坂の上の雲 新装版(八) の商品レビュー
司馬遼太郎の代表作『坂の上の雲』最終章。 全巻を読み終え、日露戦争の結末までを知ることができたのは本当に勉強になった。ロシアの植民地拡大政策により期せずして国防戦争になった日本が、全国民を巻き込んで総動員で勝ち取った勝利は心からすごいと思う。最後の日本海海戦は劇的ではあったが、...
司馬遼太郎の代表作『坂の上の雲』最終章。 全巻を読み終え、日露戦争の結末までを知ることができたのは本当に勉強になった。ロシアの植民地拡大政策により期せずして国防戦争になった日本が、全国民を巻き込んで総動員で勝ち取った勝利は心からすごいと思う。最後の日本海海戦は劇的ではあったが、それまでに至る状況からすれば必須なことでもあった。 坂の上の雲をつかむかのように、日本人が行動していった青春期の日本が明治にはあったのかと思うと、すごく羨ましい気持ちにもなった。最近の風潮では明るい展望を持った若者なんて少数しかいないし、海外と比べたらすごく見劣る。色々な知識を蓄えて、将来役に立つ男になりたい。そんな心意気を忘れず、明るく生きていかなきゃ。星5つ。
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最後の対馬海戦のあたりは一気に読んだ。最後の解説にあった「平家物語」以来の「大叙事詩」との表現がぴったりの作品だと思う。全編を僕は宇多田ヒカルの曲とともに読んだ。曲の調べと登場人物の生き様が哀しくも響き合っていた。
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ドラマは見ていたし、「翔ぶが如く」とか読んで、司馬史観なるものを1%くらい把握したつもりで挑戦。 中学生の頃、すでに「名作なので読むべき」と誰かが言ってたけど、完結は意外にも1972年。まだ40年しか経ってない。 価値転換したての「明治期の日本」が、西欧列強と肩を並べるまでに勃興し、その成果として日露戦争に勝利するまでがテーマ。 主人公たる秋山好古、真之の兄弟、そして正岡子規から、「明治期の日本」の雰囲気みたいなものを追いつつ…というのが前半。 後半はすっかり軍事小説。日露戦争における両国の戦略・戦術を抑えつつ、日本が勝利に至るまでの過程を追う。 というわけで、いっそ別物だと思ってしまった方がすっきりする。 で、「明治期の日本」を要約すると、こんなことじゃないかと思う。 ・日本が目指すべき目標(列強へ追いつく)が明確にあった。 ・「国家」への帰属意識・参加意識が今よりはるかに強かった。 ・滑稽なまでの行動力を許容しうる空気があった。 この3つで日露戦争などという無謀な戦争に踏み切れたわけだし、結果見事に勝っちゃった。 個々の戦闘はおいといて、勝因はこんな感じじゃないかと。 ・プランニングが事前になされ、「どこまでやれば勝ちか」を知っていた。 ・国家としての限界を前線・後方ともに理解していた。 ・後方からの前線への容喙が、ロシアに比べて少なかった。 ということに基づいて人物・戦闘の描写が綴られていく。 「全体としてこういうことでそ?」というのがあるので、わりとさくさく読める。 とはいえ気になった点もある。小説だからかもしれないけど。 ・善玉・悪玉が明確すぎて、本当?と思うことがしばしば。 ・デウス・エクス・マキナ的な展開が目立つ。そこまで技術って万能? ・この成功体験による悪弊はなかったか。検証はいらないの? 「わかりやすさ」という意味で必要な描写・展開だったのかもしれないので、そこまで期待するのは酷かもしれない。 なんたって、ここまで総合的に描かれたものは他にないのだから。
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日露戦争は世界初の総力戦と言われているが、この時代の日本が、まさに外交・政略・軍事など全ての国力を長期的な視点を持って、同目的のため一丸となって進めていたという事実には驚愕せざるを得ない。まさに、国民国家全盛時代だからこそ為しえる業だったろう。 もちろん、あくまで同作品が「...
日露戦争は世界初の総力戦と言われているが、この時代の日本が、まさに外交・政略・軍事など全ての国力を長期的な視点を持って、同目的のため一丸となって進めていたという事実には驚愕せざるを得ない。まさに、国民国家全盛時代だからこそ為しえる業だったろう。 もちろん、あくまで同作品が「歴史小説」である以上、筆者の描写を全て真として受け入れることはできないが、作品の端々に散りばめられたリーダー論は普遍性を持っており、多くの経営者が推薦する小説だけあると感じた。社会の荒波に漕ぎ出した今は、この作品を読むには絶妙のタイミングだったと思う。
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坂の上の雲 の中で描かれた日露戦争。戦争という極限の中での日本人の姿を誇らしいと思った(戦争をする日本人がとではなく、困難に立ち向かうときの姿勢や考え方、性格のこと)。我々が日露戦争の時代と同じ日本人であるなら、信じることができるなら、未来は明るいと思う。 日露戦争の中で描かれた...
坂の上の雲 の中で描かれた日露戦争。戦争という極限の中での日本人の姿を誇らしいと思った(戦争をする日本人がとではなく、困難に立ち向かうときの姿勢や考え方、性格のこと)。我々が日露戦争の時代と同じ日本人であるなら、信じることができるなら、未来は明るいと思う。 日露戦争の中で描かれた人、組織は、まさに現代の縮図。極限で描かれた姿は、大切なこと(良いことも、悪いことも)を伝えてくれる。じっくりと読み返してみたい。
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随所で感動したりひどいものだと思ったりすることはあっても感傷的になることはなかったが、雨の坂の最後の五行で泣いた。たった一言で文庫本八冊に及ぶ長編を見事に締めくくっている。 ……かれは数日うわごとを言いつづけた。すべて日露戦争当時のことばかりであり、かれの魂魄はかれをくるしめた満州の戦野をさまよいつづけているようであった。臨終近くなったとき、「鉄嶺」という地名がしきりに出た。やがて、 「奉天へ。ーー」 と、うめくように叫び、昭和五年十一月四日午前七時十分に没した。 ……
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初めての司馬作品。 日本が戦争に勝ったのではなく、ロシアが戦争に負けたのであり、そのことを省みなかった日本(陸軍)が、その後の日本の暴挙となってくというのが(司馬的史観に汚染されつつも)よくわかる作品でした。 旅順要塞攻略のあたりでは、作戦なき作戦のために多くの兵士が死にい...
初めての司馬作品。 日本が戦争に勝ったのではなく、ロシアが戦争に負けたのであり、そのことを省みなかった日本(陸軍)が、その後の日本の暴挙となってくというのが(司馬的史観に汚染されつつも)よくわかる作品でした。 旅順要塞攻略のあたりでは、作戦なき作戦のために多くの兵士が死にいたる場面は壮絶で、そのへんの理解を深めるためにも、乃木希典を描いた「殉死」も読んでみたい。
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8冊読み終わりました。読み始めたのが分からないくらいかかりました。日露戦争があっての今の日本があるように思いました。難しかったけれど読んでよかったと思ってます。
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長きにわたった鎖国から解き放たれ、否応なく欧米諸国の猛威に立たされた日本。愛する日本を列強から救うため、明治の志士たちが敢然と立ち向かう。 松山の3人の男たちの生きざまを通して、明治という激動の時代を書ききった大作。圧巻はその膨大な知識量と丹念な下調べである。細部にわたって史実に...
長きにわたった鎖国から解き放たれ、否応なく欧米諸国の猛威に立たされた日本。愛する日本を列強から救うため、明治の志士たちが敢然と立ち向かう。 松山の3人の男たちの生きざまを通して、明治という激動の時代を書ききった大作。圧巻はその膨大な知識量と丹念な下調べである。細部にわたって史実に忠実であるばかりでなく、物語のわずか一度しか登場しない人物さえ、その生い立ちやここに至る経緯までを記述。 調査と読書と思索と執筆とで10年を費やしたという作者のエネルギーには脱帽。 主題は「日本人とは何か」 諦観と、停滞に満ちた現代人にこそ、ぜひ読んでいただきたい本である。
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漸く読み終わった。 後半三分の一が、「あとがき」だったのに、まず度肝を抜かれた。 これは、以前の版(六巻組)のあとがきを集成したものだったようだ。 この「あとがき」が、強烈なメッセージを放っているように思われた。 あとがきは、山県有朋や寺内正毅、乃木希典が、藩閥によって出世し...
漸く読み終わった。 後半三分の一が、「あとがき」だったのに、まず度肝を抜かれた。 これは、以前の版(六巻組)のあとがきを集成したものだったようだ。 この「あとがき」が、強烈なメッセージを放っているように思われた。 あとがきは、山県有朋や寺内正毅、乃木希典が、藩閥によって出世したに過ぎない軍人・官僚と、痛烈に批判されている。 そして、彼らの、あいまいな「手柄」を糊塗するために、日露戦記が捻じ曲げられたと言う。 日露戦の真実が伝えられなかったために、その経験が太平洋戦争に生かされることがなかった、と。 知らなかったから、突き進んだのか。 払った犠牲の大きさに、後にはひけなくなったのか。 それとも、また別の事情か。 それを判断することは、容易にできそうにない。 この小説は初出がサンケイ新聞だったと聞いて、さらにびっくりした。 今の産経に、こんな小説が載るのは、ちょっと考えにくい気がするが・・・
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