君は永遠にそいつらより若い の商品レビュー
重たい事実に深刻に向き合うのではなく、そんな奴らなど越えてゆけとする姿勢が心地よい。最後の行の後、船の汽笛が僕には聞こえた。
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主人公ホリガイは京都の女子大生で卒業直前。しかし、全く女性的な魅力を描いていない。気怠いともいうべき日常生活。自分自身を処女、いや、「女の童貞」と呼んでほしいと考えている、変人ともいうべき女性。部屋は滅茶苦茶に乱れ、足の踏み場もないほど。ふとしたことから知り合ったイノギさんという...
主人公ホリガイは京都の女子大生で卒業直前。しかし、全く女性的な魅力を描いていない。気怠いともいうべき日常生活。自分自身を処女、いや、「女の童貞」と呼んでほしいと考えている、変人ともいうべき女性。部屋は滅茶苦茶に乱れ、足の踏み場もないほど。ふとしたことから知り合ったイノギさんという女子学生もまた男性的でさえある。ホリガイ、ヤスオカ、河北と彼女のアスミちゃん、などのカタカナ文字で表される学生たちの名前はいかにも普通の学生らしくなく、独特の別世界の雰囲気を醸し出している。でも次第にそれぞれの心の奥にある悩み、葛藤が浮き彫りになってくる。変な女子大生だが、決して嫌味ではない。恋愛小説ということでもなく、不思議な世界である。
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*身長175センチ、22歳、処女。いや、「女の童貞」と呼んでほしい―就職が決まった大学四年生のだるい日常の底に潜む、うっすらとした、だが、すぐそこにある悪意。そしてかすかな希望…?第21回太宰治賞受賞作* やっと読めた津村さんのデビュー作。これぞ津村ワールド!がぎゅっと凝縮されたような、濃厚かつ濃密な1冊でした。今まで読んだ作品の中では、最もキリキリした痛みや諦めが胸を衝く。そして、その辛さの後の静謐さに敬虔になる。この消化しきれない感情こそが、津村ワールドの醍醐味。
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絶望のふちにいる感、大学生のひりひり感。もう一度読もうとは思わないが、刺さった。レイプやレズやリスカなどほんとうに身近なことが盛りだくさんだ。「デッドエンドの思い出」と似た読後感。絶望感はない。ほんのりと希望がある。このところ津村さんに癒されている。
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津村記久子という作家の本を何冊か読んできて、それまでの感想を綴ると、嫌味な女性が主人公で、周囲に対して嫌味や悪態を付き、相手にもそう思われているだろうと自覚しながらも変える意識は一切無く、その景色を描く、仕事を通しての人間関係を描いた小説かもしくは、その始まりから結果に流れゆく物...
津村記久子という作家の本を何冊か読んできて、それまでの感想を綴ると、嫌味な女性が主人公で、周囲に対して嫌味や悪態を付き、相手にもそう思われているだろうと自覚しながらも変える意識は一切無く、その景色を描く、仕事を通しての人間関係を描いた小説かもしくは、その始まりから結果に流れゆく物語を描く作家だと思っていた。本書も正直言えば、売るor捨てるために読んだ一冊である。 ただ、人生上手く行かないのは美味しいことなのか不味いことなのか、それは捉え方によるだろうが、この読書に関しては生憎手放すはずだったのに良い読書になってしまった。 やはり、読み始めから文体はともかく一人称の主人公の嫌味や自覚しながら発してしまう余計な一言など、角が目立ち。読者としてはどうしても鼻に付いてしまう。それか読むことを停める必要が出てくる。簡単に言えば苦痛だった。 読み進める度、舞台の大学、その生活から広げられる人間関係。何冊か読んでいれば作者のクセや書き方や流れの様なものを感じるのは当然だと思う。――以前読んだ作品と似たパターンだなぁ。というのがあると思う。本書もその例に漏れなかった。 大抵のワンパターンな物語というのは、最初と最後に既視感があり、作者はその中を大きく変えたりするのだけれど、本作に関しては、その中に大きく情報を盛り込み、折り返すように最後に畳み掛けて来た。一言で言えば、驚いた。こんな重たいテーマを短く詰め込めるのか! これは読者の解釈の仕方に及ぶのだけれど、中だるみの中にこそ、最後にかけてのそれぞれの生き方、こうしてやってきた、そうじゃないと生きられないという使命に近い、そういうエピソードがあったと気づかされる。その種類が豊富だったことに気づかされた。 ミステリーなどでは、ネタバレにたどり着く過程を伏線などと呼んだりするが、こういった文学と分類される物語の終着へ辿るための過程はなんて呼ぶのだろう? この一冊に関しては是非に最後まで読んでこそ価値があると言えるくらい、凄みというのだろうか、面白さがあった。結局最後まで主人公を好きになることは無かったが、けれど、それだけで済ませるには惜しい。こういう物語があるからこそ、読書は止められないのかな、と思わされた。 追記:本音を言えば、読んだら売ろうと思っていた一冊だったが、今後も読み直す一冊になるだろうと感じている。
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バカバカしさもありつつ繊細さも感じられて、この小説好き!でも作品が繊細な方向へ向かっていく後半は魅力的だと思いつつも、伏線の回収は少し構成として丁寧過ぎる印象があって、もう少し静かに作品が閉じていくともっとタイプだったかも。
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津村さん…痺れた。 そうだ、津村さんはこういうひりひりしたお話を書く人だった。 ホリガイの不器用なまっすぐさが誰かを助ける。 穂峰くんは救えなかったけど翔吾くんは救えた。アスミちゃんもイノギさんも。まだ見ぬこどもたちも。 あああ、最後の独白は本当にくるものがあった… なんかまとま...
津村さん…痺れた。 そうだ、津村さんはこういうひりひりしたお話を書く人だった。 ホリガイの不器用なまっすぐさが誰かを助ける。 穂峰くんは救えなかったけど翔吾くんは救えた。アスミちゃんもイノギさんも。まだ見ぬこどもたちも。 あああ、最後の独白は本当にくるものがあった… なんかまとまらなくて悔しいからまた感想書き直すかも。 やっぱり読んだ直後に書かないとだめだなあ。全然足りない。
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タイトルの「君は永遠にそいつらより若い」の意味が読了後に深く腑に落ちる。 初めましての作家さん。 文体自体は軽快なのに とても重い 軽快な文体と内容の重さがアンバランスでなんともいえない空虚感を助長する。 筑摩書房 太宰治賞受賞作品 デビュー作
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今までに読んできた著者の作品と作風が違い過ぎて、びっくりした。 でも、これが一番好きかもしれない。 軽快でちょっと変わった語り口調なわりに、内容は所々重い。 イノギさんとの関係など何一つ解決することがない(アスミとカバキが結婚したのは解決でいいのか?)けれど、読後感がいい。 ...
今までに読んできた著者の作品と作風が違い過ぎて、びっくりした。 でも、これが一番好きかもしれない。 軽快でちょっと変わった語り口調なわりに、内容は所々重い。 イノギさんとの関係など何一つ解決することがない(アスミとカバキが結婚したのは解決でいいのか?)けれど、読後感がいい。 改題する前の『マンイーター』はどういう意味なんだろう。 人を食ってる奴もいないし、主人公が尻軽女なわけではないし……。 再読はない。
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タイトルを読んだ時、 わけわかんねぇよっ~! って感じてたけど、読み終えたら そーねー、これだよねー、 「マンイーター」って何!? 改題して正解だね ってなっちゃった。 イソガイが、自分自身に素直だし。 こっちも観てて気持ちいいし。 《特にあなたがいちばん気...
タイトルを読んだ時、 わけわかんねぇよっ~! って感じてたけど、読み終えたら そーねー、これだよねー、 「マンイーター」って何!? 改題して正解だね ってなっちゃった。 イソガイが、自分自身に素直だし。 こっちも観てて気持ちいいし。 《特にあなたがいちばん気になるんだと、 これからもずっと気にするし、 あなたがわたしのことをすっかり諦めて忘れてしまっても、 わたしはあなたのことを気にしているんだろうということを、 どうやってイノギさんに伝えようかと思った。》 このイソガイの自問は、 ひきずるボクにとっても、心根の、さらに根っこに ずーっとひきずってる課題であって 答えがあるもんなら、他人の引き出しからでもいいんで、 教えてもらいたいもんだ って思ったんだけどなぁ。 そんな、うまいこといくなんて… きれいにまとめちゃったなぁーって
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