夜の蝉 の商品レビュー
2作目にしてますます磨きがかかった円紫さんシリーズ。 落語や俳句に対する深い知識と、「日常の謎」との関連付けが絶妙で、非常に上質な世界感です。登場人物たちの個性の描き方も繊細で、ミステリーとしてだけではなく、文学小説としても楽しめる作品だと思います。
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「私と円紫さん」シリーズの第2作とのこと。初夏から梅雨、そして盛夏のころが舞台となる。 前作とのいちばん大きな違いはといえば、物語の世界の規模が主人公を「軸」にぐっと狭まり、そのかわりより深くなったことだろうか。前作ではホームズとワトソンのようであった「円紫さん」と「私」の関係...
「私と円紫さん」シリーズの第2作とのこと。初夏から梅雨、そして盛夏のころが舞台となる。 前作とのいちばん大きな違いはといえば、物語の世界の規模が主人公を「軸」にぐっと狭まり、そのかわりより深くなったことだろうか。前作ではホームズとワトソンのようであった「円紫さん」と「私」の関係も、本作では主役はあくまでも「私」、「円紫さん」は謎解きの指南役といった役どころで一歩引いたかたちに収まっているように感じられる。その点、読後の印象も、ミステリよりは人情噺的な色合いを強く受ける。 読むことで感じるある種の生々しさは、前作よりも一段と「私」の内面に触れていることから生じるたぐいのものだろう。当然、その余韻もまた変わる。それは蝉しぐれのように、いつまでもシーンと頭の中に残響する。
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このふたりは言わば『謎解き仲間』でしょうか。 http://feelingbooks.blog56.fc2.com/blog-entry-891.html
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3編とも、謎の内容もさることながら、その謎が生まれるまでの物語の流れや、登場人物のやりとりなどがおもしろく楽しめました。「空飛ぶ馬」よりも1編が長いので、ゆったり楽しめたのが大きかったかも。
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本を呼吸するように読み、落語などを愛する 国文科の学生である「私」。 その「私」を取り巻く、二人の友人や、美人の姉。 彼女たちがふと出会ったささやかな不思議を 落語家・春桜亭円紫は鮮やかに解き明かす。 魅力的な登場人物たちの人間模様と、 その中で少しずつ変化していく「...
本を呼吸するように読み、落語などを愛する 国文科の学生である「私」。 その「私」を取り巻く、二人の友人や、美人の姉。 彼女たちがふと出会ったささやかな不思議を 落語家・春桜亭円紫は鮮やかに解き明かす。 魅力的な登場人物たちの人間模様と、 その中で少しずつ変化していく「私」の内面が やわらかな文体によって巧みに描かれる。 北村薫の第二作品集。 処女短編集「空飛ぶ馬」はずいぶん前に読んで、 つまらなくはなかったのだがあまり印象に残っておらず、 北村薫の作品は今まで手にとってこなかったのだが、 「空飛ぶ馬」を読んだときより自分が成長したのか、 今回この「夜の蝉」を読んで、 独特の文体がかもし出す雰囲気の虜となってしまった。 これといって派手ではないシーンが 実にやわらかな文体によって描かれ、 ゆるやかに進んでいく優しい物語。 その中で描かれるのは、友人の結婚や、 どことなく心理的な隔たりを感じていた姉との和解、 そしてそういった出来事を通して かすかに、だが確実に変化していく「私」の内面である。 決して派手ではない。 派手ではないが、優しく心が包み込まれるような、 そんな静かな感動が味わえる。 また、やわらかな文体によって包まれているが、 隠れているものは硬質なものであって、 文体をなぞっていてたまに直に伝わってくる それらの硬い感触がスリリングでもある。 ミステリとしての構成が一番綺麗なのは 真ん中に収録されている「六月の花嫁」だろうが、 「朧夜の底」「夜の蝉」も決して外せない。 自分では決して書けないであろう文章が 新鮮な驚きをもたらしてくれる、 個人的にはとても大事にしたい作品。
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推理小説というより文学。文学すぎてわからないところも多々あったけど、またゆっくり読み返したい。まだまだこの円紫さんと私シリーズは続くみたいなので先が楽しみ。
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再読。「2012柳家三三で北村薫。」への準備完了。 「夜の蝉」の姉とのところを読んでいたら、涙が止まらなくて困った。先日久しぶりに姉と遊んだからかな?小さい時から「…おねえちゃん」とは呼んでないけど。
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円紫さんと私シリーズの第2作。 どんどんこのシリーズにのめりこみそうに感じた。肌に合った感じがする。 「六月の花嫁」が良い。”リスのようなもの”。この言葉を選択する感覚が素晴らしい。
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ミステリーというカテゴリーに入れるのか相応しいのか。 日常の不思議な疑問を解決していく傍ら、機微の効いた小話が読んだ後爽やかな気持ちにさせてくれる。 3短編のうち、3つ目「夜の蝉」は、姉妹の気持ちを描いていたが、姉が自分を「姉」と自覚するときがテーマ。 妹というのは多分に恵まれて...
ミステリーというカテゴリーに入れるのか相応しいのか。 日常の不思議な疑問を解決していく傍ら、機微の効いた小話が読んだ後爽やかな気持ちにさせてくれる。 3短編のうち、3つ目「夜の蝉」は、姉妹の気持ちを描いていたが、姉が自分を「姉」と自覚するときがテーマ。 妹というのは多分に恵まれているものだ。いつか子供にも読ませてみたい。
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推理作家賞をとった作品。読み始めるとなに?!っていう感じ 自分の中では推理=事件(殺人)というイメージが確立されている。 前半で睡魔に負けてしまったが、がんばって読んでいくとなんとなくおもしろくなってきた。 登場する人物の性格がいいのかな・・・ 朧夜の底・・・こういう犯罪があるのか?!少し嫌な気分になった。 六月の花嫁・・・友人の誤魔化し。 一つの間違い(嘘)から罪を重ねるパターンかな 犯罪ではないのでゆるせる。(上から目線) 夜の蝉・・・遠い存在の姉。そんなことは自分が作っていたってことかな 二人での旅行は・・・・どういう意図から・・いろいろ想像できる。 (いろいろ=2つだが)
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