文盲 の商品レビュー
A. クリストフ『文盲』 #読了 自伝と呼ぶには少々物足りない位さくっと終わってしまいました。「母語」と「敵語」など、言語学を専攻していた身としては興味深い内容でしたが…。結局新作を発表することのないまま亡くなってしまったのが本当に寂しい。
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アゴタ・クリストフの自伝的作品。 表現が詩的で感情がよくわかる本。 ものの30分で読めてしまう本ですが、端的に表された文章によって著者の考え方への理解を深めてくれます。
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本文は90ページちょっとで活字も大きいのですぐ読めてしまう。しかし内容的には深い。文化、民族、また個人にとって言葉、言語が持つ意味を考えさせられる。他国の言葉で話し、書くことを強要されることの残酷さ。
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「確かだと思うこと、それは、どこにいようと、どんな言語であろうと、わたしはものを書いただろうということだ。」 ハンガリーに生まれ、4歳からなんでも読んだ。 その後、ドイツ語、ロシア語を学ぶことを余儀なくされ、 20代でスイス難民となる。 4歳でなんでも読めたのに、フランス語が読めず文盲となる。 この自叙伝はとても薄い。 あっさりと終わってしまった感がある。 でも、事実としてはとてつもないと思う。 母語を禁止され、敵語を話さなくてはならない。 さいしょのほうに出てきたヤノという兄と沈黙、不動、断食の練習…いろいろな練習が、『悪童日記』を思いだした。 書くことしかできなかった小説というのは やはり、胸に迫るものがあるな。
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もし、自分だったら? 出会いを遮断されてしまう環境におかれたら どうなってしまうのだろう。 まわりに人がたくさんいるのに 言葉がわからない、わかってもらえる言葉を話せない。 言葉が書かれた文字が読めない。 亡命直後の孤独な環境でも 自分をあきらめなかった著者の行動に驚嘆。 ...
もし、自分だったら? 出会いを遮断されてしまう環境におかれたら どうなってしまうのだろう。 まわりに人がたくさんいるのに 言葉がわからない、わかってもらえる言葉を話せない。 言葉が書かれた文字が読めない。 亡命直後の孤独な環境でも 自分をあきらめなかった著者の行動に驚嘆。 この環境を選びとった覚悟を思う。
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『悪童日記』の作者であるアゴタ・クリストフの自伝。 私は例え好きな作家であったも、その人となりや過去には興味がない。だから、ひとつの文学作品として評価されているもの以外自伝を手に取らない。けれども、本書は自伝的物語として楽しめた。内容もさることながら、作者の文体が好きだから。 評価はアゴタ作品のファンとしてもの。ファン以外にとっては☆三つというところかな。 訳者があとがきで述べていたけれど、アゴタの完全新作は読むことができなそうである。非常に残念。
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悪童日記の、あの感情を排した文章で淡々と告げられる物語の重みはこういう人が描いたからこそのものなんだ、と思った。彼女は亡命して、必要に迫られた言語の習得を行い、母語ではない言葉を操った。当たり前に帰属しているものを改めて考えてみたいと思った。
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ハンガリー→フランスの越境作家であるアゴタ・クリストフの自伝。 執筆活動を母語で行わない作家にここ数年とても興味があり、偶然にもアゴタ・クリストフがそうだったので、テンションが上がりました。 まずは『悪童日記』を読みたいな。
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(2008.12.10読了) 「悪童日記」の著者による自伝です。90頁ほどですが、1頁あたりの文字数もかなり少ないので、実質50頁位の本です。すぐ読めてしまいます。 内容は、軽いものではありません。亡命して、自分と一体となっていた母国語を捨て、別の言葉を習得しないといけないという...
(2008.12.10読了) 「悪童日記」の著者による自伝です。90頁ほどですが、1頁あたりの文字数もかなり少ないので、実質50頁位の本です。すぐ読めてしまいます。 内容は、軽いものではありません。亡命して、自分と一体となっていた母国語を捨て、別の言葉を習得しないといけないというのは、どういうことなのかということを問うています。ある文化に興味をもち、自分から進んで母国語と違う言語を習得する場合と、どう違うのか。この場合は、母国語を捨てるわけではありません。 ●読む(7頁) わたしは読む。病気のようなものだ。手当たりしだい、目にとまるものは何でも読む。新聞、教科書、ポスター、道端で見つけた紙きれ、料理のレシピ、子供向けの本。 ●お話(15頁) ごく幼い頃から、わたしは人に「お話」を語って聞かせるのが好きだった。自分の頭の中で作り出した「お話」を。 ●寸劇(36頁) お金を少し稼ぐために、わたしは学校で見世物を企てる。わたしが寸劇のシナリオを書き、2,3人の友達といっしょにそれをあっという間に覚えてしまう。 ●敵語(43頁) わたしはフランス語を30年以上前から話している。20年前から書いている。けれども、未だにこの言語に習熟していない。 フランス語もまた、敵語と呼ぶ。理由は、この言語が、わたしのなかの母語をじわじわと殺しつつあるという事実である。 ●亡命(67頁) もし自分の国を離れなかったら、私の人生はどんな人生になっていたのだろうか。もっと辛い、もっと貧しい人生になっていただろう。けれども、こんな孤独ではなく、こんなに心引き裂かれることもなかっただろう。幸せでさえあったかもしれない。 ●工場(69頁) 詩を書くには、工場はとても都合がよい。作業が単調なので、頭の中では別のことを考えていられるし、機械の規則的リズムが詩句の音節をうまい具合に区切ってくれる。 ●亡命生活(70頁) かくして、砂漠の日々が始まる。社会的砂漠、文化的砂漠。革命と逃走の日々の高揚のあとに、沈黙が、空虚さが取って代わる。・・・ホームシックが、家族や友人と会えない淋しさが、取って代わる。 この砂漠を歩き切って、わたしたちは「統合」とか「同化」とか呼ばれるところまで到達しなければならないのだ。当時、わたしはまだ、幾人もの仲間が永久にそこまで到達できぬことになろうとは知らなかった。 仲間のうちの二人が、禁固刑が待っているというのに、ハンガリーへ戻っていった。別の二人は、もっと遠くへ、米国へ、カナダへ行ってしまった。また別の四人は、それよりもさらに遠くへ、人が行ける限りの遠い場所へ、大いなる境界線の向こう側へ行ってしまった。自ら死を選んだのだ。 アゴタ・クリストフ 1935年ハンガリーに生まれる。 1956年ハンガリー動乱の折、難民としてスイスに亡命する。 スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、働きながらフランス語を習得する。 1986年『悪童日記』でデビュー (2008年12月13日・記)
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美しい装丁、シンプルで洗練された文体、胸が締め付けられるような苦しいできごと、一篇の希望を感じさせる詩、言語への執着心・・・ あの衝撃的名作『悪童日記』を著したアゴタ・クリストフ氏の自伝は一生手放したくないと思える私の宝物になりました。 時代に翻弄されてきた著者が、 その群衆...
美しい装丁、シンプルで洗練された文体、胸が締め付けられるような苦しいできごと、一篇の希望を感じさせる詩、言語への執着心・・・ あの衝撃的名作『悪童日記』を著したアゴタ・クリストフ氏の自伝は一生手放したくないと思える私の宝物になりました。 時代に翻弄されてきた著者が、 その群衆の代表者として、 何かをかき、 それが幸いにも出版され、 日本に届き、 私が手に取ることのできた、 この類稀なる奇蹟に、 粛々と手を合わせたくなります。 《所持》
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