、大久保への恨みを募らせます。 さらに彼女は、信太郎から彼と雛子が異母兄妹だという秘密を聞かされます。自由奔放に見えた信太郎と雛子は、2人が兄妹だという倒錯的な関係の秘密を共有することで、辛うじて保たれていたのでした。雛子と大久保のもとを訪れた布美子は、信太郎と雛子の危うい関係を幼稚なつながりだと言い放つ大久保の言葉を聞いて、自分が深く入り込んでいった世界を傷つけられたと感じたのか、信太郎の猟銃を持ち出して、大久保を射殺します。 布美子、信太郎、雛子の倒錯的で危うい美しさを秘めた関係を、見事な文章で描いた作品だと思います。

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2014/04/06

はじめて小池さんの本を読んだ。官能的であり、予想外のストーリー展開に引きこまれていった。 他の作品も読むことにする。

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2014/03/29

学生運動などで揺れていた当時の時代背景と、主人公の何かにすがらずには自らの存在価値を見出せないそんな不安定さが、「恋」へと駆り立てた。恋とは己の存在価値を認めたいがゆえの不安定な心の土台であったりするのだろう。その土台はあまりに脆く崩れ去りやすく、時にその脆さに耐えられず自滅する...

学生運動などで揺れていた当時の時代背景と、主人公の何かにすがらずには自らの存在価値を見出せないそんな不安定さが、「恋」へと駆り立てた。恋とは己の存在価値を認めたいがゆえの不安定な心の土台であったりするのだろう。その土台はあまりに脆く崩れ去りやすく、時にその脆さに耐えられず自滅するのだ。

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2014/02/04

これはレベルを越えてる。と、思った。 だから直木賞受賞作なんだな、と。 リアリティなんか全く感じられないのに、信じられないほど物語に引き込まれてしまった。 一体何なんだ、これは。 すごい。 本好きの人には絶対に読んでほしい。 小池ワールドってより、小池文学...

これはレベルを越えてる。と、思った。 だから直木賞受賞作なんだな、と。 リアリティなんか全く感じられないのに、信じられないほど物語に引き込まれてしまった。 一体何なんだ、これは。 すごい。 本好きの人には絶対に読んでほしい。 小池ワールドってより、小池文学でしょうね。 いやー、やられました。 文学です、文学。 ノックアウト。

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2014/01/25

今まで、恋愛絡みの小説を何故か避けてきたのですが、やや特殊な恋愛感情と、登場人物達の過去が絡み、サスペンス要素が入っているので、読みやすかった。 まぁ、個人的には、主人公の気持ちを理解はあまり出来なかったけれど、 自分が理想とする人や、尊敬する人に対して、何かしらの害を与えよう...

今まで、恋愛絡みの小説を何故か避けてきたのですが、やや特殊な恋愛感情と、登場人物達の過去が絡み、サスペンス要素が入っているので、読みやすかった。 まぁ、個人的には、主人公の気持ちを理解はあまり出来なかったけれど、 自分が理想とする人や、尊敬する人に対して、何かしらの害を与えようとしたり、その人の人生を狂わせるような第三者の存在を知ったら、決してその第三者を好きにはなれないし、なんとか遠ざけようとはするかもしれない。 ただの恋愛小説ではないので、最後まで楽しめたし、読み進めるに連れて、ページを捲るスピードは早くなった。 また、小池真理子の小説を読んでみたいと思える一冊。

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2014/01/15

初、小池真理子さん。95年直木賞受賞。恋愛小説のようなミステリーのようなこの作品。 とても魅力的な男女3人の不思議な関係。 普通の大学生が人を殺害してしまうまでに至る流れは、学生運動の頃の時代を背景にドラマチックな世界なのだけれど、女性である主人公の心の動きは40年前が舞台であっ...

初、小池真理子さん。95年直木賞受賞。恋愛小説のようなミステリーのようなこの作品。 とても魅力的な男女3人の不思議な関係。 普通の大学生が人を殺害してしまうまでに至る流れは、学生運動の頃の時代を背景にドラマチックな世界なのだけれど、女性である主人公の心の動きは40年前が舞台であっても、私たちがかわらず共感できるもの。それは『恋』だから。 400ページも読んでから、衝撃的な告白があり鳥肌が立ち、結末はやるせないけど感動的でした。

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2014/01/11

こんなにも続きが気になってハラハラして重くて…恋というタイトルだけど、ただの恋愛小説では全然ない。 前半は、信太郎と雛子さんとふぅちゃんの様子を、見てはいけないものを見るようなドキドキがあって。微笑ましくもあり羨ましくもあり。 でも、大久保が現れてからは、ずっと胸が苦しかった。3...

こんなにも続きが気になってハラハラして重くて…恋というタイトルだけど、ただの恋愛小説では全然ない。 前半は、信太郎と雛子さんとふぅちゃんの様子を、見てはいけないものを見るようなドキドキがあって。微笑ましくもあり羨ましくもあり。 でも、大久保が現れてからは、ずっと胸が苦しかった。3人のうち誰を見ててもつらかったな… 温泉宿で明かされた2人の秘密。 信太郎と雛子を見守るマルメロの木。 3人はやっぱり繋がっているとわからせてくれたラスト。 映画を見ているようでした。

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2014/01/06

対になった、完成型の恋に、 深く恋をした。 ある点では傍観者でいながら、ある点では交わり合う関係。 どんな形であれ、美しいものをただ美しいと捉え、それを深く愛で、溶け込む。それはとても幸福なこと。 でも、一方でその世界に入り込むほど、些細なことで嫉妬や憎悪、怒りを感じてしまう...

対になった、完成型の恋に、 深く恋をした。 ある点では傍観者でいながら、ある点では交わり合う関係。 どんな形であれ、美しいものをただ美しいと捉え、それを深く愛で、溶け込む。それはとても幸福なこと。 でも、一方でその世界に入り込むほど、些細なことで嫉妬や憎悪、怒りを感じてしまう。 主人公の語る情景が目に浮かぶほど、鮮やかで燃えるような文章。クライマックスに向けて駆り立てられる感情が伝わってくる作品。

Posted byブクログ

2014/01/06

第114回直木賞受賞作品。この度ドラマ化に伴い読んでみた。主人公・布美子と信太郎・雛子夫婦、3人を中心に倒錯した恋愛が繰り広げられてひたすら慄き、嫌な気分になりながらも一気に読んだ。読めば読むほどどうして布美子はこんな凄惨な殺人事件を起こしてしまったかと疑問になるのだけど 後半に...

第114回直木賞受賞作品。この度ドラマ化に伴い読んでみた。主人公・布美子と信太郎・雛子夫婦、3人を中心に倒錯した恋愛が繰り広げられてひたすら慄き、嫌な気分になりながらも一気に読んだ。読めば読むほどどうして布美子はこんな凄惨な殺人事件を起こしてしまったかと疑問になるのだけど 後半に発覚する思わぬ真相と共になるほど!と納得させられる。異世界の話なので共感は到底できないが 不気味なほどの激しい恋愛の果てに起こった狂気の沙汰のはずがラストに言いようのない穏やかさがあって不思議な安堵感を得られる。読後感は悪くない。

Posted byブクログ