レキシントンの幽霊 の商品レビュー
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僕が本当に怖いのと思うのは、青木のような人間の言い分を無批判に受け入れて、そのまま信じてしまう連中です。自分では何も生み出さず、何も理解していないくせに、口当たりの良い、受け入れやすい他人の意見に踊らされて集団で行動する連中です。沈黙 目に見えるものが存在せず、目に見えないものが存在する場所に。めくらやなぎと、眠る女 どの話も一見怖い話。でも、最後まで読んでみると、少しの希望が見えてくるような短編集。 短いからこその説得力みたいなものがある。
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「沈黙」が好きだ。真に迫るものがある。何かを与えられるではなく、自分のなかに既にある何かの輪郭を見出すのを手助けしてくれるような感じだ。
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表題作のレキシントンの幽霊については欧州怪談っぽい背筋を嫌な汗が通るような感覚は味わえたもののそれ以上のメタファーのようなものは感じられなかった。心に残った作品についての感想を書く。 沈黙 青木への憎悪の描写が生々しすぎて、村上春樹が幼少期もしくは大人になってから出会った明確な...
表題作のレキシントンの幽霊については欧州怪談っぽい背筋を嫌な汗が通るような感覚は味わえたもののそれ以上のメタファーのようなものは感じられなかった。心に残った作品についての感想を書く。 沈黙 青木への憎悪の描写が生々しすぎて、村上春樹が幼少期もしくは大人になってから出会った明確なモデルがいると想像。ノルウェイの森でレイコさんが家庭教師をしていた虚言癖の女の子が秘めていた悪意も同じ類。悪意そのものより悪意に染められて無思考に流される周囲にこそ問題があるというテーマは村上の中で繰り返し問われているテーマなのだろう。地下鉄サリン事件を取材して作られたアンダーグラウンドなどにもつながっていく。 氷男 氷男の愛の言葉は南極に行ってもなお、嘘偽りがないからこそ、なお一層かなしい。 トニー滝谷 ファッションに疎すぎて、イタリアのメゾンブランドも南青山の雰囲気もわからないけど面白かった。あまりにも美しい服を目にして涙する感情は絵とか音楽を聴いて、涙するのとはまた少し違うんだろうな。 めくらやなぎと、眠る女 ノルウェイの森の下敷きとだけあって一番好きな雰囲気。目には見えないけどそこにあるもの。目には見えるけどそこにないもの。現実とは離れたところにある物語の強さを信じている村上だから書けることだろう。 一旦損なわれたものは二度と戻らないという哀しさを登場人物の過去をだらだら語らず、短編という形で伝えるのは凄い。
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7つの短編。緑色の獣と沈黙、7番目の男が印象的。 トニー滝谷 人を失い、ものを失うという話の進み方がより喪失感を重くさせた。 恐怖を取り戻し、生まれ変わった男。逃げることは何かを失う事。恐怖は波と人生と親友を奪った。
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人は本来皆孤独なのに 共存社会に慣れすぎて 孤独であることを忘れている。 だから喪失したときにに孤独感にひどく襲われる。 そのためには孤独を自覚し生きていかなくてはいけないのだな。 全ての作品で喪失について考えさせられる。 特に「レキシントンの幽霊」「トニー滝谷」「七番目の男...
人は本来皆孤独なのに 共存社会に慣れすぎて 孤独であることを忘れている。 だから喪失したときにに孤独感にひどく襲われる。 そのためには孤独を自覚し生きていかなくてはいけないのだな。 全ての作品で喪失について考えさせられる。 特に「レキシントンの幽霊」「トニー滝谷」「七番目の男」あたりかな。 他人の喪失の姿から「デフォルトとしての孤独」を認識させてくれる本であるように思う。 そして大切な人を失ったときに悔いのないくらい 日頃から愛と感謝を伝えておかなくてはな。
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「氷男」は村上春樹氏の中で一番好きだな。 「7番目の男」は高校の教科書で読んで惹かれて再読。村上春樹氏はわたしは短編派です
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「レキシントンの幽霊」 アメリカの古い屋敷で体験した奇妙な出来事。もっと怖いことが起こるのかと思っていたが、読んでみるとそうでもなかった。 目を見張るような立派なレコードコレクション。 大量の本やレコードを見ると、それらが生き物のように感じられることがある。 そのあとの「緑色の獣...
「レキシントンの幽霊」 アメリカの古い屋敷で体験した奇妙な出来事。もっと怖いことが起こるのかと思っていたが、読んでみるとそうでもなかった。 目を見張るような立派なレコードコレクション。 大量の本やレコードを見ると、それらが生き物のように感じられることがある。 そのあとの「緑色の獣」「沈黙」「氷男」の方が怖かった。 幽霊よりも、人の心の奥底に潜んでいる目に見えないものの方が、無限の怖さがあるということに気づいた。 「トニー滝谷」と「めくらやなぎと、眠る女」は、長編小説の欠片のよう。 村上春樹は短編小説にもさまざまな発見があって面白い。
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すごく好きな本だ。すっと心に冷気が漂うような、なにかを急かされているような、胸がざわつく感じがとてもよかった。 『緑色の獣』に惹きつけられた。おそらく自分の中にこの行動心理に共感するところがあるからなんだろうけど、それを言うのは憚られるから黙っておきたい。 『七番目の男』は、ざわ...
すごく好きな本だ。すっと心に冷気が漂うような、なにかを急かされているような、胸がざわつく感じがとてもよかった。 『緑色の獣』に惹きつけられた。おそらく自分の中にこの行動心理に共感するところがあるからなんだろうけど、それを言うのは憚られるから黙っておきたい。 『七番目の男』は、ざわつきながらも最後は穏やかに収束した感じがしてほっとした。自分の罪を責められないというのは、どんなに苦しいだろう。責める人、責められる人という構図って、実は共有する相手がいるというだけで、孤独からは逃れるんだな…。それができないことは、深くつらいことだ。 『めくらやなぎと、眠る女』の、溶けたチョコレートについての一文が刺さった。目の前で失われたものがあるのに、刹那な酔狂でごまかしたり、それから目を逸らしたりすることで、本当になにもかもが戻らなくなってしまうということを忠告された気がする。渦中にいる私たちは、チョコレートが溶けたことすらも愉快な話題にしてしまうんだろうな…。それが刹那だとわかってるのに。 なんだか色々と考え込んだ。
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氷男 沈黙 7番目の男 この三遍は特に面白かった。 短い文章の中に登場人物の繊細な心の移り変わりが読んでいて面白かった。
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そんなことしたって無駄よ、と私は思った。何を見たって役には立たないわ。お前には何も言えない。お前には何もできない。お前の存在はもうすっかりぜんぶ終わってしまったのよ。
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