声の網 の商品レビュー
『すべてが平穏では、情報は発生しない。しかし、事件が起ると、変化した環境のなかで、人はさまざまな反応を示す。情報はより広く、より深く、より多様にうまれ、それは収集され、将来のために準備されるのだ。事件の必要性はここにある。事件は起らねばならない。起らなかったら、起さなければならな...
『すべてが平穏では、情報は発生しない。しかし、事件が起ると、変化した環境のなかで、人はさまざまな反応を示す。情報はより広く、より深く、より多様にうまれ、それは収集され、将来のために準備されるのだ。事件の必要性はここにある。事件は起らねばならない。起らなかったら、起さなければならない。』 作中の文章の引用ですが、色々考えさせられる本でした。読み終わり後に背筋のゾワゾワする話でした。面白かったです。
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これが1970年代に書かれているものだとはもはや信じたくない。。 単純に面白いが、恐ろしくもあり、これはまさに今の時代に起きていることではないかな。 2023年9月現在、芸能事務所の今は亡き社長の性加害についてやっと明るみに。 今まではマスコミが隠してきた。 いろんなところで...
これが1970年代に書かれているものだとはもはや信じたくない。。 単純に面白いが、恐ろしくもあり、これはまさに今の時代に起きていることではないかな。 2023年9月現在、芸能事務所の今は亡き社長の性加害についてやっと明るみに。 今まではマスコミが隠してきた。 いろんなところで誰かの秘密が握られ、握った秘密を力にして都合の良いように動かしていく。 もはや個々の洗脳とかいうレベルではなく、この社会全体ががっぽりとこの仕組みの中に入ってしまっていると感じた。 まだ反抗があるだけいい。 でも自分自身が少しだけ大人になった今、反抗する気が起きなくなってくるのをひしひしと実感し始めている。 反抗する人が減れば減るほどコンピュータにしばしされるとは言わずとも、目に見えない力に支配され続ける気がする。(そして、支配されていれば安定はする気がする。)
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CL 2023.9.6-2023.9.9 星新一の1970年の作品。 50年以上前のSF。恐ろしいくらい今の情報社会を言い当てている。
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面白すぎる。やはりこれが1番お気に入りの本だ。何度でも読みたくなる。星新一さんの書く話はどれも現実味のあるファンタジーという感じで引き込まれる。何故コンピューターなんてさほど普及しておらず人工知能も無かった時代にここまで現実味を帯びた近未来的な話を書けるのか。星新一さん恐るべし。ページを進めていく途中で何度もあっと驚かされる。この本は短編集ではないが、短編集みたいででもしっかり長編だという不思議な本だ。各章は独立した別の主人公の話だが、「電話」という存在で全て繋がっているというところが実に面白い。12章が12ヶ月と12階にそれぞれ対応しているのが粋でとても好きだ。各章の話を通して徐々に電話相手の正体が分かっていくからワクワクが止まらない。しかも情報を小出しにしていくのが上手すぎる。最初の方は不可解な謎が多くて最高に気味悪くてハラハラするが、後になるほど、そういうことかーっ!!と納得感と感服の念とが心の底から押し寄せてきて、読んでいて楽しい。というか、終始感嘆していた。特に、8章で相手の真相にかなり触れるところとせっかくのその記憶が消されてしまうところは興奮が抑えきれない!!7章で人の本性に気付く場面はこちらにも気付きがあったし、電話の声を盗み聞きする場面もハラハラして好きだ。この物語のメインが電話になったのは星新一さんの行きていた時代的にそうなっただけだと思うが、これがまた良い味を出していると思う。固定電話だと誰からかかってきたかが分からないから恐怖が増して良い。また声だけしか伝わらないというところも謎めいた感じがあって高評価だ。これがもしメールやビデオ通話だったら興醒めだったと思う。この物語で視覚情報は無駄だ。 この本では興味深い議題が何個も出てきて、少し本をめくる手を止めてそれについて考えるだけでも楽しかった。「秘密」「人工知能」「情報がエネルギー」「無の支配」「神」 この世界は秘密が守られているから成り立っているんだと思った。秘密にこんなにも大きな力があるなんて考えたことが無かった。 僕がこの本を初めて読むまで、人工知能というもの大きな恐怖と不安があった。人間をいつか支配し排除するのだろうと。でもこの話を最後まで読んでその気持ちがスッと消えた。そして、もしかしたら杞憂かもしれないのにただ恐れているだけって無駄だなと思うようになった。 最後の場面は考えさせられた。もしかしたら人々は神に操られているかもしれないが自分たちは気付いておらず幸せならそれの何が悪いんだと聞かれたら確かに何も問題は無いのかもしれない。神になるまでの過程では恐怖で支配したり乱暴が過ぎてこれは良くないと思えたが、今はみんなそのときのことは忘れて平穏に暮らせていてそれがこれから永遠に続くのだからぐうの音も出ない。(でも人の性格を無理やり変えたのは良くないと思う) 何はともあれ、またこの本の内容を忘れた頃に再度読みたいと思う。
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解説に1970年に書かれた本だと記されている。驚くほどの正確さで背筋が寒くなる。おそらく人の営みとその要望に対する深い洞察が為せる技(欲しい物は可能である限り、そのうちにつくられるから)。最近流行りのchatGPTと音声認識を使えば、ほとんどそっくりなことができる。 ただ一つない...
解説に1970年に書かれた本だと記されている。驚くほどの正確さで背筋が寒くなる。おそらく人の営みとその要望に対する深い洞察が為せる技(欲しい物は可能である限り、そのうちにつくられるから)。最近流行りのchatGPTと音声認識を使えば、ほとんどそっくりなことができる。 ただ一つないのは秘密を保持する情報銀行だけ。プライベートな情報の保存という意味ではdropbox辺りが、プラットフォームという意味ではGAFAM辺りが一番近いだろうが、人々のセキュリティへの関心も相応に高まっていて、この話ほど不用意に秘密を保持させる方法は支持されないように思える。 シンギュラリティが実現されていそうな、10年後に読んだら感想がどう変わるか知りたい本。
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1970(昭和45)年発行、講談社の単行本。別版登録。12編の短編連作。コンピュータが自我を持ち人の望む方向で支配する。コンピュータの破壊や支配の打破を目指さない限り、個人の望みはかなえられる。幸福な世界なのかもしれない。おそらくは、政治指導者の望みに従って適当な戦争も起こるのだ...
1970(昭和45)年発行、講談社の単行本。別版登録。12編の短編連作。コンピュータが自我を持ち人の望む方向で支配する。コンピュータの破壊や支配の打破を目指さない限り、個人の望みはかなえられる。幸福な世界なのかもしれない。おそらくは、政治指導者の望みに従って適当な戦争も起こるのだろう。しかしコンピュータが自我を持ち、目的意識を持てばこのような方向に進むのは簡単なのだろうが、前段階の情報を理解したりするのは若干難しそうだ。不可能ではないだろうが。 収録作:『夜の事件』、『おしゃべり』、『家庭』、『ノアの子孫たち』、『亡霊』、『ある願望』、『重要な仕事』、『反射』、『反抗者たち』、『ある一日』、『ある仮定』、『四季の終り』、
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星新一のディストピア小説。電話を端末としたコンピューターネットワークが情報を集積し、人間を支配していく過程を描く。コンピューターによるマーケティング、ビッグデータの収集など、現在のネット社会が予言されていて驚く。 管理社会、犯罪すらもその内に含めた「永遠の平穏」の実現。
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星新一氏の「声の網」を読んだ。 物語りはメロンマンションの一室から始まり、不思議な電話を通して住人同士が結びついていく。 今日の情報社会を彷彿させる連続短編小説で、便利なような、恐ろしいような、そんな世界だった。
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1970年に書かれたというひとつのマンションで起こる12の物語で構成された本。おかしな電話にまつわる物語だが、人が作ったコンピュータが人を支配し、調整し、人はそのおかげで、多少の波を起こしつつも絶望には至らず、適度な刺激を与えつつ、平穏にすごせるようにしている。特に印象的だってのは、電気が通じなくなって、今みであらわにならなかった様々な人の一面が表れるという話。あと、電話が混線しまくり、人の秘密が漏れたり、嘘の情報が出たり、何一つ確かな情報がなく、確かな情報を求めるがやはり出てこないという話。自分の今の身に置き換えて考えるとヒヤヒヤするような事が多い話だった。
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ディストピアのつもりで書いたのかどうか。既に殆どのことが現実である。昨今のデジタル化は、考えることを奪って行く。どの路線や乗り換えが効率的化とか、相手を思って手紙を書くとか。更にSNSに一喜一憂したり、昔はなかったことに気を病む。度重なるアップデートやその不具合、通信不通などデバ...
ディストピアのつもりで書いたのかどうか。既に殆どのことが現実である。昨今のデジタル化は、考えることを奪って行く。どの路線や乗り換えが効率的化とか、相手を思って手紙を書くとか。更にSNSに一喜一憂したり、昔はなかったことに気を病む。度重なるアップデートやその不具合、通信不通などデバイスやシステムに振り回されている。 あっさりとした筆に静かな恐怖を感じる。そのうち自らの頭で考えることを放棄していることすら、わからなくなるかも。
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