半島を出よ(下) の商品レビュー
経済が崩壊し、飢えが蔓延して、金正日体制もいつ崩壊するかわからないという状態で、地獄のような政治犯収容所には数十万人がとらえられていた。国際的な信用はゼロに等しく、核による脅しがなければ、外交の舞台にも立てない。 国民の7割が飢えに苦しむような国家をさ、儒教の教えを上手に使ってね...
経済が崩壊し、飢えが蔓延して、金正日体制もいつ崩壊するかわからないという状態で、地獄のような政治犯収容所には数十万人がとらえられていた。国際的な信用はゼロに等しく、核による脅しがなければ、外交の舞台にも立てない。 国民の7割が飢えに苦しむような国家をさ、儒教の教えを上手に使ってね、情報を操作して、反抗するやつらを殺して、外国からかねをせびってさ、なんとか切り盛りしていきたわけだから、吐き気がするけど、ある意味プロ中のプロだよ。政治というのは結局資源配分につきるわけだから。宣伝だって、得意中の得意。北朝鮮の体制讃美というのは実に洗練されている。 退廃は鬼や悪魔ののようなもので、実際に目で見ることはできず触れることもできない。だが誰の心にも簡単に住み着く。 北朝鮮では殺人より自殺の方が罪が重い。 孤独に勝たないといけません。 ナチスの収容所では、反抗したのではなく、発言しただけで殺されたユダヤ人がいた。
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出たときから気になっていて、読みたいなあ、と思っていたら、図書館で上下巻そろって並んでいたので借りてみました。 2011年、経済の破綻した日本は、アメリカからも見放され、国際的に孤立。 失業率も高く、ホームレスが急増している。 そんな中、福岡ドームに9人の北朝鮮特殊部隊の...
出たときから気になっていて、読みたいなあ、と思っていたら、図書館で上下巻そろって並んでいたので借りてみました。 2011年、経済の破綻した日本は、アメリカからも見放され、国際的に孤立。 失業率も高く、ホームレスが急増している。 そんな中、福岡ドームに9人の北朝鮮特殊部隊の隊員が現れ、北朝鮮から脱出してきた反乱軍だと名乗り、3万人の観客を人質に日本政府に要求をつきつける。そして、――というお話。 荒唐無稽な話のはずなのに、ドキュメンタリーのようなリアルさ。 圧倒的な情報量にまるめこまれているような気がしつつもひきこまれてしまうパワフルさ。 刺激が強くて、読んでいて精神が摩耗していく感じは、「コインロッカー・ベイビーズ」などと一緒。 気分が悪くなるような描写も多い。 それでも、がーっと読んでしまいました。 今、同じようなことが起きたら、日本はどうなるんだろう? と思わずにはいられない。 そんなパワーに満ちた本です。
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後半は、圧倒的な北朝鮮の軍のバイオレンスから、その中の人間模様を描く。そして対抗する軍団としてイシハラのもとに集まったおかしな連中。この連中が、それぞれ爆薬、毒虫、ブーメラン、配管などのスペシャリストでコリョの軍隊たちを倒そうと画策する。巨大な悪とそれを打倒するヒーロー一見すると...
後半は、圧倒的な北朝鮮の軍のバイオレンスから、その中の人間模様を描く。そして対抗する軍団としてイシハラのもとに集まったおかしな連中。この連中が、それぞれ爆薬、毒虫、ブーメラン、配管などのスペシャリストでコリョの軍隊たちを倒そうと画策する。巨大な悪とそれを打倒するヒーロー一見するとそんな活劇にも見えるが、どちらもヒールだ。ここでまた、ホテルを崩壊させる爆薬をしかけている時にコリョの軍隊に嗅ぎつけられ戦闘が始まる、このバイオレンス描写、思わず気分を害した。村上龍はあとがきで、こんなもの書けるわけがない、でも書かなければ始まらないと思いながら最後まで描き切ったらしい。確かに壮大で相当な資料の読み込み技量がないと書けないものだし、時代の流れでナーバスな時でもあったろう。だが、この作品をに漂う村上龍の不安と疑念がさらにこの小説を魅力的なものにしていることはまがうことの無き事実である。
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ずっと読みたかった村上龍の長編「半島を出よ」を読みました。 上下合計900ページ以上の大作で、読み終えるのに1ヶ月以上かかってしまいまして…。 読書後の感想故、ネタバレを含みますのでご注意を。 これは凄い小説でした。財政が破綻した日本。それに呼応するようにアメリカの日米同盟重...
ずっと読みたかった村上龍の長編「半島を出よ」を読みました。 上下合計900ページ以上の大作で、読み終えるのに1ヶ月以上かかってしまいまして…。 読書後の感想故、ネタバレを含みますのでご注意を。 これは凄い小説でした。財政が破綻した日本。それに呼応するようにアメリカの日米同盟重視路線の転換など、話の設定が非常に緻密で、世界の情勢を含めて本当に事件が起こったとしても何の不思議もないほどリアルです。何より福岡が反乱軍に占拠される。というのがとても非日常的であり、受け入れがたい事実です。そんな受け入れがたい事実もこれは起こりえるなと思えてしまうので恐ろしい。 何もできにない日本政府に対し、世間一般でいう「普通」に生きられなかった少年達が、自由な意志で立ち上がり未曾有の国厄に挑むという設定が普通の勧善懲悪の物語と違うところで凄い。圧倒的な恐怖の中で自分の本当の姿や意思に気がつく様は、個性が消えた昨今の若者に対する強烈な警鐘になっています。 また、厳しい思想統制下での北朝鮮の人間の心理描写が非常に緻密です。人間がいかに凶器となっていくか。そして、凶器となった心にある僅かな隙が人としての本能を再起させてしまう様は、非常に重たい内容ですが読み応えがあります。 最初は、まったくどういった話なのかを知らずに読み始め、かなり読み辛い部分もありましたが、「北朝鮮に福岡が占拠される。」という設定が見えてきたあたりからは一気に小説の世界に引きずりこまれました。途中で、登場人物にどこか覚えがあるなと思って調べたら、やはり村上龍の小説の「昭和歌謡大全集」に出てきた人物が、この物語に登場していたので驚きました。 村上龍の作品は色々読みましたが、その中でも最高傑作に入る部類だと思います。映画化したらさぞかし話題になる気はしますが、微妙な話題すぎて映像として大衆に公けにするのは不可能なんではないかなと思います。 そうとう重たい作品で、人を選びそうですがこれはお勧めです。 ★★★★★(最高傑作)
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下巻ではいよいよ本格的な戦闘に。 戦闘というか。 力ない者たちが各々の得意分野を生かして ゲリラ的に戦う様は爽快でたまらない。 上巻ではほとんど名前を覚えられなかったものの 下巻まで活躍するキャラは限られているので 目次まで戻ることなくw一気に読み進められちゃいます。 ...
下巻ではいよいよ本格的な戦闘に。 戦闘というか。 力ない者たちが各々の得意分野を生かして ゲリラ的に戦う様は爽快でたまらない。 上巻ではほとんど名前を覚えられなかったものの 下巻まで活躍するキャラは限られているので 目次まで戻ることなくw一気に読み進められちゃいます。 村上龍ってちょっと敬遠していたんですが おもしろい作品でした。
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この小説が読み疲れるのは、やや冗長に感じる説明的な部分(タケイがコレクションの武器を説明するところとか、銃撃戦での負傷状態の描写とか)のもつ、過剰に書き込まれたディテールのせいだけではないような気がする。この小説の過剰なディテール描写はは想像力を規制するというよりはむしろ想像力を...
この小説が読み疲れるのは、やや冗長に感じる説明的な部分(タケイがコレクションの武器を説明するところとか、銃撃戦での負傷状態の描写とか)のもつ、過剰に書き込まれたディテールのせいだけではないような気がする。この小説の過剰なディテール描写はは想像力を規制するというよりはむしろ想像力を掻き立てる。 むしろ疲労感の源は、登場人物ひとりひとりのあまりにも異なる人生をまざまざと見せつけられたためではないだろうか? ひとりひとりの人間は違う。その至極当然な事実が、どうして自分の周りの現実の世界が何事も無いかのように平穏に見えるのか、ということへの不安として自分の内で露になる。そのストレスに苛まれていたのだろう。 その何だか絶望的な世界の中で、イシハラの最後の台詞「それは、お前の自由だ」という言葉に一条の光明を見た気がした。 00年代の稀有な小説だと思う。
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過激でした。相変わらず。村上龍作品。 最初ね。 怖いの。すごく。 北朝鮮がまず、福岡ドームを占拠しちゃって・・・。 って、話。で、進んでいくんだけど。 福岡ドーム占拠する前に。 日本の現状が書かれているんだけど。 そこで、もう、怖い!!! 読み進められないくらい・・・。なんだ。...
過激でした。相変わらず。村上龍作品。 最初ね。 怖いの。すごく。 北朝鮮がまず、福岡ドームを占拠しちゃって・・・。 って、話。で、進んでいくんだけど。 福岡ドーム占拠する前に。 日本の現状が書かれているんだけど。 そこで、もう、怖い!!! 読み進められないくらい・・・。なんだ。 ほんの、数年先の設定でよ。 2008?10?頃だっけ? ホームレスの数。 銀行が預金封鎖しちゃって。 アメリカが世界の警察から降りて。 そして、日本のとるべき位置。 日本が外国からというか、アジアでどう見られているか? ・・・? ほんとにありそうで、おこりそうで。 不安が、つのるだけ。だった。 でも、ね。読み進めていくと。 《覚悟!》 覚悟してくるの。 覚悟が沸いてくる。 この現状。に。日本の立場に。ね。 認めてしまう。と、いうのかな? こういう気持ち表現するのって。 そして、立ち上がっていくのが。 (これも、下巻の途中というかほとんど終わりくらいからだから・・・。お・そ・い。んだけど。) シノハラグループ。 立ち上がってって書いたけど。 立ち上がるとか、団結とか、使命とか。 って熱いものを持ち合わせて動いたんじゃないんだ。彼ら。 チーム?グループとも呼べない。若者の集団。 彼らが。?WHY? 突き動かしたものは??? それぞれの立場。 政府。 北朝鮮の将校たち。 福岡市の職員。 なんていったけ?捕らえられた人々。 新聞記者。 病院関係者。 戦争を知っているもの。そうでないもの。 周りの家族。 すべての、登場人物が、細かく書かれているので。 すんなりとは、読み進められない。 困難。よ、読むの。 感情もそれぞれに入っちゃう・・・。しね。 告げ口した形になった。福岡市職員の母子家庭母の気持ちはわかります。 あたし。=男の人にはキットわかんない。よね。 あの、でも、若者のグループ。 シノハラグループ。 今の社会からは、はみ出たグループ。 の、力。 自分のため。に。 自分しかできないこと。を。 淡々に、と、した。の。 結果とか、評価とか、考えてない。よね。 もう一度。 今の社会って? 私の考え方って? 自問に入る。 ・・・。自答が響いてこない。 ・・・。もう一回読まないと。いけないかしら? あたし。 2005年の夏読んだ本でした。
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今回の書評は、この作品の核心部について触れているため、これからこの作品を読もうと考えている人には薦められない。すでに、読んだ人や別に読む気のない人以外はあえて触れないほうがいい、と思う。 ぼくが学生時代に序章だけ書いて放置している 「ZEAL(ゼアル)」というタイトルの小説の...
今回の書評は、この作品の核心部について触れているため、これからこの作品を読もうと考えている人には薦められない。すでに、読んだ人や別に読む気のない人以外はあえて触れないほうがいい、と思う。 ぼくが学生時代に序章だけ書いて放置している 「ZEAL(ゼアル)」というタイトルの小説のクライマックスで、ぼくの母校で小説の舞台となる福岡大学の、一番シンボリックな建物である「文系センター」を倒壊させるつもりでいた。 この「文系センター」は16階建で2階から15階までにゼミ棟と称して、教授たちのプライベートルームがあり、最上階には七隈を一望するスカイラウンジが設けられている。当時の福大では比較的ま新しい建物だった。 そして、1階は4分の3ぐらいが吹き抜けとなっていて、何本かの柱で支えられているように見えたので、その柱を爆発物かなにかで取り除けば簡単に倒壊するんじゃないかなあ、とぼくはそこを通るときいつもそんな想像をしていた。 だから、教授たちが集うこのシンボリックな建物は、ぼくが生まれるちょうど1年前に起こった東大安田講堂事件のように、大学のシンボリックな建物を血気盛んな過激な学生たちによって、平成のこの時代に破壊して、ぼくの小説が大団円を迎えさせるにはちょうどよかったのである。 「半島を出よ」を読み終えて、村上龍の創造力が、当たり前だがぼくの規模をはるかに超えていたことに圧倒されると同時に、ぼくが規模は小さいが倒壊しようとしたシンボリックな建造物を、同様に(それもぼくが住む福岡のシンボリックな建物だ)倒壊してくれたことに、すごく親近感と満足感を覚えた。 村上龍は「半島を出よ」で、福岡ドームとシーホークホテルを朝鮮軍によって占拠させ、福岡及び九州を支配下に置くなどという荒唐無稽なことをさらっとやったと思ったら、クライマックスではそのシーホークホテルを17、8歳の少年たちの手で倒壊させてしまったのである。 だが、この作品がいわゆる近未来シュミレーションの類でまとめるのは少し違う気がする。村上龍の作品は、これまでどれもとても「いたたまれない」「切ない」ラストで、すごく「もどかしい」感覚に陥るものが多かった。だから、この作品の意外なハッピーエンドに違和感と同時にすごく共感を覚えた。 「半島を出よ」のラストでシーホークホテルが倒壊するという未曾有のラストを描きながら、結果的にそれによって朝鮮支配から解放され、日本を含む世界のパワーバランスが安定するという皮肉にもポジティブなエピローグでまとめられている。 さらには福岡が日本という国からの独立採算の道へと進んでいこうとする。それは、朝鮮軍から福岡へというインディペンデントの連鎖にも見える。また、生き残った北朝鮮のふたりはおそらくこれまでよりは幸せに生き続けるのだろう。そして、実行犯の少年たちもイシハラもこれまでとなんら変わりない日常の中で生きていくのだろう。彼らは、どちらも日本で起こったこの事件によって、孤立から独立へ、人間的に昇華したのではないかと考えられなくもない。 村上龍は「半島を出よ」のあとがきで、「『昭和歌謡大全集』という小説の登場人物の生き残りとその新しい仲間が福岡でテロを計画しているが、それより先に北朝鮮のコマンドが福岡を制圧してしまう・・・」と書き出している。 少年犯罪などに加担しもしくは自ら実行し、社会から排除されたてきた少年たちが、同じような少年期、青年期を過ごして大人になったイシハラたちのもとに集う中で、国際的に孤立した国の兵士たちによって自分たちの住む場所をまた追い立てられる状況で、その抵抗と解放が結果的に兵士たちの孤立からの解放と、福岡の日本からの解放と、三重の解放をやってのけた、という解釈がぼくにはもっともしっくりくる。 だから「半島を出よ」は、贖罪の中であえて生きていくことを選んだ人々の物語だ。 ところで、この作品も映画化がすすんでいるらしいが、日本ではなく韓国で進んでいることにとても期待が持てる。村上龍もあとがきで述懐しているように、この作品には北朝鮮側の視点が不可欠だったと思う。でなければただの勧善懲悪の一方的な話で終わってしまっただろう。だからこそ、この作品を映画化するには朝鮮人の視点が必要になるのは当然であり、韓国人の手で製作されることにとても興味深く感じるのだ。
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がーーー時間かかった。 これネタバレなしにどうレビュー書こうか。 のっとられそうな九州。 北朝鮮からは十二万の後方部隊も出発する。 国は相変わらずそんな事態にも関わらず、 何の作戦も持ち合わせず、傍観するに留まる状態でいた。
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学部ゼミ読書会1月用に読んだ本。 最初は何だかカタカナ名前が多かったり、難しかったり、読みづらくて読む気にもならなかったが、どんどん勢いに飲まれていった。 経済状況が悪化した日本の状況が、もしかしたらコウなるかも知れないと思ってしまい、怖かった。 イシハラの奇妙さが笑えたりしつつ...
学部ゼミ読書会1月用に読んだ本。 最初は何だかカタカナ名前が多かったり、難しかったり、読みづらくて読む気にもならなかったが、どんどん勢いに飲まれていった。 経済状況が悪化した日本の状況が、もしかしたらコウなるかも知れないと思ってしまい、怖かった。 イシハラの奇妙さが笑えたりしつつ、思ったより下巻にすぐ進みたくなった。 そして、2009年にアメリカがアジアを歴訪した際に、韓国と中国には宿泊したが、日本には数時間の滞在だった、という描写に、この人はよく分析している、と驚いた。
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