西洋音楽史 の商品レビュー
副題に「クラシック」の黄昏、とある。すべてを読み終えてなにか消化しきれないしこりのようなものが残った。それは「クラシック音楽はどこに行くのか」という疑問であり、現代の音楽は華麗な古典の時代の継承者ではない、という理解をしなくてはならないから。 ルネッサンス時代(15世紀)は宗教と...
副題に「クラシック」の黄昏、とある。すべてを読み終えてなにか消化しきれないしこりのようなものが残った。それは「クラシック音楽はどこに行くのか」という疑問であり、現代の音楽は華麗な古典の時代の継承者ではない、という理解をしなくてはならないから。 ルネッサンス時代(15世紀)は宗教とともに音楽がミサ曲として歌われ、バロック時代は楽器により発展した。面白いことにバッハの死によって終焉されているとされるバロック時代に、バッハは「古い音楽」として忘れ去られていたという事実。私の好きなフーガもルネッサンスをイメージするような古い技法だったとは。 オペラの誕生もバロック時代であったことは知らなかった。 やがてバロック時代の宗教での音楽から貴族、そして市民への音楽と変遷すると古典から「19世紀音楽」へと移り変わる。モーツアルトはあくまでも貴族のための音楽だが、ベートーベンは市民への音楽であり、貴族との関係から自立している。そのため音楽が自由に束縛なくつくられるようになった。 そしてようやく演奏の専門家が生まれ始める。ロマン派を支えたのはこれらの演奏家に加え、裕福な家庭の家族での演奏。そのため楽譜と楽器が流通し始める。 ちなみにバッハは没後100年たってメンデルスゾーンにより再発見される。これを作曲家後進国だった(当時はそうらしい)ドイツが復権のために最大限に活用した、という解釈は面白い。 ポストベートーベンでは様々なチャレンジがとられオーケストラは大規模化されていく。その波に一石を投じたのがフランス音楽であった。それがドビュッシーやラヴェル。音楽は大衆のものとして親しみやすい美しい作品を作り出した。 その後ストラビンスキーを経てシェーンベルクの12音技法で抽象化される。これが絵画のカディンスキーの変遷と対比しているところがまた面白い。 さて最初に戻るが、この流れをつくった歴史は誰が継承しているのか?現代音楽はもはや誰もが楽しめるものではなく、ポピュラー音楽は不十分だ。唯一モダンジャズは近いのではないか。そして現代は指揮者や演奏者の演奏を「聞く時代」になったと言える。 最後に楽譜の発展について併記されていないのが残念。いつ楽譜が誕生したのか、いつ絶対音が決められたのか、歴史と関わると思う。それにロシアの作曲家の記載が少ないのも個人的には残念でした。 でも、とても勉強になったし音楽史の入門書としては推薦出来ます。
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西洋音楽の歴史について、専門的すぎず、程良い難しさ(私にとっては)で書かれていて、とても勉強になった。 何となく、西洋の作曲家って時代とか関係なしにひとまとめに考えてしまいがちだったけど、この作曲家の作品はこういう時代背景の元に生まれたんだっていうのが分かると、それぞれの作品の...
西洋音楽の歴史について、専門的すぎず、程良い難しさ(私にとっては)で書かれていて、とても勉強になった。 何となく、西洋の作曲家って時代とか関係なしにひとまとめに考えてしまいがちだったけど、この作曲家の作品はこういう時代背景の元に生まれたんだっていうのが分かると、それぞれの作品の個性がより際立って聴けるようになるんじゃないかなって思った。
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西洋音楽の起こりから現代に至るまでの「流れ」を書いた本。 教会音楽とグレゴリオ聖歌、そこからルネサンスの調和の音楽へといたり、バロック時代の構造の音楽、そしてそこから脱却するように生まれたロマン派。 音楽そのものよりも、どういった時代背景と空気でその時代の音楽が生まれてきたか...
西洋音楽の起こりから現代に至るまでの「流れ」を書いた本。 教会音楽とグレゴリオ聖歌、そこからルネサンスの調和の音楽へといたり、バロック時代の構造の音楽、そしてそこから脱却するように生まれたロマン派。 音楽そのものよりも、どういった時代背景と空気でその時代の音楽が生まれてきたかを説明していて興味深い。 特に中世において、音楽は「世界を調律するもの」、一種の神性の体現として捉えられていたというのは、現代の感覚からかなりずれていて面白い。 (それゆえ、グレゴリオ聖歌などは、神聖さと厳粛さのために現代の不協和音であるドソが和音で、ドミソは不協和音と考えられていた。) 私たちが思うように音楽を楽しんでいたわけでなく、音楽を娯楽と捉えるようなったのは、ルネサンス以降であり、当時広まり始めた印刷技術によって、一気に芸術としての音楽が開花して行った。 パトロン=貴族やブルジョワのために音楽が作られたバロック時代の音楽から、まさに大衆の音楽となったロマン派の時代。 そして、現代のポップ音楽が、旋律構造的にもその感情喚起という点からも、ロマン派から上っ面が変わっただけで中身は変化らしい変化が起きたわけではないというくだりがある章は、クラシック愛好家もポップスしか聞かない人にも読んで欲しい。 クラシックを漫然と耳触りが良い音楽として聞いていた自分には、バックグラウンドがわかることで色々といままでになかった視点が得られたし、のめり込んで一気に読んでしまった。 音楽史に興味があっても、あまり知識はないし、緻密に歴史を書き連ねている重い本はちょっとという人にとてもおすすめ。 ただ最低限の世界史の知識がないと楽しめないかもしれない。
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西洋音楽のルーツから20世紀の音楽まで俯瞰できる。個々の音楽家だけでなく絵画や文学、政治などとの関連も書かれているので時代的な位置付けがよくわかる。西洋音楽史の入門書として最適な名著。読んでいると色々と聴いてみたくなる。お勧めの映画や演奏家などもところどころ書いてあるのもポイント...
西洋音楽のルーツから20世紀の音楽まで俯瞰できる。個々の音楽家だけでなく絵画や文学、政治などとの関連も書かれているので時代的な位置付けがよくわかる。西洋音楽史の入門書として最適な名著。読んでいると色々と聴いてみたくなる。お勧めの映画や演奏家などもところどころ書いてあるのもポイント。 中世のグレゴリア聖歌から始まりルネサンスに音楽と作曲家が誕生、不協和音の発見からバロックに移行し啓蒙思想と共にウィーン古典派の時代になる。19世紀にロマン派が生まれ最盛期を迎える。ワーグナーの死を境に神なき時代の宗教音楽となり、第一次大戦で崩壊し、新古典主義時代になり、第二次大戦後前衛音楽が出てくるが大勢の支持を得られず、演奏家の巨匠の時代、ポピュラー音楽の時代となる。 中世までは馴染み深い和音や五線譜でなかったということやバロックまでは低音が曲をリードし、旋律は装飾にすぎなかったこと、リストは当時のロックミュージシャンのような存在だった、マーラーの交響曲は宗教音楽に近いなどなかなか目から鱗だった。
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中世から20世紀までの西洋音楽の歴史を、読みやすく、判りやすく、書かれた本。 「ごく一般的な読者を想定して」書かれたというだけあって、 そもそも「クラシック」って何なの?というところから説明してくれる。 それぞれの時代の音楽の位置づけ、聴衆との距離感などが、岡田さんの目線で書かれ...
中世から20世紀までの西洋音楽の歴史を、読みやすく、判りやすく、書かれた本。 「ごく一般的な読者を想定して」書かれたというだけあって、 そもそも「クラシック」って何なの?というところから説明してくれる。 それぞれの時代の音楽の位置づけ、聴衆との距離感などが、岡田さんの目線で書かれているのでとても入りやすい。 最後は現代のあふれかえる音楽について、納得のいく説明があり、そこからさらに、「音楽」というものについて考えされられた。
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「音楽史という大河を一望のもとに眺めわたす」コンパクトかつ中身の濃い書。具体的には、グレゴリオ聖歌からシェーンベルクまでを紹介する"社会音楽史"。筆者の音楽に対する敬愛が満ち溢れていて、活字の間から旋律や色までが見えるよう。 神戸大学で9年間担当した「西洋音楽...
「音楽史という大河を一望のもとに眺めわたす」コンパクトかつ中身の濃い書。具体的には、グレゴリオ聖歌からシェーンベルクまでを紹介する"社会音楽史"。筆者の音楽に対する敬愛が満ち溢れていて、活字の間から旋律や色までが見えるよう。 神戸大学で9年間担当した「西洋音楽史」の授業を基にして書いたとのこと。こんな講義を聞けた学生がうらやましい。
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クラシック音楽に興味がある一般人向けの音楽史。これで我々が今耳にするクラシックと言われる音楽がほとんど19世紀に生まれたことがよくわかった。それ以前の音楽についても解説されており、どのようにして今の音楽ができあがってきたのかがよくわかる。歴史の中で音楽、絵画がそれぞれどのように影...
クラシック音楽に興味がある一般人向けの音楽史。これで我々が今耳にするクラシックと言われる音楽がほとんど19世紀に生まれたことがよくわかった。それ以前の音楽についても解説されており、どのようにして今の音楽ができあがってきたのかがよくわかる。歴史の中で音楽、絵画がそれぞれどのように影響し合ってきたかも理解できる。興味のある人は坂本龍一が出演しているNHK教育「スコラ」もみてほしい。これも音楽史をわかりやすく解説してくれている。
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中世から現代にいたるまでの西洋の音楽史。バッハ以前の西洋音楽のルーツがまとめられているほか、社会の需要や思想の変化に対する音楽の変遷、地域による特徴の違い、現代の音楽へとつながる歴史などがわかりやすく説明されている。 中世の宗教音楽から始まった西洋音楽は、協和音が重視された声楽...
中世から現代にいたるまでの西洋の音楽史。バッハ以前の西洋音楽のルーツがまとめられているほか、社会の需要や思想の変化に対する音楽の変遷、地域による特徴の違い、現代の音楽へとつながる歴史などがわかりやすく説明されている。 中世の宗教音楽から始まった西洋音楽は、協和音が重視された声楽と器楽曲のルネサンス、絶対王政時代の宮廷音楽とオペラのバロック、市民社会の勃興と啓蒙主義を背景にした古典主義音楽、自由市場で目立つことが求められたロマン派音楽、快適で洗練された音を愛した印象派と変遷し、第一次世界大戦とともに、シェーンベルクによる調性の解体やストラヴィンスキーによるリズム法則の破壊によって、音楽史は瓦解していった。戦後の音楽については、前衛音楽、巨匠の名演、ポピュラー音楽の3つの流れに分かれているとまとめている。 バロックの巨匠と考えられているバッハがむしろ例外であることや、未来に遺産を残すことを重視して交響曲などがつくられ、無言歌、標題音楽、絶対音楽への展開も見られたドイツに対して、目の前の需要を満たすグランドオペラやサロン音楽、キッチュが好まれたフランスやイタリアの違いがあったという説明もわかりやすい。 各時代の音楽の特徴などがコンパクトながら十分に理解できる。それでいて、歴史全体の流れがきちんとつながるように解説されているのは見事。読了後は大きな満足感に浸ることができた。 あとがきの通史を書くことに関するエピソードもおもしろい。
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面白かったです。西洋の音楽史をさらっと追えるので全体像が掴みやすいです。さすがに音楽的な知識が少なすぎると訳が分からなくなる(自分はそうでした)部分もありましたが、全体としての出来は上々ではないでしょうか。音楽(特にクラシック)に興味を持ちました。
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中世から現代までの西洋音楽の一連の流れを総覧するのには最適な本だと思います。 時代ごとの音楽の特徴や社会の動きだけでなく、その社会における音楽のあり方や、王侯貴族や民衆との関係にもその時代の作風と連動して説明されており、立体感を持って音楽史を把握できる非常に良い本でした。 ただし...
中世から現代までの西洋音楽の一連の流れを総覧するのには最適な本だと思います。 時代ごとの音楽の特徴や社会の動きだけでなく、その社会における音楽のあり方や、王侯貴族や民衆との関係にもその時代の作風と連動して説明されており、立体感を持って音楽史を把握できる非常に良い本でした。 ただし、あくまで流れをつかむための本なので、時代の代表的な作曲家や名作などにはあまり触れないため、ある程度のクラシックを聞いた上で読まないと把握しづらいと思います。
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