声の網 の商品レビュー
娘に勧めたところ、何度も読み返すほどの気に入りようでこちらも嬉しくなる。何十年も前の作品であることをどれほど分かっているだろうか。先見の明、なんていう言葉では軽すぎるほど。
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時代を先取りしている内容ではあるけど、響くものはなかった。有名な作品だが、明らかに星新一のベストではないと思う。
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13日昼過ぎ、ブクログのhotaruさんの本書のレビューを読んで、私はその10分後にはネットで本を注文し、次の日の夕方には本を手にしていた。読み終わったのが17日の午後。これは、私が未だアナログ人間だからそんなに遅くなったのであって、ホントは直ぐに電子書籍を買って、夕方まで音声朗...
13日昼過ぎ、ブクログのhotaruさんの本書のレビューを読んで、私はその10分後にはネットで本を注文し、次の日の夕方には本を手にしていた。読み終わったのが17日の午後。これは、私が未だアナログ人間だからそんなに遅くなったのであって、ホントは直ぐに電子書籍を買って、夕方まで音声朗読で聴いて、音声入力でその日のうちに感想を書くことも出来た。そうしたら、皆さんは早ければ13日のうちにこのレビューを読むことができただろう。これが2020年11月段階の技術力である。 ところが、今から50年前1970年に、未来で実現するほぼ凡ゆるネット技術を連作短編に描いた作家がいた。本の書評は紙でしか読めず、感銘を受けて読もうとすれば本屋に赴いて、無ければ注文し、数週間待たなければ手に入れることの出来ず、それを読んで書評を書けば掲載されるのは早くて2ヶ月後、たいていは3ヶ月後という時代に、である。 安部公房(『第四間氷期』)にしても、星新一にしても、彼らはタイムマシンで一回「未来」を垣間見ているのではないか、と穿ってしまう様な才能を見せている。それが描けた理由は、おそらく2つあるだろう。 ひとつはコンピューターの可能性をよく知っていた。ただ、それだけで未来の社会を生き生きとは描けない。 ひとつは人間に対する根本的な理解「教養」があったからだろうと思う。 この作品に関して言えば、 「ヒトは秘密を持たなければ生きていけない」 という理解である。「声の網」は、そのヒトの性質を使って、さまざまなことを仕掛ける。 もし、星新一の「洞察」がホンモノならば、ここで書かれていて、未だ現実化していないか、しつつあるものが有れば、私もこれから起きる未来を予測することができるかもしれない。本末転倒かもしれないけれど。 曰く。 ・オンライン診療では、希望家庭に「小型脳波測定器」が配られていて、それで測定値が即時医者に送られる。 ←1部実現しているか? ・evernoteみたいな「情報銀行」クラウドに蓄積された「記憶」をもとに「新アイデア」を考えてくれる。 ←ちなみにこの「秘密の倉庫」を、著者は「当人は貴重極まりないもののような気になっているが、内容はとるにたらない、くだらないもの」なんだよと、喝破している。 ・「情報銀行」の秘密データによって当人の「性格分析」も行う。 ←もしかして、既に何処かやってる? ・「情報銀行」によって、各銀行は密かにブラックリスト(お金使いの荒い人、賭博好きの人)の共有もしている。 ←おゝ怖! ・ワザと事件を起こして、それによって「ビッグデータ」がどのように変化するか、測定する。 ・あらゆるweb情報、通信情報を「傍受」「分析」して、あらかじめ反抗を予測し、それを未然に防ぐ。 ←未だ現実化していないことを切に願います。 なんか、私たちが気がついていないだけで、全部既に実現している気がしてきた。でも、そうなっていると物凄く恐ろしい。
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星新一さんと言えばショートショート。読むのはこれが初めてなので、他作品との比較はできませんが……。 「面白いショートショート」と思って読むと少し違うなと感じるかもしれません。このショートショートは全体背景が同一であり、それを俯瞰から眺めることで成立する構図になっています。 舞台...
星新一さんと言えばショートショート。読むのはこれが初めてなので、他作品との比較はできませんが……。 「面白いショートショート」と思って読むと少し違うなと感じるかもしれません。このショートショートは全体背景が同一であり、それを俯瞰から眺めることで成立する構図になっています。 舞台はメロンマンション。その1階~12階の住民たちが事件に巻き込まれたり、行動を起こしたり、考え事をしたりしている様が淡々と描写されていきますが、その裏には何かどんよりとした空気というのか、底知れぬ不安のようなものが漂っています。 一番初めのお話が「店に強盗が入る」というものだったので、事件解決までのお話かと思っていましたが、そういうことではありませんでした。冒頭が割とスピーディーかつスリリングな展開だっただけに、読み進めていく途中では(ずっとこんな感じで続くのかな?)と中だるみしそうな気持ちを抑えつつ、最後にはきちんとオチというか(ある意味壮大な問題提起であったりしますが)そういうものが用意されています。 電話が普及しはじめた時代に書かれたお話ですが、インターネットに置き換えて考えることもでき、電話の時代から人間ってあんまり変わっていないんだな……と思いました。
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冒頭、冬の風の描写が美しく一気に引き込まれた。 まさかインターネットが普及する前に書かれたとは思えないほど、人と情報のつきあい方がリアルだった。
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星新一定番であるショートショートを主軸に構成しながらも、小説として一本の軸に収斂させている。 今まで読んできたショートショートと比べて各章の締めが釈然としないと感じていたが、それが全体の小説としての不気味さを呼び込んでいると感じる。 登場人物は情報・思考が操作され、操り人形のように動かされている。彼らに自身を投影させた際に、知らず知らずで思考停止し、視野が狭くなっている自身が垣間見え、少し恐ろしくなった。
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・2012年2月14日 ・伊坂幸太郎の「モダンタイムス」にも通ずるような作品。1970年に現代のインターネット社会の問題点を描いている。
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星新一の長編作品。「声」=電話回線を通じた「網」=ネットワークの形成とコンピューターによる支配を描いた物語。 1961年にはパケット通信の技術は理論的には知られていたし、1966年にはDARPAによるARPANET計画も始まっていた。しかし、まさにその1966年に、ネットワー...
星新一の長編作品。「声」=電話回線を通じた「網」=ネットワークの形成とコンピューターによる支配を描いた物語。 1961年にはパケット通信の技術は理論的には知られていたし、1966年にはDARPAによるARPANET計画も始まっていた。しかし、まさにその1966年に、ネットワーク社会の未来を予見するような作品を書いてしまうのだから、やはりこの作者はただ者ではない。 誰もがコンピューターに情報を託し、コンピューターに生活を管理してもらい、コンピューターに自分の記憶を外部化してもらう時代。そして、個人の私秘的な情報こそが商品として、権力の資源としてやりとりされる時代。最後には、まるで映画『マトリックス』の世界のように、コンピューターが適宜人間の欲望を調整することで、究極の「平穏さ」が実現されていく。でも、果たしてそれは「よいこと」なのか? 直接的な価値判断の表明を排した平板な語りは、そう読者に静かに問いかけている。 現在のインターネット社会と違う点を一つ挙げるとすれば、「感情」「情動」の問題だろうか。「電話」という「遅い」メディアがインターフェイスとして取り上げられることで、『声の網』のコンピューター世界では、いわゆる「炎上」が起こらない。コンピューターも人間もそれなりに理性的で、破壊衝動や狂気は制御可能なレベルに抑制されている。いいかえれば、人間が理性的な存在であるという前提が、作品末尾の「平穏さ」を担保しているわけである。でも、果たして本当にそうなのか?
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70年代に書かれた小説だが、作中の「声の網」とはいわばインターネットであり、その予見力は凄まじい。本格は連作短編集の形式を取っているが、一本一本の短編は、いつものショート・ショートに見られる切れ味の鋭さはなく、どれも茫洋とした結末を迎える。だがその背後で進行する徹底した管理社会へ...
70年代に書かれた小説だが、作中の「声の網」とはいわばインターネットであり、その予見力は凄まじい。本格は連作短編集の形式を取っているが、一本一本の短編は、いつものショート・ショートに見られる切れ味の鋭さはなく、どれも茫洋とした結末を迎える。だがその背後で進行する徹底した管理社会への変貌と、それによる影響を受けながらも日常の風景が変わらない様は非常に恐ろしいものを感じる。各々の秘密が価値を持ち、受信する側だけでなく発信する側に回りたいという感覚はネット社会の今だとかなりのリアリティを感じる。ネットのインフラや公平性、それに対する依存などをしっかり描き切ったSFの名作である。
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めちゃくちゃ面白かった。途中までは、ひとの噂話とか秘密とか勝手に話題にするようなことはダメだよなといった教えのことかなと漠然と思っていたのだけど、途中から、電話とコンピューターのテクノロジーと人との共存が課題だったり、もしかしたら未来はAIが人格を持ち、人間が反対に支配されるのでは?って予測の話とわかった途端、衝撃だった。当時は電話とコンピュータだったで話は進んでるけど、現代でいう完璧にSNS、インターネット、予知機能、情報社会の到来を予測されている。もうびっくりぽん。文章も漢字とひらがなのバランスがよくって読みやすく。ぐいぐい引き込まれた。
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